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異世界転移編
スーパーミニ閑話第2話 〈2〉伝説の対談
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映像が始まった。
と思いきや、スクリーンは一面真っ白。
「あれ?」
「故障したの?パパ!?」
姉弟二人が大慌てでスクリーンに近付いてはバンバン貫通するスクリーンを叩きまくっている。
だがその数秒後ーースクリーンから足音が聞こえる。故障かと思っていた姉弟二人は安堵したように心から嬉しい吐息をこぼした。
「よかった~」
「どうなるかと思った~」
『こんにちは。 今日という日をどれだけ楽しみにしていた事でしょうか』
40代後半らしき中年男性がマイクらしき物を持って真っ白な背景の前に現れた。その後ろではスタッフが急いで豪華なキングチェアのようにもふもふでデカイ椅子が二脚並べられる。
『私はインタビュアーである真城始と申します。この度は皆様の代表という形でここに立たせてもらいます。どうか、親衛隊の皆様はご理解の程⋯⋯どうか、どうかよろしくお願いいたしますね』
本当に心配そうに真城は画面の私達に向かって頭を下げた。
⋯⋯一体どれだけその親衛隊はヤバイ組織なんだか。
『私は今まで25年⋯⋯でしょうか。※※※※という人間を追い続けてきました。 その事を本人に直接話したら、苦笑いで「本当?マジで?」と軽くドン引きでした』
「あっはははは!!25年かぁー凄いね」
「うん、25年も※※を追い続けたからこんなインタビューを引き受けたって事だよね。凄い尊敬の念を感じる」
『今回は、私が愛してやまないーー※※※※という歴史上でもっとも優れた指導者であり、実力者であり、天才でもあり、経営者でもあり、超一流の武術の達人でもあり⋯⋯⋯⋯あり過ぎますね』
ここで家族全員が大ウケ。
みんなが本気で笑う姿が私達の目には映っていた。
『さてーー』
真城の動揺が伺える。
瞳は動揺で大きく揺れ動き、両手も緊張なのかオーラなのか。
⋯⋯真城の両手はとても大きく震えていた。
その緊迫感が見ているこちら側にもズシズシと重石を何百も乗せたように伝わってくる。
『いや~すみません。おそらくもう二度とこうして表舞台に出てくる事が無いとか思うと、凄いですね⋯⋯その、聞こえます?心臓がバクバクなんですよ』
カメラに近付いて鼓動を聞かせようとする真城の姿。
「初代※※様だもんね~そりゃ緊張するよ」
「雪花?当時、この頃はまだ※※になる前のことよ」
「勉強したんじゃなかったの?」と言わんばかりにツッコミを入れる翆。
『すみませんね皆さん!さぁ!ここまで引っ張りましたので行かないとですね!!それでは、今回の真城プレゼンツ──最終回⋯⋯ゲストはーー※※※※さんです!!』
耳が無くなるんじゃないかと思うほど大喝采の中ーー歩いて来たのは、絶世の美青年。
思わず見ていた家族全員が大盛り上がりする程には。
「うぉー!!!!」
「これが初代※※様なの!?」
「ヤバっ!パパよりカッコイイじゃん!!!」
「母上、アンタが見せない理由がよく分かりましたよ」
しょぼんとする父親をみんながフォローする。
「大丈夫だよ!パパもかっこいいから!」
「そうよ!」
「かっこいいよ!」
「そ、そうか?」
白く腰まで伸びた美しい髪。
2mを優に超える体格。
袖を通さない純白ロングコート。
その下は黒いタンクトップ一枚。
ズボンは黒スキニー。
美しいダークブラウンの双眸。
完璧に整えられている目鼻立ち。
もう二度と産まれてこないと言われるほどの絶世の美青年の姿が1000年後の子孫達にも鮮明に、そして映像にしっかりと映っていた。
絶世の美青年はとんでもない覇気を放ちながら、豪華な椅子に優雅に足を組んで座った。
『こっ、こんにちは!!』
近くで見た真城は思わず声が裏返ってしまう。それに※※は軽く吹き出す。
「うわ~本当に存在していたんだ~初代※※様は」
「動いてるよー!ママ!」
いくら憂炎が翆を揺らしても無反応。憂炎はそのまま太もも何度か叩くと意識を取り戻した。
「はっ⋯⋯?」
「ママ?」
「あっ、ごめんなさいね憂炎」
『すみませんね皆さん。本名は伏せさせていただきますが、このまま進めますね』
真城が緊張しながらも※※を真っ直ぐ見つめた。
『初めまして!※※さん!私はインタビュアー真城始と申します!!』
真城が握手を求めて手を差し出す。
『初めまして、真城。俺は※※※※と言う。まぁ多分知ってるよな?あははは』
求められた握手を受け入れて※※は笑顔で返事を返した。
『真城くん、悪いんだけどーー』
※※が何かを言うとしたその瞬間には、まるでわかっていたかのように灰皿を目の前の小さい机の上に置いた。
『タバコですよね?存じております』
これには※※も苦笑い。そのまま対談は続く。
『ふぅ』
煙草に火を点けるだけで、真城は感動すら覚えながら※※を見つめていた。※※がタバコの火を点け終わると、真城がすぐさま話しだす。
『今回は、対談という形でご出演頂いて誠にありがとうございます』
『こちらこそ。まさかこんな形で表に出る日が来るなんて思わなかったよ』
頬杖をつきながら煙草を吸う姿があまりにも美しい。ただそれだけを全員が思いながらスクリーンに集中している。
『先にお聞きしたいんですが、どれくらいのお時間を頂いてもよろしいかだけお教えいただけますか?』
『う~んそうだな~。まぁ、どうせなら最後まで応じるつもりだよ。これは君の努力に免じてという理由だけどね』
※※は軽く笑みを浮かべて真城へと言葉を贈る。
『ありがとうございます⋯⋯!では早速なんですが』
真城は急いで事前に用意していたであろうフリップを机にダンッとおいた。
『えー最初に話したい事は、⋯⋯※※※※さん、貴方にとって最も強いと思う武術をお聞かせ下さいーーです!こちらは愚問だとは思ったのですが、おそらく後に見る事になるだろう視聴者の為にも!是非本人からの言葉で聞きたいであろうと思ってこちらを最初にさせていただきました!』
『おっ、面白い問いだな。う~ん。まぁ、分類分けとしてさ?格闘技と武術というジャンルの話は基本的に会話が成立しない。ルールという設定されている場合、格闘技をしている方が有利だし、ルールが設定されていない場合ーー武術の方が有利だという話は先にさせてもらう』
そう言って※※は煙草の灰を落とす。
『そうですよね。そもそもそのような議論はお話になりませんよね』
『あぁ、そもそも殺す気でやってる武術家と、ルールの上で参ったさす格闘技じゃ話にならん。とまぁ本題に戻させてもらうが、対応力が多い⋯⋯所謂対策の型が多くある武術はあまり強いと感じないというのが俺個人の意見ではある。知識としてあるのはいいんだがな』
『それはまたどういうことでしょうか?』
