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異世界転移編

34話 E級ダンジョンへの道のり

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こんにちは!作者太郎です!
いやーこれを書いているのが台風の夜中なので、雨音がクソうるさい中楽しく書いています!笑

今回先にこうして前置きさせて頂くのは、主に1回読んでいただいた皆様に向けてです。

おそらく流れがある程度分かっているとは思いますが、あの時はマジでテンポというか、(今後あり過ぎるイベントを想像した結果を考慮しても)多分早い方がいいんだろうな~と思って滅茶苦茶カットしました。

全員にわかる言い方にするならば。

"最後まで並んでいるこの小説ストーリーを更に作者が改悪してしまったというわけです!!"

そういうわけなんです。
おそらく既読の方々はこう思うでしょう。

「何のこと?」
「そもそもここそんなに大事?」

分かります。
クソ反省した作者は今回は全部あるシナリオを一つずつ丁寧に進めようと考えています。

"結論──全部クソ大事です笑"

はい。長くなるのは嫌なのですが、この勇者sideが終わると、ガゼル君はある街へと向かいます。

そこで色々違う方面で活躍を始めるのですが、そこも含めて既読の方々は色々ん?、ん?となってしまうと思って前置きをさせていただきました。

本当はこの段階でこれをやっていた。
ちゃんと裏ではこういう事をしていたなど⋯⋯etc.

そこら辺をしっかり書こうと思っているので、少々混乱するかもしれませんがご了承下さい。

作者太郎はここに土下座を表します_|\○_

すみません!それではまた何かあれば前置きさせていただきます!
とうっ!



**

 それから数分後、召喚された勇者達は全員一同に食堂へと集められた。中々広いスペースの食堂で予め用意されていた席に各自座る神宮寺率いる二年六組の生徒達。

5人で一テーブルを分け合う形で構成されており、そのうちの一つである神宮寺達⋯⋯敢えて言うなら陽キャグループの一軍だろうか。そのテーブルではたまにサボり外へと飛び出していた生徒が居た。

「よっ!龍騎!」

名前は浅利渉。
そこには食堂の窓枠で泥棒のようにしゃがみながら神宮寺達を呼び手を振る姿があった。

⋯⋯彼の職業は"狩人"という三次職業である。

 見た目と職業のシンクロ率がかなり高いと言われている程見た目が野生的で、暴力大好き!と言わんばかりの体格をしている。
 だがしかしそれでいて狩人に必要な繊細な筋肉も兼ね備えている少年である。

