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第2話「アーティのリアル・ダンス」
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セルリアの村では大量のピクルスをもらった。
菜食が名物と聞いていたので、シェフとしては新鮮な野菜も魅力的だったが、ここは辺鄙な田舎。
アーティの城下町へは数日かかる。
冒険者ギルドの支部があるアーティでは冒険者が溢れ返っているそうだ。
「ピクルスでもあれば、試しに商売始められるんじゃないかい?」
さすがは宿屋と酒場を切り盛りしている女将。
私生活までは伺い知れなかったが、商魂たくましく、勉強になった。
疫病のせいで、ずいぶん寂れていたが、本当は観光地として穴場らしい。
荒廃が落ち着けば、客足も戻るだろうか。それとも、この状態が続くのだろうか。
大きくなった魔導車両を片手でだるっと操縦しつつ、車窓に肘をかけ、広大な耕作地を眺めながら、ぼやっとガストロノミアに対する懸念。
決して深刻にはならず。
頭の中で、1つ1つ浮かべていた。
「緑を眺めれば気持ちも落ち着くっていうけれど。
ここまでグリーン過ぎるとさすがに飽きるわね」
「暇なら、操縦変わってくださいよ」
「魔導消費すると疲れるし、ま、いいじゃない、はは」
「はは」ってなんだよ! 誤魔化しているつもりか?
「魔導量でいったら、ゼッピさんの方が上でしょ?
そもそも俺はレベル2ですよ! レベル2! 操縦で使ってる魔導はレベル 1だ!
ってかレベルいくつなんですか?!」
「細かいことはいーじゃない?」
そう、さすがにしばらくはパーティを組む仲だ。
女子と2人旅とか羨ましい人もいるのだろうが、俺にとってはなんか気恥ずかしい。
そんなエロい男じゃないし、シャイなんだよ......
かといって沈黙も嫌なので、ちょこちょこ質問をしてみるのだが。
全然教えてくれない! はぐれかされてしまう!
雰囲気はオープンで圧が強いのに、実は謎めいている。
だからといって興味がそそられるみたいなことはなくて、少しイラッとさせられる。
発言はなかなかにバシャバシャしているが、ところどころ上品さもある。
こんな時代に一人旅。何かしら曰く付きなんだろうな。
「俺のレベル1魔導じゃ、スピード出ないですよ!」
「特に急ぐわけじゃないし、レベル1じゃ、消耗もしないんでしょ。
とりあえずはこのペースでいきましょ」
急ぐわけではない......まだ何かに追われていないだけ、マシなのかもしれない。
攻城作戦で使ったようなレベル2魔導で操縦はもったいない。
そういえば、勇者パーティでは、小さな機械で魔導量= MPを管理してたな。
当然、経験値ももらえない俺には渡してくれなかったが。
MPは人によっても、レベルによっても差があるみたいだし、今後、俺もレベルアップをしていくなら、魔導のマネジメントが必要になってくるのかも知れない。
つまり、「ガストロ・ファイヤ」や「ガストロ・ウォータ」など、どの魔導を、短時間に何回使えるのか。
MPは、食糧を摂取したり、睡眠をとったり、体にとって「イイこと」をしないと、回復できない仕組みだ。
ゼッピみたいな魔導師にいつまでも寄生するわけにもいかないし、じゃあ、料理だけで生き抜いていけるか、不安は尽きない。
もう、孤児として路頭に迷ったり、パーティから追放され、路頭に迷った挙句、ゴブリンたちに襲われて、死にそう! とか危ういことは避けたい......
テンションマックス! ではないのだが、流れに逆らわず、生存のための準備はしなきゃな、という冷静な判断を自ら課す。
どう追い込めば、どう自分が動いていくのか。
「ちょっと仮眠とるわよ!」
「えー、またですか?」
「いいじゃない? まだまだ城下町までは時間かかるんだし。
この魔導車両、設備は快適だしね」
「フォートレス魔改造とバトルで外はボロボロですけどね」
「どっかで修理しなきゃね~ではでは」
あくびをしながら、助手席から、車両の後部へ引っ込んでいった。
丸投げしやがって......
でも、女子と操縦席で2人きり、やや気まずいし。会話するのも疲れる。
のんびりと景色でもみるか。
アグリガルの中でも菜食地方は戦禍が酷くはなかったのか。
ゴブリンの砦は残っていたが......
