なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う

ちょす氏

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二章

★観察者達

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 いよいよあちら側の小話登場でございますね。


 「ペルシャ! 一体、何をしたら我らが神にあの忌まわしき人間の技を使わせるなどという暴挙が発動するんだね!?」
 「申し訳ございません、長老」

 境界のないどこまでも白い空間。
 朝光⋯⋯いや、ペルシャは無表情のままその場で綺麗に身体を折りたたんで頭を下げていた。
 
 頭を下げる朝光のその少し先。そこには円卓に座る10人の老人が血相を変え、怒りの頂点に達しているのか──口から短く切れきれの息が漏れている。青筋を浮かべて、全員が朝光を殺すつもりのレベルで睨みつけ、全身からは白い炎が燃え上がっている。

 特殊なローブを着ている10人の老人たち。
 その一人が怒りを込めながら机を叩いて続ける。

 「あの人間の技をスキルにして与えただと!?穏健派の奴らを何故阻止しなかった!!!!」

 「スキルを与えるならまだいいが、記憶の断片を流し込まれるなど、どう注意していればそうなるっていうんだね!! 答えろペルシャ!」

 頭を下げ続ける朝光はこのパワハラ以上の怒号の中、無表情で耐えきる。

 「ふー! だんまりか!! お前は何の為に※球に派遣されたのかわかっているのか!?」
 
 「そうだ。わざわざ人間の成長のために介入し、進化を促して神という概念と信仰を作り、何世代にも渡って神の引き継ぎをして来たこの権利をお前に一時的に譲ってやったという恩を仇で返すつもりですか? ペルシャ」

 ずっとキレている老人と冷静に見下ろす老人。
 この二人はペルシャが口を開こうと開かまいと、ずっと一方的に喋り続けている。

 くそ。いったいなぜこんな目に遭っているんだ私は。
 神の引き継ぎが行われているのは確かだが、全権ではなく、主に星理教の全権くらいだろう。

 ⋯⋯それをこいつら、神の引き継ぎの全権とか誇張表現な言葉で言いやがって。そんなわけないだろう? たかが星理教の一つでできることなんて限られてる。 
 あの十家門をどうにかできる権力があるならまだしも、たかが宗教の一つで渡した気になっているのは少し話が違う。

 「申し訳ありません」
 「謝罪の言葉ならいらない。ペルシャ、君に譲る際に、話したことを覚えているかい?」
 「⋯⋯はい?」
 「我らが降臨・・派の目的は、一つだと。それに必要な物資や投資は一切の惜しみがないとも」

 知ってるに決まってるだろ。俺達の目的はただ一つ。

 "失われたあのお方の降臨を早く促して我らが約束の地へ向かう為"。

 そして──。

 その時、ペルシャの脳内では、ある一人の顔と声が鮮明に浮かび上がり、その声が今言われているかのように語りかけてくる。

 ──あの男だ。あの男が現れてから全てが崩れさったんだ。

 あの白髪の人間。

 『おい、名も無き神とその軍勢共──俺と戦うならそんなんじゃ駄目だ。百年経っても勝てねぇよ⋯⋯』

 『おい。お前らが見下してる人間様に負けた感想はどうだァ? 嬉しいか? あぁ⋯⋯何も言うな。きっと嬉しいだろうからなァ?』

 ⋯⋯今でも忘れない。
 あの肩まで伸びる白髪に、膝から崩れている私を見下すように上からこちらの目を覗こうとした時に揺れていたピアス。
 そして口の片端を歪めるほど釣り上げて馬鹿にしてきたあのクソッタレ人間を忘れてたまるか!
 
 ──今思い出しただけでもむかつくあんの人間め!!!

 「聞いているのか!」
 「⋯⋯申し訳ございません」

 アイツは我らが神がなんとかする前に必ず潰す!

 「それで? 現在は何を進めている?」
 「一人の冒険者と取引が終わっています」
 「冒険者?」

 うるさい老人が首を傾げる。

 「はい」
 「冒険者に強い者などおったか?マルタ」
 「いなかったずだ」
 「最近発現を確認した審判者のスキルを有する者です」
 「審判者?」
 「ロビン、言っていただろう? 審判者は塔で言うところの悪魔勢加護に近い。相手が悪いカルマカウントをしているだけその者の能力値が一時的に下がるというあれだ」

 ロビンはすぐにハッとしてガハハと笑い、マルタに分かった分かったと返した。

 「それで?審判者を利用して彼をピンチに追い込むと?そういうことか?」
 「はい、でなければ現状神を追い込む方法がありません」

 んん⋯⋯とマルタとロビンが鼻息を漏らしながら考え込む。

 「まぁ、現状促すのにも限度があるのだから、仕方がないだろう。それで?我らが神の進捗は以上か?」
 「はい」

 そう頷くと、まるでゴミを見るような目で私を指先で消えろと拒絶の動作を見せつけてくる。

 「失礼します」

 私はこの円卓の部屋から次元を破って教会へと戻る。


 **


 「お疲れ様でした、朝光さん」
 「比留間か」

 幹部のみの会議室で紅茶を飲む。
 私はイライラしているこの感情を、大好きなマイソウルドリンク──紅茶を飲むことで紛らわせる。

 最高級の葉。
 一口飲むと口から美味の息がもれ、再度口にする。

 「うん、美味いな」

 音をたてずにカップを置き、私は外に見える夜景を眺める。

 もう、ここに来てから300年か。
 あの戦いが起きてはや500年。
 あの人間は今、何をしているのだろうか? 上層にいる事は確定しているが、王座を取られては──我らが神にあわせる顔がない。

 「私もここに派遣される際、かなりの力を封印されてしまっているから、強引な手段も取れぬし、参ったものだ」

 するとスマホの音がポケットから聞こえる。
 
 「はい、朝光です」

 『こちらオブザーバー3、審判者の動き、そして、アメリカS級冒険者⋯⋯マックスとエレバが日本に来日した事が判明しました』

 もうあのオークション話を聞きつけて交渉に?
 
 「わかった。とりあえず詳しい報告は書面にまとめてすぐに出してくれ。それと、そのまま監視を続ける時に、神の動きに異変があったら伝えてくれ」

 『畏まりました』

 最近の報告によると、スキルに夜目の類いを持っていないはずなのに、何故か普通に活動しているという報告があった。
 我々の知らないイレギュラーがあれば、即座に止めねば。

 朝光は夜景を見ながら、今日も粛々とストレスに耐える会社員のように事務作業をこなすのだった。
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