虎倉街の天気予報 春のち地震で世界に均衡を

主道 学

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学校へ行こう

向かいの

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「まだ間に合う。まだ間に合う。全然勉強してないけれど。まだ間に合う」

 書統高校まで急いで走る。

 林道の登り坂を上がっている途中で、たくさんの影が現れた。
 うぎっ! いつの間にか囲まれている!
 俺の影が呼んだ刺客か?!
 それとも、内・通・者?
 
「うん? どうした?」

 後ろから突然声を掛けられた。
 それも知っている声だ。

「公平!! 今は緊急なんだ! 手を貸してくれ!!」

 不良の公平はとても強い。
 喧嘩上等殺法という我流の使い手だ。
 急に水滴が空から降ってきた。
 雨だ。

「オウ! そういうことなら、……本気で久々の喧嘩をしてやるゼ!」

 ツッパリカットの似合う公平はゴキゴキと首を鳴らし始めた。
 影たちが少し後ずさった。
 よし! これなら……!
 あの恐ろしい先生を怖がらないのは、クラスで公平だけだった。

「ウラ―! 緊急事態なんだーー! 試験に間に合わなかったら大変なんだーーー!!」

 俺は心影流で一番の奥義。
 一撃必殺の一矢刺突の舞討という技を繰り出した。
 舞うような動きで、それぞれの影の喉に貫手を繰り出していく。
 貫手が当たった影から昏倒していった。
 俺は更に舞った。
 この舞を舞っている間は誰にも近づけないし、舞に翻弄されて喉ががら空きになるんだ。

「う! 相変わらずに強いな……。お前……」

 公平は得意の爆裂拳を使った。

 数分後にあれほどいた影があっという間に昏倒していた。

「ピンポンパンポーンー……。虎倉街三丁目にお住いの……向井 広助さんが……昨日の午後17時から今朝にかけて……散歩に出かけたまま……戻ってきておりません……。そのまま行方不明になっております……服装は赤色の服。水色のズボン。角刈りの頭で……。見かけた人は……。虎倉街三丁目にお住いの……向井 広助さんが……昨日……」

 町内放送だ!
 俺は耳を疑った。

「うぎっ! 三丁目の向井さんって……? 今朝会ったじゃんか?! おかしいだろ!」

 どこかで聞いたことのある名だった。
 近所の向井さんの下の名は確かに広助だった。

「どうするよ。影洋? 確か、向井さんってお前の近所の人だっただろう?」

 喧嘩が終わって、公平の奴が俺に聞いて来た。
 俺は激しい葛藤をした。

「うぎーーー……」
「……じゃあ、これならどうよ……先公には俺が適当なこと言っておいてやるよ。突発性下痢性歩行障害とかだってな」
「……ありがとな公平! その病名以外は礼を言っておくぜー! それじゃあ、先生に言っておいてくれよな! ……後で絶対に確認するからな……みんなに公平が俺の仮病をなんて言ったか……じゃあな!」

 俺は近所の向井さんを探しに登り坂を学校とは逆に下っていった。
 
 でも、走りながら気がついた。向井さん……一体どこを探せばいいんだ?!
 よし、まずは何もわからないから向井さんの家へ行ってみよう!

 約5分ほど走ると俺の家にたどり着けた。はて? 向井さんの家は……そうだ! 向かいにあるんだった! 

「すいませーん……」

 赤い屋根の二階建てで、砂利の地面の脇には植木鉢がたくさんならんでいた。俺は向井さんの家の呼び鈴を鳴らしてみる。おじさん以外の人がいるはずだ。そうだ! 奥さんがいるんだった!
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