上 下
5 / 13

美味い

しおりを挟む
 「やべぇマジですげぇわ」

 「量子制御は、私達の専売特許ですから」

 一瞬で食堂みたいな場所にやってきた。
 中は市民ホールくらいはあると思う。

 「さぁネスト様、こちらへ」

 某魔法使い映画のような長机の中間あたりに行くとイベルワが椅子を引いてくれてそこに掛ける。

 「すぐにお持ち致します」

 せいぜい10分くらいは掛かるだろうと思い、何をしようかと思っているとジュウゥと何かが焼ける音が耳に入る。

 横には何もなく、音の発生源は上だった。

 「え?誰もいなくない?」

 「はい。磁場を使って自動的に物体を移動させています」

 うん。言ってることは理解できたんだけど、そう言われても俺の記憶上そんな精密なことができないを知っているからか、納得はしない。

 ふよふよと机の上にやってきたのは恐らくステーキ。明らかに高そうな副菜付きで。

 「他にもまだまだありますよ」

 するとドンドン続けざまに上から様々な料理が次々と運ばれてくる。和食、洋食、中華、イタリア料理など、中には見たことのない国の料理までがテーブルに並んだ。

 「これ全部食べれないよ?」

 「構いません。ネスト様専用の料理ですから」

 「他のみんなはどんなご飯を食べてるの?」

 「カプセルです」

 「え?カプセル?サプリみたいな事?」

 頷くイベルワ。

 「食事楽しい?」

 「楽しい⋯⋯という感覚はありませんが」

 「機能上食べれるんだよね?」

 「はい」

 「食べようよ。流石に一人でご飯食べてもつまんないじゃん」

 少し驚いた様子でポカンとするイベルワ。
 まさかそんなことを言われると思ってなさげだ。

 「ほら」

 次いでに俺は目の前に並ぶ鉄火巻を一つ取ってイベルワに食べさせようとしたのだが、口どこ?

 「あれ⋯⋯イベルワ⋯⋯どこ口?」

 「こ、ここです」

 「おわっ」

 1本の触手から口が広がり、そこへ鉄火巻の先端を触れさせるとモグモグ食べ始めた。意外と可愛い。

 「どう?」

 「美味しゅうございます」

 「イベルワが作ったんでしょ?」

 「いえ?素材は農業エリアで育てて、シェフ機能をインストールし新設した部署の者たちが始めました」

 「そうだったんだ」

 部署の一つが俺の一言で作られてしまうとは⋯⋯。
 迂闊に何も言えん。

 「イベルワも食べよう?」

 「で、では⋯⋯」

 隣に座るイベルワにいくつかの寿司のお皿を渡す。
 そして俺はというと、ピザだのラーメンだの、餃子を頂いた。

 勿論だが、滅茶苦茶美味い。

 「ねぇ。これ気づいたんだけど、全部の味があったりする?」

 「ネスト様の好みがわからなかったのでしょう。用意してお口になさったのを中心にしようと考えているのでは?」

 「だからといって全部は勿体ないような⋯⋯」

 「問題ありません。廃棄しても再生エネルギー源となりますし、いくらでも増やせますから」

 おっそろし。マジで魔法じゃい。

 「醤油も良いけど、味噌もいいな。家系も⋯⋯って、全部美味いじゃん」
 
 「そう言っていただけるとシェフも喜ぶと思いますよ」

 気付けば当時生きていたときよりも遥かにお腹の中へと食べ物が入っていた。
 あれ?こんなに食べれたっけ?

 「こんなに食べてたら体に悪くなっちゃうよ」
 
 「何を仰いますかネスト様。今も現在体に回る巡回療法でネスト様に必要ないものは強制的に分解して回収しておりますから、好きなものを食べても問題ございません」

 まるで当たり前のようにそう言い放つイベルワに俺の顔は固まっていた。

 「え?まじで?」

 「⋯⋯マジです」

 うん。凄いよ。未来。凄いぞ、未来。

 「変わり身がお早いですね、ネスト様」

 「食べれるんだから食べるに越したことはないし?」

 ならば有難くいただく。それから20分程であれだけあった食事たちは半分くらいは消えていた。

 「ご馳走様でした」

 「ではこの後はどうされますか?」

 と、言われてもなぁ。

 「んー⋯⋯⋯⋯逆にやる事ある?」
 
 「労働なんてものはありませんし、公務もありません。ネスト様がそこに居るだけで問題ありませんので、お好きにしていただけたらと思います」

 ⋯⋯うん。そうだよね。

 「では、少し面白い勉強の方法でも試してみますか?」
 
 「勉強?俺頭良くないよ?」

 「問題ございません。今の状態であれば問題なく受講できる事ですので」

 そうイベルワに手を引かれ、次なる場所へと飛んだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

異世界に転生したら狼に拾われました。

チャン
ファンタジー
普通の会社員だった大神次郎(おおがみじろう)は、事故に遭い気付いたら異世界に転生していた。転生して早々に死にかけたところを狼に救われ、そのまま狼と暮らすことに。狼からこの世界のことを学ぶが、学んだ知識は異世界では非常識なことばかりだった。 ご指摘、感想があればよろしくお願いします。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...