「第一次食糧大戦」は7年前、人間と魔族の間で勃発した、初の本格的な世界大戦だ。俺を孤児に堕とした戦争でもある。
魔業革命によって機械に魔導を注入することに成功した人間は、覇権主義を唱え、魔族への侵攻を開始した。
その傷跡は、この世界、「ガストロノミア」にイビツさを生んでいる。つまり、格差、発展と荒廃のドミノ状態だ。
魔業革命の中心となり、第一次食糧大戦を主導した【ガストロ帝国】は勢力を拡大し、食糧戦国時代の覇者となりつつあった。
一方、戦争で荒廃したまま、復興も遅々として進まず、貧困に喘ぐ国やエリアもある。
食糧危機を救うための戦争が、人間たちの格差を増大させ、更なる食糧危機に襲われる人たちも多くないと聞く。
そんな中で、この疫病だ。
セルリアは、田舎は田舎で、豊かではないし、ゴブリンたちに苦しめられていたが、まだのどかな方なのかもしれないな。
緑が美しくそよぎ、一面植物の薫りを顔に受けながら、またまたぼけっと、マクロな、ガストロノミアへの思考を繰り返していた。
菜食が名物と聞いていたので、シェフとしては新鮮な野菜も魅力的だったが、ここは辺鄙な田舎。
アーティの城下町へは数日かかる。
冒険者ギルドの支部があるアーティでは冒険者が溢れ返っているそうだ。
「ピクルスでもあれば、試しに商売始められるんじゃないかい?」
さすがは宿屋と酒場を切り盛りしている女将。
私生活までは伺い知れなかったが、商魂たくましく、勉強になった。
疫病のせいで、ずいぶん寂れていたが、本当は観光地として穴場らしい。
荒廃が落ち着けば、客足も戻るだろうか。それとも、この状態が続くのだろうか。
大きくなった魔導車両を片手でだるっと操縦しつつ、車窓に肘をかけ、広大な耕作地を眺めながら、ぼやっとガストロノミアに対する懸念。
決して深刻にはならず。
頭の中で、1つ1つ浮かべていた。
「緑を眺めれば気持ちも落ち着くっていうけれど。
ここまでグリーン過ぎるとさすがに飽きるわね」
「暇なら、操縦変わってくださいよ」
「魔導消費すると疲れるし、ま、いいじゃない、はは」
「はは」ってなんだよ! 誤魔化しているつもりか?
「魔導量でいったら、ゼッピさんの方が上でしょ?
そもそも俺はレベル2ですよ! レベル2! 操縦で使ってる魔導はレベル 1だ!
ってかレベルいくつなんですか?!」
「細かいことはいーじゃない?」
そう、さすがにしばらくはパーティを組む仲だ。
女子と2人旅とか羨ましい人もいるのだろうが、俺にとってはなんか気恥ずかしい。
そんなエロい男じゃないし、シャイなんだよ......
かといって沈黙も嫌なので、ちょこちょこ質問をしてみるのだが。
全然教えてくれない! はぐれかされてしまう!
雰囲気はオープンで圧が強いのに、実は謎めいている。
だからといって興味がそそられるみたいなことはなくて、少しイラッとさせられる。
発言はなかなかにバシャバシャしているが、ところどころ上品さもある。
こんな時代に一人旅。何かしら曰く付きなんだろうな。
「俺のレベル1魔導じゃ、スピード出ないですよ!」
「特に急ぐわけじゃないし、レベル1じゃ、消耗もしないんでしょ。
とりあえずはこのペースでいきましょ」
急ぐわけではない......まだ何かに追われていないだけ、マシなのかもしれない。
攻城作戦で使ったようなレベル2魔導で操縦はもったいない。
そういえば、勇者パーティでは、小さな機械で魔導量= MPを管理してたな。
当然、経験値ももらえない俺には渡してくれなかったが。
MPは人によっても、レベルによっても差があるみたいだし、今後、俺もレベルアップをしていくなら、魔導のマネジメントが必要になってくるのかも知れない。
つまり、「ガストロ・ファイヤ」や「ガストロ・ウォータ」など、どの魔導を、短時間に何回使えるのか。
MPは、食糧を摂取したり、睡眠をとったり、体にとって「イイこと」をしないと、回復できない仕組みだ。
ゼッピみたいな魔導師にいつまでも寄生するわけにもいかないし、じゃあ、料理だけで生き抜いていけるか、不安は尽きない。
もう、孤児として路頭に迷ったり、パーティから追放され、路頭に迷った挙句、ゴブリンたちに襲われて、死にそう! とか危ういことは避けたい......
テンションマックス! ではないのだが、流れに逆らわず、生存のための準備はしなきゃな、という冷静な判断を自ら課す。
どう追い込めば、どう自分が動いていくのか。
「ちょっと仮眠とるわよ!」
「えー、またですか?」
「いいじゃない? まだまだ城下町までは時間かかるんだし。
この魔導車両、設備は快適だしね」
「フォートレス魔改造とバトルで外はボロボロですけどね」
「どっかで修理しなきゃね~ではでは」
あくびをしながら、助手席から、車両の後部へ引っ込んでいった。
丸投げしやがって......
でも、女子と操縦席で2人きり、やや気まずいし。会話するのも疲れる。
のんびりと景色でもみるか。
アグリガルの中でも菜食地方は戦禍が酷くはなかったのか。
ゴブリンの砦は残っていたが......
「第一次食糧大戦」は7年前、人間と魔族の間で勃発した、初の本格的な世界大戦だ。俺を孤児に堕とした戦争でもある。
魔業革命によって機械に魔導を注入することに成功した人間は、覇権主義を唱え、魔族への侵攻を開始した。
その傷跡は、この世界、「ガストロノミア」にイビツさを生んでいる。つまり、格差、発展と荒廃のドミノ状態だ。
魔業革命の中心となり、第一次食糧大戦を主導した【ガストロ帝国】は勢力を拡大し、食糧戦国時代の覇者となりつつあった。
一方、戦争で荒廃したまま、復興も遅々として進まず、貧困に喘ぐ国やエリアもある。
食糧危機を救うための戦争が、人間たちの格差を増大させ、更なる食糧危機に襲われる人たちも多くないと聞く。
そんな中で、この疫病だ。
セルリアは、田舎は田舎で、豊かではないし、ゴブリンたちに苦しめられていたが、まだのどかな方なのかもしれないな。
緑が美しくそよぎ、一面植物の薫りを顔に受けながら、またまたぼけっと、マクロな、ガストロノミアへの思考を繰り返していた。
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