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クランとしての試練

第113話 ポチが帰って来た

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 ポチとかげが帰ってきた。
 帰って来いって伝えた覚えはないのだが、どうしたんだ。
 まさか魔境の向こうでの勢力争いとか、権力争いかは知らないが、負けてこっちに逃げてきたとか?

 この忙しい時にいきなり戻ってきても、ポチドラゴンの寝床なんぞ用意してないぞ!

【縄張りには当日中に戻る事が出来る!従ってここでは寝んぞ!】
 じゃあ戻れよ!

 俺は最近も続いている地味な嫌がらせにイラついていたようで、思わずポチペットに当たってしまったようだ。

【何やら主の、我に対する認識がコロコロ変わっておるようだが大丈夫か?】

 ポチ爬虫類に心配されてしまった。
 どうでもいいから要件を言え!

【主が元々住んでおったが既に破壊された、つまり主の故郷に住んでいた農民を保護した。】
 うん?今なんて言った?それに破壊したのはポチ達じゃないのか?
【我等が、主の住んでいた領地を報復で破壊したが、その前に逃げていた農民が多数・・・・いや、全員無事だがいただろう。結局逃げた先で魔族に襲われたのだ。たまたま我が縄張りに戻る時に、彼等が住み着いておる場所を見ていたのでな、注視しておったのだ。するとここ最近、魔族を見かけるようになった。そしてその魔族を招き入れておる一団が目に付いたのでこうして報告に来たのだ。】

 農民を保護したって報告じゃないのか?いやいや落ち着こう。
 クツーゴ領に住んでいた農民を保護した。もしかして父や母もか?
 で、その農民は別の場所で暮らしていたのでいいのか?そこを魔族が襲ったって言いたいのか?結局最終的にポチが保護したって事なのか。

 わからん。
 俺は疲れすぎて頭の回転が鈍すぎるようだ。

 それと魔族を招き入れた一団が居たって事は、人が魔族を招き入れ、逃げてから別の場所で暮らしていた元領民を襲ったのか?
 酷い話だが、そんな事をして何かメリットがあるのか?
 こう言っては何だが彼等はきっと貧乏だぞ?
 女か?そりゃあ数百人規模であれば、器量よしの女性もいるだろう・・・・
 だがそれだったらわざわざ人の少ない場所で物色はしないよな?

 人の多い場所の方が、好みの姿の女性を見つける事が出来る・・・・いや、女性とは限らないな。好みの男性カモ・・・・いや、そっちじゃない。敵のボスが女性の可能性もあるって意味だ。

 すまん、忘れてくれ。

 俺がうんうん悩んで、そして知恵熱で頭が沸騰しそうになっていると、
「クーン様、何やら手紙が届いているようですが、いかがいたしましょうか?」
 セバスチャンが珍しく手紙を見せてきた。

 一応クラン宛の手紙は、全てセバスチャンに目を通させている。
 何やら蝋で封がなされている手紙・・・・封蝋と言うのだっけ?貴族がよく出す手紙はそう言った封がなされているらしいが、そう言う手紙も全てセバスチャンが目を通す事になっている。

 例え俺宛でもだ。

「一応中身を確認いたしました。魔道具にて罠等の可能性も、魔力の仕込み等もない事を確認したのですが、内容が分かりませぬ。」

 意味不明な言葉でも記載してあるのか?
 俺はセバスチャンから手紙を受け取った。

 流石にあれから俺は、こっちの言葉の読み書きをきっちり覚えた。
 ヤーナにお願いして学んだのだ、えっへん!

 いかんいかん。で、内容は・・・・?

【靴を五足程見受けました。いい感じにこなれているのですが、そろそろ新品に替え時かと思いまして。その前よくバリが出るんですよ。そのせいでぎーとコアから音がしましてねえ。どうでしょう、一度見てみませんか?では近いうちに。】

 なんじゃこれ?
「セバスチャン、さっぱり理解できないが差出人や誰宛とかわかるのか?」
 何故かドキドキしている。それも悪い意味でだ。

「分かりませぬ。飛脚が配達して下さった手紙の内の一つでしたので、直接受け取っておらず申し訳ございません。」

 もう一度読み直すが、理解が出来ない。
 靴にバリ、そしてコアから音がする?
 全く一貫性が無い。
 これはあれか?何か隠されているのか?

 俺は理解できたはずなのだが、頭がそれを拒絶していた。
 5度ほど読んだ所で俺の頭は限界に達し、ずっと黙って俺の隣に居てくれたヤーナを見た。
「きゃああ!!!!クーン、ど、どうしたの?セバスチャン、この手紙呪いがかかっているんじゃないの?目と鼻、耳からも血が出ているわよ!フロリーナ!フロリーナ!」

 最近ヤーナも、クラン内でフロリーナを名前で呼ぶようになった。
 以前は身分の違いから様付けしていた気がしたが、今はすっかり・・・・今はどうでもいい。何故なら俺は何やらフワーっとした感覚になっていたからだ。
 そして理解した。
 これは脅迫文だ。そして俺だけなのか、クランメンバーをターゲットにしているのか、間違いなく対象者を誘い出す罠だ。

 声を出そうとしたが・・・・ヤーナが俺を受け止めてくれたのは分かったが、目の前が真っ赤になり、血の味がした。

 そしてふと気が付けば、俺はベッドの上だった。

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