父は自衛隊の特殊作戦群の一員で、今も自衛隊に属しているらしい。その息子のせいか、素行も言うほど悪いわけではない。

バックにはかなりの大物が付いていることから、この学園に入学が決まった。

「渉、結構外に出ていたな⋯⋯今回は」

視線を動かさず神宮寺はそう口にする。

「えっ?だってさ~案外何度も見つかってるせいもあってか⋯⋯結構警備がキツイんだって~」

「よっと!」と狭い窓枠を潜り抜けて食堂の中へと降りて神宮寺の隣へと座った。

「こっちは情報が無くてかなり苦労したんだぞ?渉、お前の為に数人の食事を用意させてるんだーーその分の働きはしているだろうな?」

みんなが思い浮かべる爽やかな少年、神宮寺。そんなイメージを一気に覆せるほど神宮寺の目つきは鋭くなり、渉へと痛いほど刺さる。

「はいはい。こんな一面を知ったら、アイツらはどう思うんだか」

神宮寺の威圧を軽々流し目の前に並べられたお盆に乗っている1食分の食事をここぞとばかりに口へと放り込む渉。

乗っている食事の半分以上が無くなると近くにいる取り巻き連中の一人である山下がもう1食分の食事を持ってくる。

「美山が持っている魔法の一つだ。先週出された食事分で、もう一枚はサービスだからな」
「あぁ~うめぇ!!あいよ、ありがと⋯⋯ヤマピー!」

渉は神宮寺に返事をしてから山下を見上げて礼を言い、山下はその明るい言葉に若干嬉しそうにしている。

「はぁ」

大きく深呼吸をしながら隣に座る渉を見つめる神宮寺。

「それで?今回のぷち遠征の成果は?」

真顔である神宮寺の問いに渉は無視して食事を続ける。

「はぁ、意地でも飯が優先ってわけだな。本当に変わんないな渉は」

そう言って背もたれに寄りかかりながらブツブツ呟く神宮寺に取り巻き達が笑う。


それから数分が経ち、しっかりと両手を合わせる渉は「待たせた」と言ってすぐに数枚の紙と謎の鞄を取り出した。

「龍騎、今回の遠征はかなり有益なものが得られたぞ」
「ほう?これは地図⋯⋯か?」

渉はチラッと神宮寺を見てからすぐに頷く。

「これは?」
「どうやらこの国で言い伝えられている聖剣の在り処と、その条件だ」
「⋯⋯!」

目を大きく開いて驚く神宮寺と口を塞いで必死に声を抑える取り巻き達。

「勇者であること、レベル条件?これはまぁ分かる。要は勇者でかつーー強者である必要がある。だが────白い魔力●●●●を持つ者?なんだ?それは」

神妙な面構えで顎を触る神宮寺。

「龍騎、これは俺の勝手な予想だが」
「話してくれ」
「これは魂のことを言っているんじゃないかって思うんだ」
「魂?」
「あぁ。簡単に言うと俺達で言うスピリチュアルに近い話で、オーラが見える奴らとかテレビでいただろ?」
「居たな」 
「それってその人の魂がっていうことをどの視える人達は言ってたように、この世界で言うソレは魔力なんじゃないか?おそらくだが、真っ白い魂を持つ者ーーそれが聖剣を抜く為に必要な条件だって事だと俺は結論付けた」

神宮寺はその話を黙って聞いていた。

'⋯⋯⋯⋯'

何かに気づいたように神宮寺は無言で溜息をついた。

「龍騎?」
「いや、何でもない。ありがとう。それで他には?」
「あぁ~最近どうやら面白いニュースがあったんだと」
「例えば?」
「トラシバの街は知ってるか?」
「確かここからすれば地方だろう?地球で言うところの青森とか」

真剣な神宮寺の返答に思わず吹き出しながら笑う渉。

「まぁまぁ間違いではないんだけどさ。もうちょっと近いかな、まぁそんなことは良くて。
どうやらーー魔王軍がそのトラシバを侵略しようと進軍したらしい」
「⋯⋯それは本当か?なら、一大事件じゃないか」

神宮寺は緊張を表情に出しながら渉の言葉を待っている。

「いいか?」

渉はそのまま神宮寺を含めた取り巻き達の肩を掴んで中央に引き寄せた。それは傍から見れば突然円陣を組んだかのような状況。

「どうしたんだ?」
「これはまだ王都に流れていない現地の情報で、俺の命とその周りにも被害があるかもしれねぇーー誰にも漏らさないと誓えるか?」

取り巻き達はすぐにウンウン頷き、神宮寺も続けて頷く。

渉はゆっくりと呼吸を整え、あることを口にし始めた。

「どうやら、その進軍は失敗に終わったらしい」
「何故だ?騎士団が向かったとかか?」
「一人────」
「何?」
「たった一人──。たった一人の人間がその進軍を終結させたんだ」

次の瞬間、食堂には耐えられなくなった取り巻き達が叫んだ。

あまりの声量に全員の視線が集まった。

「ばかッ!声がデケェよ!」
「わ、悪い渉」
「それで?名前は割れてるのか?」
「流石にそこまでは教えてくれなかった。だが、今じゃその人間と周りにいた数人の人間達はーーすんごい事になってるらしい」
「というと?」
「"英雄"さ、"英雄"。その人間達、裏ではトラシバの英雄だなんて呼ばれてるんだと。本人達には内緒で神格化すらされてるらしい」

嬉しそうに渉は語る。取り巻き達はへぇ~と流し半分に聞いている中、神宮寺はやられたと言わんばかりに考え込んでいた。

'くそっ、なんでこんな時期に英雄が現れてるんだよ。王都にその噂が届くのは時間の問題だ。そうなれば俺達勇者の印象がガクンと落ちちまう'

「そうか。情報ありがとう。後の小さい事なんかは遅らせて手紙にて届けてくれ」
「了解」

軽いノリで敬礼の仕草を見せて元通りに座る神宮寺達1軍。

そこから数分後、廊下から重い金属が歩くような音が複数耳に入り、全員が背筋を直す。

ガチャン。

扉から入って来たのは、数人を率いる騎士。先頭にいるのはとんでもないガタイにどこか威厳のあるオーラを醸し出す男。三十代後半から40代前半の年代のような背格好をしているが、茶色と金の間のような髪色の短髪だ。

