巫女と勇気の八大地獄巡り

主道 学

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閻魔庁と浄玻璃鏡?

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「なんだ?! まだ俺とやるのか!! お兄ちゃんよ!!」
「ああ!! 一発お前を殴らないと、スッキリしないんだよ!!」

 固く握った拳を、サングラスの男の顔面目掛けて思いっ切り振り上げる。
 その時、骸の山の上で骨の腕を踏んだせいで、サングラスの男がバランスを大きく崩した。見事、俺の拳がサングラスの男の顔面を抉った。それから、獄卒が俺たちの間に割って入った。

 金棒を振り回す獄卒の動きが、俺にはスローモーションのように見えた。獄卒の金棒は、よく見ると元々血塗られていた。それがサングラスの男の上半身を容赦なく粉々に粉砕する。

 バキバキと大量に骨の折れる派手な音が辺りに鳴った。

「ぐっ!! ぐへええ!」

 サングラスの男の身体は、その場から血をまき散らして遥か彼方へ吹っ飛んだ。

「やったな! ざまあみろ! なあ、兄貴!」
「ああ! でも、早めにここから逃げた方がいいな……ほら、騒ぎに気がついた獄卒たちが集まってきている」
「……そうだな……あのな……兄貴……オレは広部 康介っていうとある組織のリーダーに長い間。脅迫されていたんだ」

 辺りから無数の裸足の足音がしてきた。
 獄卒が広部の方へと歩く音だった。

「その広部ってやつが、さっきの黒のサングラスの男だったんだな。それであんなことを?」
「あ、ああ。生きていた時で、最後に覚えていたことっていったら、都内の高級バーで強引に酒を勧められていたことと、それから憂さ晴らしに酔っぱらって車ころがして、それから……とある組織の幹部の車に突っ込んだことだけだ」     
「え? ……幹部?」
「そうだけど?」
「ひょっとして、弥生は普通の自動車との正面衝突をしたんじゃなくて、幹部を狙って事故を起こしたのか?」
「ああ……多分な……ワリい……オレ記憶があやふやで……」
「ああ、そうだよな」

 一人の大きな体躯の獄卒が近くを横切った。
 それから、立ち止まって、こちらをじっと見つめている。
 俺は何やら不穏な空気を察知した。

 獄卒が弥生目掛けて、手に持つ金棒を振り上げた。

「あ!」
「……!」

 俺は咄嗟に弥生を脇へ引っ張り、そのまま走り出した。
 周囲の悲鳴や呵責の大絶叫の声が耳をつんざく中で、大叫喚地獄の真っ赤な大地を滅茶苦茶に走りに走る。

 灰色の空から、また大勢の罪人が降ってきた。
 地面に体を激突したものから、獄卒の無情の金棒によって、粉砕されていく。

 裸の罪人の肉体がただの血袋と化して、それが破裂して半透明な人型の魂になっても、獄卒の地獄の責めは尚も続いた。

「ぜえっ! ぜえっ! そうだ! 音星はいないけど、仕方ないから閻魔庁の場所を探そうよ!」
「え? あの巫女さんがいないのに……いいのか?」
「ああ、多分な! 音星なら機転が利くから閻魔丁へと一人でも来てくれるはずだよ!」 
 
「またあそこに行くのか? 兄貴? オレは正直、凄く遠いところにあるから行きたくないんだけどな」
「まあな……」
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