『さっきも言ったが、武術というのは、単純なんだよ。⋯⋯単純。武術は何のために習得するんだ?相手を殺す為に必要だから習得する訳だ。まぁ例外もあるがな?』
『はい』
『結局のところーー無駄を極限まで省いて最短で相手を制圧させれる武術を強いというのがいいんじゃないかと俺は思う。以前、俺は沢山の技術を学んだ』
『存じております』
『あぁ、それは変わる訳ではないのだが、色々な準備を重ねていた時期があった。確かに、悪い訳ではない。だがな⋯⋯明らかに動きのキレがなくなったんだ』
『キレ⋯⋯ですか?』
『あぁ。意識しないと出来ないことを広く気にし過ぎて、すべての行動に制限が掛かったように遅れる。もしそれが実践なら、俺は負けていただろう』
※※は足を組み直しながら真城にそう語る。
『それは、つまり⋯⋯無意識に出来る事と意識しないと出来ないことがある。そういう事でしょうか?』
『鋭いな。例えば真城、お前は目の前に魔法が、それも上級魔法だ。もし突然目の前に飛んできたら、何もしないなんてことは無いだろ?』
『仰る通りです』
『反射で障壁か⋯⋯それかおそらく魔力を足に流して避けるか。これって意識しなくても出来るだろ?』
『は、はい』
『つまり、だ。こういう類の事は反復の積み重ねで無意識に出来るようになるって事だ。そんなの全然無意識に誰かと喋っていたとしてもそれは変わらない』
『そうですね』
『逆に、戦っている最中に意識しないと出来ないような事。 まぁそれはソイツの中でもいいが、例えば守る奴らが1か所ではなくて複数いた場合の中で戦わないといけないケース。この場合、なんらかの攻撃がどこに飛んでも気にしないといけないし、何より選択肢を永遠に広く持つとーー頭が終わる。これを俺の中では、"意識しないとできない事"に分類される』
『お、おぉ~』
いきなり思いもよらない深い話に真城が驚きながらその後も※※が話す内容を聞き続ける。
『まぁ、ようは人間には意識しなくても繰り返し鍛錬を積む事でできることと、必ず意識しないと出来ないことがの2つがあるっていうことだ』
「うわぁ~これで当時25歳なんだっけ?」
「そうね、だけど考え方は10代後半から何も変わってないんじゃなかった?」
「それ諸説あるみたいだけどね」
真剣に対談を聞きながら夫婦同士で議論を始めている。それを聞いていた姉弟二人も会話に入ろうとした。
「パパ、どういう事?」
「俺もわかんない!」
「ははは⋯⋯。憂炎も雪花もまだ子供だからな。その内分かるようになるさ」
『続いての質問はこちらです!』
"貴方にとっての武術とは⋯⋯?"
フリップの内容を見る※※。内容を理解した瞬間、※※はビールでも飲んだように『くぅ~』と声を出した。
『こりゃ⋯⋯長くなるよ?大丈夫?』
『もう、※※さんのお言葉なら何時間でもやれますよ』
真城は大ウケしながらツッコミを入れている。
『まぁちょっとは省くかな。まぁ、皆さんは知っているかはちょっと分かりませんが、俺は昔から武術という言い方だけではなく、"武道"という言葉も使います。"武術"というのは、戦う為の術であり、相手を殺す為のモノです。
しかし武道というのは、そのやるモノを通じて人間として完成を目指す⋯⋯という2つの言葉があるんです。俺はどちらも好きなんです』
『へぇ~!私は武術だけなのかとてっきり思っていました!』
『だよね。まぁ戦う事ばかりのこの世界だと、それを通じて~とか言われてもって感じだよね』
『『あははは』』
『まぁこれは、もうずっとの話なんだが、ここ数年⋯⋯ひっきりなしに俺の元に貴族やら、~の長だー!だの、~国の皇帝だと自称する奴らが俺の使っている武術や戦い方を教えて欲しいと来るんだ』
『それはそうでは?貴方ほど戦場で活躍した人も少ないのでは?』
『まぁ、それもそうか』
ハッとしたように※※は軽く微笑む。
『断ったのにもかかわらず、俺にわざわざ金を払ってまで教わっている者が数人いる。みんなが『憧れで』『強い』『かっこいい』と称賛の声を聞いた。だが俺の解釈では少し違うようにも感じるんだ。
それは、色んなことを言ってきた全員は結局のところ──俺が教えた動きを通して自分を表現したいだけではないんじゃないのかってことだ』
『いや、流石に貴方なくして学ぼうとは思わないはずですよ?』
『俺は先程上げた二通りの考え方を持っている。その上で言うと例えば絵を描く者は、"自身が描くモノ"を通じて自分という表現をしているだろう?"騎士は忠誠という生き様"で自分という表現を見せる。俺はそれと一緒だと思う』
『つまり、貴方の凶暴過ぎる技を皆が必要としたということですね』
『あっははは。そうかもしれないね』
上品に煙草を吸いながら声に出して笑う※※。※※にウケた真城は嬉しそうに※※の話を聞き続ける。
『まぁしかし、だ。俺が教えているモノが彼らにどう伝わっているかは正直なところ確信を持ってはいない。 だが俺が少なくとも彼らに教えている事は、俺がやっている武術という枠を通じてーー自分⋯⋯つまり行き着く先は己を知るということを伝えているつもりだ』
『貴方の凶暴な武術で?』
『勿論』と※※は頬杖をつきながら頷く。
『まぁ俺が言いたいのは、彼らが俺に金を払ってまで得たい物は、本当のところーー戦う力ではなくて、私の武術を通じて"自分"というモノを"動き"を通じて表現する為なんだよ』
『強さを得たいのでは?私のような素人からすると、貴方は強い。これまで幾度も英雄と呼ばれるようなお方を直に見てきました。しかし貴方はその歴史に並ぶような偉人達と比べても、あまりにも異質過ぎる。通常なら一つの分野で活躍するのが限界点なはずです。しかし貴方は、いくつもの分野でそれを行います。"その"レベルで⋯⋯です』
『俺はね?真城。何故一つしか出来ないのか⋯⋯って事に疑問を抱いたんだ』
『疑問?ですか?』
『あぁ、俺のすべての原点は──"疑問"なんだよ。「なぜこうなるのかな」「ではこの場合は?」あらゆる疑問を私は人生を通じて解決したに過ぎないんだ』
『私のようなレベルでは全く理解できません。言っていることがわからないという訳ではありませんよ?しかし、皆がそれを行おうとすれば、必ず破綻してしまうのですよ。貴方はそれがない。解決し、すぐに違うことさえもやってのけてしまうのです』
『ん~、しっかりと解決すればできると思うんだよね。皆はきっと、すぐに飽きてしまうというのが本音なのではないか?』
『それは事実かもしれません。しかし私達には理解し難い問題です』
『そうだな、俺には時間が無かった』
『時間?ですか?』
『俺は生まれてからずっと、時間がなかった。特に、親戚に引き取られてからは。毎日意味の分からない事でギャーギャ~騒ぐ兄弟。まるで人間とも思わないような顔で見下し、陰湿な虐待をする女達。俺にはずっと⋯⋯時間と余裕が無かった。
そのせいか、1人になったその瞬間から、俺は1秒たりとも時間を無駄にしたくはなかったのだ。そのせいだろうね』
