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再び影の王国へ行こう
玉座争奪戦
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俺は目を丸くしている杉崎のおじさんとおばさんにも礼を言って、傘がいっぱい脇に差してある玄関で妹と外へと出ようとした。我が妹は杉崎からパンを一枚貰ったが……。
「あれ? 影洋くん!」
杉崎は俺たちを呼び止めて、何かに気がついてラジオをいじる。
更にボリュームが上がったラジオからは……。
「影虎よ……ようこそ影の世界へ……」
影虎《かげとら》……俺の父さんの名前だ……。
生きていた!
でも、何故?
おばあちゃんの言ったことが間違いなのか?
いや、そんなはずはない。
俺の父さんと母さんは確かに……影に殺されたはずだ。
確か……?
「ほひいちゃん! さあ、教会行こう! 影の世界に行こう!」
「う、うん。今、考え中……。だったが、うっがーーー! 忘れてしまったーー! じゃ、行くか!」
俺たちはホームセンターの脇を横切り教会へと向かう。雨は止んでいて陽の光が眩しいぜ。道路の至るところに日差しを反射する水たまりができていた。
「おにいちゃん。綺麗だね」
パンを食べ終わった我が妹が言った。
「ああ……絶対に影の世界もこの世界も支配しちゃる。玉座はなんだかよくわからんが、俺が座ってやる!」
「おにいちゃん……おにいちゃんが玉座に座ったら影の世界の王様になれるんだよね。そしたら、私は何になるの?」
「うーん。多分、あれだ……。妹のままだ」
「ぶー」
「さあ、これから玉座争奪戦だ!!」
「おにいちゃん?」
俺たちは教会へと突っ走った。
教会までどうしてか刺客は誰もいなかった。
俺と妹は、無事に教会の床の階段に辿り着いた。
ドアを開けて静かな住宅街に出ると、辺りは前と変わらず深い夜の闇が支配していた。
「おにいちゃん。もう、夜だね……。時差があるんだ……」
「うん……そう……か??」
危うくボケの一歩手前で俺は立ち止まった。
「あ、いや。我が妹よ。そこから違う。影の世界だから朝と夜が……うぎっ!!」
そういや、時差でも真逆でもなんで夜なんだ??
普通。表の世界が昼ならこちらは夜で、表の世界が夜なら……??
「うーん」
「おにいちゃん? わかった。ここはずっと夜なの。……きっと何かの大きな影の背中のところだから」
「うーん……うぎっ?」
我が妹よ。お前は賢いぞ!!
おにいちゃん鼻が高いぞ!
そうだ!
ここは太陽の背中で作られた影の世界だ!!
つまりは、太陽の背中の方にある世界なんだ。
だから、陽が昇らない。
ずっと、闇の中なんだ。
なんかわかってきた感じ。
影の世界って。
道路を彩る桜の花弁が舞っている。
俺たちは家に向かって急いだ。
途中で誰も刺客がいないので俺も妹も拍子抜けした顔になってきた。
水たまりに浮かぶ桜の花弁が月の光で妖しく光っていた。
難なく家の前に到着すると、一人の鉄製の棒を持った男の影がいた。
「やったー! 刺客だ!!」
「おにいちゃーん。良かったねー!」
「うりゃ!」
俺は男の影を正面から羽交い締めした。
心影流の奥義の一つだ。
超高速で接近して、相手の両手、両足、両肩、首、口、鼻、それら全てを真っ正面から封じる。
しばらくすると、男の影が窒息して倒れた。
「おにいちゃん! さっすが!」
家のドアを開けると、玄関にも男の影が二人いた。
「あれ? 影洋くん!」
杉崎は俺たちを呼び止めて、何かに気がついてラジオをいじる。
更にボリュームが上がったラジオからは……。
「影虎よ……ようこそ影の世界へ……」
影虎《かげとら》……俺の父さんの名前だ……。
生きていた!
でも、何故?
おばあちゃんの言ったことが間違いなのか?
いや、そんなはずはない。
俺の父さんと母さんは確かに……影に殺されたはずだ。
確か……?
「ほひいちゃん! さあ、教会行こう! 影の世界に行こう!」
「う、うん。今、考え中……。だったが、うっがーーー! 忘れてしまったーー! じゃ、行くか!」
俺たちはホームセンターの脇を横切り教会へと向かう。雨は止んでいて陽の光が眩しいぜ。道路の至るところに日差しを反射する水たまりができていた。
「おにいちゃん。綺麗だね」
パンを食べ終わった我が妹が言った。
「ああ……絶対に影の世界もこの世界も支配しちゃる。玉座はなんだかよくわからんが、俺が座ってやる!」
「おにいちゃん……おにいちゃんが玉座に座ったら影の世界の王様になれるんだよね。そしたら、私は何になるの?」
「うーん。多分、あれだ……。妹のままだ」
「ぶー」
「さあ、これから玉座争奪戦だ!!」
「おにいちゃん?」
俺たちは教会へと突っ走った。
教会までどうしてか刺客は誰もいなかった。
俺と妹は、無事に教会の床の階段に辿り着いた。
ドアを開けて静かな住宅街に出ると、辺りは前と変わらず深い夜の闇が支配していた。
「おにいちゃん。もう、夜だね……。時差があるんだ……」
「うん……そう……か??」
危うくボケの一歩手前で俺は立ち止まった。
「あ、いや。我が妹よ。そこから違う。影の世界だから朝と夜が……うぎっ!!」
そういや、時差でも真逆でもなんで夜なんだ??
普通。表の世界が昼ならこちらは夜で、表の世界が夜なら……??
「うーん」
「おにいちゃん? わかった。ここはずっと夜なの。……きっと何かの大きな影の背中のところだから」
「うーん……うぎっ?」
我が妹よ。お前は賢いぞ!!
おにいちゃん鼻が高いぞ!
そうだ!
ここは太陽の背中で作られた影の世界だ!!
つまりは、太陽の背中の方にある世界なんだ。
だから、陽が昇らない。
ずっと、闇の中なんだ。
なんかわかってきた感じ。
影の世界って。
道路を彩る桜の花弁が舞っている。
俺たちは家に向かって急いだ。
途中で誰も刺客がいないので俺も妹も拍子抜けした顔になってきた。
水たまりに浮かぶ桜の花弁が月の光で妖しく光っていた。
難なく家の前に到着すると、一人の鉄製の棒を持った男の影がいた。
「やったー! 刺客だ!!」
「おにいちゃーん。良かったねー!」
「うりゃ!」
俺は男の影を正面から羽交い締めした。
心影流の奥義の一つだ。
超高速で接近して、相手の両手、両足、両肩、首、口、鼻、それら全てを真っ正面から封じる。
しばらくすると、男の影が窒息して倒れた。
「おにいちゃん! さっすが!」
家のドアを開けると、玄関にも男の影が二人いた。
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