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少女を拾う。
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準備を終えた直後、イベルワから報告が上がった。
「ネスト様、少しお時間を頂いてもいいでしょうか?」
イベルワがそんな事を言うなんて珍しい。
「どうしたの?」
「実はこの惑星に降り注ぐ粒子は、耐性のない私達が浴びるとかなりの毒を持ってしまいますので、少し同期をさせてもらえますか?」
「あ~同期をすれば問題ないんだ?」
頷くイベルワ。やっぱり文明レベルが高いと怖ええって。
「当たり前な事を聞いて悪いんだけど、やっぱり俺達にはもうウイルス的な物は効かないって思った方がいいの?」
「⋯⋯ほとんどがそうですが、確率で言えば0ではありません。しかしナノマシンが巡っている状況ですから、体内に入ったとしてもすぐに分解されます」
うん。やっぱり0みたいなもんじゃないか。
「同期には少しお時間が掛かりますので、少々お待ちくださいませ」
そうして俺はイベルワに付いていくと、AQS(カプセル)の中に入る必要があったのでドボンと躊躇なく飛び込み待機。指示があるまで俺はそのまま目を閉じて電子図書館へと行って続きの読書を始める。
射撃や近接格闘などはパッケージインストールが終わっているので、特に気にしてはいけない。
────高度文明様々だ。
そうして暫く読書に耽っていると、自動的に目覚める。
「おー終わった?」
「問題なく終了いたしました。同期は終わったのですが、一つ注意事項があります」
イベルワが1本の触手を指代わりに立てて続ける。
「今の状態は、あくまでも死なないようにということで同期しただけという状態になります。降り立ってから何かしたい場合は私に一言申し付け下さい」
「うん、分かった」
カプセルから出て、二人で仲良くマイラン○ルギーニに乗車。
「そういえばさ」
「どういたしました?」
「この惑星に魔法ってある感じ?手から炎が出ていたし」
そう。やっぱりそこが気になった。
もし魔法が使えるなら、是非使ってみたい!
「少々お待ちくださいませ」
イベルワはそう言うと少し首を傾げる。
特有の思考なのか、それとも検索をしているのか気になる所だが、そんな事を思い浮かべた瞬間に返事が返ってくる。
「ネスト様の概念で言うと合致しています。もっと大きな範囲にはなりますが、この惑星にある粒子の事をネスト様の知っている単語に置き換えると、魔力やマナと言った言葉に変化いたします」
「おー! やっぱり!」
⋯⋯⋯⋯ん?待てよ?
「てことはさ、体内に入るとまずいって⋯⋯」
「はい。別惑星で育ったネスト様たちからすれば、魔力というのは一種の毒です。彼らは現地人であり、母胎から適応した子が生まれずっと生活していますから問題ありません。しかしネスト様は突然降り立つ訳ですから同期だけ行ったという事でございます」
なるほど。面白い角度の話だな。魔力はファンタジーだと思っていたけど、ウイルス的な事だったとは。よくよく考えればそれもそうか。
「っと、少女が危ない。全速力で行こ────」
遮られたと思ったら、馬鹿みたいな速度で母船から旅立った。
新幹線から見る景色とはまるで別次元。
「うぉぉぉぉぉ!!」
マジでタイムマシンに乗ってるレベルで景色が変わる。⋯⋯ヤバすぎ!!
ジェットコースターばりの迫力を数秒味わった後、突然止まったのに驚く。
「ん?」
「指定の座標に到着いたしました。現在ターゲット、から1kmほど離れた位置に停止しています」
「⋯⋯え?もう着いたの?」
体感数秒だけど。
「はい。臨場感を出す為に車にいたしましたが、テレポートや更なるユニットを使用すればほぼタイムラグはありません」
うん。このままで行こう。
「あ、そういえばこの車ってステルス?」
まぁ流石にこんな乗り物乗って現れたら変なやつ認定されるだろうし。
「はい。声や騒音も聞こえないシステムになっております。必要であれば寝泊まりも可能になっておりますし、料理も可能です。Ads文明の技術が使用されておりますので、探知などのハッキング、ジャミング等は事実上不可能でございます」
「解説ありがとう。一言で言うと絶対問題ないってことだよね?」
当たり前のようにコクッと頷くイベルワに若干恐れつつ、ドアを飛び上がって惑星⋯⋯いや、異世界の地面に初めて降り立った。
「森だなぁ。とりあえずあの少女は助けないと」
一応服装は気を遣って黒中心の素朴だがハンドガンなんかの武器が入るようにポケットなんかはかなり工夫している。
面白い話だが、最初はイベルワが猛反対。
理由は「ネスト様にはもっと豪華な物が必要だ」というものだった。
それで目立ったらどうするんだ? と聞いたら全員殺せばいいと当たり前のように返してくるもんだから若干引いた。
"ネスト様"
おぉ。ビックリした。
"どうした?"