『貴方のような方にも⋯⋯そんな過去が』
『あぁ。皆が言う。「お前は優れた遺伝子を持っているからそんな事ができるんだろう」「お前はたまたま天啓を授かったのだから神様にでも感謝をしろと」⋯⋯な?面白いよな?誰も飽きずにここまで来たことすら気付かずに、ただ才能や遺伝子ばかりを指摘している。
⋯⋯素直に悲しいと思ったよ。何故そんな事ばかりを気にするのだと』
『私は、少し理解できてしまいます』
『真城君はその者らの気持ちを汲み取れるのか?』
※※は興味深々な様子で真城に目を向ける。
『はい。私は才能がありませんでしたから。ただこうして⋯⋯貴方の追っかけをするくらいしか頑張れることが無かったのです。 戦う才能や、人を導くような才能。金を稼ぐ才能に、人を癒せるような美貌や会話の術、私にはどれも持っていませんでしたから──全部否定したいんだと思います』
『俗にいう相対的貧困ってやつか?』
『まぁ、私のようなタイプにはそうなりますかね。結局⋯⋯比べちゃうんですよ』
『まぁ仕方ない部分もあるだろう。俺のいた所でも、親ガチャなんて呼ばれるものがあったくらいだ。それくらい環境や親という存在は大事だからな』
『世には私のような、才能がなくて死に頼ってしまうような人間も多数いると思います。その方達に向けて何か言葉をお願いします』
『突然!?』
二人が爆笑しながら、手を叩いたのち、※※はカメラに近付く。そして※※はその場でしゃがみ込み、話を始めた。
『俺も小さい頃ーー何度も死のうと思った』
初手にありえないくらいの告白を聞いていた真城がガタッと椅子を後ろに倒しながら立ち上がる。
『俺はさ、生まれて4歳くらいかな。親戚に引き取られたんだよね。さっきも少し話をしたけど。毎日罵られたんだよ。「お前は悪魔だ」「お前は存在してはいけない子供なんだ」「死ね」って、毎日言われたんだ。
意味わかんねぇだろ?何にもしてねぇただのガキが、得体の知れない親戚に毎日そんな罵詈雑言を真っ白い何もない部屋で言われ続ける苦痛。そん時は本当⋯⋯毎日何の為に生きてるのかまじで理解できなかったし、殴られて、蹴られて、食事も意味不明な献立ばかりでさ。
⋯⋯どうだ?こんなの聞いたところで、親ガチャハズレだと思うか?まぁハズレだろうな。多分普通のやつは「可哀想」「辛いね」とか言ってくれると思うんだけど』
そう言って※※は煙草に火を点け、そして穏やかに微笑む。
『本当に辛い奴はーー多分何も響かないし、多分何も思わない。俺がここで何を言っても、多分また、同じことを繰り返す。だから、そんな糞だなと思う人生を変えてくれるような⋯⋯もっと言えば、クソな状況でも楽しいと思えるような何かを見つけたらーーきっとお前の人生も変わるだろう。来ると思うか思わないかは勿論お前次第だ。だが、「引き寄せてやる」くらい信じてやらなきゃーー一生好転する事はないということだけ伝えとく。
⋯⋯俺の言葉は以上だ』
無言の空気の中、映像の中からは沢山の拍手が巻き起こった。
『さて、続きをやりますか』
『そうですね!ありがとうございます』
*
そうして対談が続いていき、いよいよ最後のフリップが置かれた。
『貴方にとって強さとは何でしょうか?』
『最後にしては、随分と難しい問いだな』
『すみません※※さん。やはり見ている後の子孫や現在視聴しているあのお方達も、きっとそこが凄く気になっている事でしょうから』
『おや?』と真城が苦笑いを浮かべながらある画面を見つめていた。
『ほら※※さん、隠された五の太陽さんから魔導書が贈られてきていますよ』
『あ、本当だ』と※※も笑みをこぼしながらその画面を見ていた。
『それでは※※さん、是非最後にお願いします』
『そうだね、強さというのは凄く抽象的で、凄く難しい。勿論意味は分かっているよ?だが、強さというのは非常に難しい問題だ』
『そうですよね』
※※は頬杖をつきながら、ゆっくりと噛みしめるように強さについて考えていた。
──10秒、20秒。
美しさと色気がただ漏れな※※。
最終的には1分が経過した時、※※はゆっくりと話しだした。
『やっぱりしっかりと話しておいた方がいいかな』
『え?』
『俺はね?真城君。強さというのは主に2つあると思っている。概念レベルのような大きな意味合いでね』
『それはどういう意味でしょうか?』
『俺は昔、強くなる為に様々な努力をしてきた。その為に最初に始めた事は──動物を見るという事だった』
『動物を?一体どういうことでしょうか?』
『人間は知恵がある。だから色々な遠回りをしてしまうことが多々ある。 だが、力という面においては、動物は努力をせずにその力を当たり前のように振るっている。だから動物を観察して何故強いのかを直で確認したかったんだ』
『当時だと⋯⋯』
『まだ6歳とかだったかな』
『はっ』ともう色々な意味で笑うしかない真城はマイクを降ろして呆れた笑いを見せる。
『そんな6歳の子供が、熊やライオンなんかを観察して何を得たんでしょうか?』
『俺は一緒の生活リズムをとってみたんだ。寝る時間、食事、戦い方から威圧の仕方までも⋯⋯本当に全部。真城、俺達は例えば闘うとき、情報があるせいで両手を構えるだろ?だけど、ボクシングみたいに動物が構えなんてとると思うか?』
『いいえ』と相槌をうつ真城。
『だろ?防御なんてしない。⋯⋯正に本能で戦うということを俺は当時意識していた。結果として、その試みは後の俺にとっては大成功であり、自分という人格の最初に作られたモノだと思う』
『つまり、貴方の強さとは⋯⋯本能である。ということですか?』
そんな真城の言葉に、※※はにんまりと笑う。
『違うんだよ。それも強さであるけどね。俺はそれから時が経って7歳』
時が経って7歳ってwと言っているような表情で真城は話している※※の話を聞き続ける。
『俺の武術の根源とも言っていい最初に衝撃を受けた武術は中国武術だった。
後に俺は殆どの動きを覚えることに成功したがな。 それでその中でも最初⋯⋯俺がたまたま教えてもらったのが意拳だった。⋯⋯まぁ過程は良いだろう。それから何十を超える中国武術を学んだ。国なんて関係ないーーどれも素晴らしいものだった。「達人」という一定以上の実力者と話す機会があった。それに直接指導という機会も。
彼らが俺に見せてくれたどの動きも──1ミリのズレもない無駄を極限まで省いた完璧なモノばかりだった』
『※※さん、もし良ければ、意拳の強さを見せてもらえませんか?』
申し訳なさそうにしながら真城がそう言うと『おう、いいよいいよ』と軽く立ち上がる※※。
『まぁ、意拳がどうってよりは、中国武術を通して立つ力を意識することが圧倒的に多くなった事だ』
『立つ力?』
『あぁ、押してみてくれ』
立ち上がった真城の肉体は流石の一言だった。※※を追いかけているだけの事はある。