そしてその男はーー豪快に笑いながら勇者達を一周見渡して口を開いた。

「今日もお疲れ様でした勇者殿!」

男の言葉に無言で1回軽く頭を下げる勇者達。

「いやぁ、今日一日部下に色々指導を任せたんだが⋯⋯問題はなかったかな?」

男は一番前にいる一人の少年尋ねた。
返事は勿論縦に一回頷くだけ。

「そうかっ!なら良かった良かった!ガハハハ!」

男は少年の返事を見て豪快に笑ってみせた。

「⋯⋯それじゃ、いつもだったら何も話すことなく終わるんだが、今日は伝えるべき事がいくつかある」

男の言葉に食堂中に困惑の声が流れた。

少年少女達が召喚されてからおよそ一ヶ月弱。
正確にはーー 一ヶ月と21日。

実は召喚されてから──少年少女達の中で変化が生まれていた。

⋯⋯それは何か?

それは主に時代背景と貴族制、そして優生思想である。

現代地球ではやっとの事社会に女性の進出であったり、もはや最近ではーー男より女の方が優遇されているなどなど⋯⋯。
 
色々言われている中ではあるが。

この時代にはそんな概念は無く、もれなく男尊女卑である。

いくら召喚された勇者だろうと、女子生徒達への対応はかなり酷いものがあった。

流石に謁見や大衆の目に映るところではそんな所は微塵も存在しないが、例えばこの食堂。

男が先に食事が出されるのは当たり前。

男は食べ終わればそのまま帰れるが、女は食器洗いをしてから帰らなければならないなど、かなり待遇の差が存在している。

⋯⋯そして貴族制。

全員が肌で感じるのには時間が掛かる事ではあるが、割とすぐに対応するべき問題だった。

来客する貴族に対してのマナーが何もなっていなかったりする。そのせいで全員が先にそういう社交界で必要なマナー講習を受ける羽目になった。

話せば長くなるが、約二ヶ月。
少年少女達の価値観が段々とこの世界に馴染みつつあった。
⋯⋯習慣とともに。

そしてこういう上の立場にいる者から話がある時は、もれなく悪い知らせが多い。その為少年少女達の反応が暗いのはそういう側面があったからだった。

「まず一つ目だ。二、三日以内に急遽ダンジョンに挑んでもらうことになった!」

『えっ?』
『確かダンジョンに挑むのはまだ数ヶ月先って』
『嘘だろ?』

男の言葉でクラスメイト達にどよめきが起きる。
だがそんな中ーー。

「神宮寺殿?何か質問が?」
「一つ尋ねても良いでしょうか?」
「構わん。ドンドン聞いてくれ」
「当初の話では⋯⋯2ヶ月後だったはずです。何故急に?」

'恐らくーー俺の予想なら'

「秘匿情報にはなるんだが、勇者殿ならば仕方がないな。ついこの間、魔王軍がトラシバという地方街へと進軍したとの情報があった」
「⋯⋯っ」

『まじかよ』
『まだ来てからたったの一月で?』

「終結へと向かったはいいのだが、あの魔王軍がこれで終わるだなんて我々は微塵も考えてはいない。いつ別戦力が王都へと来るかもわからないからな。確かに勇者殿からすれば非常に迷惑な話だとは思うが、出来るだけ早く実戦に近い経験を積ませようと考えて出来た結論だったのだ。もし何か意見があれば参考にさせてもらう」

男の話を聞いた神宮寺は「いえ」と座り直し再度話の続けを聞こうと目を向けていた。

'やはり予想通り⋯⋯か'

「⋯⋯」

そんな神宮寺の反応を見た男は何かを察したのか、突然聞かれてもいない話を続ける。

「ちなみにだが、今回のトラシバの街侵攻はーーおよそ10万以上だったそうだ。私の立場としては、勇者殿達もいずれそれを全滅させるような力を手に入れて欲しいものだがな!がハハハッ!」

