なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う

ちょす氏

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第一章

46話:誰かの記憶〈1〉

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もう1話書かせてください!ごめんなさい!

『出たな! 化物め!』
『化物⋯⋯?』

 そう返すといかにも勇者であろう青年は私の姿を見て困惑しているようだった。

『貴方は人間では?』
『私は人間なのか?』

 自分でも種族なんて分からない。
 私はただ生まれた時から"そう"なだけだ。

『なんでこんなことをする! 民が苦しんでいます!』

 ⋯⋯よくわからん。
 自分たちが侵略戦争などというワケ分からない問題を起こした地域に私がたまたま住んでいて、追い払ったら次なる意味わからない人間がやってきて、追い払う。

 ──その結果、お前がやってきただけ。

『さっさと解放するんだ!』
『何を言ってるんだ? 私は一度として縛り付けた覚えはない』

 そうだ。
 勝手にお前たちが勘違いしてこの星にある全ての物が自分の物であると錯覚した結果だろう。

『今まで多数の被害が出ている!』
『どんな被害だ?』

 聞けば、やれ飢餓に苦しんでいるだの、女子供が困っているだの、要する自業自得じゃないか。
 勝手に始めて勝手に地獄に落ちようとしている連中の話だ。

『全ての元凶を辿れば、化物であるお前のせいだ!』

 ⋯⋯何だコイツ。
 なんで私のせいにするんだ?
 あぁ、向ける対象がいないからなのか?

 私は指を僅かに上げた。

 ──ブシュ!!


───
──


 昔、自然の世界の中でだけだが、放浪を繰り返していた。

 その中で私はたまたま人間とやらの街に出ることがあった。
 頃合い的にはおそらく何かの祭りごとでもあった時期だったと思う。
 沢山の人間とやらに担がれているブクブク膨らむ一人の人間とその周りには数人の雌である人間が。

 よく分からないが、たまたま通り掛かったところで声を掛けられた。

 何やら凄く顔を赤くして私に怒鳴りつけている。言語はわかるが、私に向かって何か叫んでいる。

『貴様! この※※※様がお通りになられているというのに、一体何たる不敬か!』

 よく分からない。
 不敬という意味はわかるのだが、別に私はお前の上でも下でもない。

 ⋯⋯真っ平らである。

 しかしこの人間とやらは面白い。
 思う通りに行かなければ激情に駆られてこんなにもスピのように顔を赤くさせて。

 すると、ブクブク膨らむ男が真っ赤にさせながら私を指差し声を荒げている。
 そこから数秒とも掛からぬ内に、周囲の人間たちが腰に携帯している刀剣の類を抜き出す。

 ⋯⋯どうやら私に敵対の意志があるようだ。

『殺れぇぇぇぇ─────』

 だが男の言葉はそこまでで止まる。
 荒らげる男の叫びは、強烈な破裂音と共に恐怖と焦りを含んだ。急に目に映る景色に驚き、やがて甲高い悲鳴に変わった。
 ──これではまるで悲鳴の一人合唱だ。

 ブクブク膨らむ者が発したと同時、私は指を僅かに上げる。

 彼らが刀剣をこちらに向ける時間もなく、地面から黄金の直剣が周囲数十人の股間辺りから真っ直ぐ天へと貫いた。

 伸びる距離は私が適当に浮かべた長さ。
 今回のは、おそらくスーケイくらいだろう。
 ※(およそ5m弱)

 空からは血の雨が私とブクブク膨らむ男を含めたかなり範囲で降り注いだ。
 彼は鮮血に染まった私の表情を見てか、顔色が一瞬で変化した。

『ばっ、化物⋯⋯!!』

 ほう?
 いつかのこと、誰かが確かに──私と非常によく似ていると言っていたが、そんな事もなさそうではあるが。
 ただ、やはり生命である以上、変数は存在しているようだ。


 それから数日すると知らない人間たちが私の住む山に現れた。
 あ、この間の人間たちだと察した私は、
 指を上げてからとある場所へと移動する。

 私には人物特定を始め、何から何まで実現可能だ。

『キッ、貴様が魔王か!?』

 移動した場所は、人間とやらが住むところの大きい所。
 
 彼の者から感じた記憶からだと、この男のようだったが⋯⋯違うのか?

 しかも⋯⋯魔王? そんな呼称は知らん。
 私はただ、生まれた時からこのままだ。
 誰彼構わず迷惑をかけたことは一度としてない。

『少し前には変な者に絡まれ、今度は私の元にまでやってきた。お前達は私が悪と言っているようだから見物に来たのだが⋯⋯』

 なんだこのブクブクしている人間は。

 前の時といい、何故大きい所に根付く人間はこんなにもブクブクしているのだろうか。

 外にいた人間はあんなに細かったのに、コイツは妙に膨らんでいる。

 それに、他の人間たちとは身につけているものが違う。

『私はこの国のを支えている──』

 ──ブシュ!