肉体は年齢と比べても圧倒的に良く、拳の他にも様々な局所に普段から武術の鍛錬を積んでいるのが伝わってくる。
⋯⋯だが。全力で正面から押す真城の口からは踏ん張る声しか聞こえない。 反対に※※は、普通に仁王立ち。 もはや真城が忖度して触ってるくらいとしか思えない力なのかと錯覚するような表情と態度。
『ハァ、ハァ⋯⋯ビクともしないです』
『だろ?逆に、だ』
『え──』
片方は直立で耐える側ともう片方の人間は押すという一連の流れを逆転させる。
※※は片手で全力で踏ん張る真城の正面からタイミングをずらすなどの小細工を一切せずに、ポンと軽く押すような動作を行った。
『うおおおお!!』
一気に立っていた場所から5メートルは後ろに吹っ飛んだ。画面外に待機していたスタッフ達が真城に怪我をさせないように背中を守っている。
あまりに見た目と威力の差が凄く、真城は驚愕の笑みと『やはり』というような感嘆の吐息を同時に漏らした。
『これが』
『あぁ、立つ力というのはそれほど大事だということ。そして、中国武術にはもっと色々な事が動きの中に隠されている。そしてーー達人という者達と交流した後、俺は一つの強さに気付いた』
二人は座り直し、煙草を吸い始める。そんな※※は天を仰ぐような表情でそう続けた。
『一糸乱れぬ正確性⋯⋯つまり、機械のように正確で無駄のないモノが強いということ。これが俺の得た次の強さだった』
『機械のように正確⋯⋯それが2つめの強さですか。では、貴方はその2つでここまでこれたーーということでしょうか?』
『まぁ、皆は信じてはくれまいだろうが、哲学書や武術の書物だけではなく、あらゆる本を読み、そして実行に移した。
そして、果ての果て⋯⋯俺が最後に辿り着いた答えーーーーそれは陰陽一体』
『二つの話ですか?』
『あぁ』
『太陽と月』
『黒と白、善と悪、表裏一体。受け取り方は何でもいい。俺はーー気付いたんだ』
そんな※※の言葉に一呼吸おいて、真城は尋ねる。
『何にでしょうか?』
『勾玉の白、あれは機械的な強さをであると。そして黒い部分は、人間の心ではないかと』
無言で※※を見続ける真城。
『ど、どういう意味でしょうか?』
『俺は、人間という生き物に疑問をある日感じた。進化論というテーマの時だ。「そんな簡単に進化なんぞするか?と」なら何故今の生物は変わらん?と』
『はい』
『何者かが⋯⋯という陰謀じみた言葉を続けるつもりはない。答えは俺が知っているからいいんだが、今回とは話がズレるからな。 そんで、知能があるだろ?人間は』
『勿論です』
『もし、自然にいる中で、知能を感じてしまう光景は「不自然」に見えるだろ?』
『⋯⋯はい』
『機械的な強さは確かに強い。しかし、人間味がなさ過ぎて「不自然」に見えるだろ?一方で動物的な本能の強さというのは「自然」だが「動物的すぎる」ということだ。俺達人間は知能を持った生物で、「動物」だ。獣と何ら変わりはない。 そして人間は汚らわしい感情を持った生き物でもある。それは何色でも染められるが、幾度の願いや心で最終的にはどす黒くなってしまう。もう何をしても青や赤にはならない。 だが、黒くなるまでの期間を長くする方法があるだろう。俺達人類はーーまだまだ舞えるはずなんだ。何処までも強く、気高く、己を完全に掌握出来るはずなんだ』
※※がそう真城へと語りかけ、黙って真城も頷いている。
『正確さと極限まで無駄を省いた機械的な不自然さと感情がもたらす動物本来の自然さ。この2つを完全に溶け合うように混ぜ合わせた存在。⋯⋯それが人間の真の姿であり、強さの終着点だと俺は信じている』
※※は最後にそう語った。真城はその後も疑問を抱いた箇所について深堀する形で追求していった。進んでいく対談の時間はあっという間に過ぎていった。
そして最後──。
『それでは※※※※さん。私は貴方の偉業を知っています。きっと沢山の子孫が現れることでしょう』
『やめろやめろ』と※※は片腕で払う。
『むしろ貴方のような人の遺伝子が後世に残らないほうが問題でしょう』
『俺みたいな奴の遺伝子なんか残ってどうすんだよ』
『やめてくださいよ~※※さん。代表の私が後で殺されてしまいます』
苦笑いをしながらツッコミを入れる真城。※※も『そうなのか?』と半笑いの表情を浮かべる。
『さっ、ここからは登録チャンネルでの実践向き解説を⋯⋯と』
途中で気付いたように真城は息を整えた。それは自分が後の歴史に映ると直感的に感じたのかはわからない。
しかし、真城はインタビュアーとして、※※へと真剣にマイクを向けた。
『ここで、※※さん。肝心な事を忘れていました。続きですが、後の子孫や貴方の意思を引き継いだ者がいるはずです。未来の子らに何か一言お願いします』
※※は一瞬困惑した様子だった。しかし数秒もすると真城からマイクを受け取ってカメラへと視線を向けた。
『そもそも俺がどんな未来をお前達に残しているのかは⋯⋯正直分からん。もしかしたら史上最悪な男になっているのかもしれないし、天国かも知れん。崇拝なんて俺にする必要はない』
『だが、お前達は新たに生命を得た。それで十分だ。この星でどう生きるのか──この星でお前達がどう変えていくのか。⋯⋯俺は非常に興味がある』
そう話す※※の表情は徐々に口元を歪ませる。
『俺はお前ら後世の者たちに何も求めない。だが、観察はさせてもらう。 あっちであった闘いのように。真っさらになったこの世界でどうお前達が生きていくのか、俺はーーいや、「私は」楽しみにして待っているよ』
そう言い残して真城にマイクを返した。
『ありがとうございました!いやいや、非常にワクワクするような言葉でした!考察が捗りますね~』
『考察なんてするな』
ケラケラ笑う※※。すると真城はすぐに別の準備を始めている。
『それでは!こちらの会員様の皆様には、対談とは別に、実践向き、「※※式」の有効的な使い方のご紹介とさせていただきます!それでは皆様──またいつかの時に~!』
真城と※※はカメラ目線で手を振って対談は終了した。
*
映像が止まり、暫く家族全員の言葉が止まっていた。
それがどんな感情かは私達には分からない。
しかし、少なくとも嫌そうではないのが見て取れる。
「凄かったね!!」
「良く分からなかったけど、とにかくカッコよかった!」
姉弟二人は嬉しそうに声を上げていた。
「⋯⋯翆」
「ええ」
二人は突然椅子をガタッと後ろへ倒すほどの力で立ち上がった。座っていた姉弟二人も不意にやられて前へ飛ばされた。
「ママ?」
雪花が見上げると、両親二人の目が麻薬中毒者のようにキマっており、思わず冷や汗をかくほどだった。
「行くぞ!」
「ええ!」
ピューンと子供を完全放置して嵐のようにこの場から去っていた。放置された子供二人はポカンと無言で二人見合った。
「どうしたの?ママ(パパ)」
そう言葉を残して私達の接続が消えかかり、暫くした後、意識は消えていった。一体何の記憶だったのだろうか。そして、一体いつの記憶なのだろうかーーそれを知っているのは本人、またはその時代に生きる者達だけなのである。
