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クーン・カウペル
第13話 領主の逆鱗
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Side クツーゴ男爵
クツーゴ男爵は、魔境への侵略(本人は偉業と考えている)を長年夢見ていた。
未だかつて誰も成しえていない偉業。
緩衝地帯はほぼ開墾が終わった。
そして急がねば他の領主が魔境へ進出してしまう。
リーバクーヨ男爵領とギーコア男爵領も同様に緩衝地帯を開墾しており、この2つの領も魔境が目前に迫っていたから、余計にクツーゴ男爵はせかしたという何ともな事情があった。
「なんじゃ!」
クツーゴ男爵の側近がクツーゴ男爵に耳打ちをする。
「男爵さま、開拓民の子供が件《くだん》の巨大な岩を除去いたしたようです。」
クツーゴ男爵は困った。いずれは除去したかったがそれは今ではない。
あれは今無くなってもらっては困るからだ。何と間の悪い!
とんでもない巨大な岩を除去できるとなれば折角魔境に、しかも領地には開墾できる土地がもう無いと言っておいたのに、まだ岩が除去できる、そして当面その岩を・・・・そんな事をしていては他の男爵に先を越されてしまう!
それは断じて許されない。
「おい側近、その餓鬼を連れてこい。」
「は!かしこまりました。」
側近は何故、そしてどうするのかを聞かない。
そんな事を聞けば側近である自身の命が危ない。
側近は自らその子供を探しにその岩へと向かった。自分が生き残る為に。
・・・・
・・・
・・
・
「おいお前達、ここにあった岩を除去した子供がこの近くに居るはずだ。」
開拓を行っていた領民が皆一か所に集められ、側近が言い放った。
驚いたのはこの場に集まっていた領民の一人、クーンの父親である。
「あ、あの、それは恐らく私の息子が行った事ではないでしょうか。」
「ほう、其方の息子か。今すぐその子をここへ連れて来い。」
「しょ、少々お、お待ちを。探してまいります。」
クーンの父親は急いでクーンを探しに向かった。
● ● ● ●
Side クーン・に戻ります
「クーン、ここに居たのか!」
親父が血相を変えて走ってきた。
「どうしたんだ親父。」
親父は息を切らしている。
俺はと言えば、昨日遂にあのでかい岩をやっつける事ができたから、これってもう少し小さい岩ならあっという間にできるんじゃね?とか思っちゃった訳で、それを実践中。
「今すぐそれを止めて、着いて来い。」
親父の顔は真剣そのもの。
俺は何かやらかしたのか?
「わ、分かったけど、どうしたんだ?」
「領主様の御側仕えの側近様なんだがな、実は俺も名前は知らないんだが、彼がお前を要求している。どうやらクーン、お前が昨日除去した岩に関して何かあるらしい。」
ええ?もしかしてご神体とかだった?でかかったからな!
最悪【土】を用いて岩を浮かせてしまうか。正確には違うが他に良い表現を思いつかなかったから仕方ないよな!
そんな事を考えつつ親父の後に向かう。
・・・・
・・・
・・
・
「ほう、お前があの岩を除去した子供か。」
「は、はいそうです!」
「何て事をしてくれたんだ!領主様がご立腹だ。着いて来い。」
俺は両脇を屈強な男に捕まれ、あっさり持ち上げられた。
「い、痛い!自分で歩けるから離してくれ!」
「連れていけ!」
「側近様、息子は何も悪い事はしておりません!どうか穏便に!」
「何を言っている!さてはお前のこの子供に対する教え方が悪かったのではあるまいか?お前も来い!」
俺はそのまま連れられ、親父は俺の後を追いかけてくる。
俺は一体どうなるんだ?
・・・・
・・・
・・
・
「領主様、連れてまいりました。」
目の前にはふんぞり返っている豚・・・・じゃない、あれがクツーゴ男爵か?
そしてその隣にいやな目つきをしている俺より少し年上?あれは領主様の子供か?
2人して踏ん反り返って待っていた。
「ごくろう側近。どんな奴かと思えばちっぽけな餓鬼じゃないか!おい餓鬼!余計な事をするんじゃねえ!」
ドゴッ!!
何が起こった?
