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事実上の追放

第18話 ティーデとヒセラ

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  王都で1週間、それぞれ適当に過ごした。

 俺は弟と妹を連れ、王都の外で薬草採取を行った。
 道中の狩りでの素材は、300人以上の人数で分配、しかも宿代と食事代でほぼ消えるので手持ちには僅かなお金しか残らない。

 なので此処は1週間、待っている間に安全な薬草採取を行う事にした。王都では冒険者の登録を済ませていない子供に魔物と戦わせる事は、緊急時を除いて禁止らしい。

 但し旅の途中で魔物に遭遇した場合は別だ。何せ戦わないと死ぬ可能性があるからな。
「クーンにい!ここにある!」
「ここにもあるわクーンにい!」

 王都の周囲は薬草の宝庫だ。

 クツーゴ男爵領の周囲もそうだが、この辺りは薬草が豊富だ。
 ただ、クツーゴ男爵領を出てから王都の近くに辿り着く間の道中には、殆ど薬草が生えていなかった。

 後で知ったのだが、王都は元々何もない場所で、この辺りは元々薬草が豊富に生えており、しかも周囲の山は鉱物も多岐にわたり埋蔵されているらしく、この土地とその周辺は素材が豊富なので自然に人々が採取・採掘に集うようになり、やがてこれらの人を目当てに商人が店を開くようになり、宿や食堂もでき、やがて村に街にと発展したらしい。

 その後この都市で得られる豊富な素材を周囲に運ぶ為に道が整備され、ついにはこの国であらゆる事に関して利便性のある、そして最も栄えた都市に発展していった。
 こうした事が理由で王都がここになったらしい。

 よくわからんが、だから薬草が豊富なんだな。
 そもそもとして、街があるから薬草ではなく、薬草があるから街が発展、王都にまでなったという事なのだが、俺がここで薬草採取を行うにたり、疑問に思う事があった。
 あまり薬草採取をする冒険者を見かけない。
 こんなに豊富なのに何故?

 俺達3人は誰からの邪魔を受ける事もなく、結構な量の薬草を採取できた。
 そして俺は薬草を運搬する台車を新たに作った。
 そう言えば1年前もそんな感じで台車を作ったっけ。そして【キック台車】の元を作ったんだったな。

 あ、そうそう、俺達から少し離れた場所で薬草採取をしている人を見かけた。
 珍しいな。
 何でって2人組の女の子だったからだ。
 ただ、もう少し離れた場所に年老いた爺さん?がいるのも気が付いたが何してんだ?3人で行動しているのか?
 何だかあの爺さんは時々こっちを見ている気がしないでもないが、まあちょっかいを出してこないのなら無視でいいだろう。

 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・

 久しぶりに冒険者ギルドに顔を出すと、以前見かけた綺麗なおねーさんがいた。


「あら?確か君1年前に来てた子よね?また辺境から来たの?え?後ろの2人は弟さんと妹さんなの?そうよねはっきり思い出したわ。君って確かニールス君の弟よね?彼って今では王都でもそれなりに名が知れるようになったのよ?確か13歳だったかしら。それなのにもうレベルが20を超えているのよ?あ、ごめんね。」
 ニールスにいの事を聞けるのは嬉しい。
 そして薬草を渡すと、
「まあ凄い量ね!しかも相当状態がいいわ!品質も文句ないわね!ちょっと待っていてね。」

「くーんにい!ニールスにいの事あのお姉さん言っていたねえ!」
「ニールスにいって有名なの?」
「ニールスにいはずいぶん活躍してるみたいだな!そのうち会えるだろうし楽しみだよ!」

 3人でニールスにいの話をしていたら、受付のお姉さんが戻って来た。

「カードを出してもらえるかしら?あら、ずいぶん活躍してるわね!入金と共にレベルチェックね!」

 お姉さんにカード渡すと色々教えてくれた。
 名前      :【 クーン・カウペル】
 性別      :【男】
 レベル     :【12】
 ランク     :【F】
 年齢      :【11】
 住居並びに連絡先:【ロッベモント王国・クツーゴ領】
 所持スキル   :【土/0】
 身分      :【農民】
 所属      :【なし】
 賞罰      :【+3】
 ポイント残高  :【12】
 残高      :【139、500】

 今回10万ゴールド以上稼いだらしい。
 そう言えばポイントってなんだ?

「今回は10万ゴールド以上ね!え?1週間足止め?じゃあその間も薬草採取をお願いね!それとポイント?ええとね、ポイントってレベルが上がれば付与されるのだけど、自分の持っているスキルに投資できるのよね。投資すればその分スキルのレベルが上がるから、どんどん強くなるわね。だけどポイントの投資は慎重にね・・・・って君は一つだけ?ええ?一つだけなのにレベル12までもう上げちゃったの?じゃあ全部唯一のスキルに投資ね。でも一応今後仲間が増えるかもだし、沢山スキルを持っている人は特に慎重に投資しないといけないのよ。何せポイントはレベルが上がった時しか付与されないんだから。」

 何だか分からんが色々聞けたっぽい。だけど何?俺のように一つスキルでレベル12は珍しいのか?

 さて俺達は終わった・・・・ってあれ?さっき見かけた女の子達が来ているな。あ、お姉さんの所で買取をしてもらっているな。

 あまりじろじろ見るのもな・・・・ってうわ!なんだあの2人!
 めちゃくちゃ高そうな服を着ているじゃないか!
 さっきはかなり離れていたからそこまでわからなかったけど。そして2人ともタイプは違うけれど、何あの人形みたいな顔とスタイルは!いや、まだたぶん子供だからスタイルとかおかしいんだが、色々と信じられん。
 世の中あんなのが生息してるんだな。
 はあ。あんなの見ると格差を感じるな。

 だが俺はこの時すっかり忘れていたというか、気が付かなかった。
 1年前、教会で祝福を受けに来た時、女の子が泣いて出て行ったのを。
 そしてそれは1人ではなく2人だった事もすっかり忘れていた。
 と言うか2人だった事は全く知らなかったんだが。

 これは【異世界あるある】、つまり【フラグ】だな!高貴な女の子が何かしらそのうち接触してくるイベントの前振りさ!そして2人の後ろに従っている【セバスチャン】!

 って何の事だ?
 大抵【異世界あるある】ってのが頭に浮かぶと何かしら起こるんだよなあ。
【フラグ】とか【イベント】ってどういう事だよ?あと【セバスチャン】って何の事だよ!

 俺の脳内では先ほど目にした2人と爺さん?といずれ知り合う事になるらしい。
 知り合ってどうなるんだ?俺は弟と妹の事で精一杯だぞ?

 あ、そうそう、2人の名前なんだけどさ、
 弟は
 《ティーデ》
 妹は
 《ヒセラ》
 って名前なんだ!

 今頃名前が出るとか!【異世界あるある】つまり固有の名前が出てくるという事は、2人今後は【物語の重要人物】に昇格したって事だな!

【固有の名前】とかなんだよ!【物語の重要人物】とか弟と妹を何だと思ってやがるんだ!

 俺は気が付けば脳内の謎な何かに怒りをぶつけていた。
 なので目の前の女の子2人が俺の事をじっと見ていた事に全く気が付いていなかったのだった。


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