猫奴隷の日常

ハルカ

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泣き顔の誘惑

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カーテンの閉められたカイの部屋は真っ暗だった。

「明かり、つける?」
「いーよ。もう寝るだけだし」

酔ってふらつくカイの体を支えながら手探りで歩き、ベッドに下ろす。しかしすぐに首に回ってきた腕に引き寄せられ、ヴァイスは求められるままに唇を合わせた。

「カイ、オレ帰らなくていいのか?」
「帰って欲しそうに見えんならオメーの目は節穴だな」

闇の中で妖しく笑ったカイに腕を引っ張られ、ベッドに乗り上げる。
ギシ とベッドを軋ませてヴァイスの体の上に跨ったカイが、煽るように腰を揺らした。

「なあ、きす・・・」

誘うように薄く開かれた唇の隙間から舌が覗いている。それを引きずり出してやりたくなり、ヴァイスは夢中で口腔をまさぐった。絡めとった舌先は、まだ痺れるような甘い酒の味がしている。

「服、脱がないと」

隙間なく体を密着させたまま離したがらないカイのシャツの襟を引っ張って、肩を露出させる。露わになった曲線に掌を合わせると、その肌が熱く湿り気を帯びているのが分かった。

「んっ・・・ もっと触れよ・・・」

甘えるように揺れる腰を片腕で支えて、浮かせた尻と下着の間に指を滑り込ませる。柔い快楽と酒の酩酊感でトロンと蕩けた表情が色っぽい。でも。
ヴァイスは高ぶった感情を持て余しながら、カイのズボンを下着ごと膝までずらした。まだ解れたとは言い難いその窄まりに己の硬直をあてがうと、半分閉じかけていたカイの瞼が、ハッとしたように開かれる。意図を察したように、目元を潤ませたカイがヴァイスを睨んだ。その表情が堪らなくかわいい。
この表情が見たくて、時々泣かせたくなってしまう。

「まっ、まてっ!まだ無理っ・・・ あっ、あっ、やめっ・・・」

持ち上げていた腰をゆっくりと落としていく。亀頭の先端を伺うように何度も浅く潜り込ませると、何度目かに吸い付くように反応した。

カイの背がしなり、きつく閉じた瞼から盛り上がっていた涙が流れ落ちる。
傷をつけないようにゆっくりと押し進めていくと、そこは言葉とは裏腹に誘い込むようにうごめいてヴァイスを飲み込んでいった。

「カイ、狭い・・・」
「ばかやろ・・・」
「かわいい・・・」
「ばかっ ひっう・・・ あぁ・・・」

太い亀頭の部分を過ぎてしまい、カイがほっとしたように息をつく。縋るように背に回された腕から力が抜けて、重力に引っ張られた体がずりずりと中を擦りながら落ちていく。
それをなすすべもなく受け入れながら、カイが泣くような声を上げた。

「ぁんっ、このっ、ばかっ、ぜつりんやろーっ!」
「すご・・・ 絞り取られそう」
「あっ、あっ、う、うごかすなよ、まだ、ムリだからぁ・・・っ」
「ごめん、もう・・・」
「――っ!!」

カイの腰を掴んで入りきらなかった奥まで一気に突き入れる。言葉もなく痙攣した体に文字通り全て持って行かれそうになり、ヴァイスは歯を食いしばって衝撃に耐えた。

「はっ、はぁぁ・・・っ!」

ヴァイスの頭に縋りつくようにしていたカイの唇から甘い吐息がもれる。
軽く揺すってやると、快感を拾うことに慣れてしまったカイの内壁がヴァイスの先走りを得て濡れたような音を立てた。

「ばかっ、こんなのやだってぇ・・・」

上ずった泣き声に煽られて、ヴァイスは掴んだままだったカイの腰を捏ねるように動かした。





目を開くと、すぐ目の前にじっとりとこちらを睨む恋人の顔があった。

「・・・怒ってる?」

心当たりは、ある。カイの泣き顔が見たくなって、無理な抱き方をしてしまった。
ヴァイスが頭をかくと、カイはさらに眦を吊り上げた。

「ったりめーだろ」
「でも、気持ちよさそうだった・・・ 痛っ!」

殴られた。
カイはヴァイスを睨み、それから目を伏せた。

「あーゆーのは、やだ」
「ごめん」
「謝ればなんでも許されると思うなよ」

不機嫌そうに逸らされる目を追っていたら、唐突に閃いた。

「わかった!カイ、前戯好きなんだ。痛っ!」

また殴られた。

「朝っぱらから前戯とかでかい声で喚くんじゃねーよ!」
「でもそうだよな?それって、オレに触られたら気持ちいいってことだろ?最初の頃は全然触らせてくれなかったのに」
「そっ、・・・」

カイが絶句した。ヴァイスは時計を見、起きるにはまだ早い時間であることを確認してからカイを抱きしめた。

「ちょ、何」
「埋め合わせさせて」
「いらねー」
「遠慮しなくていいって!」

不服そうに眉を寄せるカイの唇に何度も口づける。
「しょーがねーから許してやるんだからな、そこんとこ肝に命じろよ」と睨んでくる顔を見ながら、やっぱりたまには泣き顔も見たいな、とヴァイスは心の中で思った。


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