と思いきや、スクリーンは一面真っ白。
「あれ?」
「故障したの?パパ!?」
姉弟二人が大慌てでスクリーンに近付いてはバンバン貫通するスクリーンを叩きまくっている。
だがその数秒後ーースクリーンから足音が聞こえる。故障かと思っていた姉弟二人は安堵したように心から嬉しい吐息をこぼした。
「よかった~」
「どうなるかと思った~」
『こんにちは。 今日という日をどれだけ楽しみにしていた事でしょうか』
40代後半らしき中年男性がマイクらしき物を持って真っ白な背景の前に現れた。その後ろではスタッフが急いで豪華なキングチェアのようにもふもふでデカイ椅子が二脚並べられる。
『私はインタビュアーである真城始と申します。この度は皆様の代表という形でここに立たせてもらいます。どうか、親衛隊の皆様はご理解の程⋯⋯どうか、どうかよろしくお願いいたしますね』
本当に心配そうに真城は画面の私達に向かって頭を下げた。
⋯⋯一体どれだけその親衛隊はヤバイ組織なんだか。
『私は今まで25年⋯⋯でしょうか。※※※※という人間を追い続けてきました。 その事を本人に直接話したら、苦笑いで「本当?マジで?」と軽くドン引きでした』
「あっはははは!!25年かぁー凄いね」
「うん、25年も※※を追い続けたからこんなインタビューを引き受けたって事だよね。凄い尊敬の念を感じる」
『今回は、私が愛してやまないーー※※※※という歴史上でもっとも優れた指導者であり、実力者であり、天才でもあり、経営者でもあり、超一流の武術の達人でもあり⋯⋯⋯⋯あり過ぎますね』
ここで家族全員が大ウケ。
みんなが本気で笑う姿が私達の目には映っていた。
『さてーー』
真城の動揺が伺える。
瞳は動揺で大きく揺れ動き、両手も緊張なのかオーラなのか。
⋯⋯真城の両手はとても大きく震えていた。
その緊迫感が見ているこちら側にもズシズシと重石を何百も乗せたように伝わってくる。
『いや~すみません。おそらくもう二度とこうして表舞台に出てくる事が無いとか思うと、凄いですね⋯⋯その、聞こえます?心臓がバクバクなんですよ』
カメラに近付いて鼓動を聞かせようとする真城の姿。
「初代※※様だもんね~そりゃ緊張するよ」
「雪花?当時、この頃はまだ※※になる前のことよ」
「勉強したんじゃなかったの?」と言わんばかりにツッコミを入れる翆。
『すみませんね皆さん!さぁ!ここまで引っ張りましたので行かないとですね!!それでは、今回の真城プレゼンツ──最終回⋯⋯ゲストはーー※※※※さんです!!』
耳が無くなるんじゃないかと思うほど大喝采の中ーー歩いて来たのは、絶世の美青年。
思わず見ていた家族全員が大盛り上がりする程には。
「うぉー!!!!」
「これが初代※※様なの!?」
「ヤバっ!パパよりカッコイイじゃん!!!」
「母上、アンタが見せない理由がよく分かりましたよ」
しょぼんとする父親をみんながフォローする。
「大丈夫だよ!パパもかっこいいから!」
「そうよ!」
「かっこいいよ!」
「そ、そうか?」
白く腰まで伸びた美しい髪。
2mを優に超える体格。
袖を通さない純白ロングコート。
その下は黒いタンクトップ一枚。
ズボンは黒スキニー。
美しいダークブラウンの双眸。
完璧に整えられている目鼻立ち。
もう二度と産まれてこないと言われるほどの絶世の美青年の姿が1000年後の子孫達にも鮮明に、そして映像にしっかりと映っていた。
絶世の美青年はとんでもない覇気を放ちながら、豪華な椅子に優雅に足を組んで座った。
『こっ、こんにちは!!』
近くで見た真城は思わず声が裏返ってしまう。それに※※は軽く吹き出す。
「うわ~本当に存在していたんだ~初代※※様は」
「動いてるよー!ママ!」
いくら憂炎が翆を揺らしても無反応。憂炎はそのまま太もも何度か叩くと意識を取り戻した。
「はっ⋯⋯?」
「ママ?」
「あっ、ごめんなさいね憂炎」
『すみませんね皆さん。本名は伏せさせていただきますが、このまま進めますね』
真城が緊張しながらも※※を真っ直ぐ見つめた。
『初めまして!※※さん!私はインタビュアー真城始と申します!!』
真城が握手を求めて手を差し出す。
『初めまして、真城。俺は※※※※と言う。まぁ多分知ってるよな?あははは』
求められた握手を受け入れて※※は笑顔で返事を返した。
『真城くん、悪いんだけどーー』
※※が何かを言うとしたその瞬間には、まるでわかっていたかのように灰皿を目の前の小さい机の上に置いた。
『タバコですよね?存じております』
これには※※も苦笑い。そのまま対談は続く。
『ふぅ』
煙草に火を点けるだけで、真城は感動すら覚えながら※※を見つめていた。※※がタバコの火を点け終わると、真城がすぐさま話しだす。
『今回は、対談という形でご出演頂いて誠にありがとうございます』
『こちらこそ。まさかこんな形で表に出る日が来るなんて思わなかったよ』
頬杖をつきながら煙草を吸う姿があまりにも美しい。ただそれだけを全員が思いながらスクリーンに集中している。
『先にお聞きしたいんですが、どれくらいのお時間を頂いてもよろしいかだけお教えいただけますか?』
『う~んそうだな~。まぁ、どうせなら最後まで応じるつもりだよ。これは君の努力に免じてという理由だけどね』
※※は軽く笑みを浮かべて真城へと言葉を贈る。
『ありがとうございます⋯⋯!では早速なんですが』
真城は急いで事前に用意していたであろうフリップを机にダンッとおいた。
『えー最初に話したい事は、⋯⋯※※※※さん、貴方にとって最も強いと思う武術をお聞かせ下さいーーです!こちらは愚問だとは思ったのですが、おそらく後に見る事になるだろう視聴者の為にも!是非本人からの言葉で聞きたいであろうと思ってこちらを最初にさせていただきました!』
『おっ、面白い問いだな。う~ん。まぁ、分類分けとしてさ?格闘技と武術というジャンルの話は基本的に会話が成立しない。ルールという設定されている場合、格闘技をしている方が有利だし、ルールが設定されていない場合ーー武術の方が有利だという話は先にさせてもらう』
そう言って※※は煙草の灰を落とす。
『そうですよね。そもそもそのような議論はお話になりませんよね』
『あぁ、そもそも殺す気でやってる武術家と、ルールの上で参ったさす格闘技じゃ話にならん。とまぁ本題に戻させてもらうが、対応力が多い⋯⋯所謂対策の型が多くある武術はあまり強いと感じないというのが俺個人の意見ではある。知識としてあるのはいいんだがな』
『それはまたどういうことでしょうか?』
『さっきも言ったが、武術というのは、単純なんだよ。⋯⋯単純。武術は何のために習得するんだ?相手を殺す為に必要だから習得する訳だ。まぁ例外もあるがな?』
『はい』
