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召喚から5年が経過

第381話 勇者召喚

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本来勇者召喚は半年ほど準備期間を設け、何重にも安全対策を整え国王を中心に魔術師が補佐をし、異界より勇者を召喚する。

そして国王の負担が大きいのでその負担を減らすべく、他の王族が国王の近くに陣取りその【王族の血】により召喚時の負荷を王族全員で負担するというもの。

だが残念な事に、グビッシュ王国が勇者召喚の準備を始めたのは約1ヶ月前の話。

それも神聖帝国ロンドロッグの勇者召喚が万が一失敗したら、の場合に備え念の為に準備を始めたに過ぎない。

それ故召喚の議に使う【召喚杖】にはまだ魔力が殆どたまっておらず、宮廷魔術師が半年かけて魔力をためる必要があったのだがそれがほぼ出来ていない。

あらかじめためておけばいいじゃないか、と思うかもしれないが、それは無理な話。
この杖は、半年もすればためた魔力を殆ど放出してしまうからだ。

それ故、半年かけてためなおす必要があるのだが、今はそれができていない。
しかもその状態で急遽勇者を召喚せざるを得なくなった。

杖に魔力がないとどうなるのか?

それは召喚の議を執り行う国王の身に降りかかる。

召喚時には宮廷魔術師が杖に魔力を送り込むが、恐らく杖は魔術師の魔力を総て取り込む。
するとどうなるか。ほぼ間違いなく魔術師は絶命する。
そして国王の負担はすさまじくなるはずで、間違いなく国王は死んでしまうだろう。
そしてそれは周りの王族にも同様。

しかし王族の協力なくして勇者召喚は成功する見込みがほぼなく、それはすなわちグビッシュ王国が魔王の襲撃で滅ぶ事を意味する。

「父上!我らグビッシュ王家一同、そのような事で逃げたりは致しません!しかし幼子までですか?」
そう言うのは国王の長男。
「余とてかわいい孫を死なせとうはないが、国が亡ぶかどうかの瀬戸際なのだ、許せ。しかし全員死ぬ事はなかろう。何人かは生き残ると思うが、こればかりはわからぬ。」

国王は既に自身が死ぬ事は織り込み済み。しかし長男まで死ぬ事になるのは避けたかったが、勇者召喚の触媒として、長男はうってつけだった。
国王もある意味触媒なのだが、うまくいけばアルノルトぐらいは生き残るのではないか?楽観するわけではないが、王族の直系男子が全滅はできれば避けたかった。

しかし、国が滅んではそんな事も言ってはいられない。
先だって勇者召喚に失敗した神聖帝国ロンドロッグは、結局皇族が壊滅。国も魔王に滅ぼされたと聞く。

噂では魔王の襲撃の直前に勇者召喚に失敗した事に関係があるのかどうか、ピートロネラ皇女本人が国外追放なのか、自ら国外に脱出したのか、唯一皇族が生き残ったらしい。

わが国もロンドロッグの二の舞だけは避けねばならない。

こうしてグビッシュ王国建国史上最悪の出来事が始まるのである。
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