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第一章
17話:多摩動物公園ダンジョン〈1〉
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「おぉ、デカイな」
あまりに月並みな言葉で申し訳ない。
それ以上にこぼれる感想はない。
というわけで次の日。
俺は掲示板で聞いたとおり、今、ダンジョン前にいる。
周囲にはあまり人気はなく、俺としては有り難い限りである。
「多摩動物公園なんだから、やっぱりダンジョン内容はソレなんだろうか?」
割と全国にあるダンジョンは、配置された特色が反映されるという記事を寝る前に読んだ。
なのでここも動物が多く出現するダンジョンなのかと勝手に一人で推察している恥ずかしい男性がここにいます。
全体像としては、そのままあった動物公園から10年ほど放置したような見た目になっている。
寂れた⋯⋯なんて言うのは止めにして、俺はあの掲示板の先輩の言葉を信じてリュックを背負い、ダンジョンの中へ入ろうとした時、視界の横には受付らしきモノと、警備員の方が数人こちらを見ていた。
俺も何だろうと見ていると、早速声をかけられた。
「君、ダンジョン攻略希望かい?」
「はい、あ、確か入るときに何か手続きをしなきゃならないって」
そう言うと向こうも俺が完全な初心者だと気付いたのか、対応が一気に優しくなった気がした。
「冒険者ライセンスはお持ちですか?」
「はい」
「あ、ありがとうございます。確認させて頂きますね」
手続きが終わると警備の方から説明が入った。
「ダンジョン内は法律が意味を成しません。ソロの方には何度も言わせて頂いていますが、くれぐれもご注意ください」
「はい! ありがとうございます」
あらためてこうやって聞くと、怖いと感じる。
法が通じない。
その事実を耳が捉えると不安が止まらない。
がしかし、そこまでやる必要はない。
今回の依頼は、多摩動物公園にあるキラーラビットなるモンスターからドロップする事なんだから、奥へと行く必要はおそらくないだろう。
硬そうな、いや、実際に硬いのだが、扉を開けると⋯⋯見覚えの光景が広がるかと思いきや、中は全く異質で、見覚えのある光景が一つもなく中は墓地を彷彿とさせる動物公園とは別世界の景色が俺の目には映っていた。
「⋯⋯はっ?」
動物公園の名前は何処へ?
これじゃただの墓地や!設計者は頭がどうも駄目らしい。
「ま、まぁこんなところで止まっていては色々まずいよな」
多少インパクトのある初手ではあったが、俺はそのまま多摩動物公園を見回るべく堂々たる歩き方で中へ進んだ。
**
「待て! 兎!!このやろ!」
俺は今、大人気もなく⋯⋯走り回る兎を殺人鬼よりも質の悪いガラの悪さで追いかけています。
あれから数十分も歩いていたら、墓場エリアにぶつかった。
俺が尻込みしていると、目の前には墓の間を白い可愛らしい生き物がチョロチョロしているのだ。
依頼って簡単なんだな。
これならやってもいいなと俺は早速兎狩りを始めた。
「くそったれ! すばしっこ過ぎ!」
現在の装備は短剣、それから大量の荷物が入ったリュック。
リュックに荷物を詰め込みすぎた結果⋯⋯早いキラーラビットにまるで追いつけず、俺は息を切らして荒い呼吸を漏らす。
「結構必要かななんて思った俺が悪かった。とにかくさっさとやる為にはリュックを置くしかないか」
申し訳ないと思いつつも、俺は墓に立て掛けるようにリュックを置いた。
幸い、身体能力はかなり高まった。
「今度こそっ!」
俺は一気に深海のように気持ちを沈める。
そして、キラーラビットの動きを的確に捉え、数十分掛かってようやく一体目のキラーラビットをやっつけることに成功したのである。
「よっしゃあ!」
あんだけ狩れなかったのに、リュックを下ろさなかった俺って一体⋯⋯
「そんなことより」
キラーラビットのドロップは極小魔石(中)、もしくはキラーラビットの角である。
