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王都襲来

第72話 怪しげな4人

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 クーンに遅れる事数分、ニールスは城壁付近にやってきた。

『クーンは流石だね。速すぎる。』
 そう言いつつニールスはクーンの次に辺境側に到達している。

 少し離れてセバスチャン。はるか後方にフロリーナ。
 そして地上から向かってくる面々のうち、ティーデとヒセラが早かった。
 そしてマースだが・・・・
 彼は一人遅れていた。
 何故ならば、ヤーナ同様門から王都に入ったのだが、直ぐに自分にとある冒険者を紹介してくれた商人を見かけて、その後ろを歩く3人を、しかも小太り体型で貴族らしき姿が気になったので様子を見ていたのだ。
 自分が壁に到達してもあまり意味はなさそうだが、目の前の4人に違和感を感じ、独断で残ったのだ。

 従魔であるフェンリルは上手く隠れる場所を見つけてくれ、マースは4人から見えない場所で監視をしている。

【さあ皆さまここですよ。】
 そう言って商人は3人を案内していた。
【何だここは?獣の臭いがするではないか!儂に何をさせようとしているのだ?】
【臭くてたまらん!】
【それより腹が減ったのだが、何か食べるものはないのか商人よ。】
 好き勝手な事を言っている3人。

 ツクーゴ元男爵・リーバクーヨ元男爵・ギーコア元男爵の3人である。
 そしてその3人に好き勝手言われているのは、あの怪しげな奴隷商。
【まあそう言わず、臭いはカモフラージュですし、中には皆様のお口に合えば宜しいのですが、軽食が用意してありますのでもう少しの辛抱ですよ。】

 そう言って、どう見ても獣舎にしか見えない建物の中へ入っていく4人。
 マースはテイマーなので、この建物が獣舎とすぐに気が付いた。
 それに獣の臭いがきつい。
 これを意味する所は手入れをされないまま、何体かの獣をこの建物に閉じ込めて酷い扱いをしている、そうマースは悟った。

 だが自分に一体何ができるのか?
【あの建物には主がテイムした魔獣が複数押し込められておるな。】
【どういう事?確かに僕はクーンさんと知り合う前に、何体かの従魔をあの商人の依頼で受け渡しましたけど。ちゃんとしたギルド経由の依頼だったから受けたのですが、どういう事でしょうか。】
【待て、何かが出て来るぞ。】


 見ると、マースがパーティーを組んだ事のある複数の人間が、計9体の従魔を引き連れ獣舎から出てきた。

【一体何をさせるつもりだ!金をくれるというからやってやらんでもないが、臭いんだこいつは!】

【これは申し訳ございません、ノモズラナ様そして皆様。】
 商人は頭を下げているが、目が笑っていない。

 そしてここからは聞こえないのだが、何やら小言で説明しているようだ。
【なんだ、そんな事でいいのか?】
【時々はこいつらも動かさないといけないのですが、申し訳ありませんが、私一人ではそれも無理なのでございます。】
【そう言う事であれば引き受けてやろうではないか。しかしさっきの豚共を何故乗せる必要があるのだ?】
【それに関してで御座いますが、あの3人には目立っていただきます。そして貴方達が犯した罪を、あの3人になすりつけます。そうする事で【唯我独尊】は濡れ衣を着させられていたとなり、奴隷の身分の取り消しとはく奪された冒険者の資格の回復、本来の名前での復帰が可能となりましょう。】

 何を言っているのかと思ったマースだが、マースは【唯我独尊】の事を知らなかった。

 そして件の奴隷商人であるが、
【たったの9体では話にならんが、せめて陽動ぐらいにはなってもらわないと。相変わらず使えん奴等だ。それに誤算だったのがあのテイマーだ。まさか二つスキルに仲間ができるとは想定外だった。せめて20体は欲しかったのだが、あのお方がもう待てんと申している以上、やるしかないか。】

 因みにマースは魔道具を用い二つスキルと思わせてはいるが、実は一つスキル。
 何か分からないが大変な事になったとマースは感じつつ、どう対処すべきか考えるのだった。

『どうするべきだと思う?』
 従魔に相談をするマース。
【そんなの決まっておるであろう。やられる前にやるのだ。まずはあの冒険者共だな。従魔は放置しても問題なかろう。騎乗用の従魔ばかりで何かあってもほぼ無害だろうて。】

 どう見てもあの冒険者は全員自分よりレベルが高い。しかも6名。勝てるだろうか・・・・
 マースはそう考えつつ、気が付けばどう戦うか考えているのだった。

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