笑いながらそう言う男にクラスメイト達は引きつりながら笑い返す。

⋯⋯「 そんなの無理だろう」と。
だがそんなクラスメイト達の考えはすぐに打ち砕かれる。

「そしてーー私が今言ったことをやり遂げた人族が今回いたらしい」

満足そうに微笑みながら笑いかける男。
クラスメイト達から表情が消える。

「その男は勇者殿達とはそこまで変わる事のない年若い少年らしい。その一人の少年はあり得ないほどの力を見せてたった一人で魔王軍を討ち滅ぼしたらしい」

ザワザワと騒がしくなる食堂。
後ろで聞いていた団員達も初耳の情報で思わず顔を歪ませていた。

「いずれ勇者様たちにもそんな頼もしい功績を掴んで頂けるようにこれからも鍛錬を付けていきたいと思う!」

"そんな男の言葉に今まで以上に過酷な状態になるのではないか"

⋯⋯そう緊張感が取れないクラスメイトたちの表情がそれを物語っていた。

「はい」

シーンと静まっていた食堂の雰囲気の中、一人の女子生徒が手を上げていた。

「天道殿、何かな?」
「秘匿情報ということでしたので、もしお答え出来ないという事であれば構いませんが、一つお尋ねしても?」

「勿論!」と男は気持ちのいい返事を天道へと返した。

「では、その十万という途方もない数の侵攻を滅ぼした男の名前と特徴を教えていただいてもよろしいでしょうか?」

『天道さんが興味を示してるぞ?どういう事だ?』
『いつも一人でいるのに珍しい事もあるんだな~』

クラス中が驚いている中、神宮寺は明らかに不快と言っているほど目つきを歪ませていた。
そんなそれぞれの思惑は除いて、男は返答した。

「本来は伝えるべきレベルの情報ではない。しかし勇者天道殿の質問とあっては仕方がないな」

何処か意味深な男の言葉に天道がピクッと眉を上げる。

「特徴は白髪。身長はおよそ170メル。偵察の女達が一目惚れする位には外見が優れているらしい。瞳は暗い茶色。目鼻立ちは完璧らしい。見ればすぐにわかるとのことだ⋯⋯そして名をガゼル●●●というらしい」

男の言葉が締めくくられると、クラス中が笑いに包まれた。

『おいおい!まさかカッコイイと思ってそんな名前にしてんのか?中二病もいいところじゃん!』
『アニメの見過ぎでどうかしてんじゃね?』
『まぁまぁ趣味はいいんじゃないか?』

クラスメイト達の様々な意見が流れている。
だがそんな空気も束の間。

「⋯⋯⋯⋯」

圧倒的な威圧感のある天道の怒りが全面に押し出され、クラスメイト達が思わず背筋を直して一斉に目をそらした。

天道は笑っているテーブルに向けては"殺す"と言わんばかりに殺気を向け、全テーブルが静寂に包まれた。

「ゴルド団長、失礼しました。煩くしてしまって」

天道が満面の笑みをゴルドに向ける。

「あ、あぁ⋯⋯そ、そんなことも~あるよな!」

'女ってやっぱり怖い──まるでかみさんを見てるようだ'

ゴルドは脳裏に自身の妻を思い浮かべながら天道の返しを穏便にしてかえした。

だがその直後、ガタッと椅子が後ろへ倒れた。
神宮寺が立つために勢い余って後ろへと倒してしまった。一瞬動揺を表情に出す神宮寺だったが、すぐに平静を取り戻し、クラスメイト達に言葉を投げかける。

「みんな!やっぱり俺達は今のままじゃ駄目だ!ダンジョンというチャンスを活かして更に実力を上げていこう!みんなで力を合わせて行けば、どんな困難も乗り越えられる!」

『そうだよな!』
『神宮寺君の言うとおりだ!』
『よっしゃあ!ダンジョンに向けてもっと頑張らないと!』

神宮寺の鼓舞した言葉の数々がクラスメイト達に響き、やる気に満ち溢れ始めた。

ゴルドもその様子を見て「ほう?」と感心したように見つめ、周りで見ていた団員もそのやる気を受けて更に量を増やそうと考えていた。

「それでは!近々行われるダンジョン攻略に向けて今日は一旦休息とする!これにて解散だ!」

そう言ってゴルドは食堂から立ち去り、近い内に訪れるダンジョン攻略を楽しみに待ちわびるのだった。

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