"直進先で、少女が個体名不明な生命体に殺されそうになっております"
え? マジで?急がないと!
急ごうと地面を軽く踏むと、ありえないくらい力が入り、思わず自分の足を見つめる。
グググッとアスリート選手以上の馬鹿力が一気に加わり、真っ直ぐド派手に進む。
────Ads人、半端ねぇよ。
いや、この場合、技術力の方か。
「⋯⋯⋯⋯っ!」
爆速で進む一瞬の間に、視界の右端辺りにポツンと数個の点が見つかる。よく見つめると、猿みたいな生き物に例の少女が喰われそうになっているところだった。
ていうかこんだけ遠くから見てるのにはっきり映るこの両眼は本当にバグってるな!
「おっ、よいしょ」
爆速を止めてスライディングしながらホルスターからハンドガンを取り出し、マガジンを抜いて新しい物を入れる。
ていうか今まで気付かなかったが、バランスの感覚も良い。一切ぶれない。
こんな無茶な動きをしても、細かい動作も言う事を聞く。
"セル弾"
そう頭で念じると、カチャンとほぼ同時に装填された音が聞こえる。自動的に弾が中で補充されるのは何度も見ても笑える光景だ。
速度がほとんど停止状態にまで落ちたと同時に、重心を落としてスライドを引きながら片手で猿の一匹目掛けて片膝の上に反対の手を置き、固定砲台のようにしてハンドガンを構え、集中。
先程まで目まぐるしく動いていた景色はほぼスローモーションと同じくらいには時は止まる。
これは人間の能力を極大化させた力。
体感時間を伸ばすAdsの技術でもある。
鼻からゆっくりと息を吸い込む。
世界が停止したような全能感。この静かな空間が最高だ。
次の瞬間、轟音ながら美しい金管楽器のような音が森に木霊する。
トリガーを引く。通常の拳銃ではありえない程バレルの長さを通り、力という奔流が解き放つ。
──ドゴォォォン!!
硝煙が、銃口から噴き出す。
15mmセル弾と言う規格外の弾丸が吐き出され、猛烈な速度で一匹の猿へと向かっていく。
『キッ⋯⋯ィ!』
空間切り裂き猿の一匹の頭へと寸分の狂いもなく着弾すると、頭部のみが見事に破裂した。
「おいおい、何が通常弾だよ。威力高っ」
まぁAdsのハンドガンだから当たり前なんだけどさ。
汚れるのが嫌になりそうな漆黒のスライドを引く。
ガチャン!という高級感溢れる金属音と共に薬莢がこれまた美しい煙を吐き出しながら、宙に軌跡を描いて排出される。
落ちる寸前にはイベルワの言う通り本当に塵となって跡形もなくなっていた。
「ん?」
周囲に張り巡らせているナノドローンたちの検知に5体ほどの先程と同じ猿型の個体がこちらを狙っているようだ。瞬時に構え流れるように検知した個体全て、頭部のみを狙ってトリガーを引く。
『ギィヤッ──』
全ての弾丸は外れることなく頭部を吹き飛ばした。少し離れた所から血飛沫が周囲に飛び散る音が聞こえる。
再度狙いは少女周りの猿へと戻し、トリガーを引く。
「技術力様々だな」
いつ来てもいいようにスライドをガチャンと引きながら、吹き飛ばしたせいで地面に横たわる少女の方へと向かう。
「かなりやせ細ってるな⋯⋯しかも肌もボロボロ」
片膝を落として切り傷が刻まれている脂肪などない骨のような細い手首をを持ち上げる。
ここに降り立つ原因となった少女、か。
助けるつもりではあったが、俺はイマイチ何がしたいのか決まってないでやって来てしまった。
異世界に興味があったからだが、とりあえず何もしないわけにはいかないだろう。
「イベルワ」
「お呼びでしょうか、ネスト様」
「この子を治せるか?」
「勿論でございます」
「頼むぞ」
イベルワに持ち上げた少女を預け、俺はマイギーニへと戻る。とりあえずお腹空いた。今日はハンバーグが食べたいな。
「ネスト様、少しお時間を頂いてもいいでしょうか?」
イベルワがそんな事を言うなんて珍しい。
「どうしたの?」
「実はこの惑星に降り注ぐ粒子は、耐性のない私達が浴びるとかなりの毒を持ってしまいますので、少し同期をさせてもらえますか?」
「あ~同期をすれば問題ないんだ?」
頷くイベルワ。やっぱり文明レベルが高いと怖ええって。
「当たり前な事を聞いて悪いんだけど、やっぱり俺達にはもうウイルス的な物は効かないって思った方がいいの?」
