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西方の盗賊団
02
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「う……うーん」
意識を取り戻したんだな。俺……。
意外なことに、ここは海の中ではないらしい。
目を開けると、そこは草原だった。でも、何故?
確か海に落ちたんだよな?
やべえ、昨日の模試の勉強したところを完全に忘れてしまった。
いや、それどころじゃない! 俺は確かあの橋から落ちてしまったんだ。
未だに頭が混乱していた。
さっきの女の人。ソーニャは無事か?!
草木もあまりない荒れ果てた草原を見つめて気がついた。
痛みはなかった。
俺はすぐに仰向けになっていたが起き上がろうとした。
「一体、ここはどこだ? 空には雲のような……真っ白なパンツがあるし……?!」
上空は雲もなく。まるでスカートの中のようだった。
あ、あれ??
もしかして、ここって??
「キャ―――!」
何故か悲鳴までする。
俺は不思議に思ってスルスルとした絹の中から立ち上がると、そこには一人の少女がいた。黒の長いハットに赤と緑の衣装。片手に箒を持っている。
「ま、魔女……?」
少女はとても恥ずかしがって、俯いていたままで片手を上げた。途端に物凄い勢いで突風が少女の周りに集まる。
やっぱり……。
これは、さすがにやばい!!
「ごめーん! ま、待て! 止めてーー! 魔法止め!!」
「……」
少女が手を静かに降ろすと草原の風が急に穏やかになった。
「ははっ、助けてくれてありがとう……かな?」
「……」
多分、この少女は俺を海から助けてくれたんだろうなと思った。少女は俯いたまま遥か東を指さした。
なんだろう?
首を向けると、あの橋が見える。
それにしても、今の俺って何語で話してるんだろう?
不思議なことだらけだなあ。
「と、遠いなあ。けど、早く戻らないと……いけないんだ」
俺はあのソーニャとかいう王女が気になり出していた。
「今から一緒に飛んで行くのよ。王女様が危険だから……」
え?! き、危険?!
「ああ、あんたの名前は?」
「マルガリータ……ナイツオブラストブリッジの一人」
「そうか……。 ナイツオブラストブリッジ? 俺の名は……」
怖くなって、カクカクと鳴ってしまう足を叱咤していると、いつの間にか、草原の地面が盛り上がってきた。砂煙と共に下品な笑い声が木霊する。
「よー、よー、ちょっと待ってくれよー」
「うーん。うーん。こいつは顔は見えないんだな。でも、いい女の匂いがするんだなあ。こいつは高値だなあ」
「一人は男かあ……こっちは安値だなあ」
「うん?」
突然、土の中からガラの悪い男たちが飛び出してきた。あっという間に俺たちは男たちに囲まれた。まるで、モグラのようだった。その証拠にボロボロの格好の男たちの肩や頭には砂ぼこりが付いていた。
「は、早く逃げよう!」
俺は慌てて少女の方を向いた。
少女は俯いたままだったが。大きな箒を一振りし、顔を上げた。俺の腕を掴んで箒に跨ると、不思議な事に俺たちの身体ごと空中に浮いてきた。
「君の名前は? さあ、飛ぶわよ!!」
「鬼窪 功一だ!! 飛ぶって、その箒でか?!」
「うん! ……って、あれ?」
急に辺りが静かになった。
周囲のガラの悪い男たちが皆、何故か青い顔をして震えだしていた。
一体こいつらどうしたんだろう?
男たちは俺の顔を見ながら、息もできないのか喉を抑えて震えだした。
「ああ、そういえば! 君があの最凶最悪といわれた黒の骸盗賊団の頭領の息子のオニクボなの?!」
「へ……え……? ちが……」
「え? ……ちがう??」
そう……。
………
「ううん、そうよ……。そうだったわ」
「なんだ? 今の間は??」
混乱する俺にマルガリータが控えめにウインクすると何度も頷いた。
「そうそう、あなたが黒の骸盗賊団の頭領の息子でしたものね」
マルガリータは額に冷や汗を流しながら嘘を並べた。
「あの、盗賊団の人たちに言っておきます。私は今まで頭領の息子を介抱していたんですよ」
な、何を言ってるんだ??
マルガリータが都合のいい嘘を吐くと、途端にガラの悪い男たちは、一斉に泡を吹くもの。腰を抜かすもの。この場から一目散に逃げ出しまうものがでてきた。固まったかのように突っ立っていた男たちが、やっとのことで俺たちに頭を下げた。そして、草原全体が震えだすほどの大声を出してくる。
「そ、そうだったんでやすか! すいやせんでしたーーー!!」
「そりゃ、すいやせんでしたー!!」
「うー、すいやせん!!」
男たちは皆、泣いて謝ってくる。
俺はズッコケた。
マルガリータが俺の掴んでいた腕を強くつねると、耳元で小声で話して来た。
「鬼窪くん。君が何者でも構わない。だけど、今は黒の骸盗賊団の頭領の息子のオニクボになっていて……お願い……」
「あ、ああ……わかったよ。でも、それより俺急に腹が減って……倒れそう……なんだ……よ」
どうやら、俺は緊張がほぐれてしまって、凄まじい空腹でマルガリータの大きな箒から地面へぶっ倒れた。今朝は何も……食べていないんだ。昨日は徹夜でテスト勉強していて……。もう、単位がやばかったから……。
でも、いいか。
ここんなところへ来たんだし……。
意識を取り戻したんだな。俺……。
意外なことに、ここは海の中ではないらしい。
目を開けると、そこは草原だった。でも、何故?
