なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う

ちょす氏

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二章

26話:調査レポート

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 「煌星どうしたの?そんな急いで」
 「いやっ⋯⋯さっ⋯⋯」

 ゼェゼェと息を切らしながら、俺は友梨さんに事情を説明した。自分が誰か知らない人に間違えられた上で襲撃され、返り討ちにした後、ビビって急いで家まで帰ってきてしまったという話を。

 「名前⋯⋯なんか言ってた?」
 「名前? 確か椎蘭志遠って言われたんだよね。全然誰だか知らないんだけど」
 「へ、へぇ~」

 何やら知っていると言いたげな顔をしている友梨さんだが、とりあえず後でいいっしょ。俺は自慢げにレジ袋を覗きこむ。

 「あ──」

 最悪だ。振り回したせいで、買ったチキンが台無しになってしまったじゃないか⋯⋯折角、友梨さんと一緒に食べるつもりだったのに!

 「そのまま持ちながら戦ったんだ? 凄いね」
 
 あー最悪。レジ袋置いて戦えばよかったァ!!!

 「折角友梨さんと食べようと思って買ったのに⋯⋯」
 「まぁ食べれるんだから貰うよ」
 「ごめんねぇ⋯⋯」
 「全然いいよ。でもそれよりもさ、その襲撃してきたっていう女の容姿とかスキルとか知ってる?」
 「それなら本人が饒舌に喋ってくれたよ。正義の審判者って奴で、頭上に名前とカウントが出るらしいんだけど、そのカウントが殺人カウントって言うんだよ。で、どうやら俺の頭上には椎蘭志遠っていう名前と、二万と少しのカウントが出てるって事で俺を悪人だと思って攻撃したって堂々剣を向けて言ってきたんだよ」

 友梨さんがおもむろに電話を掛けている。多分五香さんかな?

 「五香さん?ちょっと話したいことが⋯⋯はい。明日、すぐに向かいます」

 会話は僅か数秒で、終わると何事もなかったかのように話を続ける。

 「とりあえず明日五香さんにこの事をしっかりと直接伝えてくるね」
 「あ、それは助かるよ。ありがとう」
 
 俺はそれからしばらくダラダラと過ごしたまま数日を過ごした。


 ***


 「失礼します」
 「三神くんか?」
 「そうです」
 「入って」

 五香がそう言うと、三神が入ってソファに深く座った。

 「珍しいね。わざわざ直接来るなんて」

 いくつかの書類を机に準備する三神に五香はヘラヘラした様子で声を掛ける。

 「ちょっと気になる情報がありまして。五香ギルド長の情報網が必要かもしれないと思いまして」
 「というと?」
 「まぁこちらが数カ月の黄河煌星さんに関わる情報です。まぁ観察日記だとお思いください」

 ほうほうと出された分厚い書類に目を通す五香。

 「だいぶ私情が多いけど、コレ」

 ヒラヒラ書類を向けながら苦笑いで突っ込む五香。思わず三神も恥ずかしそうに視線をそらしながら言う。

 「正直──滅茶苦茶タイプです」
 「そりゃそうだよね!? 分厚すぎるよ?この量は」
 「職務じゃなくてもかなり嬉しい限りです」
 「給料減らそうかな」
 「そしたら煌星さんを口説きます」
 「へぇ、そこまで?」
 「正直、多分あの感じはいつでもイケます!」

 サムズアップを元気良く上げる三神を見た五香がウザッとダルそうに顔を歪ませる。

 「まぁパラパラッと見た感じ、普通の大学生って感じ?」
 「仰るとおりだと思います。特段変わった所などは見当たらず、強いて言うなら、あまりにも外出を嫌う傾向にある⋯⋯くらいでしょうか?」
 「最近の若者はゲームばっかりだからねぇ⋯⋯」
 「まぁ煌星さんの場合は、今の立場上、外出がほとんど難しい状態ですから⋯⋯仕方がないといえば仕方ないですが」
 「まぁその為の朱里ちゃんだからね」
 「あれにはびっくりしましたよ」
 「まさかそんなツテがあるなんて僕も思わなかったさ」

 見合わせた二人は苦笑いを浮かべる。

 「特筆すべき事はそれくらい⋯⋯かな?」
 「そうですね、あとはメインの話ですね」
 「SS冒険者の話はあらかた聞いているし、じゃあ本題の方、頼むよ」
 
 ジッと五香が見つめる中、重たい空気が一瞬流れるが、三神は構わず切り込んで行った。

 「煌星さんを襲撃した話は軽く伝えましたよね?」
 「昨日君から直接聞いたね」
 「はい、襲撃者の相手の特定はまだ済んていないのですが、本人がスキルを開示したと煌星さんが言っていました」
 「本当かい?」

 三神は無言で頷く。

 「詳細を明らかにした所、彼女には人の頭上辺りに本名とその上にカウントが見えるそうなんです」
 「カウント⋯⋯?」
 「はい。どうやらその数字が殺人カウントのようで、煌星さんの上には二万人以上のカウントがあったそうなんです」

 その言葉を聞いた五香と、仲の良い鈴木は目を見合わせて「まさか」と一笑い起きる。

 「ですが、ここで一つ」

 その笑いを破壊するがごとく、次に口にしたのは、

 「どうやら頭上に浮かび上がる名前は、黄河煌星ではなく、椎蘭志遠という初期に私達が見つけた名前だったそうなんです。煌星さんを椎蘭志遠だと思って一方的に斬りかかって殺そうとまでしたそうで」
 「本人がそう言ったのかい?」
 「はい。本人からバッチリと椎蘭志遠、悪人がなんちゃらと言っていたので、間違いないとは思います⋯⋯限りなく」

 空気は一変。五香は再度パソコンのウインドウにある黄河煌星についてのレポートを眺めた。

 「ん~⋯⋯」
 「どうかしましたか?」
 「本人はその名前を普通に聞いていたんだよね?」
 「⋯⋯そうなんです」

 五香は最初に煌星と出会ってからこの対応に非常に悩ませていた。

 星理教の一件。
 何故かないこの名前の過去。
 そして今回の襲撃。

 「さすがに流す⋯⋯というわけにはいかないよねぇ」
 「ここで一つ疑問点が浮かんだんです」

 同じくPCを眺めながら三神は言う。

 「記憶喪失とかが可能性として一番高いのではないでしょうか?」
 
 記憶喪失⋯⋯か。
 机に指でトントンとしつつ、五香は眉間にシワを寄せる。
 
 「にしてはあまりにも出来すぎている」

 こんな用意周到に過去を消せるのか?
 五香の頭には数ヶ月前の情報と忠告がよぎる。

 やっぱりあの爺さんの言う通りって⋯⋯わけか。

 ──アイツはとんでもない奴等から一心に護られてる。
 ──手を引くなら今だぞ、五香。
 
 どうする?五香史郎。
 俺はもう表舞台には出ないと決めたはずだ。
 相手は国だぞ。もしかしたら、国なんて小さい物なのかもしれない。

 宗教や4大クランまで関わってる。
 下手したら全面戦争だ。
 子供だっている。

 司に──恥を忍んで聞くか。

 「三神くん、今から電話を掛けてほしいんだけど」
 「どちらにですか?」
 「そりゃ──天堂司にさ」
 「"あの"ですか?」
 「あぁ。アイツに借りを作るのは最悪だが、煌星くん自身が何も知らないのだとすれば、もうどうしょうもないと判断した。爆弾処理はこちらでやるしかないよ」

 それから約2時間後──八王子ギルドの入口は、黄色い歓声でいっぱいになる。
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