上 下
237 / 262
クーン20歳

第236話 ニールスの願い

しおりを挟む
 ニールスは最近魔境の向こうで暴れているというドラゴンを討伐すべく、魔境を超えていた。

 ポチによる要請だ。
 ポチはクーンと共に魔大陸へ向かわねばならず、自身の仲間が何かによって暴走しているのを止められないでいた。
 そこにニールスが居た。だから頼んだ。
 ニールスは快く引き受けてくれた・・・・ように思っていた。
 だが違った。

【ポチありがとう。これで大義名分を得たよ。彼女達には上手く伝えてくれないか。そもそもドラゴン、しかもエンシェントドラゴンがああも暴れるとは考えにくくてね。つまり何か理由があるはずだ。それを解決するまで僕は戻らない。彼女達には荷が重すぎる。それに伝えれば必ず着いてくるだろう・・・・僕には彼女達を幸せには決してできない。もうクーン達は自分で何とかなるだろうから心配していないんだが、彼女達は今でも僕に依存している。それは僕の中途半端な態度のせいでもあるのだが・・・・僕は彼女達の幸せを心から願っているんだよ。そして僕には彼女達を幸せにはできない。僕は多くの過ちを犯した。僕の両手は多くの血で汚れている。真っ黒なんだよ。彼女達は真っ白のままだ。そして・・・・僕は彼女達を選ぶ事が出来ず、何処かへ逃げた、そう伝えてほしい。いや、伝えなくてもいい。クランメンバーには彼女達を見届けてもらいたい。特に【絶対領域】は全員女性だ。話せばわかってくれるだろう。そして商人ギルドのギルドドリース・ヤンセンとパウラ・ボーハールツにはこの事を伝えてくれないか?最後に冒険者ギルドのフスタ・ペイルに全てを託したい。彼女は聡い。必ず真実を突き止めるだろうから、最初から説明しておいた方がいいだろう。】

「それには心配及びませんニールス様。」
 ニールスは驚いた。
 この場には自分とポチしかいないと思っていたからだ。
「どうしてここに?」
「・・・・私は最初からして知っていました。どうしてパーティーメンバーに手を出さないのかとそれは不思議でした。そして知ったのです。ニールス様は何かを手にし、それで自分がどうすべきか感じ、それが今という事ですわ。」

 ニールスはフスタに託そうと思っていた。
「そうか、君は何者だい?と聞いても答えてはくれないだろうな。だが丁度いい。ポチに渡し、君に託すつもりだったんだ。受け取ってくれ。これが・・・・」
「全てを視る事が出来ると言われている【千里眼】ですわね。これを用いたという事は・・・・」
「ああ、もう僕の命はあと僅かだ。僅かと言っても数年の猶予はあるんだけれどね。その間に・・・・倒す。」
「ではこれを身につけて下さい。【覇者のネックレス】です。これがあれば力の減少も今より緩やかになるでしょう。」
「・・・・これは受け取れない。」
「受け取ってもらえわねば困ります。せめて来世で・・・・できれば今世で、と思いますがその為の目印となりますのよ。」
「そうなのかい?じゃあ有り難く使わせてもらうよ。」
 ニールスはこの時初めて自分から女性を抱きしめた。どうしてこんな事をしたのかわからない。

「後の事はお任せ下さい。ではニールス様、行ってらっしゃいませ。」
「行ってくるよ。」
 ニールスはちょっと出かけてくる、そんな感じでの旅立ち。
 しかしもう二度と戻ってくる事は叶わぬだろう。別れも伝えられない。
 だがそれでいい。

 こうしてニールスは人知れず消えていった。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

聖女?魔女? 実は……【創造】魔法が使える忘れ去られた伝説の【召喚士】でした~私の邪魔だけはしないでよね!~

小鳥遊ことり
ファンタジー
気晴らしのつもりで参加したパワースポットへの旅行で、不思議な体験をしてしまった。 森の奥で1000年前から生きているという神聖な聖樹、それと知らずに近付いてしまい、私はまばゆい光に包まれて……! そこから始まる異世界転移。 聖樹からもらった加護により類まれな魔法を使えるようになったフィーネは、異世界の様々に立ち向かう。 その行いは聖なる力で民を慈しむ癒やしの聖女か。 はたまた、破壊の限りを尽くすような魔女なのか。 「いいえ、私は自由にさせていただきます!」 その正体は…… 自由自在に"創造"魔法を操り、精霊を契約召喚する忘れ去られた伝説の"召喚士"だった!? 人生は一度きり! 自分の好きなように生きたいじゃない? 邪魔するなら、容赦はしません! 異世界の人々や精霊たちとの喜びと悲しみ、出会いと別れ、感動もりもり盛りだくさんの長編ファンタジー☆ これはフィーネと精霊の物語。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界で俺はチーター

田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。 そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。 蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?! しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?

処理中です...