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終章 教室の窓際から
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心地よい潮風の朝。
俺は目を覚ました。
ベッドからソーニャの寝息が聞こえる。
俺はベッドから降りると、窓際へと歩いた。
窓からは、グレート・シャインライン国の王城に面した。王都用の港には17隻の大船が見える。
西田は白と騎士の国は遥か北にあるので、船でかなり近づかないと、転移できないといった。
西田によって、転移できるには、人数的にナイツオブラストブリッジと俺と猪野間、通小町、ソーニャ、アリテア王が選ばれた。
元々、ソーニャも千騎士だ。
いよいよだなと思った。
これが最後の戦いだ。
相手は史上最悪の暴君クラスド・エドガー?
なのか??
本当に??
「まあ、気にするな。王はどんな時でも民の事をおもうものだぞ」
ベッドからいつの間にか起きたソーニャの横顔が囁いた。
「ああ……」
秋野……。
俺は……これまで……。
お前に何かしてやれたのだろうか……?
「出港の10時までまだあるんだ。まだ寝ていろ。戦いすぎだぞ……」
ソーニャは再び寝入った。
俺は早朝にクシナ皇帝が意識を取り戻したと聞いて、病室前にいる従者に挨拶をしにいった。俺一人でクシナ皇帝に見舞いにきたんだけど、隣にはソーニャもいる。
「大丈夫か? クシナは一体どうしたんだ?」
「ああ、鬼窪王。クシナ皇帝から……お話があるとのことです」
白と騎士の国へ行ってから、重傷を負って倒れたクシナ皇帝は、グレート・シャインライン国王の王城の広大な病室で横になっていた。当然、要人用のベッドと部屋だ。
ベッド付近には、この国の隅々から一夜にして集められた医学者や占星術師。ヒーラー、シャーマン、薬学者に、医学者よりも薬草に詳しいといわれる木こりの人々が待機していた。
クシナ皇帝は漆黒の鎧こそ着ていないが、紫色の病院服なのだろうか。簡易な薄着だけを着ていた。
「すまないなあ。鬼窪王よ。わざわざこんなところまで、足を運んでくれて……。ふふふ、今になって思えば、あの時の鬼窪がグレート・シャインライン国の国王になるとはな……運命とは意外と真っ直ぐなところがあるものよ。……よく聞け。鬼窪王よ。クラスド・エドガーには気を付けるんだ。もっとも危険な存在になっているんだ」
クシナ皇帝が酷い皮肉を言うような顔で笑ってから、少しだけ顔を歪めた。
俺は心配して、ソーニャと顔を見合わせる。まだ痛いところがあるのだろう。
「大丈夫か? クシナ! もう少しだけでも安静にしていろよ」
「そうだ。もうしばしの安静を。クシナ皇帝が倒れたというだけで、従者や帝国の人々が不安がるぞ」
「ふふ、時間はない。いつも私にとっては早歩きをするんだよ。時間という者は……」
???
「あ、でも。警戒なんてしても、取り越し苦労になるぞ。大丈夫だぞ。クラスド・エドガーならとっくに倒したぞ」
「ふん! ならば、会ってみるがいい。もう一人のクラスド・エドガー。国王の方にな……」
「へ??」
「?! 聞き間違いか?! クラスド・エドガーが二人いると聞いたぞ?」
俺とソーニャが驚いたが、周囲の人々の一部は下を向くだけだった。
「二人いるんだ。トルメル城のクラスド・エドガーは……。国宝のエクスカリバーも二つあるのだが、一つは行方不明。そして、もう一つが本物のクラスド・エドガー王が持っている」
俺の頭に一つの知識が浮かび上がる。
そうだ。双子……なんだ。クラスド・エドガーは……。
「少し昔話をしよう。これは1000年前のお話だ。白と騎士の国には、二人の英雄がいた。一人は立派な千騎士を夢見る正義感を持つ少年だった。もう一人は王になりたがる野心溢れる少年だった。そして、ある日。北の方から大規模な魔族が襲来してきた。白と騎士の国とトルメル城は瞬く間に戦火に呑まれた。だが、たった二人だけが生き残ったのだ。一人は瀕死の重傷を受たが、魔族を倒し。一人はまったくといっていいほど怪我一つしていなかった。やがて、瀕死の重傷を受けても魔族を倒した少年は、白と騎士の国の最初の千騎士で英雄クラスド・エドガーとなり。もう一人。傷も負わずに生きていた少年は……暴君クラスド・エドガーとなった」
???
うん?
