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恐山菩提寺からきた巫女?
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しおりを挟む音星がハッとして。、急に俺の後ろの方へ目を向けてから、口をキュッと結んだ。
。
そして、口を開き静かに言った。
「あの火端さん。走れますか? それもかなり速く?」
「え??」
俺は自分の真後ろを見た。
途端に、驚いた。
「また、あいつか?!」
「逃げましょう!」
八天街にいた。
魑魅魍魎のろくろ首だ。
激しい強風の中だというのに、物凄く長い大蛇のような首を円を描くように、洞窟の上下左右の壁面に素早く這わせてきた。そして、俺たちを追い掛け出した。ろくろ首の体自体の走りはあまり速くはないが。それでも、俺と音星は全速力で洞窟の風の中を奥の方へと走った。
とぼけているようでもなく。
その巫女は至って真面目な様子だった。
俺は急に身体が震えだした。
けれども、ここに妹がいるはずなんだ!
そう思って勇気を出すと、恐怖が吹っ飛んだ。
「そうか、良かったー!! 俺は勇気。名前は火端《ひばた》 勇気っていうんだ。妹も火端だ。八天街の神社からここへ来た」
「はい! 私は音星《おとぼし》 恵です。へえー、そうなんですか。妹さんのために。私は青森県の恐山菩提寺から来ました。恐山菩提寺は下北半島の霊場・日本三大恐山の一つにあるんです。そこでは死者の供養と、イタコの口寄せを開く場所になっていて。私は、その恐山菩提寺から死者の弔いのために地獄を旅しているんですよ」
けれども、よくこんなに凄まじい風の中なのに、提灯の火が消えないもんだな。
洞窟の中の風は未だに強烈に吹いているのに。
「ああ……そうなんだね。……俺は死んでしまった妹を探すためさ。ずっと昔から地獄の入り口を探しているんだ。今じゃ、ちょっとした地獄マニアさ。妹を助けるためなら何だってする! そして、死ぬほど怖いけど……本物の地獄へやっと来れたんだ! やったぜーー!! あはははは……何故か……なあ……妹は……冤罪の感じがするんだ。優しい子だったんだ」
「はあ、それはお辛そうですね。ここは八大地獄と呼ばれているところです。死者はその罪の大きさによって、それぞれ最下層へと向かうところなんです」
「はっ、八大地獄ー?! うひゃあーーー! こえけど、やっっったぜーー! 八大地獄ならよく知っているよ! 等活地獄。黒縄地獄。衆合地獄。叫喚地獄。大叫喚地獄。焦熱地獄。大焦熱地獄。それに阿鼻地獄とあるんだよな」
「ええ、良くご存知で」
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