「⋯⋯ほとんどがそうですが、確率で言えば0ではありません。しかしナノマシンが巡っている状況ですから、体内に入ったとしてもすぐに分解されます」
うん。やっぱり0みたいなもんじゃないか。
「同期には少しお時間が掛かりますので、少々お待ちくださいませ」
そうして俺はイベルワに付いていくと、AQS(カプセル)の中に入る必要があったのでドボンと躊躇なく飛び込み待機。指示があるまで俺はそのまま目を閉じて電子図書館へと行って続きの読書を始める。
射撃や近接格闘などはパッケージインストールが終わっているので、特に気にしてはいけない。
────高度文明様々だ。
そうして暫く読書に耽っていると、自動的に目覚める。
「おー終わった?」
「問題なく終了いたしました。同期は終わったのですが、一つ注意事項があります」
イベルワが1本の触手を指代わりに立てて続ける。
「今の状態は、あくまでも死なないようにということで同期しただけという状態になります。降り立ってから何かしたい場合は私に一言申し付け下さい」
「うん、分かった」
カプセルから出て、二人で仲良くマイラン○ルギーニに乗車。
「そういえばさ」
「どういたしました?」
「この惑星に魔法ってある感じ?手から炎が出ていたし」
そう。やっぱりそこが気になった。
もし魔法が使えるなら、是非使ってみたい!
「少々お待ちくださいませ」
イベルワはそう言うと少し首を傾げる。
特有の思考なのか、それとも検索をしているのか気になる所だが、そんな事を思い浮かべた瞬間に返事が返ってくる。
「ネスト様の概念で言うと合致しています。もっと大きな範囲にはなりますが、この惑星にある粒子の事をネスト様の知っている単語に置き換えると、魔力やマナと言った言葉に変化いたします」
「おー! やっぱり!」
⋯⋯⋯⋯ん?待てよ?
「てことはさ、体内に入るとまずいって⋯⋯」
「はい。別惑星で育ったネスト様たちからすれば、魔力というのは一種の毒です。彼らは現地人であり、母胎から適応した子が生まれずっと生活していますから問題ありません。しかしネスト様は突然降り立つ訳ですから同期だけ行ったという事でございます」
なるほど。面白い角度の話だな。魔力はファンタジーだと思っていたけど、ウイルス的な事だったとは。よくよく考えればそれもそうか。
「っと、少女が危ない。全速力で行こ────」
遮られたと思ったら、馬鹿みたいな速度で母船から旅立った。
新幹線から見る景色とはまるで別次元。
「うぉぉぉぉぉ!!」
マジでタイムマシンに乗ってるレベルで景色が変わる。⋯⋯ヤバすぎ!!
ジェットコースターばりの迫力を数秒味わった後、突然止まったのに驚く。
「ん?」
「指定の座標に到着いたしました。現在ターゲット、から1kmほど離れた位置に停止しています」
「⋯⋯え?もう着いたの?」
体感数秒だけど。
「はい。臨場感を出す為に車にいたしましたが、テレポートや更なるユニットを使用すればほぼタイムラグはありません」
うん。このままで行こう。
「あ、そういえばこの車ってステルス?」
まぁ流石にこんな乗り物乗って現れたら変なやつ認定されるだろうし。
「はい。声や騒音も聞こえないシステムになっております。必要であれば寝泊まりも可能になっておりますし、料理も可能です。Ads文明の技術が使用されておりますので、探知などのハッキング、ジャミング等は事実上不可能でございます」
「解説ありがとう。一言で言うと絶対問題ないってことだよね?」
当たり前のようにコクッと頷くイベルワに若干恐れつつ、ドアを飛び上がって惑星⋯⋯いや、異世界の地面に初めて降り立った。
「森だなぁ。とりあえずあの少女は助けないと」
一応服装は気を遣って黒中心の素朴だがハンドガンなんかの武器が入るようにポケットなんかはかなり工夫している。
面白い話だが、最初はイベルワが猛反対。
理由は「ネスト様にはもっと豪華な物が必要だ」というものだった。
それで目立ったらどうするんだ? と聞いたら全員殺せばいいと当たり前のように返してくるもんだから若干引いた。
"ネスト様"
おぉ。ビックリした。
"どうした?"