どういうこと……??
1000年前??
俺は目を覚ました。
ベッドからソーニャの寝息が聞こえる。
俺はベッドから降りると、窓際へと歩いた。
窓からは、グレート・シャインライン国の王城に面した。王都用の港には17隻の大船が見える。
西田は白と騎士の国は遥か北にあるので、船でかなり近づかないと、転移できないといった。
西田によって、転移できるには、人数的にナイツオブラストブリッジと俺と猪野間、通小町、ソーニャ、アリテア王が選ばれた。
元々、ソーニャも千騎士だ。
いよいよだなと思った。
これが最後の戦いだ。
相手は史上最悪の暴君クラスド・エドガー?
なのか??
本当に??
「まあ、気にするな。王はどんな時でも民の事をおもうものだぞ」
ベッドからいつの間にか起きたソーニャの横顔が囁いた。
「ああ……」
秋野……。
俺は……これまで……。
お前に何かしてやれたのだろうか……?
「出港の10時までまだあるんだ。まだ寝ていろ。戦いすぎだぞ……」
ソーニャは再び寝入った。
俺は早朝にクシナ皇帝が意識を取り戻したと聞いて、病室前にいる従者に挨拶をしにいった。俺一人でクシナ皇帝に見舞いにきたんだけど、隣にはソーニャもいる。
「大丈夫か? クシナは一体どうしたんだ?」
「ああ、鬼窪王。クシナ皇帝から……お話があるとのことです」
白と騎士の国へ行ってから、重傷を負って倒れたクシナ皇帝は、グレート・シャインライン国王の王城の広大な病室で横になっていた。当然、要人用のベッドと部屋だ。
ベッド付近には、この国の隅々から一夜にして集められた医学者や占星術師。ヒーラー、シャーマン、薬学者に、医学者よりも薬草に詳しいといわれる木こりの人々が待機していた。
クシナ皇帝は漆黒の鎧こそ着ていないが、紫色の病院服なのだろうか。簡易な薄着だけを着ていた。
「すまないなあ。鬼窪王よ。わざわざこんなところまで、足を運んでくれて……。ふふふ、今になって思えば、あの時の鬼窪がグレート・シャインライン国の国王になるとはな……運命とは意外と真っ直ぐなところがあるものよ。……よく聞け。鬼窪王よ。クラスド・エドガーには気を付けるんだ。もっとも危険な存在になっているんだ」
クシナ皇帝が酷い皮肉を言うような顔で笑ってから、少しだけ顔を歪めた。
俺は心配して、ソーニャと顔を見合わせる。まだ痛いところがあるのだろう。
「大丈夫か? クシナ! もう少しだけでも安静にしていろよ」
「そうだ。もうしばしの安静を。クシナ皇帝が倒れたというだけで、従者や帝国の人々が不安がるぞ」
「ふふ、時間はない。いつも私にとっては早歩きをするんだよ。時間という者は……」
???
「あ、でも。警戒なんてしても、取り越し苦労になるぞ。大丈夫だぞ。クラスド・エドガーならとっくに倒したぞ」
「ふん! ならば、会ってみるがいい。もう一人のクラスド・エドガー。国王の方にな……」
「へ??」
「?! 聞き間違いか?! クラスド・エドガーが二人いると聞いたぞ?」
俺とソーニャが驚いたが、周囲の人々の一部は下を向くだけだった。
「二人いるんだ。トルメル城のクラスド・エドガーは……。国宝のエクスカリバーも二つあるのだが、一つは行方不明。そして、もう一つが本物のクラスド・エドガー王が持っている」
俺の頭に一つの知識が浮かび上がる。
そうだ。双子……なんだ。クラスド・エドガーは……。
「少し昔話をしよう。これは1000年前のお話だ。白と騎士の国には、二人の英雄がいた。一人は立派な千騎士を夢見る正義感を持つ少年だった。もう一人は王になりたがる野心溢れる少年だった。そして、ある日。北の方から大規模な魔族が襲来してきた。白と騎士の国とトルメル城は瞬く間に戦火に呑まれた。だが、たった二人だけが生き残ったのだ。一人は瀕死の重傷を受たが、魔族を倒し。一人はまったくといっていいほど怪我一つしていなかった。やがて、瀕死の重傷を受けても魔族を倒した少年は、白と騎士の国の最初の千騎士で英雄クラスド・エドガーとなり。もう一人。傷も負わずに生きていた少年は……暴君クラスド・エドガーとなった」
???
うん?
どういうこと……??
1000年前??
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