『結局のところーー無駄を極限まで省いて最短で相手を制圧させれる武術を強いというのがいいんじゃないかと俺は思う。以前、俺は沢山の技術を学んだ』
『存じております』
『あぁ、それは変わる訳ではないのだが、色々な準備を重ねていた時期があった。確かに、悪い訳ではない。だがな⋯⋯明らかに動きのキレがなくなったんだ』
『キレ⋯⋯ですか?』
『あぁ。意識しないと出来ないことを広く気にし過ぎて、すべての行動に制限が掛かったように遅れる。もしそれが実践なら、俺は負けていただろう』
※※は足を組み直しながら真城にそう語る。
『それは、つまり⋯⋯無意識に出来る事と意識しないと出来ないことがある。そういう事でしょうか?』
『鋭いな。例えば真城、お前は目の前に魔法が、それも上級魔法だ。もし突然目の前に飛んできたら、何もしないなんてことは無いだろ?』
『仰る通りです』
『反射で障壁か⋯⋯それかおそらく魔力を足に流して避けるか。これって意識しなくても出来るだろ?』
『は、はい』
『つまり、だ。こういう類の事は反復の積み重ねで無意識に出来るようになるって事だ。そんなの全然無意識に誰かと喋っていたとしてもそれは変わらない』
『そうですね』
『逆に、戦っている最中に意識しないと出来ないような事。 まぁそれはソイツの中でもいいが、例えば守る奴らが1か所ではなくて複数いた場合の中で戦わないといけないケース。この場合、なんらかの攻撃がどこに飛んでも気にしないといけないし、何より選択肢を永遠に広く持つとーー頭が終わる。これを俺の中では、"意識しないとできない事"に分類される』
『お、おぉ~』
いきなり思いもよらない深い話に真城が驚きながらその後も※※が話す内容を聞き続ける。
『まぁ、ようは人間には意識しなくても繰り返し鍛錬を積む事でできることと、必ず意識しないと出来ないことがの2つがあるっていうことだ』
「うわぁ~これで当時25歳なんだっけ?」
「そうね、だけど考え方は10代後半から何も変わってないんじゃなかった?」
「それ諸説あるみたいだけどね」
真剣に対談を聞きながら夫婦同士で議論を始めている。それを聞いていた姉弟二人も会話に入ろうとした。
「パパ、どういう事?」
「俺もわかんない!」
「ははは⋯⋯。憂炎も雪花もまだ子供だからな。その内分かるようになるさ」
『続いての質問はこちらです!』
"貴方にとっての武術とは⋯⋯?"
フリップの内容を見る※※。内容を理解した瞬間、※※はビールでも飲んだように『くぅ~』と声を出した。
『こりゃ⋯⋯長くなるよ?大丈夫?』
『もう、※※さんのお言葉なら何時間でもやれますよ』
真城は大ウケしながらツッコミを入れている。
『まぁちょっとは省くかな。まぁ、皆さんは知っているかはちょっと分かりませんが、俺は昔から武術という言い方だけではなく、"武道"という言葉も使います。"武術"というのは、戦う為の術であり、相手を殺す為のモノです。
しかし武道というのは、そのやるモノを通じて人間として完成を目指す⋯⋯という2つの言葉があるんです。俺はどちらも好きなんです』
『へぇ~!私は武術だけなのかとてっきり思っていました!』
『だよね。まぁ戦う事ばかりのこの世界だと、それを通じて~とか言われてもって感じだよね』
『『あははは』』
『まぁこれは、もうずっとの話なんだが、ここ数年⋯⋯ひっきりなしに俺の元に貴族やら、~の長だー!だの、~国の皇帝だと自称する奴らが俺の使っている武術や戦い方を教えて欲しいと来るんだ』
『それはそうでは?貴方ほど戦場で活躍した人も少ないのでは?』
『まぁ、それもそうか』
ハッとしたように※※は軽く微笑む。
『断ったのにもかかわらず、俺にわざわざ金を払ってまで教わっている者が数人いる。みんなが『憧れで』『強い』『かっこいい』と称賛の声を聞いた。だが俺の解釈では少し違うようにも感じるんだ。
それは、色んなことを言ってきた全員は結局のところ──俺が教えた動きを通して自分を表現したいだけではないんじゃないのかってことだ』
『いや、流石に貴方なくして学ぼうとは思わないはずですよ?』
『俺は先程上げた二通りの考え方を持っている。その上で言うと例えば絵を描く者は、"自身が描くモノ"を通じて自分という表現をしているだろう?"騎士は忠誠という生き様"で自分という表現を見せる。俺はそれと一緒だと思う』
『つまり、貴方の凶暴過ぎる技を皆が必要としたということですね』
『あっははは。そうかもしれないね』
上品に煙草を吸いながら声に出して笑う※※。※※にウケた真城は嬉しそうに※※の話を聞き続ける。
『まぁしかし、だ。俺が教えているモノが彼らにどう伝わっているかは正直なところ確信を持ってはいない。 だが俺が少なくとも彼らに教えている事は、俺がやっている武術という枠を通じてーー自分⋯⋯つまり行き着く先は己を知るということを伝えているつもりだ』
『貴方の凶暴な武術で?』
『勿論』と※※は頬杖をつきながら頷く。
『まぁ俺が言いたいのは、彼らが俺に金を払ってまで得たい物は、本当のところーー戦う力ではなくて、私の武術を通じて"自分"というモノを"動き"を通じて表現する為なんだよ』
『強さを得たいのでは?私のような素人からすると、貴方は強い。これまで幾度も英雄と呼ばれるようなお方を直に見てきました。しかし貴方はその歴史に並ぶような偉人達と比べても、あまりにも異質過ぎる。通常なら一つの分野で活躍するのが限界点なはずです。しかし貴方は、いくつもの分野でそれを行います。"その"レベルで⋯⋯です』
『俺はね?真城。何故一つしか出来ないのか⋯⋯って事に疑問を抱いたんだ』
『疑問?ですか?』
『あぁ、俺のすべての原点は──"疑問"なんだよ。「なぜこうなるのかな」「ではこの場合は?」あらゆる疑問を私は人生を通じて解決したに過ぎないんだ』
『私のようなレベルでは全く理解できません。言っていることがわからないという訳ではありませんよ?しかし、皆がそれを行おうとすれば、必ず破綻してしまうのですよ。貴方はそれがない。解決し、すぐに違うことさえもやってのけてしまうのです』
『ん~、しっかりと解決すればできると思うんだよね。皆はきっと、すぐに飽きてしまうというのが本音なのではないか?』
『それは事実かもしれません。しかし私達には理解し難い問題です』
『そうだな、俺には時間が無かった』
『時間?ですか?』
『俺は生まれてからずっと、時間がなかった。特に、親戚に引き取られてからは。毎日意味の分からない事でギャーギャ~騒ぐ兄弟。まるで人間とも思わないような顔で見下し、陰湿な虐待をする女達。俺にはずっと⋯⋯時間と余裕が無かった。
そのせいか、1人になったその瞬間から、俺は1秒たりとも時間を無駄にしたくはなかったのだ。そのせいだろうね』
『貴方のような方にも⋯⋯そんな過去が』
