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第一章
もしかして彼の時間も巻き戻ってる?
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巻き戻る前の記憶って、まさか僕が死ぬ前の記憶のことを言っているのか!?
ということは、彼も僕と同じで巻き戻ってきている!?
まさか、そんなことがある訳はないと思いつつも、レディオの方を見れば彼の表情は嘘を言っているようにも見えなくて。彼も僕同様、理由は分からないけれど三年前に巻き戻ってきたというのは本当なのかもしれないと思えた。そういえば僕と目があった時、暫く固まっていた気がしたけれど、あれは生きている僕を見たからだということだろうか。いい加減に見えて人一倍責任感の強い彼のことだから、僕が死んだことをかなり悔やんでいたのかもしれないし、責任を感じていたのかもしれない。その結果の行動であれば納得できるものがあったんだ。その後に僕を抱きしめたりは納得できていないけれども。
って待てよ?
彼も記憶が巻き戻っているというのであれば、当然あの時の記憶もあるわけで。
ということはつまり。
僕が告白したことも覚えているってことか!?
あの時は自分はもう助からないと分っていたから、最後のつもりで告白したけれど。不味い、それは不味い。僕に告白されて彼が喜ぶはずもないし、気味が悪いって嫌がられるに決まっているじゃないか。もしかしてさっきのキスも嫌がらせのつもりだったんだろうか。気のある振りして僕が有頂天になったところを完膚なきまでに振ってやろうという。いや確かに嫌われこそすれ好かれてるなんて思ってなかったし、想いが叶うことなんてないとは思ってはいたけれど。僕みたいなモブに彼が振り向くことなんて絶対有り得ないと分かってはいたけれど、でも流石にそんなことされたらショックで泣いてしまうかもしれない。そんな姿を見せてさらに気持ち悪がられるぐらいなら、と僕は視線を逸らしつつなんとか口を開いた。
「な、何のことだろうか?巻き戻る前の記憶?何を訳の分からないことを言っているんだ君は」
「ふーん、白を切る気なのか」
「白を切るも何も僕は君のことなんて知らない。初対面なのに急に抱き着かれて驚いてただけだしな」
「名前」
「え?」
「じゃあ、なんで俺の名前知ってんだよ?」
「……っ!?そ、それは、アンネル君があそこで君の名前を呼んでたから」
「リヒトは俺のことレディオとしか呼んでなかったと思うけど?なのにお前は俺のことフルネームで呼んだよな?なんで俺のファミリーネームまで知ってんの?」
「あっ!!」
指摘されて僕は漸く自分の失態に気が付いた。以前から僕は彼のことをフルネームで呼んでいたから、ついついその癖でさっきも確かにフルネームで呼んでしまっていた気がする。しまったといった表情を浮かべる僕を見て、再びレディオの形の良い唇が弧を描いた。
「ほらみろ。やっぱり前から知ってたんだろうが」
「うぐっ……そ、それは、その……」
「なあ、リオネル。本当のこと言えよ。お前も持ってんだろ?巻き戻る前の記憶」
「………も、持ってる、けど…」
「やっぱりか。なんでわかり切った嘘ついたんだよ?」
「だって………と思ったから……」
「え?何?」
「だからっ、君に前以上に嫌われると思ったからだよ!あの時、君に想いを告白したのは君だって覚えてるだろ!?僕みたいな嫌いな奴に告白されて嫌な思いしかしなかっただろうし、す、好きな奴に以前以上に嫌われて振られるのは流石に僕だって傷つくんだよ!」
そこまで言い切ってしまえば、完全に顔ごと背ける。未だにベッドの上に両手を縫い付けられ押し倒された状態では、それ以上の抵抗ができなかったから。本当最悪だ。自分から振られにいきたくなんてなかったのに。あの時の告白だってもう二度と会えないと分っていたから言っただけで、こうして再会してしまうから絶対に言わなかったんだ。この想いは僕だけの心に留めて墓場まで持っていくつもりだったから。けれど、僕が言い切った後、何の反応もなくて。どうしたんだろうかと視線だけ彼の方へ向けると、そこにはぽかんとした表情で固まっているレディオの姿があった。
「レディオ・ローエン?」
どうしたんだろうか。何をそんなに呆気にとられたみたいな状態になっているのか分からず、再び顔ごと彼の方へと向き直りながら声をかけてみる。
「いや、お前」
「うん?」
「振るって、誰が誰を?」
「は?君が僕をに決まってるだろう?この場には僕と君しかいないんだから」
「なんで?」
「なんでって、君が僕のこと嫌い、だからだろ?」
何故改まって僕の口からそんなことを言わせるのか。嫌われていると自覚はしてたって、実際に分からされるのは流石に傷つくんだからな。
「……なあ、お前さ。あの日のことどこまで覚えてるんだ?」
「あの日のことって?」
「お前が死んだ日のことだよ」
「ああ、あの日のことなら死ぬ直前までちゃんと覚えてるけれど」
「って、それ覚えててなんでそういう結論が出てくんだよ!?」
「え?え?な、何なんだ急に怒り出して?」
「怒りたくもなるわ!あの日俺はちゃんと返事しただろうが!俺だってお前のことがずっと前から好きだったんだって!」
「え?」
「ええええええええええええっ!?」
彼の口から出てきた衝撃の言葉に、僕は本日二度目の絶叫をしてしまうことになったのだった。
ということは、彼も僕と同じで巻き戻ってきている!?
まさか、そんなことがある訳はないと思いつつも、レディオの方を見れば彼の表情は嘘を言っているようにも見えなくて。彼も僕同様、理由は分からないけれど三年前に巻き戻ってきたというのは本当なのかもしれないと思えた。そういえば僕と目があった時、暫く固まっていた気がしたけれど、あれは生きている僕を見たからだということだろうか。いい加減に見えて人一倍責任感の強い彼のことだから、僕が死んだことをかなり悔やんでいたのかもしれないし、責任を感じていたのかもしれない。その結果の行動であれば納得できるものがあったんだ。その後に僕を抱きしめたりは納得できていないけれども。
って待てよ?
彼も記憶が巻き戻っているというのであれば、当然あの時の記憶もあるわけで。
ということはつまり。
僕が告白したことも覚えているってことか!?
あの時は自分はもう助からないと分っていたから、最後のつもりで告白したけれど。不味い、それは不味い。僕に告白されて彼が喜ぶはずもないし、気味が悪いって嫌がられるに決まっているじゃないか。もしかしてさっきのキスも嫌がらせのつもりだったんだろうか。気のある振りして僕が有頂天になったところを完膚なきまでに振ってやろうという。いや確かに嫌われこそすれ好かれてるなんて思ってなかったし、想いが叶うことなんてないとは思ってはいたけれど。僕みたいなモブに彼が振り向くことなんて絶対有り得ないと分かってはいたけれど、でも流石にそんなことされたらショックで泣いてしまうかもしれない。そんな姿を見せてさらに気持ち悪がられるぐらいなら、と僕は視線を逸らしつつなんとか口を開いた。
「な、何のことだろうか?巻き戻る前の記憶?何を訳の分からないことを言っているんだ君は」
「ふーん、白を切る気なのか」
「白を切るも何も僕は君のことなんて知らない。初対面なのに急に抱き着かれて驚いてただけだしな」
「名前」
「え?」
「じゃあ、なんで俺の名前知ってんだよ?」
「……っ!?そ、それは、アンネル君があそこで君の名前を呼んでたから」
「リヒトは俺のことレディオとしか呼んでなかったと思うけど?なのにお前は俺のことフルネームで呼んだよな?なんで俺のファミリーネームまで知ってんの?」
「あっ!!」
指摘されて僕は漸く自分の失態に気が付いた。以前から僕は彼のことをフルネームで呼んでいたから、ついついその癖でさっきも確かにフルネームで呼んでしまっていた気がする。しまったといった表情を浮かべる僕を見て、再びレディオの形の良い唇が弧を描いた。
「ほらみろ。やっぱり前から知ってたんだろうが」
「うぐっ……そ、それは、その……」
「なあ、リオネル。本当のこと言えよ。お前も持ってんだろ?巻き戻る前の記憶」
「………も、持ってる、けど…」
「やっぱりか。なんでわかり切った嘘ついたんだよ?」
「だって………と思ったから……」
「え?何?」
「だからっ、君に前以上に嫌われると思ったからだよ!あの時、君に想いを告白したのは君だって覚えてるだろ!?僕みたいな嫌いな奴に告白されて嫌な思いしかしなかっただろうし、す、好きな奴に以前以上に嫌われて振られるのは流石に僕だって傷つくんだよ!」
そこまで言い切ってしまえば、完全に顔ごと背ける。未だにベッドの上に両手を縫い付けられ押し倒された状態では、それ以上の抵抗ができなかったから。本当最悪だ。自分から振られにいきたくなんてなかったのに。あの時の告白だってもう二度と会えないと分っていたから言っただけで、こうして再会してしまうから絶対に言わなかったんだ。この想いは僕だけの心に留めて墓場まで持っていくつもりだったから。けれど、僕が言い切った後、何の反応もなくて。どうしたんだろうかと視線だけ彼の方へ向けると、そこにはぽかんとした表情で固まっているレディオの姿があった。
「レディオ・ローエン?」
どうしたんだろうか。何をそんなに呆気にとられたみたいな状態になっているのか分からず、再び顔ごと彼の方へと向き直りながら声をかけてみる。
「いや、お前」
「うん?」
「振るって、誰が誰を?」
「は?君が僕をに決まってるだろう?この場には僕と君しかいないんだから」
「なんで?」
「なんでって、君が僕のこと嫌い、だからだろ?」
何故改まって僕の口からそんなことを言わせるのか。嫌われていると自覚はしてたって、実際に分からされるのは流石に傷つくんだからな。
「……なあ、お前さ。あの日のことどこまで覚えてるんだ?」
「あの日のことって?」
「お前が死んだ日のことだよ」
「ああ、あの日のことなら死ぬ直前までちゃんと覚えてるけれど」
「って、それ覚えててなんでそういう結論が出てくんだよ!?」
「え?え?な、何なんだ急に怒り出して?」
「怒りたくもなるわ!あの日俺はちゃんと返事しただろうが!俺だってお前のことがずっと前から好きだったんだって!」
「え?」
「ええええええええええええっ!?」
彼の口から出てきた衝撃の言葉に、僕は本日二度目の絶叫をしてしまうことになったのだった。
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