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終章 教室の窓際から
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操舵室は一度見学をしたことがある。
前にソーニャから聞いたんだけど、過去のソーニャが四大強国の兵に囲まれた際に、王城から逃げる時に、ラピス城へこの船を使ったと言ったからだ。
白き輝く希望という名の船は、その名とは違い灰色な船は、王族脱出用の超加速船だった。
この船は、四大強国の一番速い船でも、追いつけなかったといわれているんだ。
白き輝く希望はグングンと物凄い速さで、海を白と騎士の国まで走っている。
ここ広い作りの操舵室では、オニクボと白き輝く希望の上を、羽ばたいているブルードラゴンを除いてナイツ・オブ・ラストブリッジのメンバーが勢ぞろいしている。そして、周囲を走り回る近衛兵たちが船を操縦していた。他の一般兵たちは、自室にいるのだろう。
俺はグレート・シャインライン国の方角を、強い眼差しをして向いた。
すでに、遥か遠く小さくなったグレート・シャインライン国の本土は、ここからでも真っ白い。
「なあ、ソーニャ? 引き返さないか? やっぱり国王が国を捨てるのはよくないんじゃ……」
「そういうな。これも本国のためなのだ。元凶を叩かなければこの戦いは負ける」
俺は隣のソーニャに話し掛けた。
そういうもんかな?
うーん……今でも俺の心にはどうしようもない焦燥感があるんだ。
???
ふと、気づくと、マルガリータが俺を見つめていた。
何も言わなかったけれど、「これでいいのよ」とマルガリータの真摯な顔が言っているような感じがした。
「うん? あ、あれ?」
周りを見ると、ソーニャとマルガリータの他に、ヒッツガル師匠、ガーネットも俺を見つめていた。
その時、気が付いた。
みんな俺と同じ気持ちなんだ。
勿論、ソーニャでさえ……。
「……わかったよ。みんな」
俺はグレート・シャインライン国の国民を思う焦燥感を心の底へ押し込んだ。
「あなた。後、小一時間で白と騎士の国へ到着するぞ」
「ああ……」
その時、突然。
この船の上を飛ぶブルードラゴンが、サファイアブレスをグレート・シャインライン国の方角へ吐き出した。
超高温の青い炎が海を焼き払う。
激しい波風が発生し、それと同時に物凄い熱が船全体を襲う。
「な! どうしたんだ?! ブルードラゴンが暴れてる?!」
俺はソーニャと甲板へ出ると、そこにはグレート・シャインライン国を襲った。獣たちがモヤモヤとした白い煙を出して、白き輝く希望という名のこの船を腐らせていた。
獣には羽がついていて、グレート・シャインライン国の方角と遥か遠くにあるはずの白と騎士の国の方角から大量に飛んできていた。
うへええええ!
だけど、そのグレート・シャインライン国方面の獣たちは、ブルードラゴンのサファイアブレスで一掃されていた。
燃え盛る青い炎で、焼かれた獣たちがぼとぼとと海へと落ちている。
「くるぞ!!」
俺はそう叫び。甲板で仁王立ちすると、神聖剣を構えた。
一斉に俺に向かって、獣が白い煙を吐き出してきた。
それを軽いステップで躱すと、鋼雲剣を獣の集団の中央へ放つ。
爆速の光の束が多くの獣の身体を貫いた。
ソーニャとガーネットの剣戟。近衛兵の怒号。マルガリータとヒッツガル師匠の攻撃魔法が飛び交う中で。
俺はマズいと思った。
「や、ヤバくない?!」
白き輝く希望という名の船が、あまりの大量の白い煙でぶすぶすと腐ってきていた。
「鬼窪! 安心しろ! 人なら私の回復魔法で腐ってもなんとかしてみる!! 早くそいつらを倒せ!!」
「鬼窪くんに、補助魔法を掛けたわ! この場をなんとか防いで!!」
「鬼窪くんは、敵の攻撃を見ていなくてもいいの! 私の転移魔法で躱させてみせる!!」
通小町と猪野間、そして、西田が船の客室から甲板へと走って来た。
途端に、俺の身体が緑色の光を発して、五感が異状なほど研ぎ澄まされた。腕や足、身体そのものがまるで、なくなったかのように軽くなる。
「よーーしっ! なんとかなるか! みんなも任せたぞ!」
大海原のど真ん中で、大量の獣とナイツオブラストブリッジとクラスメイトが交戦する。
俺は獣の大軍へと全力で突撃した。
一体の獣が白い煙を吐き出したが、煙ごと神聖剣でぶった切った。
神聖剣は白い煙を受けても無事だったのだ。
後ろからの獣の攻撃は、振り向いて、逆袈裟斬り。
そのまま前に右足を送り、左足を踏み込むと、一太刀で二体、三体、獣を斬る。
しばらく、甲板で獣たちを斬っていると、無数だと思えるその数がだいぶ減ってきていた。俺は船を守り通すことができたと大きく息を吐いた。
だいぶ、疲れてきたなあ。
「きゃ!」
その時、空から一体の獣が白い煙をマルガリータに吐きかけてきた。
マルガリータも空ではなく甲板で、戦っている。
「マルガリータ!」
魔女であるマルガリータに、この動きは無理だ!