何やら腹が痛い。そして俺は吹っ飛んだようだ。
そして豚・・・・じゃない、男爵さまが俺の目の前に。
「いいか一度しか言わん。長生きしたければ余計な事をするな!誰が岩を除去しろと言った?」
俺はあちこち痛すぎて言葉を発する事ができない!口の中は血の味がするし。
そしてどうやら領主様の息子が俺を踏んづけているらしい。
「今後こう言う勝手な輩が出ないようにしないとな!そうだなあ、見せしめが必要だな!なあ父上、こいつを領地から追放しようぜ!」
「あ?追放だ?何故追放なのだ息子よ?」
「クツーゴ領の領民に一つスキルが混じっているなんて不名誉すぎる!」
「ほう、こいつが件の一つスキルか?そうじゃな。役立たずは邪魔じゃ!しかもこのような意に添わぬ行動をとる愚か者は確かに要らぬな。即刻クツーゴ領を出ろ!そして二度と戻ってくるな!」
何で?どうしてこうなった?
親父が必死になって俺の追放を思いとどまるように説得しようとしているけれど、同じように蹴られて血まみれになっている。
説得の効果があったのか、若しくは親父の言葉に何か思う所があったのか、
「その方の主張にも尤もな所がある。明日10歳の子供が出発する故、その護衛として領地から出て行くのじゃ。」
どうやら領民を追放、しかも表立って罪を犯していない子供にその仕打ちは男爵にとって醜聞となりえる。
なので追放するにせよ、形式上領地から王都に10歳の子供の護衛としての任務を行ってもらう。
これならば男爵は一つスキルを合理的に追い出せる。
どうしても息子の追放を避けられないと感じた父親の、精一杯の知恵だった。
だが実際はそうではなかった。
側近の知恵。
側近は領主に、目の前の領民の意見を受け入れる代わりに、魔境への開拓を率先してやってもらうという取引を持ち掛けた。
ほぼ全ての領民が魔境への開拓を反対している事実があり、クツーゴ男爵は頭を抱えていた。
それを覆す絶好の機会がやってきた!という訳でクーンは側近により利用されてしまう運びとなったのだった。
其れに側近は男爵にずいぶん仕えて来ていた事もあり、男爵をどう扱えばいいのか熟知していたのだ。
クツーゴ男爵は、魔境への侵略(本人は偉業と考えている)を長年夢見ていた。
未だかつて誰も成しえていない偉業。
緩衝地帯はほぼ開墾が終わった。
そして急がねば他の領主が魔境へ進出してしまう。
リーバクーヨ男爵領とギーコア男爵領も同様に緩衝地帯を開墾しており、この2つの領も魔境が目前に迫っていたから、余計にクツーゴ男爵はせかしたという何ともな事情があった。
「なんじゃ!」
クツーゴ男爵の側近がクツーゴ男爵に耳打ちをする。
「男爵さま、開拓民の子供が件《くだん》の巨大な岩を除去いたしたようです。」
クツーゴ男爵は困った。いずれは除去したかったがそれは今ではない。
あれは今無くなってもらっては困るからだ。何と間の悪い!
とんでもない巨大な岩を除去できるとなれば折角魔境に、しかも領地には開墾できる土地がもう無いと言っておいたのに、まだ岩が除去できる、そして当面その岩を・・・・そんな事をしていては他の男爵に先を越されてしまう!
それは断じて許されない。
「おい側近、その餓鬼を連れてこい。」
「は!かしこまりました。」
側近は何故、そしてどうするのかを聞かない。
そんな事を聞けば側近である自身の命が危ない。
側近は自らその子供を探しにその岩へと向かった。自分が生き残る為に。
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「おいお前達、ここにあった岩を除去した子供がこの近くに居るはずだ。」
開拓を行っていた領民が皆一か所に集められ、側近が言い放った。
驚いたのはこの場に集まっていた領民の一人、クーンの父親である。
「あ、あの、それは恐らく私の息子が行った事ではないでしょうか。」
「ほう、其方の息子か。今すぐその子をここへ連れて来い。」
「しょ、少々お、お待ちを。探してまいります。」
クーンの父親は急いでクーンを探しに向かった。
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Side クーン・に戻ります
「クーン、ここに居たのか!」
親父が血相を変えて走ってきた。
「どうしたんだ親父。」
親父は息を切らしている。
俺はと言えば、昨日遂にあのでかい岩をやっつける事ができたから、これってもう少し小さい岩ならあっという間にできるんじゃね?とか思っちゃった訳で、それを実践中。
「今すぐそれを止めて、着いて来い。」
親父の顔は真剣そのもの。
俺は何かやらかしたのか?
