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事実上の追放

第28話 クーン覚醒

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 そう言えば俺は今まで気を失う程の怪我や、戦いに敗れてこんな状況に追い込まれた事はなかったっけな。
 クツーゴ男爵領でもここまで追い込まれた事はなかったし、相手は魔物だったしなあ。
 訓練以外で人と戦った事ってなかったから、俺は委縮していたのだろうか?

 気を失う直前、走馬灯のように記憶がよみがえる。
 そんな中気になる記憶がある。俺の知らない記憶だ。


 ●  一話の記憶です。●
 一話で出てきた部分です。
 読み飛ばしてもらっても支障はないです。  


【うわ・・・・何たる事だ!】
【あーお前さんやらかしたな!】
【タイミングが悪かったのだ!している時に、まさかあのような偶然が起こるとは予想できぬわ!】
【いやだがどうするんだ?若いのを放っておくのか?】
【うわ!そうじゃった・・・・】
『なあ、これは夢なのか?』
【おおすまぬな!お前さんは運悪く事故で死んでしまったんじゃ。】
『は?俺が死んだ?何でだ?こう見えて持病はないぞ?健康体だ!それに何で自宅の部屋でネットしていて死ぬんだ?』
【ああそれはな・・・・斯々然々という訳でな、もうお前さんはぐちゃぐちゃのべちょべちょで即死じゃ。】
『はあ?意味不明だし!それにそうだ!あんたの声が聞こえたぞ?【あ、やべ】だったか?』
【うぐ・・・・じゃが済まぬが生き返らす事はできぬし、今お前さんの居た星・・・・地球というたか、既に飽和状態でな違う星に転生してほしいのじゃ・・・・今なら其方の知識で異世界、いわゆる魔法の世界なら空きはあるのじゃ。】
『いやなんで異世界なんだよ?俺はパソコンやスマホでネットの出来るこの世界がいいんだよ!』
【おいじーさん時間がないんじゃねえか?若いのもうすぐ消滅するぞ?】
【うわまずい!すまぬが若いの、この10面ダイスを振ってくれぬか?あちらの世界にはスキルが存在していてのう、そのダイスの数だけスキルが手に入るはずじゃ・・・・】
『おいちょっと待て!何勝手に・・・・なあ1と出たんだが?』
【うはははは!これは儂の勝ちじゃな!】
【いや待てまだ勝負は決まっておらぬ!】
【何がじゃ!動揺しくさりおって!!】
【あ、済まぬがそういう訳であちらの世界で・・・・せめてここでの記憶を思い出せるようにして進ぜよう。】
『おいコラちょっと待て!何勝手に解決してやがる!つうかこれあんたらのミスじゃねえのか?』
【若いの細かい事は気にするな!お前さんの新たな人生に幸あらん事を!プフフフ!!!】
『おい今笑いやがったな!覚えてやが・・・・』
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】

 ●  ここから本篇に戻ります  ●

 何だ今のは?
 俺は【異世界】からやってきたのか?そういやあさっきも【転生】とか・・・・何だこれ?

 そして・・・・とどめの一撃。

 今後は頭を蹴られたようだ。
 ここで俺の意識は途絶える。


「きゃあ!やめて下さい!」
「フロリーナさまに無礼な!触るな!」

「おうおう、お前等まだ11歳なんだったか?それにしてはと思ったが胸は・・・・殆ど無さそうだが年相応か?だが顔はいいもんなあ!ちょっと楽しませてよ!いや待てよ、ひょっとしたら着やせしてっかあ?」
 スカートは破れ、シミひとつない太腿はさらけ出され、上着も既にない。
 肌着と破れたスカート、そして下着のみ。

