虎倉街の天気予報 春のち地震で世界に均衡を

主道 学

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再び影の王国へ行こう

目を開けると?!

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――――

「ほにいちゃーーん!! 起きてーーー!!」
「影洋くん! 起きてーーーー!!」
「ぶっ!! むにゃーーーー!!」

 二つの柔らかい塊が俺の顔を直撃した。

 俺は起き出して辺りを見回した。
 女物の洒落た家具に洋服箪笥。あと、ピンクの柄のテレビが設置されている。俺が寝ていたベッドからはいちごの良い匂いがした。

「って、時間が戻ってる?!」
「あ、いや……そうじゃなくて……。私がまた拾ったの……」

 声の主は杉崎だった。
 ここは杉崎の家。

「ほひいちゃん。三人も私一人で倒すの大変だったんだよ」

 うぎっ! 我が妹よ!!
 そんなに強かったのか?!
 いや! あ、そうだ! 三人の影は手負いだったんだ!

「心配になって、影洋くんの後をついて行ったのよ。そしたら、影洋くんが二人倒れていて、後はもう一人の妹さんと、影洋くんのお父さんも倒れているんだもん。少し混乱しちゃったよ」

「うっぎーーーーーー!! 杉崎!! それ本当か?!」

 そうなのか?!
 謎の影の正体は俺の父さん……?!
 
 杉崎家の朝食はパンだった。
 杉崎のおばさんとおじさんと一緒に、やたらとラジオがたくさん置いてある一階のキッチンで、クロワッサンにフランスパン。ピザトーストにイチゴのホイップクリームのコッペパンを頬張った。
 いただいた飲み物の紅茶はオレンジペコだ。
 オレンジペコはその名の通りに……じゃなくて、オレンジの味はしない。市販されているのは、だいたいセイロン茶系の紅茶のようだった。

 ピザトーストをオレンジの味のしない紅茶で喉に流しこんで、俺は考え事をしていた。
 一体?
 俺の父さんは?
 確かにおばあちゃんから影に殺されたって聞いているのに……?!
 だけど、生きているはずだ。
 なぜなら、影が生きているんだ。本体は死んでいない。

「うーん……わからん。あと、影の世界へどうやって行こうか?」
「ほにいちゃーーん!! それより学校行こう!!」
「うぎっ! 今はそれどころじゃないんだーー!! 学校よりも玉座だーー!!」
「ほひっ? 先生怖いから?」

「影洋くん。心配しないで、今日は祝日よ……」
 世話焼きの杉崎がコトリと紅茶のカップをテーブルに置いた。

「やったーーー! よし、もう一回。影の世界へ行こう!!」
「ほひいちゃん! ……学校怖いから?」
「……いや、使命だ!! 我が妹よ!! これが女神様からの使命なんだ!! 学校なんて二の次だ!!」
 我が妹は紅茶をのんびりと飲んだ。

「おおーーー。さすが、影洋くん。凄いね……」
 杉崎はゆっくりと紅茶を飲んでいる。
「影洋くん。そんなんじゃ進級できないわよー」
「うぎっ……あ、でも俺の父さんの目的ってなんだろう?」

 俺の父さんも世界の支配なのかな……?
 その時、やたらとたくさん置いてあるラジオからガガガと音がなってから、女神様の声がした……。
「影洋。今、ここにいます……か……どうして……」

 途切れ途切れの女神様の声は聞き取りにくかった。

「影洋くん。ちょっとボリューム上げて」
 杉崎はラジオの女神様の声を大きくするように言った。

「ほい!」
 妹がやたらとたくさんあるラジオの一台のボリュームを上げた。
 杉崎のおじさんとおばさんが目を丸くした。
 妹よ! ボリューム大きすぎる!!

「え……よう……ここにいます……」
 
 うぎっ! 
 わからん!
 ちょっ、声が大きい!!
 それにどこ?? 女神様??

「う、うーん……わかんにゃい! 女神様ーーーー!!」
「ほひいちゃん! なんか女神様呼んでる感じ……」
「あれ? そうなの? 影洋くん。なら、すぐに行ってやって」

 ええい! 女神様の居場所がわかんにゃい!
 さて、どうする?

「影洋くん!」
「ほひいちゃん!」
「……」

 ええい!

「とにかく! 影の世界へ行ってみよう!」
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