虎倉街の天気予報 春のち地震で世界に均衡を

主道 学

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再び影の王国へ行こう

あれれれれ?

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「ぶっ飛べえええええ!」

 俺の膝蹴りと肘打ちが、二人の男の影の顎と腹に派手にヒット。

 二人の相手は遥か廊下の彼方へ吹っ飛んでいった。

 キッチンのドアを開けると……。

「うぎっ! 父さん!! 俺! それと、妹!」

 三人の影が立ち塞がっていた。

 俺は冷や汗を掻いた。
 父さんたち三人が構えたが……みんな真・心影流だったからだ。
 
「この玉座は誰にも渡さない!」
「心影流は二つもいらない!」
「おにいちゃん! 覚悟!!」

 この狭いキッチンでの戦い。
 これが玉座争奪戦の最終決戦場なのか???

 キッチンテーブルが影たちの闘志でガタガタと揺れ動く。
 我が妹も俺の傍で構えるが……???

「うぎっ! そんな構えあったっけ?」
「うん」

 俺の影が一番手に動いた。
 心影流は守りの技だ。
 最初に仕掛けた方が……うぎっ!?

 俺の影の飛び膝蹴りが真・心影流を構えた俺の真横を通り過ぎる。
 狙いは妹だった。
 だが、我が妹は難なく躱して、俺の影の腕を目にも止まらない手刀で断ち切ってしまった。
 
 キッチンが騒がしくなる。
 俺の影がすぐさまぶらんとした右腕を抱えて、後ずさり。影同士三人でひそひそと話している。
 俺は心の片隅の不安を隠そうとして、父さんの影に飛び掛かった。

「玉座は渡さねー!」
「フッ、強くなったな影洋。光!!」

 俺の飛び蹴りを躱し俺の父さんの影がすぐさま反撃をした。 
 正拳と掌打が交差する。
 俺が即座に放った正拳が掌打を過り父さんの影の頬を抉る。
 父さんの影の放った掌打が俺の腹部を捉えた。

「うぎっ! う……痛い。眩暈が……。キツイ……。いつかきっと、父さんの影をあふんって言わせてやるぜ!」
「おにいちゃん。それを言うならぎゃふんだよー」
 
 我が妹がいつの間にか父さんの影の背後に回っていた。
 ズゴンッと派手な音が辺りに鳴り響く。

「ガッ! プーーーー!」
 父さんの影が叫びながらその場で崩れ落ちた。

 妹よ。そんな技を人間相手に使っていいのか……?

 我が妹が父さんの影の延髄に強烈な肘打ちを数発も打っていた。
 普通の人ならもう死んでる。
 凄い技を何の躊躇もしないで……使ってるんだな。
 多分、猛スピードの技ばかりの速度重視の技だ。
 
「これがおじいちゃん譲りの真・心光流!」

 おじいちゃん……絶対に教えちゃいけない奴になんて技を……。

 心影流も真・心影流も要は目で相手の動きを見る。
 相手の動きが目にも止まらないなら……防げないんだな。
 ボケが始まってきたおじいちゃんが、妹に真・心光流をにこやかにふらふらと教えている姿が俺には容易く想像できた。
 
「あれれれ?」

 妹の影が急に首をかしげる。
「玉座が……ないよ。おにいちゃん?」

 キッチンテーブルの隅を見ると、そこにあったはずの父さんの椅子がいつの間にか忽然と消えていた。
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