 2人は一緒にいた老執事ともう一人・クーンを見た。
 
 フロリーナの執事・セバスチャンは腕と足の骨を折られ、身動きができない。
 そしてもう一人の男の子・クーンは血まみれで倒れている。特に頭は血で真っ赤。
 どうしてこうなったの?
 フロリーナとヤーナは己に起こった出来事を受け入れられなかった。そしてこの後に自身の身に起こるであろう出来事を考えると・・・・
 貴族の娘。実家を追放され既に貴族ではないが公爵・侯爵令嬢としての誇りが、辱めを受けるぐらいなら自死をするしかない、そう決断をするしかないと考え始めていた所、

「ぎゃあ!!」

「いてええ!!!!」
「あ、足があ!!!!」
「ぐぼべぎゃ!」

 え?何が起こったの?

「フロリーナさま、今です。」
 ヤーナは咄嗟の出来事に何が起こったか分からないが、急に拘束が解かれたのでフロリーナの所に向かい身体を起こす。そしてセバスチャンがすぐ側に倒れていたのでフロリーナと共に向かう。

「フロリーナさま、治療を!」
「わ、わかったわ!爺、もう少しの辛抱ですよ。それとこれは何かしら?」
 この間にヤーナはセバスチャンの腕と足をまっすぐにする。
 こうしないと治療をした後手足が曲がったまま、という事が起こりえるからだ。
 そしてフロリーナの指摘があったセバスチャンの首を見ると、付近に何かが付着している。付着していたのはピンのようだ。
 フロリーナはピンをつまんで取る。

 フロリーナは、自身の唯一のスキルである聖属性の魔法、普通は火・水・風・土の四大属性を授かるのだが、彼女は公爵家の人間がそうであるように、聖属性を授かった。ただ、普通の人はこれとは別に4大属性も授かるのが一般的なのだが彼女はこのスキル一つしか授からなかった。

 フロリーナはセバスチャンの治療を開始した。
 セバスチャンの全身が輝き、あっという間に怪我が治った。
 それと共に倒れるフロリーナ。
 まだレベルの低い彼女は、酷い怪我の治療を行使すると、魔力が枯渇してしまうのだ。

「お、お嬢様申し訳ございません。何やら首に仕込まれましてございます。」
 セバスチャンは立ち上がり、周りを見る。
 フロリーナもヤーナもだ。
 すると、何やらぶつぶつ言っているクーンが、一人で立っているのが視界に入った。そして周囲には先ほど無礼を働いていた唯我独尊を含めた冒険者が全員のた打ち回っている姿を確認できた。
 正確にはジタバタしているだけ、なのだが。

「た、助かった・・・・のかしら?」
 フロリーナがヤーナに聞く。
「そ、そのようですフロリーナさま。しかしこれは、クーンとか言うのがやったのでしょうか?こう言っては何ですが執事殿が呆気なく無力化された実力者をたった一人で?」

 しかし何か様子が変だ。
 そう感じた3人は、クーンの元へ向かう。
「クーンさま?」
 クーンと呼ばれた少年はフロリーナをギロッと睨んだ後、

「俺の名は土砂|《どしゃ》 剛史|《つよし》だ!ふ・・・・ふはははははは!!!!ようやく思い出した!そうだ!俺は土砂剛史だ!思い出したぞ!思い出した・・・・ってうっわああ!!!!!お前等何つう格好をしてやがるんだ!」

 フロリーナとヤーナは一瞬きょとんとした後、お互いを見、そして自身の姿を見た。

 そこに映ったのは上半身は肌着のみの姿。それも所々破れて一部見られて恥ずかしい場所が見えてしまっているという有様だ。下半身もスカートがほぼ意味をなさず下着が殆ど丸見え。

「きゃああ!!!!」
「いやあああ!!!!」

 ヤーナの蹴りがさく裂し、クーンは吹き飛んだ。
 記憶を取り戻したとはいえ身体のダメージが治ったわけではなく、そして身体が強化された訳でもなく、見事な放物線を描いて飛んでいく。

「なんで?」

 クーンの記憶は此処で途絶えた。





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