『あぁ。皆が言う。「お前は優れた遺伝子を持っているからそんな事ができるんだろう」「お前はたまたま天啓を授かったのだから神様にでも感謝をしろと」⋯⋯な?面白いよな?誰も飽きずにここまで来たことすら気付かずに、ただ才能や遺伝子ばかりを指摘している。
⋯⋯素直に悲しいと思ったよ。何故そんな事ばかりを気にするのだと』
『私は、少し理解できてしまいます』
『真城君はその者らの気持ちを汲み取れるのか?』
※※は興味深々な様子で真城に目を向ける。
『はい。私は才能がありませんでしたから。ただこうして⋯⋯貴方の追っかけをするくらいしか頑張れることが無かったのです。 戦う才能や、人を導くような才能。金を稼ぐ才能に、人を癒せるような美貌や会話の術、私にはどれも持っていませんでしたから──全部否定したいんだと思います』
『俗にいう相対的貧困ってやつか?』
『まぁ、私のようなタイプにはそうなりますかね。結局⋯⋯比べちゃうんですよ』
『まぁ仕方ない部分もあるだろう。俺のいた所でも、親ガチャなんて呼ばれるものがあったくらいだ。それくらい環境や親という存在は大事だからな』
『世には私のような、才能がなくて死に頼ってしまうような人間も多数いると思います。その方達に向けて何か言葉をお願いします』
『突然!?』
二人が爆笑しながら、手を叩いたのち、※※はカメラに近付く。そして※※はその場でしゃがみ込み、話を始めた。
『俺も小さい頃ーー何度も死のうと思った』
初手にありえないくらいの告白を聞いていた真城がガタッと椅子を後ろに倒しながら立ち上がる。
『俺はさ、生まれて4歳くらいかな。親戚に引き取られたんだよね。さっきも少し話をしたけど。毎日罵られたんだよ。「お前は悪魔だ」「お前は存在してはいけない子供なんだ」「死ね」って、毎日言われたんだ。
意味わかんねぇだろ?何にもしてねぇただのガキが、得体の知れない親戚に毎日そんな罵詈雑言を真っ白い何もない部屋で言われ続ける苦痛。そん時は本当⋯⋯毎日何の為に生きてるのかまじで理解できなかったし、殴られて、蹴られて、食事も意味不明な献立ばかりでさ。
⋯⋯どうだ?こんなの聞いたところで、親ガチャハズレだと思うか?まぁハズレだろうな。多分普通のやつは「可哀想」「辛いね」とか言ってくれると思うんだけど』
そう言って※※は煙草に火を点け、そして穏やかに微笑む。
『本当に辛い奴はーー多分何も響かないし、多分何も思わない。俺がここで何を言っても、多分また、同じことを繰り返す。だから、そんな糞だなと思う人生を変えてくれるような⋯⋯もっと言えば、クソな状況でも楽しいと思えるような何かを見つけたらーーきっとお前の人生も変わるだろう。来ると思うか思わないかは勿論お前次第だ。だが、「引き寄せてやる」くらい信じてやらなきゃーー一生好転する事はないということだけ伝えとく。
⋯⋯俺の言葉は以上だ』
無言の空気の中、映像の中からは沢山の拍手が巻き起こった。
『さて、続きをやりますか』
『そうですね!ありがとうございます』
*
そうして対談が続いていき、いよいよ最後のフリップが置かれた。
『貴方にとって強さとは何でしょうか?』
『最後にしては、随分と難しい問いだな』
『すみません※※さん。やはり見ている後の子孫や現在視聴しているあのお方達も、きっとそこが凄く気になっている事でしょうから』
『おや?』と真城が苦笑いを浮かべながらある画面を見つめていた。
『ほら※※さん、隠された五の太陽さんから魔導書が贈られてきていますよ』
『あ、本当だ』と※※も笑みをこぼしながらその画面を見ていた。
『それでは※※さん、是非最後にお願いします』
『そうだね、強さというのは凄く抽象的で、凄く難しい。勿論意味は分かっているよ?だが、強さというのは非常に難しい問題だ』
『そうですよね』
※※は頬杖をつきながら、ゆっくりと噛みしめるように強さについて考えていた。
──10秒、20秒。
美しさと色気がただ漏れな※※。
最終的には1分が経過した時、※※はゆっくりと話しだした。
『やっぱりしっかりと話しておいた方がいいかな』
『え?』
『俺はね?真城君。強さというのは主に2つあると思っている。概念レベルのような大きな意味合いでね』
『それはどういう意味でしょうか?』
『俺は昔、強くなる為に様々な努力をしてきた。その為に最初に始めた事は──動物を見るという事だった』
『動物を?一体どういうことでしょうか?』
『人間は知恵がある。だから色々な遠回りをしてしまうことが多々ある。 だが、力という面においては、動物は努力をせずにその力を当たり前のように振るっている。だから動物を観察して何故強いのかを直で確認したかったんだ』
『当時だと⋯⋯』
『まだ6歳とかだったかな』
『はっ』ともう色々な意味で笑うしかない真城はマイクを降ろして呆れた笑いを見せる。
『そんな6歳の子供が、熊やライオンなんかを観察して何を得たんでしょうか?』
『俺は一緒の生活リズムをとってみたんだ。寝る時間、食事、戦い方から威圧の仕方までも⋯⋯本当に全部。真城、俺達は例えば闘うとき、情報があるせいで両手を構えるだろ?だけど、ボクシングみたいに動物が構えなんてとると思うか?』
『いいえ』と相槌をうつ真城。
『だろ?防御なんてしない。⋯⋯正に本能で戦うということを俺は当時意識していた。結果として、その試みは後の俺にとっては大成功であり、自分という人格の最初に作られたモノだと思う』
『つまり、貴方の強さとは⋯⋯本能である。ということですか?』
そんな真城の言葉に、※※はにんまりと笑う。
『違うんだよ。それも強さであるけどね。俺はそれから時が経って7歳』
時が経って7歳ってwと言っているような表情で真城は話している※※の話を聞き続ける。
『俺の武術の根源とも言っていい最初に衝撃を受けた武術は中国武術だった。
後に俺は殆どの動きを覚えることに成功したがな。 それでその中でも最初⋯⋯俺がたまたま教えてもらったのが意拳だった。⋯⋯まぁ過程は良いだろう。それから何十を超える中国武術を学んだ。国なんて関係ないーーどれも素晴らしいものだった。「達人」という一定以上の実力者と話す機会があった。それに直接指導という機会も。
彼らが俺に見せてくれたどの動きも──1ミリのズレもない無駄を極限まで省いた完璧なモノばかりだった』
『※※さん、もし良ければ、意拳の強さを見せてもらえませんか?』
申し訳なさそうにしながら真城がそう言うと『おう、いいよいいよ』と軽く立ち上がる※※。
『まぁ、意拳がどうってよりは、中国武術を通して立つ力を意識することが圧倒的に多くなった事だ』
『立つ力?』
『あぁ、押してみてくれ』
立ち上がった真城の肉体は流石の一言だった。※※を追いかけているだけの事はある。
肉体は年齢と比べても圧倒的に良く、拳の他にも様々な局所に普段から武術の鍛錬を積んでいるのが伝わってくる。
⋯⋯だが。全力で正面から押す真城の口からは踏ん張る声しか聞こえない。 反対に※※は、普通に仁王立ち。 もはや真城が忖度して触ってるくらいとしか思えない力なのかと錯覚するような表情と態度。