俺は速攻で、マルガリータの面前に立ちふさがろうとした。だが、
「転移!!」
「がら空きよ!」
その獣の背後に突然、姿を現したのは、西田の転移魔法で瞬間転移した猪野間だった。
獣が断末魔を上げる。
猪野間の刀で心臓を一突きだった。
俺は白い煙を神聖剣で上段から白い煙へ振り下ろす。
白い煙が左右に霧散した。
「みんな! 休憩時間だ! うりゃーー! 範囲完全回復魔法!」
通小町が俺たち、ナイツオブラストブリッジとクラスメイト全体に回復魔法を唱えた。
巨大な光が俺たちを、いや、甲板ごと包み込んだ。
お蔭で、俺の体力はすぐに全快になった。
「がんばれ! そのまま勝つんだ!!」
通小町は、なんと甲板の端っこを陣どって、回復魔法を唱え続けた。
これによって、俺たちは不死で無敵の戦士になった。
「みんな無事か! 白と騎士の国が見えてきたぞ! そのまますぐに本城へ乗り込む!」
ソーニャが一体の獣を斬り伏せながら叫んだ。
俺も獣を斬り伏せながら、北の方角を見ると、濃い白煙で覆われた広大な王城があった。その周辺には真っ白な様々な建造物が建ち並ぶ厳かな城下町が佇む。まるで、白い雪が降り積もっているかのようだった。
段々と、白き輝く希望が、トルメル城の裏門の入り江へ近づくにつれ、腐敗臭が強くなって来た。
前にソーニャから聞いたんだけど、過去のソーニャが四大強国の兵に囲まれた際に、王城から逃げる時に、ラピス城へこの船を使ったと言ったからだ。
白き輝く希望という名の船は、その名とは違い灰色な船は、王族脱出用の超加速船だった。
この船は、四大強国の一番速い船でも、追いつけなかったといわれているんだ。
白き輝く希望はグングンと物凄い速さで、海を白と騎士の国まで走っている。
ここ広い作りの操舵室では、オニクボと白き輝く希望の上を、羽ばたいているブルードラゴンを除いてナイツ・オブ・ラストブリッジのメンバーが勢ぞろいしている。そして、周囲を走り回る近衛兵たちが船を操縦していた。他の一般兵たちは、自室にいるのだろう。
俺はグレート・シャインライン国の方角を、強い眼差しをして向いた。
すでに、遥か遠く小さくなったグレート・シャインライン国の本土は、ここからでも真っ白い。
「なあ、ソーニャ? 引き返さないか? やっぱり国王が国を捨てるのはよくないんじゃ……」
「そういうな。これも本国のためなのだ。元凶を叩かなければこの戦いは負ける」
俺は隣のソーニャに話し掛けた。
そういうもんかな?
うーん……今でも俺の心にはどうしようもない焦燥感があるんだ。
???
ふと、気づくと、マルガリータが俺を見つめていた。
何も言わなかったけれど、「これでいいのよ」とマルガリータの真摯な顔が言っているような感じがした。
「うん? あ、あれ?」
周りを見ると、ソーニャとマルガリータの他に、ヒッツガル師匠、ガーネットも俺を見つめていた。
その時、気が付いた。
みんな俺と同じ気持ちなんだ。
勿論、ソーニャでさえ……。
「……わかったよ。みんな」
俺はグレート・シャインライン国の国民を思う焦燥感を心の底へ押し込んだ。
「あなた。後、小一時間で白と騎士の国へ到着するぞ」
「ああ……」
その時、突然。
この船の上を飛ぶブルードラゴンが、サファイアブレスをグレート・シャインライン国の方角へ吐き出した。
超高温の青い炎が海を焼き払う。
激しい波風が発生し、それと同時に物凄い熱が船全体を襲う。
「な! どうしたんだ?! ブルードラゴンが暴れてる?!」
俺はソーニャと甲板へ出ると、そこにはグレート・シャインライン国を襲った。獣たちがモヤモヤとした白い煙を出して、白き輝く希望という名のこの船を腐らせていた。
獣には羽がついていて、グレート・シャインライン国の方角と遥か遠くにあるはずの白と騎士の国の方角から大量に飛んできていた。
うへええええ!