 私は指を上げてこの場を後にする。

『なんかうるさかったな』

 
***


『ありがとうございます!ありがとうございます!』
『神よ⋯⋯!』

 ひょんな事から人間を助ける事になった。
 あのブクブク膨らんでいる人間を抹殺したあと、外に出ると嬉しそうにしている人間たちを発見した。
 私は帰ろうとしたのだが、"お恵みを"と言われてしまったので私が食料を用意した。

 必死に食べるその姿はまるで犬だった。
 やはり生命活動に必要なものが枯渇していると皆知能を失うのか。

『かっ、神よ!!』

 何故か人間たちは、私を見ると神という言葉を使って私に対して頭を下げる。

 その意味はよく分からなかったが、先程まで絶望しきった表情をしていたので良かったと思う。


***


 それから数年が経った。
 人間たちは私が住んでいる場所に引っ越してきたらしい。
 別に荒らさなければ問題ないのだが、何故か毎日お恵みと言って私の元へと皆やってくる。

『ありがとうございます! 神様』

 様々な人間がそう言って自分たちの家に帰っていく。
 別に良いのだが、彼らは随分身なりが良くなった。

 干渉するつもりはないので気にはしないが、彼らが満足に生活できているなら良かった。

 
 数ヶ月が経つ。
 私が作った木を人間たちが分けてほしいと言った。

 ──まぁ他にも作れるのであげる。

 人間が嬉しそうにしていたので、それでいい。

 しかし⋯⋯最近人間たちの様子がおかしい。ある時、一人の少年がやって来た。
 最近はどうも人間の来訪が多い。

 聞いてみると、少年は同じくらいの者たちから集団で揶揄われていると泣きながら私の前で跪き、涙を流してどうすればいいのかと尋ねてきた。

 私はあまり理解できることではないとは思いつつも、一旦返して私は少年の様子を見てみた。

 私の作った黄金の鏡は念じれば何処でも覗くことができる力作だ。

 細かく繊細な記号を織り交ぜた一点物。

 見てみると、少年が周りの違う少年たちに囲まれ、殴られて蹴られているではないか。

 ⋯⋯痛いだろう。
 確かに少年が涙を流すのは当然の感情であり、それを噛み締め、耐えきってここまで泣きながら来たその根性が素晴らしい。

 違う人間の大人がやってきた。
 私は特徴をあげてその少年を呼び付けた。

 少年は何か自分がしてしまったのではないかと恐れていたようだったが、そうではないと伝え、私は少年がもう二度と泣かないように戦い方を教えてあげた。

 私の使う力である"オド"だ。

 オドは様々な万物に干渉できる私の"使う力"の"一つ"であり、応用が効く優れものだ。
 人間社会はわからないがきっと、少年は喜んでくれるだろう。

 しかしそれを使うというよりも、少年がオドを感覚的に掴めるように拳法として体系的にその場で全てをまとめて教えた。
 私がその場で作った100の身体操作を表したやり方を見た少年が見様見真似を始めた。

 日は何日も過ぎたが、少年は完全にその身にオドを宿し、私のいる場所から笑顔で降りていった。
 
 ──きっと少年はもう泣く事はないだろう。

 
***


 そこから数ヶ月が経った。
 何やら様々な少年が慌ててやって来た。

 聞いてみると、一人の少年に私が何かを教えた事を聞いて、自分たちも教わりたいと言ってきた。
 しかし私はどう考えてもあの時に揶揄っていた少年だということを覚えていたので、しっかりと断った。

 同じ種族の同族を、そんな風に痛め付ける者は力を付ければまた同じことを繰り返す。
 何か文句を言いたげな表情はしていたが、私はそんな事では怒らない。
 
 しかし代わりに隣に居た親らしき男に本気で頭を引っぱたかれていたが。
 

***


 また時間が経った。
 私は細工に時間を使っていた。
 様々な陶芸品に挑戦している。

 私に眠る必要はなく、私の元に来た一人の人間の力量を見て、私も努力してみた。
 上手く出来た。そう思っていると、一人の人間が嬉しそうにそれが欲しいとねだってきた。

 あまりにも嬉しそうにしていたので、まぁ作ればいいかとあげる。

 あげた数日後、人間の来訪がとてつもなく増えた。理由は私があげた品が羨ましいからと言う。
 ⋯⋯ふむ、人間の感情はよくわからない。
 何故私が作ったくらいでそこまで苛立ちを覚えているのかが理解不能だ。

 数日後、一人の女が泣きながらやってきた。私を目の前にして何を言うのかと思えば、「悪魔」だと言ってきた。

 全く理解できなかった私は聞き返してみた。

 「何故だ」と。

 すると女からはこう返ってきた。
 
 「貴方が授けた木は貧富を生み」
 「貴方が授けた力で、争いが生まれ」
 「貴方が授けた陶芸品で不平等を生んだ」と。

 だからどうしたのかと思った。
 私は自分からやってあげたいなどと言ったわけではない。彼らが可愛いから頼まれた事をやってあげたまで。

 ⋯⋯何故私がここまで怒鳴られ、悪魔などという言葉を浴びせられているのかがよく分からない。

 どうやら私の知らない内に人間社会ではとてつもないことが起こっているらしい。

 だが私には関係ない。
 勝手に始めたのは人間達なのだから。

 悪魔と女に言われ続けて耳が痛いので、指を上げる。

 静かになったな。
 私はそのまま綺麗な夜空を見上げた。
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