上 下
18 / 57
西方のガルナルナ国 その二

17

しおりを挟む
 それと同時に、俺も意識を手放した。

…………

「う……。うーん……」

 気づくと、俺は何か固いものに下敷きになっていた。上に乗っかっているものは、瓦礫と化した白い大理石の壁だった。それを押し上げて、脇にどかし、なんとか起き上がる。

 いってーーー!
 どこだ?
 ここ??

 ま、まさか!
 ガルナルナ城?!

 俺は恐る恐る辺りを見まわしていた。
 白い大理石の瓦礫が散乱し、無事だった壁面には数々の絵画が飾られている。けれど、その絵画はどれも……色々な戦火の中の鎧だけの絵だった。至るところのステンドグラスの大きな窓の脇にも頑丈そうな鎧だけが置かれている。

 うっひゃああああー! そうだ! ここはガルナルナ城内だ!
 守神アリテア王の城だ!!

 ブルードラゴンもいない。
 マルガリータとヒッツガル師匠もいない。  
 なんてこったーーーー!

 ひょっとして、俺一人だけでこれから戦わなきゃならないんだろうか……。

 俺は神聖剣を強く握り、キョロキョロとしだした。
 さすがに心細かった。
 敵陣の中で、俺一人だけだし。
 この騒ぎに気がついた人たちって、一体? 何人?

「いたぞーー。ラピス城の騎士だ!」
「こっちか!」
「成敗ーー!」

 向こうの廊下の十字路を埋め尽くすかのような、頑丈な鎧に身を包んだ騎士たちが、俺に向かってガシャガシャと走ってきた。

 俺は深呼吸して、目を瞑った。

 向かってくる騎士の攻撃を躱しながら、脇、首、手首、胴、頭を次々と軽いステップで、自然と身についている体捌きで、右、左、後ろ、斜めと神聖剣で斬撃を浴びせていく。かなりの血飛沫が舞って、神聖剣が血のりか何かで重くなってきても、俺は高速に斬り込んでいた。

 やがて、向かってくる騎士たちが一人もいなくなった。
 俺は直感的にこの程度の数ならぞうさもないと感じていたんだ。
 
「な……なんだこいつは……」
「つ、強い!」
「もっとも頑丈なミスリルの鎧をこうも簡単に斬るなんて!」
「怯むな! 囲めーーー!!」
 
 一人の隊長と思しき騎士の号令と共に、大勢の騎士たちが俺を囲んでしまった。
 
「うん?」

 俺は目を開けて、同時に目を疑った。
 神聖剣によって深手を追って倒れたはずの騎士たちが……何事もなかったかのように起き出してきている。
 不可解だった。
 俺は困惑した。
 だが、よく見ると、倒れていた騎士たちの身体が僅かに光を発している。
 
 そして、騎士たちから歓声が上がった。

「聖女様だーーー!」
「聖女様!」
「通小町聖女様!」

「ふふふふふふふ……鬼窪くん! ここであなたは終わりよ!」
「??? え?!」

 廊下の十字路の一つから、一人歩いてくる神聖な格好をした女の子に俺は驚いてしまった。 
 その女の子は、通小町 弥生だった……。 至る所に通小町の両手から発する光で照らされて、騎士たちが立ち上がって来る。通小町は負傷している騎士たち……それも物凄い数。を、全て治してしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ショタだらけのシェアハウス

ichiko
BL
魔法が存在する平行世界の日本に生きるおっさん。魔法が一つしか使えないために職にも就けず生活は破綻寸前だった。そんな彼を不憫に思った神様が彼を魔法が存在しないパラレルワールドの日本に転移させる。転移した先はショタっ子だけのシェアハウスだった。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない

セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。 しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。 高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。 パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。 ※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~

古嶺こいし
ファンタジー
散々なクリスマスの夜に突然召喚されて勇者にされてしまった主人公。 しかし前日に買っていたピアスが呪いの装備だったらしく 《呪いで神の祝福を受け取れませんでした》 《呪いが発動して回復魔法が毒攻撃になります》 《この呪いの装備は外れません》 《呪いで魔法が正常に発動できませんでした》 ふざっけんなよ!なんでオレを勇者にしたし!!仲間に悪魔だと勘違いされて殺されかけるし、散々だ。 しかし最近師匠と仲間ができました。ペットもできました。少しずつ異世界が楽しくなってきたので堪能しつつ旅をしようと思います。

異世界で魔法学校の教員試験に落ちた主人公が、異世界で一から生活をやり直す。

小説好きカズナリ
ファンタジー
比較的難易度が低い魔法学校の教員試験に落ちた主人公神楽坂郡司(この世界ではグンジ)が一から生活をやり直す。 それは魔法学校の生徒の世話をしたり、宿泊先の手伝いをすることだった。 しかし、あるとき女の子の着替えを覗いてしまい、状況が一変する。

処理中です...