45 / 57
皇帝の憂鬱
44
しおりを挟む
慌てて寸でのところで突きを躱すも、右側に態勢が崩れ、懐に隙が生じた。
「隙あり!!」
クシナ皇帝の上段から、折り返しての下段の斬撃が俺を襲った。
俺は必死に身体を更に右に捻り……。
「くらえ!!」
鋼雲剣を空中で放つ。
光の束が、爆速に一直線に進む。
クシナ皇帝は避けるが、僅かの差で右足と右腕、そして、胸の右側に光の束が直撃した。
ドンっと鈍い音と共に、クシナ皇帝の漆黒の鎧が四方へと弾けた。
そのままクシナ皇帝の身体は、下へと落ちていった。
ズシンと音がした。
俺は地面に着地すると、落ちたクシナ皇帝の方へ走ると、漆黒の鎧は見る影もない。だが、クシナ皇帝は無事だった。
こちらに平手を振り……。
「良い戦いであったぞ……見事だ……」
「はあ、はあ、さすがにきつかったぜ!」
……
そういえば、オニクボは??
あいつも一緒に落下したのかな??
俺は辺りを見回すと、遥か上の方から声がした。
「あばよ! 鬼窪くん! 俺は一足先にラピス城へ戻ってるぜ!」
オニクボの大声が上から降ってくる。
ふうっ……あいつも強いなあ……。
俺はオニクボが敵でなくてほんと良かったと思った。
「鬼窪くん! すぐに戻って!! ラピス城が!!」
マルガリータが大きめの箒を抱えて、血相変えて走って来た。どうやら、落下したここは、軍備管理室というプレートが柱に張ってある広い場所だった。
「うん??」
「今度は、白の騎士の国が攻めてきたの!! 今は、ラピス城はクシナ要塞との交戦でほぼ壊滅状態よ! ブルードラゴンだけがなんとかしてくれているの!!」
「えええ!! なんてこった!!」
「フッフッフ。案ずることはないぞ鬼窪よ! たった今から、クシナ要塞はラピス城に同盟するぞ!!」
クシナ皇帝がむくっと起き上がると、そう宣言して、どこかへと急いで走っていた。
よし!! これなら!! いけるぜ!!
クシナはもう味方だ!!
あ! 上にいた猪野間はどうするんだろう? もう味方だよな……。
「鬼窪くん。私も行くわ! ちょっと待ってて!!」
軍備管理室のドアから、猪野間の声が聞こえたかと思うと、こちらに駆けて来た。
「マルガリータ!! すぐ行く!! 俺たちを乗せていってくれ!!」
「え……ええ」
俺と猪野間は手近なパネル式の窓を開けると、マルガリータの箒に乗った。
「じゃ、行くわよ。鬼窪くん。猪野間さん。ちゃんとつかまっていてね! さあ! 飛んで!!」
マルガリータの一声で、大きめの箒は自然と浮いてきた。
すぐさま、箒は大空へと飛翔した。
俺たちを乗せて。
俺たちを乗せたマルガリータの大きめの箒は、徐々に高度を下げていった。
目的地は遥か下方のラピス城だ。
ラピス城は至る所からモクモクと黒煙を上げていた。
無数の砲撃によって、崩れかけたラピス城の上には、旋回しているブルードラゴンの凄まじいサファイアブレスが、敵国に向かって吐き出され、遥か北は青い炎で燃え盛り、白一色の鎧の兵ごと焼け野原と化している。だが、それでも、白と騎士の国の兵は何事もなかったかのように進軍している。
俺たちのところまでは、今のところ砲撃はこないのだが、ブルードラゴンのお蔭で、今でも、ダメージを受けているラピス城は、なんとか無事だった。
「つ……強過ぎるぞ! あの兵たち! ブルードラゴンのサファイアブレスでも平気みたいだ! 白と騎士の国? って、一体??」
「ねえ、鬼窪くん。ちゃんと勉強しているの? 白と騎士の国は、千騎士の国と呼ばれていて、古代から史上最強を誇っているの。いわば、強国の中でも断トツに強い国なのよ。兵たち一人一人が千騎士だから、並大抵じゃ敵わないわ」
「うへえええ。そ、そんな強国があるなんて?!」
「うーん……今のままだと……ラピス城が落ちるわ」
「へ??」
急に吹いてきた強い風の中。
むせるほどの煙の臭いが混じって来た。
遥か北はもうサファイアブレスによって、青々と燃え盛っている。
そういえば、ライラックやソーニャも千騎士だったっけ……。
ライラックは一度倒しているから、俺と神聖剣なら太刀打ちできるはずだ!
