魔法が使えないはずのダンジョンで俺だけ魔法を使えるようになったんだが

よっしぃ

文字の大きさ
上 下
21 / 55

第21話 認識のずれ

しおりを挟む
 は!俺はどうしていたんだ?桜に抱き着いて気を失っていた?
「さ、桜、俺はどれぐらいこうしていた?」
 心配だったので聞いてみた。
「ご安心をマスター!ほんの数日ですわ。」
 え?数日?いや待てそれは変だ。だってほら、周囲のギャラリー、俺の記憶が正しければ位置とかそのまんまだぞ。

「なあ桜、俺は真剣に聞いているんだ。俺が意識を失っていたのはどれぐらいの時間だ?」
「え?なになに私に抱き着いていた総時間を聞いたんじゃなの?まあいいや。えっとねマスターが今のように私に抱き着いてから、5分ぐらいしか経っていないよ?その間魔物は現れなかったよ。」
 最初からそう言えばいいのに、何もったいつけているんだか。
 そ、それよりもだ、何故助けたとはいえ冒険者達はジーっと俺を見つめているんだ?
《それはマスターが気を失っている間、桜が威嚇しまくっていたからです。》
 ・・・・桜が原因だった。
 いくら俺が助けたとはいえ、彼女達は赤の他人だ。
 もしかしたら俺は身ぐるみ剥がされていた可能性がある。
 何せストレージには色々なアイテムが入っているからな。
 うん?だが変だな。
 ストレージはあくまで【スキルの書】で得たスキルだから、他人は扱えないんじゃ?
 それとも俺の腹辺りをまさぐれば、誰にでも出し入れ可能なのではなかろうか。
 それを思うと桜は俺を守ってくれていたんだな。
「桜は俺を守ってくれたのか、よしよし愛い奴め!」
 思わず桜の頭を撫でてしまった。
「ヴァッ!ナニ何マスター遂に私の魅力に気がついちゃった?」
 魅力って・・・・でっかい、しかもピンク色をしたカピバラの何処に魅力があるのだろうか?
 そんな事より何故全員俺を見つめているんだ?
 瀕死の重傷を負っていた、つまり両腕を捥ぎ取られていた女性まで俺を見つめているじゃないか。
 尤も全員血と今までの汚れで悲惨な事になっているんだが。
 そうだ、こういう時はあれだ、全員綺麗になってもらおうそうしよう。
 浄化の魔法でもいいのだが、若干名服が無かったりするから、綺麗になった瞬間俺の理性がどうなるか怪しいからな。
 いざとなればコンテナで寝る時に使っている布で何とかしてもらうしかないか。
 後は俺が今着ている服とかを・・・・手放したくはないが、幸いな事に今まで着ていた服はそのまま残っているしな。

「椿、いつもの安全地帯はここから近いのか?」
 俺は今いる位置が何処かいまいち分からなかったので椿に聞いてみた。
《ここが他の階層と同じ前提ですが、すぐそこです。》
「よしじゃあ今すぐ移動しよう。」
 俺は立ち上がった。
 女性達は1人を除いて皆一歩下がった。
 1人は怪我が酷かった女性だ。
 どうやらまだ動けないらしい。
「ここはまだ危険な可能性がある。色々あると思うが、先ずは安全地帯まで移動しないか?」
 するとリーダーと思われる女性が、
「その、助けてくれた事に対し先ず礼を言いたい。しかしその、ダンジョン内に安全地帯など存在しないはず。一体何処へ行くというの?」
 え?何言ってんのこの女性。
「え?いやだってほら、もう少し行けばあるだろう?硫化水素、つまり硫黄の臭いがする場所。あの近辺は安全だぞ。」
「いやそれはおかしい。あそこは臭いが酷い。いわゆる毒ガスのはずよ。あそこはダンジョンに入った者であれば誰でも知っている。魔物の脅威より毒ガスの脅威なのよ?」
「何言ってんの。あんな最高の場所を差し置いて。まあ俺が折角治療したんだからさ、せめてそれを恩に思うのであれば付いてきなよ。体を綺麗にできるし、疲れも癒される。ついでに言えば食事も作るぞ。」
 すると別の女性が、
「食事?まさかと思うし、荷物をたいして持っていなさそうだけれど人に差し上げられる程の食料に余裕があったり?私達もう1ヶ月程満足な食事をしていないのよ。嬉しいけれどどうしてそこまでしてくれるのかしら。」
「え?何を言っているんだ。困っている時はお互い様だろう?」
 すると怪我が酷かった女性・・・・レナーテだっけ?が口をきいた。
「貴殿におかれては、我々をダンジョン深層であるにもかかわらず貴重な回復手段を用い助けて下さった事、感謝する。しかし貴殿は甘すぎる!ダンジョン深層において困った時はお互い様?あり得ぬ!ダンジョン深層においてたった一つの物資であろうと駆け引きの対象・・・・う!」

「まだ怪我が治ったばかりでそんなに喋れば体に響くぞ。仕方がない、どうやら君はまだ自力で歩く事は出来なさそうだから桜に乗せてもらうといい。他の人は歩けるよな?」
「桜とは・・・・そのピンク色をした召喚獣の事を言っているのだろうか?」
 確かに桜は俺が召喚したが、獣なのか?
「桜は確かに俺が召喚したが、ちゃんと会話もできる。移動するから誰か乗せてあげてくれ。もう俺は移動するぞ!こんな所でまた魔物に襲われるのは嫌だろう?俺は行く。」
 何だか疲れた。
 俺は後を桜に託し、安全地帯へ移動を開始した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界転生騒動記

高見 梁川
ファンタジー
とある貴族の少年は前世の記憶を取り戻した。 しかしその前世はひとつだけではなく、もうひとつ存在した。 3つの記憶を持つ少年がファンタジー世界に変革をもたらすとき、風変わりな一人の英雄は現れる!

懐古主義オッサンと中二病JKは、無双しない

椎名 富比路
ファンタジー
「サイバーパンクの世界がよかったね」 「だな!」  不慮の事故で死んだお詫びとしてファンタジー世界に呼ばれた、懐古主義おっさんとJKは、さっそく不満を漏らす。  女神困惑!  それなりに危険はあるが、魔王はいない。  そんな世界で、おっさんパラディンとJK魔術師は冒険と生産を繰り返す。  ただ、ふたりは無双しない。  チートなんていらない。そんなものなくたって楽しめる。  凸凹な二人は、異世界を「攻略」や「効率化」ではなく、「満喫」する方へ舵を切る。  セルフレイティングは保険。

処理中です...