"直進先で、少女が個体名不明な生命体に殺されそうになっております"
え? マジで?急がないと!
急ごうと地面を軽く踏むと、ありえないくらい力が入り、思わず自分の足を見つめる。
グググッとアスリート選手以上の馬鹿力が一気に加わり、真っ直ぐド派手に進む。
────Ads人、半端ねぇよ。
いや、この場合、技術力の方か。
「⋯⋯⋯⋯っ!」
爆速で進む一瞬の間に、視界の右端辺りにポツンと数個の点が見つかる。よく見つめると、猿みたいな生き物に例の少女が喰われそうになっているところだった。
ていうかこんだけ遠くから見てるのにはっきり映るこの両眼は本当にバグってるな!
「おっ、よいしょ」
爆速を止めてスライディングしながらホルスターからハンドガンを取り出し、マガジンを抜いて新しい物を入れる。
ていうか今まで気付かなかったが、バランスの感覚も良い。一切ぶれない。
こんな無茶な動きをしても、細かい動作も言う事を聞く。
"セル弾"
そう頭で念じると、カチャンとほぼ同時に装填された音が聞こえる。自動的に弾が中で補充されるのは何度も見ても笑える光景だ。
速度がほとんど停止状態にまで落ちたと同時に、重心を落としてスライドを引きながら片手で猿の一匹目掛けて片膝の上に反対の手を置き、固定砲台のようにしてハンドガンを構え、集中。
先程まで目まぐるしく動いていた景色はほぼスローモーションと同じくらいには時は止まる。
これは人間の能力を極大化させた力。
体感時間を伸ばすAdsの技術でもある。
鼻からゆっくりと息を吸い込む。
世界が停止したような全能感。この静かな空間が最高だ。
次の瞬間、轟音ながら美しい金管楽器のような音が森に木霊する。
トリガーを引く。通常の拳銃ではありえない程バレルの長さを通り、力という奔流が解き放つ。
──ドゴォォォン!!
硝煙が、銃口から噴き出す。
15mmセル弾と言う規格外の弾丸が吐き出され、猛烈な速度で一匹の猿へと向かっていく。
『キッ⋯⋯ィ!』
空間切り裂き猿の一匹の頭へと寸分の狂いもなく着弾すると、頭部のみが見事に破裂した。
「おいおい、何が通常弾だよ。威力高っ」
まぁAdsのハンドガンだから当たり前なんだけどさ。
汚れるのが嫌になりそうな漆黒のスライドを引く。
ガチャン!という高級感溢れる金属音と共に薬莢がこれまた美しい煙を吐き出しながら、宙に軌跡を描いて排出される。
落ちる寸前にはイベルワの言う通り本当に塵となって跡形もなくなっていた。
「ん?」
周囲に張り巡らせているナノドローンたちの検知に5体ほどの先程と同じ猿型の個体がこちらを狙っているようだ。瞬時に構え流れるように検知した個体全て、頭部のみを狙ってトリガーを引く。
『ギィヤッ──』
全ての弾丸は外れることなく頭部を吹き飛ばした。少し離れた所から血飛沫が周囲に飛び散る音が聞こえる。
再度狙いは少女周りの猿へと戻し、トリガーを引く。
「技術力様々だな」
いつ来てもいいようにスライドをガチャンと引きながら、吹き飛ばしたせいで地面に横たわる少女の方へと向かう。
「かなりやせ細ってるな⋯⋯しかも肌もボロボロ」
片膝を落として切り傷が刻まれている脂肪などない骨のような細い手首をを持ち上げる。
ここに降り立つ原因となった少女、か。
助けるつもりではあったが、俺はイマイチ何がしたいのか決まってないでやって来てしまった。
異世界に興味があったからだが、とりあえず何もしないわけにはいかないだろう。
「イベルワ」
「お呼びでしょうか、ネスト様」
「この子を治せるか?」
「勿論でございます」
「頼むぞ」
イベルワに持ち上げた少女を預け、俺はマイギーニへと戻る。とりあえずお腹空いた。今日はハンバーグが食べたいな。
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