「昔、世界中を戦火に巻き込む大戦争を起こした。クラスド・エドガーという暴君が治めていたことでも、有名な国なのよ。非常に好戦的なところもあるの。敵に回すと最悪な国。そう、今は深刻な食糧難で、グレード・シャインライン国が狙われているけれど、本当はどこの国でも良かったのかも知れない……」
「うへえええ」
武力行使好きな国って意味なのか?!
「鬼窪くん。もうすぐ橋の上よ。準備はいい? 猪野間さんもしっかりと身を守ってね」
「わかった」
「よっしゃあ、行こうぜ! 降りようぜ!」
北の大地から凄まじい地鳴りを発し、白と騎士の国の白いフルプレートメイルの兵たちが、ラピス城の橋へとまるで白い大波のように押し寄せてくる。ざっと見てもその数。3万の大軍だった。
白い軍団。
その軍団には騎馬兵隊や戦車隊などもいる。
「ラピス城の戦力は?? マルガリータさん?」
「こちらは、せいぜい騎士団が100人ぽっちの兵数ね。後、ナイツオブラストブリッジがいるだけなの。なので、もう壊滅状態よ」
「そう……よく、今まで城を守れたわね……」
猪野間は感心と呆れた顔が同居した顔をした……。
俺は橋へとマルガリータの箒から降りると、全滅した騎士団の先頭で神聖剣を抜いた。
怒号が橋のすぐそこまで来ていた。
一体。一体の兵は千騎士だからとても強いんだ。
だから、こうなりゃ、こっちは高火力戦だ!!
「隙あり!!」
クシナ皇帝の上段から、折り返しての下段の斬撃が俺を襲った。
俺は必死に身体を更に右に捻り……。
「くらえ!!」
鋼雲剣を空中で放つ。
光の束が、爆速に一直線に進む。
クシナ皇帝は避けるが、僅かの差で右足と右腕、そして、胸の右側に光の束が直撃した。
ドンっと鈍い音と共に、クシナ皇帝の漆黒の鎧が四方へと弾けた。
そのままクシナ皇帝の身体は、下へと落ちていった。
ズシンと音がした。
俺は地面に着地すると、落ちたクシナ皇帝の方へ走ると、漆黒の鎧は見る影もない。だが、クシナ皇帝は無事だった。
こちらに平手を振り……。
「良い戦いであったぞ……見事だ……」
「はあ、はあ、さすがにきつかったぜ!」
……
そういえば、オニクボは??
あいつも一緒に落下したのかな??
俺は辺りを見回すと、遥か上の方から声がした。
「あばよ! 鬼窪くん! 俺は一足先にラピス城へ戻ってるぜ!」
オニクボの大声が上から降ってくる。
ふうっ……あいつも強いなあ……。
俺はオニクボが敵でなくてほんと良かったと思った。
「鬼窪くん! すぐに戻って!! ラピス城が!!」
マルガリータが大きめの箒を抱えて、血相変えて走って来た。どうやら、落下したここは、軍備管理室というプレートが柱に張ってある広い場所だった。
「うん??」
「今度は、白の騎士の国が攻めてきたの!! 今は、ラピス城はクシナ要塞との交戦でほぼ壊滅状態よ! ブルードラゴンだけがなんとかしてくれているの!!」
「えええ!! なんてこった!!」
「フッフッフ。案ずることはないぞ鬼窪よ! たった今から、クシナ要塞はラピス城に同盟するぞ!!」
クシナ皇帝がむくっと起き上がると、そう宣言して、どこかへと急いで走っていた。
よし!! これなら!! いけるぜ!!
クシナはもう味方だ!!
