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第2話『歌舞伎デレヴニヤに爆乳刑事参上!?』

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「にゃにゃにゃにゃ、オタクども生存しちゃってるじゃん!」
「なるほど……血の匂いのしない事件。最近よくあるパティーンですね」

「にゃー、おもしろくないおもしろくない! ぜんぶぜーんぶ解決されちゃって! めだつ場面がないじゃない!」
「まぁまぁ、そう荒ぶらずに。バトルヘリで現場急行、十分注目の的、イットな爆乳刑事ですよ、中尉殿は」
「にゃ? そうはおっしゃるでしょうけども、最近のツァイトガイストはみんなみんな無事に救出されちゃって。また、仮面の3人組ってやつかしら?」
「どうでしょう……   ひとまず聞き取り調査を続けますね」

ライブハウス周辺には、逃げ出してきたスタッフ数名と、大量のアイドルたちがいた。特に、何人かのアイドルはびいびい泣いていて、ネオププのイライラは高まっていく。

大衆炭酸ドリンクの珍妙な衣装に身を包んだゴルバチョフ嬢の狼狽は特にひどく、キンツーを困らせた。首に怪我をしたようで、駆けつけた救急隊員による治療を受けているところだ。
退廃した官僚システムにおいても、救急医療のインフラは迅速だったりして、人民の気質のあらわれでもある。

「えぐっえぐっ、私たちがぁ、アンディWOWホル音頭を踊っていたらぁ、えぐっ」
「ハラショー」
「えぐっ、オタクさんたちがぁ、突然白豚にぃ、えぐっ」
「ハラショー」
「えぐっ、いやァ、白くてまぶしくなっちゃってぇ」
「ハラショー」
「それデェ、首がぁ、こんな痛くなっちゃってぇ、えぐ。ぴええええええん」

「にゃにゃにゃにゃー!!! いつまでも泣いてんじゃないだわよ! あーうっさいうっさいうっさい!」

「ヒィンっ!」

再びの恐怖に体を振動させるG嬢。
「まぁまぁ、彼女は怪我もしているんですし……首は大丈夫ですか?」

包帯のすきまからは、リング状の青白い痣がみえる。
チョーカーの形をした、一生残る傷は、彼女のコンプレックスとして、人間形成に大きな影響を与えてゆくのだろうか。
G嬢が背負う十字架となり、重くのしかかるのか。
服装で無理やり隠したり、人の目を見て話せなくなったり……

キンツーは自己顕示欲を拗らせたあはれな少女に同情もしてみたりして、するどい目を細めたが、ネオププは気にしない。

「にゃ、何が起きたのよ、話してみなさいよ。どうせ野蛮な仮面の男たちがあらわれたんでしょ?」

「ピエ、私の首を化け物が締めてきて、でもなんか変な顔をした彼はドロップキックをしてきて、エグッ、でもなんかずっと白いスモークで、あんまよくわからなくて、痛くて、でもピエ!」

「…………やはり彼らですかね」
「にゃ。もういいわよ。これ以上情報はなさそうね。オタク野郎もどうせ、ツァイトガイストになっていたのなら、時間の無駄無駄。撤収にゃ」

「……ハラショーしました。嬢、ありがとうございます。首、おしゃれですよ」
少しは気遣いのできる、繊細さはキンツーの持ち味だ。


ツァイトガイスト現象の結末は、精神の自殺。
外傷のない、突然死体を発見することになる。

……今夜の歌舞伎デレヴニヤに、死体はみあたらなかった。
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