ナイツ・オブ・ラストブリッジ【転生したけどそのまんまなので橋を守ります】

主道 学

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ナイツオブラストブリッジ

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「って? ええ? 主力の間違いじゃないのか??」

 橋へと落下している間に、マルガリータの火炎弾は次々と射出され、橋で戦っていた1000人を超える青い鎧の人たちを片っ端しからふっと飛ばしていた。

 火炎弾が着弾した橋の至る所から立ち昇る凄まじい黒煙で目が痛かった。目を閉じて橋へと着地すると、すぐさま30人は優に超える青い鎧の人たちが俺に突撃してきた。俺は意外にも恐怖はまったく感じなかった。ハイルンゲルトから力を与えて貰ったからだろうか? それとも、手にした神聖剣のせいだろうか? 

 俺は目を瞑ったままだ。
 体が自然と動くんだ。
 気づいたら、辺りの爆炎の轟音と共に青い鎧の人たちの絶叫が木霊した。俺は自然に舞うように神聖剣を振っていた。

 一瞬で青い鎧そのものや鋼の盾すらも切り裂く神聖剣。
 橋の凸凹も気にしない俺の軽やかなステップ。
 向かってくる相手の動きが逐一気づけてしまう研ぎ澄まされた直観。

 それらが俺を最強にしていた……。


 俺は一呼吸すると、薙ぎ払った青い鎧の人たちが辛うじて生きていることにホッとした。それと同時に、火炎による橋からの熱や煙で激しく咳き込んだ。ラピス城へと繋がる唯一の橋はマルガリータと俺によって、あっという間に形勢逆転していた。

「あ! 鬼窪くん! 危ない!!」

 空中からのマルガリータの叫びで俺は躱す態勢を一瞬速く作れた。
 大勢の青い鎧の人たちの中から光る剣が飛び出して俺のマントの端を切り裂いた。
 
「ラ……ライラック……か?」
「オニクボよ! 必ず戻って来ると信じていたぞ!!」

 多くの青い鎧を跨いで突進してくるライラックの白い鎧が迫る。俺は神聖剣を片手に持ち、髑髏が彫り込まれた短剣も片手に持った。

「ライラック! この橋を守るためにここで決着を付けてやる!!」
 
 神聖剣とライラックの剣から火花が飛び散った。
 遥か前方の橋では爆音が木霊する。未だマルガリータが空中を飛びまわり数千の青い鎧の人たちと交戦中だった。

 熱気と熱風で汗が頬を伝った。
 俺から仕掛けた。
 神聖剣を思いっきり振り上げ、ライラックの懐に突撃する。
 だが、ライラックは大盾を真っ正面に構えると、剣を斜め横に振り上げる。
 
「見えた!!」

 俺はライラックの懐寸前でジャンプして前転した。目の前にがら空きのライラックの背中と白いマントが見える。

 髑髏の短剣で心臓の部分に突きを放った。

 が、ライラックは振り向き様に大盾で短剣の突きを弾いてしまった。

 俺は軽いステップでバックして態勢を整えた。
 ライラックも後ろへ後退して態勢を整える。

「ふうっ、ふうっー……うう……。貴様! 本当に私に斬られそうになって、ただ逃げ回っているだけだった。あの時のオニクボの息子か?!」
「ああ、そうだ!! いや、ちがーーう!! 俺は普通の高校生だったんだ!」
「何? 高校生?? とは、一体何だ!!」
「ただの学生さ!!」

 俺は神聖剣を遥か上空へ向けて構えた。

 そして、気合いと共に最上段からの神聖剣を振り下ろそうとした。
 が、遠い橋の方から数発の大砲の弾が俺に向かって飛んできた。

 俺を爆風と熱が襲う。凄まじい轟音と衝撃と共に目から火花が飛んで、耳がキ―ンと鳴った。何が起きたのかわからない。激しい頭痛と耳鳴りを抑えて、周囲を見回すと、いつの間にか俺の前には、風に包まれたマルガリータが右手を挙げて立っていた。激しい砲撃を空気が振動するほどの突風で全て弾いてしまっている。砲弾は橋から海の方へ吹っ飛んで爆発する。

「ふーっ、危ない。危ない。……鬼窪くん無事?」
「ありがとうな。マルガリータ」
「無事で良かった。大砲の弾は私に任せて。でも、今度からは騎士団たちはどうしようもないからね。自分でなんとかしてね。じゃ!」
「へ?? ライラックもか??」

 マルガリータは再び大きな箒へと跨ると空を飛んだ。そして、次々と撃たれる砲撃を風で弾き飛ばしていく。

「騎士団の数はまだ半端じゃないし! お、俺だけでどうしようっていうんだ!!」
「ふふふふっ。よーっし、これならば! オニクボを数で押し潰せーー!! 全軍突撃ーーー!!」

 橋の向こうから大勢の騎士団がライラックの命を受けて、俺に突撃してくる。

「なん?? や、ヤバくない?!」
 俺は冷や汗を掻いて、咄嗟に神聖剣を構えた。
  
 土煙を上げ、橋の向こうから軽く5000はいく青い鎧の騎士団が俺に統率のとれた動きで前進してくる。

「加勢するよ!」
「オニクボよ! 私も加勢するわ!」
 
 ラピス城からは、大女とソーニャの二人が剣をそれぞれ振り上げて、俺の傍へと駆け寄って来た。ソーニャも大女も大した怪我はない。

「王女はお下がりください!」
「でも、下がっても意味はまったくないんだよ!」

 大女の一声にソーニャが剣を構えた。
 辺りは迫り来る騎士団の耳を塞ぎたくなるような足音が轟き。不穏な空気が流れ始めた。
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