あ! 上にいた猪野間はどうするんだろう? もう味方だよな……。
「鬼窪くん。私も行くわ! ちょっと待ってて!!」
軍備管理室のドアから、猪野間の声が聞こえたかと思うと、こちらに駆けて来た。
「マルガリータ!! すぐ行く!! 俺たちを乗せていってくれ!!」
「え……ええ」
俺と猪野間は手近なパネル式の窓を開けると、マルガリータの箒に乗った。
「じゃ、行くわよ。鬼窪くん。猪野間さん。ちゃんとつかまっていてね! さあ! 飛んで!!」
マルガリータの一声で、大きめの箒は自然と浮いてきた。
すぐさま、箒は大空へと飛翔した。
俺たちを乗せて。
俺たちを乗せたマルガリータの大きめの箒は、徐々に高度を下げていった。
目的地は遥か下方のラピス城だ。
ラピス城は至る所からモクモクと黒煙を上げていた。
無数の砲撃によって、崩れかけたラピス城の上には、旋回しているブルードラゴンの凄まじいサファイアブレスが、敵国に向かって吐き出され、遥か北は青い炎で燃え盛り、白一色の鎧の兵ごと焼け野原と化している。だが、それでも、白と騎士の国の兵は何事もなかったかのように進軍している。
俺たちのところまでは、今のところ砲撃はこないのだが、ブルードラゴンのお蔭で、今でも、ダメージを受けているラピス城は、なんとか無事だった。
「つ……強過ぎるぞ! あの兵たち! ブルードラゴンのサファイアブレスでも平気みたいだ! 白と騎士の国? って、一体??」
「ねえ、鬼窪くん。ちゃんと勉強しているの? 白と騎士の国は、千騎士の国と呼ばれていて、古代から史上最強を誇っているの。いわば、強国の中でも断トツに強い国なのよ。兵たち一人一人が千騎士だから、並大抵じゃ敵わないわ」
「うへえええ。そ、そんな強国があるなんて?!」
「うーん……今のままだと……ラピス城が落ちるわ」
「へ??」
急に吹いてきた強い風の中。
むせるほどの煙の臭いが混じって来た。
遥か北はもうサファイアブレスによって、青々と燃え盛っている。
そういえば、ライラックやソーニャも千騎士だったっけ……。
ライラックは一度倒しているから、俺と神聖剣なら太刀打ちできるはずだ!
「昔、世界中を戦火に巻き込む大戦争を起こした。クラスド・エドガーという暴君が治めていたことでも、有名な国なのよ。非常に好戦的なところもあるの。敵に回すと最悪な国。そう、今は深刻な食糧難で、グレード・シャインライン国が狙われているけれど、本当はどこの国でも良かったのかも知れない……」
「うへえええ」
武力行使好きな国って意味なのか?!
「鬼窪くん。もうすぐ橋の上よ。準備はいい? 猪野間さんもしっかりと身を守ってね」
「わかった」
「よっしゃあ、行こうぜ! 降りようぜ!」
北の大地から凄まじい地鳴りを発し、白と騎士の国の白いフルプレートメイルの兵たちが、ラピス城の橋へとまるで白い大波のように押し寄せてくる。ざっと見てもその数。3万の大軍だった。
白い軍団。
その軍団には騎馬兵隊や戦車隊などもいる。
「ラピス城の戦力は?? マルガリータさん?」
「こちらは、せいぜい騎士団が100人ぽっちの兵数ね。後、ナイツオブラストブリッジがいるだけなの。なので、もう壊滅状態よ」
「そう……よく、今まで城を守れたわね……」
猪野間は感心と呆れた顔が同居した顔をした……。
俺は橋へとマルガリータの箒から降りると、全滅した騎士団の先頭で神聖剣を抜いた。
怒号が橋のすぐそこまで来ていた。
一体。一体の兵は千騎士だからとても強いんだ。
だから、こうなりゃ、こっちは高火力戦だ!!
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。
円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。
魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。
洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。
身動きもとれず、記憶も無い。
ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。
亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。
そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。
※この作品は「小説家になろう」からの転載です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~
mimiaizu
ファンタジー
迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる