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心影山へ行こう
妹が……?!
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…………
「おにいちゃん! 頑張れ! 頑張れ!」
「うー、ふあーい……」
俺は徹夜をして杉崎の持っていた登山道具一式の中のストックで岩面を掘っていた。
本来は体のバランスを取るのに使うのだけど……。
いくら掘ってもストックが壊れないようにと手加減しているから。なかなか掘れない……。
他のレインウェアやカメラ、水筒などは使えないのだから仕方がない。
いつになっても真っ暗な山でひたすら掘り続けていると……。
やった!
やったぞー!
掘れたーーー!!
岩面に浮き出た影斬りの刃は、ナイフの形をした不気味な形状の武器だった。まるで、炎が豪快にメラメラと燃え盛っているような刀身だった。
「さすが! おにいちゃーーん!」
「おー、ようやく取れたの? そのナイフ何に使うの?」
我が妹と杉崎も徹夜をしてくれていた。
これで、影たちとの戦いで相手にダメージを与えられるはずだ。
あ、そうだ! これが女神さまが言っていた仲間を探せだ!!
杉崎の影は凄い大男だったんだ。
ほんとレスラー並だ。
俺と杉崎の大男が協力すれば……それに公平や恵さんの影も……きっと、影の王国を滅ぼせられるはずだ。
「おにいちゃん! お風呂! 恵さん家に帰ろ!」
「おう!」
「え、私のお父さんは?」
「いんや、ここは危険だ……君のお父さんも帰っているかも知れない」
三人で山を下りた。
荒涼として小石だらけの心影山は、どこも真っ暗だったが、頂上付近に明かりが見えた。
きっと、まさかの杉崎のおじさんか俺の影たちだろう。
「そういえば、影洋くん。あなたの影って……あれ? あなたの妹さんの影もないわよね」
「ああ、俺と妹の影はないんだ。それが女神さまから試練だといわれてるんだよなあ。多分……」
「ほい。私の影もないです。これは試練なんです」
心影山からのトンネル内で、突然四方からライトで照らされた。
強い光に目を細めて周囲を見ると、いつの間にか俺たちは囲まれている。
トンネル内は真っ暗だから今まで気がつかなかったんだ!
それの光は右と左の自動車のライトだった。
光で露わになった影のシルエットの中には、俺の影はいない。だけど、全員が全員斧のような影を持つ武装した大男たちだった。
照射されたライトの中央に立っている俺たちは格好の餌食だ!
「うぎっ!」
「きゃ!」
「ぶー!」
退路もない!
隙もない!
助っ人も多分いない!
では、どうするか!
俺は即座に踏み込んだ。
一人の斧のような影を持つ大男の間へ。
すかさず大男の影の腹に二発膝蹴りを打った。
大男がもんどりうって倒れた。
けれど、すぐに後ろから杉崎の悲鳴が聞こえた。
が。
ゴキッ!!
鈍い音と共に自動車のライトに照らされているのは、地面に倒れた二人の大男の影しかなかった。
なん???
「うっぎーーー!! 光!!」
なんでかー! 我が妹が心影流の構えをして大男の顎に強烈な肘打ちを打っている。
「なん?! ……?」
「おにいちゃん! 私も戦えるよ!! これがおじいちゃん直伝の心影流!!」
続けて妹は、遠くの大男の間へと突っ込み。頬と顎と足、そして腹部を主に攻撃していた。
技の切れは俺の心影流よりも洗練されている。
そういえば……おばあちゃんよりおじいちゃんの方が強かったっけ?
あっという間に三人の大男を打ち倒している妹は、こちらにグッと拳を握って勝利をアピールしている。
なんの! 俺も負けてられない!
一瞬で、四人の大男の側頭葉に右回し蹴りをお見舞いした。
「おにいちゃん! さっすが!」
「おうよ!!」
武装した大男を全員倒すと、杉崎は当然のように気を失って倒れていた。
「うぎっ、雨ーー?」
「ほにー?」
そういえば、今日は天気予報でにわか雨が時々降るんだった。
トンネル内の天井から激しい雨音が聞こえる。
気を失っている杉崎を背負うと、トンネルを急いで抜けようとした。
なんだかんだでようやく下山した俺たちは、恵さんの屋敷へとダッシュで向かう。
だって、杉崎の家を知らないからだ。
幸いに登山道具一式の中には折り畳み傘とレインウェアがある。
大雨の中で時折稲光が辺りを覆う。
俺たちはずぶ濡れになって、書統学校まで走って来ると、下校途中の公平が恵さんの屋敷へと走っていた。大方、また親父さんと喧嘩でもしたのだろう。
「なあ、公平ー! また親父さんと喧嘩かー?」
「ああー、進路なんてそんな急に決められないぜー。それより、杉崎を負ぶっているけど、なんかあったんかー」
「ああ……後で話すよー」
「おにいちゃーーん! 空が!!」
「うぎっ!!」
走りながら公平と話していると、暗黒の大空に広大な稲妻が迸った。
と、突然。
俺たちの目の前が強烈に発光した。
そこから女神様が現れた。
「影洋! もう仲間を見つけたのですね! 良かった……もうすぐこの世界も終わりを告げます。早く影の王国を打ち倒すのです!」
それだけ言うと、女神様は忽然と消えた。
「な、なんだ? 今の?」
「ええい、恵さんの屋敷に行ったら全てを話す!!」
「おにいちゃん! 私も戦うよ!!」
四人で恵さんの屋敷の領域へと入る。
後は……。
芝生。
芝生。
芝生。
……到着。
「おにいちゃん! 頑張れ! 頑張れ!」
「うー、ふあーい……」
俺は徹夜をして杉崎の持っていた登山道具一式の中のストックで岩面を掘っていた。
本来は体のバランスを取るのに使うのだけど……。
いくら掘ってもストックが壊れないようにと手加減しているから。なかなか掘れない……。
他のレインウェアやカメラ、水筒などは使えないのだから仕方がない。
いつになっても真っ暗な山でひたすら掘り続けていると……。
やった!
やったぞー!
掘れたーーー!!
岩面に浮き出た影斬りの刃は、ナイフの形をした不気味な形状の武器だった。まるで、炎が豪快にメラメラと燃え盛っているような刀身だった。
「さすが! おにいちゃーーん!」
「おー、ようやく取れたの? そのナイフ何に使うの?」
我が妹と杉崎も徹夜をしてくれていた。
これで、影たちとの戦いで相手にダメージを与えられるはずだ。
あ、そうだ! これが女神さまが言っていた仲間を探せだ!!
杉崎の影は凄い大男だったんだ。
ほんとレスラー並だ。
俺と杉崎の大男が協力すれば……それに公平や恵さんの影も……きっと、影の王国を滅ぼせられるはずだ。
「おにいちゃん! お風呂! 恵さん家に帰ろ!」
「おう!」
「え、私のお父さんは?」
「いんや、ここは危険だ……君のお父さんも帰っているかも知れない」
三人で山を下りた。
荒涼として小石だらけの心影山は、どこも真っ暗だったが、頂上付近に明かりが見えた。
きっと、まさかの杉崎のおじさんか俺の影たちだろう。
「そういえば、影洋くん。あなたの影って……あれ? あなたの妹さんの影もないわよね」
「ああ、俺と妹の影はないんだ。それが女神さまから試練だといわれてるんだよなあ。多分……」
「ほい。私の影もないです。これは試練なんです」
心影山からのトンネル内で、突然四方からライトで照らされた。
強い光に目を細めて周囲を見ると、いつの間にか俺たちは囲まれている。
トンネル内は真っ暗だから今まで気がつかなかったんだ!
それの光は右と左の自動車のライトだった。
光で露わになった影のシルエットの中には、俺の影はいない。だけど、全員が全員斧のような影を持つ武装した大男たちだった。
照射されたライトの中央に立っている俺たちは格好の餌食だ!
「うぎっ!」
「きゃ!」
「ぶー!」
退路もない!
隙もない!
助っ人も多分いない!
では、どうするか!
俺は即座に踏み込んだ。
一人の斧のような影を持つ大男の間へ。
すかさず大男の影の腹に二発膝蹴りを打った。
大男がもんどりうって倒れた。
けれど、すぐに後ろから杉崎の悲鳴が聞こえた。
が。
ゴキッ!!
鈍い音と共に自動車のライトに照らされているのは、地面に倒れた二人の大男の影しかなかった。
なん???
「うっぎーーー!! 光!!」
なんでかー! 我が妹が心影流の構えをして大男の顎に強烈な肘打ちを打っている。
「なん?! ……?」
「おにいちゃん! 私も戦えるよ!! これがおじいちゃん直伝の心影流!!」
続けて妹は、遠くの大男の間へと突っ込み。頬と顎と足、そして腹部を主に攻撃していた。
技の切れは俺の心影流よりも洗練されている。
そういえば……おばあちゃんよりおじいちゃんの方が強かったっけ?
あっという間に三人の大男を打ち倒している妹は、こちらにグッと拳を握って勝利をアピールしている。
なんの! 俺も負けてられない!
一瞬で、四人の大男の側頭葉に右回し蹴りをお見舞いした。
「おにいちゃん! さっすが!」
「おうよ!!」
武装した大男を全員倒すと、杉崎は当然のように気を失って倒れていた。
「うぎっ、雨ーー?」
「ほにー?」
そういえば、今日は天気予報でにわか雨が時々降るんだった。
トンネル内の天井から激しい雨音が聞こえる。
気を失っている杉崎を背負うと、トンネルを急いで抜けようとした。
なんだかんだでようやく下山した俺たちは、恵さんの屋敷へとダッシュで向かう。
だって、杉崎の家を知らないからだ。
幸いに登山道具一式の中には折り畳み傘とレインウェアがある。
大雨の中で時折稲光が辺りを覆う。
俺たちはずぶ濡れになって、書統学校まで走って来ると、下校途中の公平が恵さんの屋敷へと走っていた。大方、また親父さんと喧嘩でもしたのだろう。
「なあ、公平ー! また親父さんと喧嘩かー?」
「ああー、進路なんてそんな急に決められないぜー。それより、杉崎を負ぶっているけど、なんかあったんかー」
「ああ……後で話すよー」
「おにいちゃーーん! 空が!!」
「うぎっ!!」
走りながら公平と話していると、暗黒の大空に広大な稲妻が迸った。
と、突然。
俺たちの目の前が強烈に発光した。
そこから女神様が現れた。
「影洋! もう仲間を見つけたのですね! 良かった……もうすぐこの世界も終わりを告げます。早く影の王国を打ち倒すのです!」
それだけ言うと、女神様は忽然と消えた。
「な、なんだ? 今の?」
「ええい、恵さんの屋敷に行ったら全てを話す!!」
「おにいちゃん! 私も戦うよ!!」
四人で恵さんの屋敷の領域へと入る。
後は……。
芝生。
芝生。
芝生。
……到着。
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