巫女と勇気の八大地獄巡り

主道 学

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地獄に仏?

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 白猫は俺の顔を見るなり、ニャーと鳴いて近づいてきて、足元で頬を摺り寄せてじゃれはじめてしまった。

 うーん。

 あ、古葉さんの猫屋でか?!

 この猫の所在は猫屋だと知ると、また猫屋へ戻らなければいけない。今度は猫を連れ、俺は猫屋へ元来た道を歩いて行った。

 ただのガキの遣いだと思ったら、色々あったな……。

 ニャー……。

 猫屋へ戻ると、店内では、古葉さんが神妙な顔をしてショーケースを覗いていた。古葉さんの後ろから声を掛けると、いきなり驚きの声があがった。

「わっ! わーー! って、火端か……。驚かすなよ……。あれ? その猫! その猫!」
「うん。ああ、この猫。いつの間にかついて来たんだよ」
「お前……一番。厄介な猫を……」
「へ?」
「その猫はなあ、飼い主によく似た奴を見つけると、どこまでも着いていってしまうんだ。この間なんかなあ……」
「俺、買うよ。金はこの旅が終わったらでいいかな?」
「うえ! ……よし! 売った!」

 俺は白猫を買ってから、民宿へ戻ることにした。古葉さんは、快く白猫を後払いで売ってくれた。俺の実家は茨城県にあるんだ。実家ならいくらか金があるんだ。さて、この白猫の名前は……シロでいいな。決まりだな。 
 
 シロを連れて、民宿へ戻ると、今度は玄関先にしかめっ面のおばさんが……。

 これじゃあ、今日中に衆合地獄に行けないので、俺はそそくさとおばさんの脇を通って、二階の音星の部屋へと向かった。

「お帰りなさい火端さん。その猫は?」
「ああ、シロっていうんだ。猫屋でさっき買ったんだよ」

 アイスを食べ終わった音星は、巫女服の姿で浄玻璃の手鏡に顔を写していた。

「それでは、いざ衆合地獄へ行きましょうか」
「ああ。って、ここで?」
「ええ。お後がよろしいようで……」

 音星の手鏡がこちらに向いて、いきなり光が俺の顔に照射された。

 俺は目を瞑りしばらくそのままでいた。ゴ―……スー……ゴ―……スーっという何かを激しく摩る大きな音と共に、カラっと乾いた空気が俺の顔を襲った。

 目を開けて辺りを見回した。

 目の前には、首から上が馬の巨大な男が、鼻息を荒くしていた。俺の後ろの方を見ると、両手を広げて走り回った。その後に首から上が牛の男が走っていく。あれが、衆合地獄に存在する恐ろしい牛頭と馬頭だろう。音星が隣に寄り添うと。早速、この衆合地獄での妹探しが始まった。
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