確か海に落ちたんだよな?
やべえ、昨日の模試の勉強したところを完全に忘れてしまった。
いや、それどころじゃない! 俺は確かあの橋から落ちてしまったんだ。
未だに頭が混乱していた。
さっきの女の人。ソーニャは無事か?!
草木もあまりない荒れ果てた草原を見つめて気がついた。
痛みはなかった。
俺はすぐに仰向けになっていたが起き上がろうとした。
「一体、ここはどこだ? 空には雲のような……真っ白なパンツがあるし……?!」
上空は雲もなく。まるでスカートの中のようだった。
あ、あれ??
もしかして、ここって??
「キャ―――!」
何故か悲鳴までする。
俺は不思議に思ってスルスルとした絹の中から立ち上がると、そこには一人の少女がいた。黒の長いハットに赤と緑の衣装。片手に箒を持っている。
「ま、魔女……?」
少女はとても恥ずかしがって、俯いていたままで片手を上げた。途端に物凄い勢いで突風が少女の周りに集まる。
やっぱり……。
これは、さすがにやばい!!
「ごめーん! ま、待て! 止めてーー! 魔法止め!!」
「……」
少女が手を静かに降ろすと草原の風が急に穏やかになった。
「ははっ、助けてくれてありがとう……かな?」
「……」
多分、この少女は俺を海から助けてくれたんだろうなと思った。少女は俯いたまま遥か東を指さした。
なんだろう?
首を向けると、あの橋が見える。
それにしても、今の俺って何語で話してるんだろう?
不思議なことだらけだなあ。
「と、遠いなあ。けど、早く戻らないと……いけないんだ」
俺はあのソーニャとかいう王女が気になり出していた。
「今から一緒に飛んで行くのよ。王女様が危険だから……」
え?! き、危険?!
「ああ、あんたの名前は?」
「マルガリータ……ナイツオブラストブリッジの一人」
「そうか……。 ナイツオブラストブリッジ? 俺の名は……」
怖くなって、カクカクと鳴ってしまう足を叱咤していると、いつの間にか、草原の地面が盛り上がってきた。砂煙と共に下品な笑い声が木霊する。
「よー、よー、ちょっと待ってくれよー」
「うーん。うーん。こいつは顔は見えないんだな。でも、いい女の匂いがするんだなあ。こいつは高値だなあ」
「一人は男かあ……こっちは安値だなあ」
「うん?」
突然、土の中からガラの悪い男たちが飛び出してきた。あっという間に俺たちは男たちに囲まれた。まるで、モグラのようだった。その証拠にボロボロの格好の男たちの肩や頭には砂ぼこりが付いていた。
「は、早く逃げよう!」
俺は慌てて少女の方を向いた。
少女は俯いたままだったが。大きな箒を一振りし、顔を上げた。俺の腕を掴んで箒に跨ると、不思議な事に俺たちの身体ごと空中に浮いてきた。
「君の名前は? さあ、飛ぶわよ!!」
「鬼窪 功一だ!! 飛ぶって、その箒でか?!」
「うん! ……って、あれ?」
急に辺りが静かになった。
周囲のガラの悪い男たちが皆、何故か青い顔をして震えだしていた。
一体こいつらどうしたんだろう?
男たちは俺の顔を見ながら、息もできないのか喉を抑えて震えだした。
「ああ、そういえば! 君があの最凶最悪といわれた黒の骸盗賊団の頭領の息子のオニクボなの?!」
「へ……え……? ちが……」
「え? ……ちがう??」
そう……。
………
「ううん、そうよ……。そうだったわ」
「なんだ? 今の間は??」
混乱する俺にマルガリータが控えめにウインクすると何度も頷いた。
「そうそう、あなたが黒の骸盗賊団の頭領の息子でしたものね」
マルガリータは額に冷や汗を流しながら嘘を並べた。
「あの、盗賊団の人たちに言っておきます。私は今まで頭領の息子を介抱していたんですよ」
な、何を言ってるんだ??
マルガリータが都合のいい嘘を吐くと、途端にガラの悪い男たちは、一斉に泡を吹くもの。腰を抜かすもの。この場から一目散に逃げ出しまうものがでてきた。固まったかのように突っ立っていた男たちが、やっとのことで俺たちに頭を下げた。そして、草原全体が震えだすほどの大声を出してくる。
「そ、そうだったんでやすか! すいやせんでしたーーー!!」
「そりゃ、すいやせんでしたー!!」
「うー、すいやせん!!」
男たちは皆、泣いて謝ってくる。
俺はズッコケた。
マルガリータが俺の掴んでいた腕を強くつねると、耳元で小声で話して来た。
「鬼窪くん。君が何者でも構わない。だけど、今は黒の骸盗賊団の頭領の息子のオニクボになっていて……お願い……」
「あ、ああ……わかったよ。でも、それより俺急に腹が減って……倒れそう……なんだ……よ」
どうやら、俺は緊張がほぐれてしまって、凄まじい空腹でマルガリータの大きな箒から地面へぶっ倒れた。今朝は何も……食べていないんだ。昨日は徹夜でテスト勉強していて……。もう、単位がやばかったから……。
でも、いいか。
ここんなところへ来たんだし……。
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