「わ、分かったけど、どうしたんだ?」
「領主様の御側仕えの側近様なんだがな、実は俺も名前は知らないんだが、彼がお前を要求している。どうやらクーン、お前が昨日除去した岩に関して何かあるらしい。」
ええ?もしかしてご神体とかだった?でかかったからな!
最悪【土】を用いて岩を浮かせてしまうか。正確には違うが他に良い表現を思いつかなかったから仕方ないよな!
そんな事を考えつつ親父の後に向かう。
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「ほう、お前があの岩を除去した子供か。」
「は、はいそうです!」
「何て事をしてくれたんだ!領主様がご立腹だ。着いて来い。」
俺は両脇を屈強な男に捕まれ、あっさり持ち上げられた。
「い、痛い!自分で歩けるから離してくれ!」
「連れていけ!」
「側近様、息子は何も悪い事はしておりません!どうか穏便に!」
「何を言っている!さてはお前のこの子供に対する教え方が悪かったのではあるまいか?お前も来い!」
俺はそのまま連れられ、親父は俺の後を追いかけてくる。
俺は一体どうなるんだ?
・・・・
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「領主様、連れてまいりました。」
目の前にはふんぞり返っている豚・・・・じゃない、あれがクツーゴ男爵か?
そしてその隣にいやな目つきをしている俺より少し年上?あれは領主様の子供か?
2人して踏ん反り返って待っていた。
「ごくろう側近。どんな奴かと思えばちっぽけな餓鬼じゃないか!おい餓鬼!余計な事をするんじゃねえ!」
ドゴッ!!
何が起こった?
何やら腹が痛い。そして俺は吹っ飛んだようだ。
そして豚・・・・じゃない、男爵さまが俺の目の前に。
「いいか一度しか言わん。長生きしたければ余計な事をするな!誰が岩を除去しろと言った?」
俺はあちこち痛すぎて言葉を発する事ができない!口の中は血の味がするし。
そしてどうやら領主様の息子が俺を踏んづけているらしい。
「今後こう言う勝手な輩が出ないようにしないとな!そうだなあ、見せしめが必要だな!なあ父上、こいつを領地から追放しようぜ!」
「あ?追放だ?何故追放なのだ息子よ?」
「クツーゴ領の領民に一つスキルが混じっているなんて不名誉すぎる!」
「ほう、こいつが件の一つスキルか?そうじゃな。役立たずは邪魔じゃ!しかもこのような意に添わぬ行動をとる愚か者は確かに要らぬな。即刻クツーゴ領を出ろ!そして二度と戻ってくるな!」
何で?どうしてこうなった?
親父が必死になって俺の追放を思いとどまるように説得しようとしているけれど、同じように蹴られて血まみれになっている。
説得の効果があったのか、若しくは親父の言葉に何か思う所があったのか、
「その方の主張にも尤もな所がある。明日10歳の子供が出発する故、その護衛として領地から出て行くのじゃ。」
どうやら領民を追放、しかも表立って罪を犯していない子供にその仕打ちは男爵にとって醜聞となりえる。
なので追放するにせよ、形式上領地から王都に10歳の子供の護衛としての任務を行ってもらう。
これならば男爵は一つスキルを合理的に追い出せる。
どうしても息子の追放を避けられないと感じた父親の、精一杯の知恵だった。
だが実際はそうではなかった。
側近の知恵。
側近は領主に、目の前の領民の意見を受け入れる代わりに、魔境への開拓を率先してやってもらうという取引を持ち掛けた。
ほぼ全ての領民が魔境への開拓を反対している事実があり、クツーゴ男爵は頭を抱えていた。
それを覆す絶好の機会がやってきた!という訳でクーンは側近により利用されてしまう運びとなったのだった。
其れに側近は男爵にずいぶん仕えて来ていた事もあり、男爵をどう扱えばいいのか熟知していたのだ。
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