猫奴隷の日常

レイ １

ちょっとだけ冒険したくてやったことが、取り返しのつかないことを引き起こすこともある。


レイはそれを痛いほど痛感しながら、頭を床に擦り付けていた。
見える限り360度を、男たちの靴に囲まれている。

それらの靴がさっきまでレイを痛めつけていたのだ。そしてまたいつそれが自分に振り下ろされるか分からない。
それもすべてその場の雰囲気と男たちの気分によるだろう。

そしてそれに文句を言える立場でもなかった。


「申し訳ありませんでした！」

レイは何度目かもわからない謝罪を口にした。

「どうする？こいつ」

視界の中のどれかの靴が地面をけりながら言う。

「殺すか？」

どれかが、椅子に座って靴先をプラプラさせながら言う。

「さすがにまずいってー。埋める穴掘るのも面倒だし」
「自分で掘らせたらいいんじゃね？」
「ああー。頭いい！」

名案だとばかりに、靴の中のどれかが指を鳴らす。
どうやら話がついてしまったようだ。


「命だけは助けてくださっ　イデデデ！！」

一縷の望みをかけて声を上げた瞬間に前髪を掴まれた。

「まぁまてよ。こいつ、結構可愛い顔してるぜ？奴隷として売ったらいい値になるんじゃないか？」
「そうか？腫れてるぜ？」
「そりゃ殴ったからだろ」

アハハ　と笑い声が上がる。

「どうだ？死ぬのと奴隷になるのとどっちにする？」

前髪を掴んでいる男が、レイの顔を覗き込んでくる。

「奴隷になります！」

即答したレイは、男の太い腕に荷物のように抱え上げられた。

「よし、決まりだな。さっそくムルんとこに連れてこうぜー」

高くなった視界は、今度は獣人たちのモフモフとした腕と胸筋に囲まれた。