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外伝  章努の話 

ロンドロッグからの難民

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 最近見知らぬ人々を見かけるようになった。

 まあ1000人がいれば、流石に1ヶ月程度では会った事が無い人がいてもおかしくはない。

 だがそうじゃない。
 新たに会った人々は皆、汚れていてぼろを着ていて、例外なく一文無しだった。
 まさかスラムの住民か?
 この世界にはスラムがあったのか!
 俺は盛大な勘違いをしていた。
 但しスラムは存在するらしい。

 ロンドロッグから逃げてきた人々が大挙してグビッシュ王国に来ていたのだ。

 俺は知らなかったが、ロンドロッグ周辺で魔王軍に対抗できているのがこのグビッシュ王国だけだったのだ。
 だからロンドロッグから脱出する場合、グビッシュ王国しか選択肢がないのだ。

 つまりは難民だそうな。
 何処の世界でも戦争はあるんだよなあ。
 で、住民がそのあおりをくらい、結局国が亡べばこうして難民として他の国へ向かうしかない。

「貴女達は今後難民となってしまった人々をお願いしますね。」
「いけません皇女様!私達は皇女様に付き従ってここまで来はしましたが、あくまで皇女様の身辺をお世話するのが私共の務め。」
「貴女達にその勤めを課した国はもう既にありません。ですから本来であればもう自由な身なのですが、せめてロンドロッグからの難民を、今私達は自分と僅かながら多少は手を差し伸べるだけの金銭的なゆとりがあります。今までロンドロッグで生活していた住民が治めた税で身を立てていたのですから、貴女達もせめて彼等に・・・・」
「皇女様!」

 どうやらピートロネラは難民の世話を侍女共にさせるつもりらしい。

「貴女達もです。せめて街へ無事着くよう導いて、そして守ってほしいのです。」
 今度は護衛の女性騎士に命令か?
「いけません皇女様!皇女様は今でもロンドロッグの皇女なのです!そして最後の生き残りです!皇女様が死ねば本当にロンドロッグは滅んでしまいます!どうか私共の護衛だけは外さないよう、切に願います!」
「それは駄目です。私は今まで摂取する側でした。しかしもう国はなく、住民は路頭に迷っています。全ての住民を助ける事は不可能ですが、こうして私の手が届く範囲にやってきた人々は、せめて何とかして差し上げたいのです!これは皇族としての義務であり、願いでもあります。私達皇族がいなくても国は成り立ちますが、住民がいなくては国が成り立ちません。」

 国が亡ぶって、色々な問題が起こるんだな。
 まあ俺はあの国の皇族共には思う所があるから助けたいとは思わねえが、住民は無関係なんだよな?
 いや、あんな皇族共を国の頭としていたんだから住民にも罪はあるのか?いかんなあ、そんな訳ないのにな。

 うーん、俺にできる事ってあるのか?
【あまり考えては駄目だよ。僕が思うに君は難民のあれこれを負う必要はない。しかし難民を手助けする事は出来るんじゃないかな?尤も1から10まで全部面倒を見ていては駄目なんだよ?意味が分かるかい?】
 分かるっちゃあ分かるがあれだ、もう取り返しがつかないからなあ、一時的に手を差し伸べるのはいいが、ずっとそうすれば彼等にとって俺が何かをしてしまう事が当たり前になると、今後俺達の手助けが得られなくなると・・・・
【分かっているじゃない?尤もそれだけではないのだけれどね。いいかい、君が今後しなくてはいけない事はね、まずは力をつける事だよ。今後も魔王の脅威は避けられない。魔王からロンドロッグを取り戻す必要があるけれど、それは直ぐにできるものではないよね。】
 なあノラ、俺は勇者としてこの地にやって来たんだよな?游者だけど。
【勇者の務めかい?そんなの今はいいんだよ。最終的に魔王の脅威から世界を救えばいいんだから。まあそうだねえ、10年ぐらいでどうかい?】
 10年って、結構時間がかかるんだな。
【そうだね、だけど君は未だ魔族と戦った事はないだろう?魔族は魔獣や魔物とは全く違うからね。先ずは魔族と対等に戦える強さを身につける事だね。魔王をどうこうできるのはもっと後だよ。】

 焦っても仕方がないか。
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