猫奴隷の日常

ハルカ

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閑話 3

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「しかし、見つかってよかったです」

しんみりと呟くように言ったセバスの言葉に、カイとサヤは何度も頷いた。
三人が向かい合う厨房のテーブルの上には、すでに空の酒瓶がいくつも転がっている。

「もー、一時は街が消滅するかと思ったぜ」
「そうなったらさすがにエイベル様のお父上も庇いきれませんから、我々ともども処刑されていたでしょうね」
「連帯責任かよ、怖えー」
「元はと言えば、カイがレイから目を離すのがいけないのよ」
「オレのせい!?」
「そうよ。もし一緒にいたのが私なら、絶対に誘拐なんてさせなかった」
「そうは言ってもよー。市場だぜ?あんな人が多いとこでどーやって見失わないようにすんだよ」
「そうね、例えば、首輪をつけて紐で結んでおくとか」
「ペットか!そんなん却下に決まってんだろ!」
「じゃあ、お互いの手を縄でぐるぐる巻きにしておくとか」
「それもそれで怖えーよ。ぜんっぜん名案じゃねーし」
「我儘ね。全く」

サヤはため息をついてグラスに口をつける。表情は全く変わっていないのでわかりにくいが、かなり酔っているようだ。

「ともかく、明日からはしばらく後処理に追われそうです」
「あー。あの奴隷解放だか何だかを言ってる奴らの」
「それもですし、焼け焦げた森の修復や、エイベル様が締め上げ・・・ いえ、話を聞いた石屋の主人への口止めとか、路地裏で彼らを見かけたという者達へのケガの治療などもあります」

セバスはため息をついた。その処理とやらに奔走するのは、セバスの仕事になるのだろう。カイは気の毒になって、セバスのグラスに酒を注いだ。

「さらに悪名が広がっちまうな」
「本人は気にしていませんから、いいんじゃないでしょうか?」

乾いた笑い声が二人の間で響いた。その時、ガタン!という大きな音がして、サヤが立ち上がった。
サヤは、驚いて振り仰いだ二人の男をひたりと据わった目で見つめた。

「やっぱり私、レイにちゃんと伝えてくるわ」
「な、何を?」
「この世には危険が沢山あるってことをよ。ウサギの獣人である私には分かってるの。もっと慎重に生きないといけないって」

そう言って部屋を出て行こうするのを、カイは慌てて引き留めた。

「いやいや!今はまじーよ」
「何がまずいの」
「何がって、今真っ最中だろ!」
「真っ最中って、何の」
「何のって、そんなの言えねーけど!つーか、そのためにオレたちはここに引っ込んだんだろーが!」
「サヤさん、今日レイはとても怖い目に遭ったんです。今はエイベル様と二人の時間を過ごさせてあげましょう」

セバスがそう言うと、サヤはストンと元の椅子に座った。

「セバス様がそう言うなら」
「あーびびった。そうそう。まぁ酒でも飲めって」

カイがサヤのグラスに酒を注ぐ。しかしサヤはそれを胡乱な目で見つめた。

「狼から勧められた酒は飲むなっていうのがウサギ族の教えにあるの。だからそれはいらないわ」
「勝手にしろコノヤロー!」

そうして騒がしく使用人たちの夜は更けていった。
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