上 下
136 / 262
クランとしての試練

第135話 こんな話をするのには裏があるな

しおりを挟む
 俺はてっきり、王都の工房やクランの拠点が破壊された事に関する、何かしらの報告と思っていたので、正直国王が何故今このタイミングでこんな話をするんだ、と訝しんだ。

「クーンよ、余が何故今この話をするのか、疑問に思っておるのであろう?」
「ああ、全く必要ないよな。俺は工房や拠点が破壊された事の話だと思っていたからな。正直嫌な予感しかしない。」
「いい判断だ。何故なら今、この世界は既に崩壊しかけているのだよ。破綻していると言うべきか。だが、ここにきて一つの希望が見えてきた。」
 何を言っているんだ?話が大きすぎるぞ?しかも今は関係ない!
「俺がその崩壊を止める術を持っているとでも言うのか?」
「その通りだ。クーンは異界からやってきた。そうだろう?そしてその時に、本来であればあり得ない話だが、クーンは神のアイテムを持ち出す事に成功し、実際一度使っている。」
 使ったっけ?使おうとしてダイスを落っことしたんじゃなかったか?
「それで何かをしろって?」
「今はまだいい。その時が来たら知らせる。この話は此処までだ。さて、本来の話をしようじゃないか。」

 おいコラ待てよ!そういう話は先にしておけよ!

「で、あんたと俺がまたこうして話をするのか?」
「今度こそ皆に聞いてもらう。場所を移そうではないか。」
 しかしながら、ここで王妃の横やりが。
「女の顔に盾を押し付ける、中々にいい趣味じゃな。」
 そういえばそうだった。
「いや、あんたの目を見たらまた魅了の影響を受けるんじゃないか?」
「そのような事はせぬ。」

 俺はそっと盾を王妃に渡す。
 そこには半ば顔をひきつらせた女の顔があった。
 なまじ王妃は完璧すぎる顔なので、正直怖い。
 俺は学んだ。美人を怒らせると怖い。
 ヤーナも将来美人になるからな、気を付けないと。今は美少女と言った所か。
 は!何で俺がヤーナの将来を考えているんだ?

 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・

 よくわからないまま、会議の出来る場所へ移った。
 全員が座る椅子と、目の前には机が並べてある。

 それが円状になっている。
 当然ながら国王がその中心・つまり上座に位置している。

 こういう時俺は何処に座れば?
 因みに国王の隣は当然ながら?王妃が。
 この国は王妃も会議に出るのか?
 王妃の役割を知らない俺にはわからないのだが、そう言うものなのだろう。
 そしてその反対側はディーデリックとサスキアが座った。つまり国王の隣にディーデリックが、更にその隣にサスキアだ。
 因みに奥が上座と言われているのは、この世界でも日本でも変わらないようだ。
 そして入り口付近は既にニールスにい以外の【雲外蒼天】のメンバーがいた。
 いくら俺の立場がクランの代表とはいえ、平民だからな。俺もそこに座ろうと思っていたんだが、ヤーナに連れ去られた。
 よりにもよって王妃の隣だと!
 反対側に居るサスキアの隣は、フロリーナだ。
『なあヤーナ、このパターンだと王妃の隣はヤーナだよな?』
 俺はこっそりヤーナに問いかけたが、
『王妃様の希望よ?諦めて。』
 俺は椅子に座った。
 何故かにっこり微笑んでくる王妃。

 さっきとのギャップが激しいのだが。
 こうしてみると完璧な美女なんだよな。
 そんな美女が微笑んでくれる。
 だからこそ恐ろしい。
 この女の本性を知らなかったら、騙されている所だ。
『クーンよ、何か誤解しているようじゃが、此方は本来こうした振る舞いをしておるのじゃぞ?』

 嘘つけ!
 だがさっき学んだ。何度も言うが美人を怒らすのは危険すぎる。
『クーンは本来20代であろう?では此方と釣り合うの?』
 そう言って何故か手を握ってきた。な、何が起こっているんだ?俺の様子が変だと気が付いたヤーナが、
『クーン、どうしたの?』
 すると王妃が、
『くくく、冗談じゃ。よい婚約者じゃな。ヤーナよ、クーンを手放す出ないぞえ。』
『え、あ、はい王妃様。しっかりと手綱は握っていますわ。』
 俺を挟んで女の会話が始まった。
 何それ怖い。

 そして俺の手には何かが残っていた。何これ怖い。本日何度目の怖いだ?とてもじゃないが今は確認できないぞ。
 そして俺はいつの間にか、ヤーナに手綱を握られていたのか!
『ヤーナよ、これを渡しておくのじゃ。何かクーンの身に危険があれば躊躇なく使うのじゃぞ。』
 何を貰ったんだ?
 そんな事があったが、いつの間にか席は埋まった。

 何故かセバスチャンが議長らしい。
 フロリーナの隣に座っていた。

「では、第一の議題、クラン【以一当千】及び【クーン工房】壊滅についての現状報告と、クラン【一騎当千】についての報告を行います。」
 第一の議題にしては話がてんこ盛りだ。
 そもそも壊滅の報告と【一騎当千】の議題が何故同じなんだ?分けるだろう?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶
ファンタジー
大学受験を乗り越えた高校三年生の青年『相模 型太(さがみ けいた)』。 無事進路が決まったので受験勉強のため封印していた幼少からの趣味、プラモデル作りを再開した。 しかし長い間押さえていた衝動が爆発し、型太は三日三晩、不眠不休で作業に没頭してしまう。 三日経っていることに気付いた時には既に遅く、型太は椅子から立ち上がると同時に気を失ってしまう。 型太が目を覚さますと、そこは見知らぬ土地だった。 アニメやマンガ関連の造形が深い型太は、自分は異世界転生したのだと悟る。 もうプラモデルを作ることができなくなるという喪失感はあるものの、それよりもこの異世界でどんな冒険が待ちわびているのだろうと、型太は胸を躍らせる。 しかし自分のステータスを確認すると、どの能力値も最低ランクで、スキルはたったのひとつだけ。 それも、『モデラー』という謎のスキルだった。 竜が空を飛んでいるような剣と魔法の世界で、どう考えても生き延びることが出来なさそうな能力に型太は絶望する。 しかし、意外なところで型太の持つ謎スキルと、プラモデルの製作技術が役に立つとは、この時はまだ知るよしもなかった。 これは、異世界で趣味を満喫しながら無双してしまう男の物語である。 ※主人公がプラモデル作り始めるのは10話あたりからです。全体的にゆったりと話が進行しますのでご了承ください。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

処理中です...