ナイツ・オブ・ラストブリッジ【転生したけどそのまんまなので橋を守ります】

主道 学

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皇帝の憂鬱

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 慌てて寸でのところで突きを躱すも、右側に態勢が崩れ、懐に隙が生じた。

「隙あり!!」

 クシナ皇帝の上段から、折り返しての下段の斬撃が俺を襲った。
 
 俺は必死に身体を更に右に捻り……。

「くらえ!!」

 鋼雲剣を空中で放つ。
 
 光の束が、爆速に一直線に進む。
 クシナ皇帝は避けるが、僅かの差で右足と右腕、そして、胸の右側に光の束が直撃した。

 ドンっと鈍い音と共に、クシナ皇帝の漆黒の鎧が四方へと弾けた。

 そのままクシナ皇帝の身体は、下へと落ちていった。

 ズシンと音がした。

 俺は地面に着地すると、落ちたクシナ皇帝の方へ走ると、漆黒の鎧は見る影もない。だが、クシナ皇帝は無事だった。

 こちらに平手を振り……。

「良い戦いであったぞ……見事だ……」
「はあ、はあ、さすがにきつかったぜ!」

……

 そういえば、オニクボは??
 あいつも一緒に落下したのかな??
 
 俺は辺りを見回すと、遥か上の方から声がした。

「あばよ! 鬼窪くん! 俺は一足先にラピス城へ戻ってるぜ!」

 オニクボの大声が上から降ってくる。

 ふうっ……あいつも強いなあ……。
 俺はオニクボが敵でなくてほんと良かったと思った。

「鬼窪くん! すぐに戻って!! ラピス城が!!」

 マルガリータが大きめの箒を抱えて、血相変えて走って来た。どうやら、落下したここは、軍備管理室というプレートが柱に張ってある広い場所だった。

「うん??」
「今度は、白の騎士の国が攻めてきたの!! 今は、ラピス城はクシナ要塞との交戦でほぼ壊滅状態よ! ブルードラゴンだけがなんとかしてくれているの!!」
「えええ!! なんてこった!!」
「フッフッフ。案ずることはないぞ鬼窪よ! たった今から、クシナ要塞はラピス城に同盟するぞ!!」

 クシナ皇帝がむくっと起き上がると、そう宣言して、どこかへと急いで走っていた。

 よし!! これなら!! いけるぜ!!
 
 クシナはもう味方だ!!
 あ! 上にいた猪野間はどうするんだろう? もう味方だよな……。

「鬼窪くん。私も行くわ! ちょっと待ってて!!」

 軍備管理室のドアから、猪野間の声が聞こえたかと思うと、こちらに駆けて来た。

「マルガリータ!! すぐ行く!! 俺たちを乗せていってくれ!!」
「え……ええ」
 
 俺と猪野間は手近なパネル式の窓を開けると、マルガリータの箒に乗った。
 
「じゃ、行くわよ。鬼窪くん。猪野間さん。ちゃんとつかまっていてね! さあ! 飛んで!!」
 
 マルガリータの一声で、大きめの箒は自然と浮いてきた。
 すぐさま、箒は大空へと飛翔した。
 俺たちを乗せて。
 
 俺たちを乗せたマルガリータの大きめの箒は、徐々に高度を下げていった。
 目的地は遥か下方のラピス城だ。

 ラピス城は至る所からモクモクと黒煙を上げていた。
 無数の砲撃によって、崩れかけたラピス城の上には、旋回しているブルードラゴンの凄まじいサファイアブレスが、敵国に向かって吐き出され、遥か北は青い炎で燃え盛り、白一色の鎧の兵ごと焼け野原と化している。だが、それでも、白と騎士の国の兵は何事もなかったかのように進軍している。

 俺たちのところまでは、今のところ砲撃はこないのだが、ブルードラゴンのお蔭で、今でも、ダメージを受けているラピス城は、なんとか無事だった。

「つ……強過ぎるぞ! あの兵たち! ブルードラゴンのサファイアブレスでも平気みたいだ! 白と騎士の国? って、一体??」
「ねえ、鬼窪くん。ちゃんと勉強しているの? 白と騎士の国は、千騎士の国と呼ばれていて、古代から史上最強を誇っているの。いわば、強国の中でも断トツに強い国なのよ。兵たち一人一人が千騎士だから、並大抵じゃ敵わないわ」
「うへえええ。そ、そんな強国があるなんて?!」
「うーん……今のままだと……ラピス城が落ちるわ」
「へ??」

 急に吹いてきた強い風の中。

 むせるほどの煙の臭いが混じって来た。
 遥か北はもうサファイアブレスによって、青々と燃え盛っている。

 そういえば、ライラックやソーニャも千騎士だったっけ……。

 ライラックは一度倒しているから、俺と神聖剣なら太刀打ちできるはずだ!

「昔、世界中を戦火に巻き込む大戦争を起こした。クラスド・エドガーという暴君が治めていたことでも、有名な国なのよ。非常に好戦的なところもあるの。敵に回すと最悪な国。そう、今は深刻な食糧難で、グレード・シャインライン国が狙われているけれど、本当はどこの国でも良かったのかも知れない……」
「うへえええ」

 武力行使好きな国って意味なのか?!

「鬼窪くん。もうすぐ橋の上よ。準備はいい? 猪野間さんもしっかりと身を守ってね」
「わかった」
「よっしゃあ、行こうぜ! 降りようぜ!」

 北の大地から凄まじい地鳴りを発し、白と騎士の国の白いフルプレートメイルの兵たちが、ラピス城の橋へとまるで白い大波のように押し寄せてくる。ざっと見てもその数。3万の大軍だった。

 白い軍団。

 その軍団には騎馬兵隊や戦車隊などもいる。

「ラピス城の戦力は?? マルガリータさん?」
「こちらは、せいぜい騎士団が100人ぽっちの兵数ね。後、ナイツオブラストブリッジがいるだけなの。なので、もう壊滅状態よ」 
「そう……よく、今まで城を守れたわね……」

 猪野間は感心と呆れた顔が同居した顔をした……。

 俺は橋へとマルガリータの箒から降りると、全滅した騎士団の先頭で神聖剣を抜いた。 

 怒号が橋のすぐそこまで来ていた。
 
 一体。一体の兵は千騎士だからとても強いんだ。
 だから、こうなりゃ、こっちは高火力戦だ!!
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