今回の依頼はキラーラビットの角を一つ納品するというのが目的だ。
「さすがに一体で出るはずもない⋯⋯か」
俺は置かれたリュックを横目に一人で呟く。
しかも、かなりリスクがあるんだよな。
やはりソロだからこそ、命に必要なアイテムたちがこのリュックに入っている訳で⋯⋯。
「これを手放しながらキラーラビットを追ってると迷っちまいそうだよな」
この墓場エリアは景色がなにも変わらない為、万が一移動して戻ろうにも感覚麻痺してチンプンカンプンになってしまうのだ。
「くっそ、これだったらマジックバックみたいな魔導具の1つや2つ買えばよかったじゃないか!」
と、買えもしないのに愚痴ってみる。
嘆いてもマジックバックは貰えないので、諦めて蝋燭をリュックから取り出して代わりに目印として立ててこの墓地エリアを進んでいくことにした。
「いや、多摩動物公園ダンジョンなんて名前は改名しろよ」
"公園"も"動物"要素もどちらも微塵感じない為、俺は少し気落ちしながら進んでいた。
もしかしたら動物と一緒にクエスト攻略したりとか出来たかも!?などという一縷の望みが脳裏に染み付いていたからだ。
現実というのは、なんて非情なモノをこう突き出してくるのだろうか。
しかし話は変わるが、このダンジョンはベテラン勢の言うとおり、かなり楽に進めている。
初心者にオススメというのは本当らしい。
「ごめん、やっぱりなし」
俺は蝋燭片手に歩く足を止める。
目の前にはあれだけ先程喋っていた動物がノシノシ目の前の墓場を歩き回っている。
うん、動物要素は必要だとは言ったよ?
勿論、可愛くて⋯⋯協力しながら初心者ダンジョンを攻略しよう!
⋯⋯ならわかるのに。
「あはは、確かに動物だけど」
目の前でノシノシ歩いているのは⋯⋯ライオンや現存している動物たちが骨だけのまま、墓場の中を歩き回っていたのだった。
あまりに月並みな言葉で申し訳ない。
それ以上にこぼれる感想はない。
というわけで次の日。
俺は掲示板で聞いたとおり、今、ダンジョン前にいる。
周囲にはあまり人気はなく、俺としては有り難い限りである。
「多摩動物公園なんだから、やっぱりダンジョン内容はソレなんだろうか?」
割と全国にあるダンジョンは、配置された特色が反映されるという記事を寝る前に読んだ。
なのでここも動物が多く出現するダンジョンなのかと勝手に一人で推察している恥ずかしい男性がここにいます。
全体像としては、そのままあった動物公園から10年ほど放置したような見た目になっている。
寂れた⋯⋯なんて言うのは止めにして、俺はあの掲示板の先輩の言葉を信じてリュックを背負い、ダンジョンの中へ入ろうとした時、視界の横には受付らしきモノと、警備員の方が数人こちらを見ていた。
俺も何だろうと見ていると、早速声をかけられた。
「君、ダンジョン攻略希望かい?」
「はい、あ、確か入るときに何か手続きをしなきゃならないって」
そう言うと向こうも俺が完全な初心者だと気付いたのか、対応が一気に優しくなった気がした。
「冒険者ライセンスはお持ちですか?」
「はい」
「あ、ありがとうございます。確認させて頂きますね」
手続きが終わると警備の方から説明が入った。
「ダンジョン内は法律が意味を成しません。ソロの方には何度も言わせて頂いていますが、くれぐれもご注意ください」
「はい! ありがとうございます」
あらためてこうやって聞くと、怖いと感じる。
法が通じない。
その事実を耳が捉えると不安が止まらない。
がしかし、そこまでやる必要はない。
今回の依頼は、多摩動物公園にあるキラーラビットなるモンスターからドロップする事なんだから、奥へと行く必要はおそらくないだろう。
硬そうな、いや、実際に硬いのだが、扉を開けると⋯⋯見覚えの光景が広がるかと思いきや、中は全く異質で、見覚えのある光景が一つもなく中は墓地を彷彿とさせる動物公園とは別世界の景色が俺の目には映っていた。
「⋯⋯はっ?」
動物公園の名前は何処へ?