『ハァ、ハァ⋯⋯ビクともしないです』
『だろ?逆に、だ』
『え──』
片方は直立で耐える側ともう片方の人間は押すという一連の流れを逆転させる。
※※は片手で全力で踏ん張る真城の正面からタイミングをずらすなどの小細工を一切せずに、ポンと軽く押すような動作を行った。
『うおおおお!!』
一気に立っていた場所から5メートルは後ろに吹っ飛んだ。画面外に待機していたスタッフ達が真城に怪我をさせないように背中を守っている。
あまりに見た目と威力の差が凄く、真城は驚愕の笑みと『やはり』というような感嘆の吐息を同時に漏らした。
『これが』
『あぁ、立つ力というのはそれほど大事だということ。そして、中国武術にはもっと色々な事が動きの中に隠されている。そしてーー達人という者達と交流した後、俺は一つの強さに気付いた』
二人は座り直し、煙草を吸い始める。そんな※※は天を仰ぐような表情でそう続けた。
『一糸乱れぬ正確性⋯⋯つまり、機械のように正確で無駄のないモノが強いということ。これが俺の得た次の強さだった』
『機械のように正確⋯⋯それが2つめの強さですか。では、貴方はその2つでここまでこれたーーということでしょうか?』
『まぁ、皆は信じてはくれまいだろうが、哲学書や武術の書物だけではなく、あらゆる本を読み、そして実行に移した。
そして、果ての果て⋯⋯俺が最後に辿り着いた答えーーーーそれは陰陽一体』
『二つの話ですか?』
『あぁ』
『太陽と月』
『黒と白、善と悪、表裏一体。受け取り方は何でもいい。俺はーー気付いたんだ』
そんな※※の言葉に一呼吸おいて、真城は尋ねる。
『何にでしょうか?』
『勾玉の白、あれは機械的な強さをであると。そして黒い部分は、人間の心ではないかと』
無言で※※を見続ける真城。
『ど、どういう意味でしょうか?』
『俺は、人間という生き物に疑問をある日感じた。進化論というテーマの時だ。「そんな簡単に進化なんぞするか?と」なら何故今の生物は変わらん?と』
『はい』
『何者かが⋯⋯という陰謀じみた言葉を続けるつもりはない。答えは俺が知っているからいいんだが、今回とは話がズレるからな。 そんで、知能があるだろ?人間は』
『勿論です』
『もし、自然にいる中で、知能を感じてしまう光景は「不自然」に見えるだろ?』
『⋯⋯はい』
『機械的な強さは確かに強い。しかし、人間味がなさ過ぎて「不自然」に見えるだろ?一方で動物的な本能の強さというのは「自然」だが「動物的すぎる」ということだ。俺達人間は知能を持った生物で、「動物」だ。獣と何ら変わりはない。 そして人間は汚らわしい感情を持った生き物でもある。それは何色でも染められるが、幾度の願いや心で最終的にはどす黒くなってしまう。もう何をしても青や赤にはならない。 だが、黒くなるまでの期間を長くする方法があるだろう。俺達人類はーーまだまだ舞えるはずなんだ。何処までも強く、気高く、己を完全に掌握出来るはずなんだ』
※※がそう真城へと語りかけ、黙って真城も頷いている。
『正確さと極限まで無駄を省いた機械的な不自然さと感情がもたらす動物本来の自然さ。この2つを完全に溶け合うように混ぜ合わせた存在。⋯⋯それが人間の真の姿であり、強さの終着点だと俺は信じている』
※※は最後にそう語った。真城はその後も疑問を抱いた箇所について深堀する形で追求していった。進んでいく対談の時間はあっという間に過ぎていった。
そして最後──。
『それでは※※※※さん。私は貴方の偉業を知っています。きっと沢山の子孫が現れることでしょう』
『やめろやめろ』と※※は片腕で払う。
『むしろ貴方のような人の遺伝子が後世に残らないほうが問題でしょう』
『俺みたいな奴の遺伝子なんか残ってどうすんだよ』
『やめてくださいよ~※※さん。代表の私が後で殺されてしまいます』
苦笑いをしながらツッコミを入れる真城。※※も『そうなのか?』と半笑いの表情を浮かべる。
『さっ、ここからは登録チャンネルでの実践向き解説を⋯⋯と』
途中で気付いたように真城は息を整えた。それは自分が後の歴史に映ると直感的に感じたのかはわからない。
しかし、真城はインタビュアーとして、※※へと真剣にマイクを向けた。
『ここで、※※さん。肝心な事を忘れていました。続きですが、後の子孫や貴方の意思を引き継いだ者がいるはずです。未来の子らに何か一言お願いします』
※※は一瞬困惑した様子だった。しかし数秒もすると真城からマイクを受け取ってカメラへと視線を向けた。
『そもそも俺がどんな未来をお前達に残しているのかは⋯⋯正直分からん。もしかしたら史上最悪な男になっているのかもしれないし、天国かも知れん。崇拝なんて俺にする必要はない』
『だが、お前達は新たに生命を得た。それで十分だ。この星でどう生きるのか──この星でお前達がどう変えていくのか。⋯⋯俺は非常に興味がある』
そう話す※※の表情は徐々に口元を歪ませる。
『俺はお前ら後世の者たちに何も求めない。だが、観察はさせてもらう。 あっちであった闘いのように。真っさらになったこの世界でどうお前達が生きていくのか、俺はーーいや、「私は」楽しみにして待っているよ』
そう言い残して真城にマイクを返した。
『ありがとうございました!いやいや、非常にワクワクするような言葉でした!考察が捗りますね~』
『考察なんてするな』
ケラケラ笑う※※。すると真城はすぐに別の準備を始めている。
『それでは!こちらの会員様の皆様には、対談とは別に、実践向き、「※※式」の有効的な使い方のご紹介とさせていただきます!それでは皆様──またいつかの時に~!』
真城と※※はカメラ目線で手を振って対談は終了した。
*
映像が止まり、暫く家族全員の言葉が止まっていた。
それがどんな感情かは私達には分からない。
しかし、少なくとも嫌そうではないのが見て取れる。
「凄かったね!!」
「良く分からなかったけど、とにかくカッコよかった!」
姉弟二人は嬉しそうに声を上げていた。
「⋯⋯翆」
「ええ」
二人は突然椅子をガタッと後ろへ倒すほどの力で立ち上がった。座っていた姉弟二人も不意にやられて前へ飛ばされた。
「ママ?」
雪花が見上げると、両親二人の目が麻薬中毒者のようにキマっており、思わず冷や汗をかくほどだった。
「行くぞ!」
「ええ!」
ピューンと子供を完全放置して嵐のようにこの場から去っていた。放置された子供二人はポカンと無言で二人見合った。
「どうしたの?ママ(パパ)」
そう言葉を残して私達の接続が消えかかり、暫くした後、意識は消えていった。一体何の記憶だったのだろうか。そして、一体いつの記憶なのだろうかーーそれを知っているのは本人、またはその時代に生きる者達だけなのである。
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