だけど、そのグレート・シャインライン国方面の獣たちは、ブルードラゴンのサファイアブレスで一掃されていた。
燃え盛る青い炎で、焼かれた獣たちがぼとぼとと海へと落ちている。
「くるぞ!!」
俺はそう叫び。甲板で仁王立ちすると、神聖剣を構えた。
一斉に俺に向かって、獣が白い煙を吐き出してきた。
それを軽いステップで躱すと、鋼雲剣を獣の集団の中央へ放つ。
爆速の光の束が多くの獣の身体を貫いた。
ソーニャとガーネットの剣戟。近衛兵の怒号。マルガリータとヒッツガル師匠の攻撃魔法が飛び交う中で。
俺はマズいと思った。
「や、ヤバくない?!」
白き輝く希望という名の船が、あまりの大量の白い煙でぶすぶすと腐ってきていた。
「鬼窪! 安心しろ! 人なら私の回復魔法で腐ってもなんとかしてみる!! 早くそいつらを倒せ!!」
「鬼窪くんに、補助魔法を掛けたわ! この場をなんとか防いで!!」
「鬼窪くんは、敵の攻撃を見ていなくてもいいの! 私の転移魔法で躱させてみせる!!」
通小町と猪野間、そして、西田が船の客室から甲板へと走って来た。
途端に、俺の身体が緑色の光を発して、五感が異状なほど研ぎ澄まされた。腕や足、身体そのものがまるで、なくなったかのように軽くなる。
「よーーしっ! なんとかなるか! みんなも任せたぞ!」
大海原のど真ん中で、大量の獣とナイツオブラストブリッジとクラスメイトが交戦する。
俺は獣の大軍へと全力で突撃した。
一体の獣が白い煙を吐き出したが、煙ごと神聖剣でぶった切った。
神聖剣は白い煙を受けても無事だったのだ。
後ろからの獣の攻撃は、振り向いて、逆袈裟斬り。
そのまま前に右足を送り、左足を踏み込むと、一太刀で二体、三体、獣を斬る。
しばらく、甲板で獣たちを斬っていると、無数だと思えるその数がだいぶ減ってきていた。俺は船を守り通すことができたと大きく息を吐いた。
だいぶ、疲れてきたなあ。
「きゃ!」
その時、空から一体の獣が白い煙をマルガリータに吐きかけてきた。
マルガリータも空ではなく甲板で、戦っている。
「マルガリータ!」
魔女であるマルガリータに、この動きは無理だ!
俺は速攻で、マルガリータの面前に立ちふさがろうとした。だが、
「転移!!」
「がら空きよ!」
その獣の背後に突然、姿を現したのは、西田の転移魔法で瞬間転移した猪野間だった。
獣が断末魔を上げる。
猪野間の刀で心臓を一突きだった。
俺は白い煙を神聖剣で上段から白い煙へ振り下ろす。
白い煙が左右に霧散した。
「みんな! 休憩時間だ! うりゃーー! 範囲完全回復魔法!」
通小町が俺たち、ナイツオブラストブリッジとクラスメイト全体に回復魔法を唱えた。
巨大な光が俺たちを、いや、甲板ごと包み込んだ。
お蔭で、俺の体力はすぐに全快になった。
「がんばれ! そのまま勝つんだ!!」
通小町は、なんと甲板の端っこを陣どって、回復魔法を唱え続けた。
これによって、俺たちは不死で無敵の戦士になった。
「みんな無事か! 白と騎士の国が見えてきたぞ! そのまますぐに本城へ乗り込む!」
ソーニャが一体の獣を斬り伏せながら叫んだ。
俺も獣を斬り伏せながら、北の方角を見ると、濃い白煙で覆われた広大な王城があった。その周辺には真っ白な様々な建造物が建ち並ぶ厳かな城下町が佇む。まるで、白い雪が降り積もっているかのようだった。
段々と、白き輝く希望が、トルメル城の裏門の入り江へ近づくにつれ、腐敗臭が強くなって来た。
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