これじゃただの墓地や!設計者は頭がどうも駄目らしい。
「ま、まぁこんなところで止まっていては色々まずいよな」
多少インパクトのある初手ではあったが、俺はそのまま多摩動物公園を見回るべく堂々たる歩き方で中へ進んだ。
**
「待て! 兎!!このやろ!」
俺は今、大人気もなく⋯⋯走り回る兎を殺人鬼よりも質の悪いガラの悪さで追いかけています。
あれから数十分も歩いていたら、墓場エリアにぶつかった。
俺が尻込みしていると、目の前には墓の間を白い可愛らしい生き物がチョロチョロしているのだ。
依頼って簡単なんだな。
これならやってもいいなと俺は早速兎狩りを始めた。
「くそったれ! すばしっこ過ぎ!」
現在の装備は短剣、それから大量の荷物が入ったリュック。
リュックに荷物を詰め込みすぎた結果⋯⋯早いキラーラビットにまるで追いつけず、俺は息を切らして荒い呼吸を漏らす。
「結構必要かななんて思った俺が悪かった。とにかくさっさとやる為にはリュックを置くしかないか」
申し訳ないと思いつつも、俺は墓に立て掛けるようにリュックを置いた。
幸い、身体能力はかなり高まった。
「今度こそっ!」
俺は一気に深海のように気持ちを沈める。
そして、キラーラビットの動きを的確に捉え、数十分掛かってようやく一体目のキラーラビットをやっつけることに成功したのである。
「よっしゃあ!」
あんだけ狩れなかったのに、リュックを下ろさなかった俺って一体⋯⋯
「そんなことより」
キラーラビットのドロップは極小魔石(中)、もしくはキラーラビットの角である。
今回の依頼はキラーラビットの角を一つ納品するというのが目的だ。
「さすがに一体で出るはずもない⋯⋯か」
俺は置かれたリュックを横目に一人で呟く。
しかも、かなりリスクがあるんだよな。
やはりソロだからこそ、命に必要なアイテムたちがこのリュックに入っている訳で⋯⋯。
「これを手放しながらキラーラビットを追ってると迷っちまいそうだよな」
この墓場エリアは景色がなにも変わらない為、万が一移動して戻ろうにも感覚麻痺してチンプンカンプンになってしまうのだ。
「くっそ、これだったらマジックバックみたいな魔導具の1つや2つ買えばよかったじゃないか!」
と、買えもしないのに愚痴ってみる。
嘆いてもマジックバックは貰えないので、諦めて蝋燭をリュックから取り出して代わりに目印として立ててこの墓地エリアを進んでいくことにした。
「いや、多摩動物公園ダンジョンなんて名前は改名しろよ」
"公園"も"動物"要素もどちらも微塵感じない為、俺は少し気落ちしながら進んでいた。
もしかしたら動物と一緒にクエスト攻略したりとか出来たかも!?などという一縷の望みが脳裏に染み付いていたからだ。
現実というのは、なんて非情なモノをこう突き出してくるのだろうか。
しかし話は変わるが、このダンジョンはベテラン勢の言うとおり、かなり楽に進めている。
初心者にオススメというのは本当らしい。
「ごめん、やっぱりなし」
俺は蝋燭片手に歩く足を止める。
目の前にはあれだけ先程喋っていた動物がノシノシ目の前の墓場を歩き回っている。
うん、動物要素は必要だとは言ったよ?
勿論、可愛くて⋯⋯協力しながら初心者ダンジョンを攻略しよう!
⋯⋯ならわかるのに。
「あはは、確かに動物だけど」
目の前でノシノシ歩いているのは⋯⋯ライオンや現存している動物たちが骨だけのまま、墓場の中を歩き回っていたのだった。
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