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心影山へ行こう
世話焼き杉崎
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薄暗い夜なので、暗闇の中で聳えていた。
「そういえば光! どうやって、おじいちゃんとおばあちゃんを助けた?」
「ほひ。普通に……」
妹とよ……その普通が普通じゃないからわからないんじゃないか!
俺は内心叫んでいた。
心影山入り口には、塀に囲まれたトンネルがある。
その真っ暗なトンネルを通ると、今度は広大な地面に小石や枝が散乱する荒れ果てた山道が現れた。
ここを登っていけばいいんだな。
やっぱり険しい心影山でした。
たまに木がぽつんと立っている以外は、荒涼とした山肌だけの山だ。これは急な斜面をただひたすら登るしかない。
道中、岩肌が見えた。
地面に大きな岩が幾つか落ちている。
これが落盤事故か?
「光!」
「ほい! そうだよ! ここでおじいちゃんとおばあちゃんを助けたの」
「こりゃ、見るからに……すっごく大変だったろ」
「ふえ? そうでもないよ。おにいちゃん?」
辺りは真っ暗なのでよくわからないが、目を凝らして見ると、たんに山の端に集まっていた大岩が崩れたようにも見える。地面には砕けた岩まであった。
「あ、そうか! これ……地震のせいじゃないか?!」
そういえば、ここ影の世界へ来た時に大きな地震があった。
近所は無事だったけど、たぶん心影山では地震が起きていたんだ。
心影山って一体?
そして、この山のどこに影斬りの刃があるんだ?
おじいちゃんとおばあちゃんはどうしてこの山に登ったんだ?
影斬りの刃って一体なんだろう?
影斬りっているからなんか影に対しての強力な武器なんだよな?
「おにいちゃん! あっちに光るものがあるよ」
さて、探すか?
「あれ? あれって?」
確かに光るものが大きな岩肌にあった。
ただ、その光るものはどうやって取っていいかわからなかった。
丁度、岩肌の中に埋まっているのだ。
荒涼とした心影山には、木と岩しかなかった。
その広い山でたった一本の影斬りの刃を探すのだから、こうもすぐに見つかって良かったが、岩の奥深くに埋まっていてどうしたら取れるのだろうと考えさせられた。
「あ、そうだ! 登山道具一式!」
「おにいちゃん! 頑張れ!」
岩を削る道具がないかと、登山道具を開けてみる。
だが、ピッケルなどはあるが、どうも岩に穴が空けられない。かなり深い場所にあるから今持っている道具では掘るのは難しかった。
と、突然。
ゾワリと来た。
「おにいちゃん! あれ!」
見ると、影が何体か山の上の方から降りてきた。
その中には俺の影もいる。
「まずーい! 妹よ! どこかに隠れてろ!」
「ほいーー!」
妹の光が近くの岩陰に隠れると、俺は心影流の構えをして様子を窺った。
俺の影たちがこちらにゆっくりと歩いてくる。
当然、こちらに気が付いている。
あ、そうか!
影なら体が通り抜けるから岩から影斬りの刃を取り出せるはずだ!
影斬りの刃が俺の影に奪われたらかなりまずいぞ!!
でも、どうして?
ここに俺たちがいるって、わかったんだろう?
ひょっとして、尾行か?
でも、どこから?
うーん……?
わからん!
「おにいちゃん! あれ!」
「うぎっ!!」
よく見ると、俺の影が従えている影に刀を持った奴が何体も混じっていた。
ええーい!
考えてもしょうがねえええ!!
今は、この窮地を脱しないと!!
心影流は最強の守りの技だってここでも証明してやる!!
でも、絶体絶命かもな……。
妹もいるし……。
「おにいちゃん……逃げたら?」
「いや、ダメだ! 影斬りの刃が……」
「うーん、たぶん影は知らないんじゃないかな?」
「……でもなあ。影が影斬りの刃を見つけてしまったら?」
「うーん……」
徐々にこっちへ近づいてくる影たちに俺は冷や汗を掻いた。
「あ、こんなところにいた! 病院に行っていないの!」
後ろを振り向くと、夜の暗闇の中から……あのホームセンターの杉崎がいた。
「うぎっ! 杉崎? なんでここに?」
黒っぽい服装の杉崎は、なんでか大きなリュックを背負い。大きなポッドを持っている。
「この山に登った私のお父さんが非常食忘れたって。今お腹空いてるからって言うから……。今朝、携帯に電話かかてきたのよ。それより病院はあっちよ影洋くん……大丈夫?」
「うぎっ! 案外世話焼きな!!」
陰キャだった杉崎は明るい世話焼きの性格に変化している。
「てっ、そんなことはどうでもいいーーー!! 今、俺は影の集団に襲われてるんだ!!」
見ると、あれ? 影の集団は……。
忽然と姿を消していた……。
なんで??
逃げた??
ひょっとして、杉崎が怖い???
こちらにニッコリ笑った杉崎は意外なことを言った。
「お腹空いてない? 非常食とか持って来た? 何か食べるものあげるよ」
うぎっ! なんですとーーーー?!
あのいつも教室の物陰に隠れていた陰キャの杉崎が世話焼きですっごい優しい!
う、陰キャでない杉崎が笑うと可愛いな。と、少し思ってしまった。
そんなことより!!
今すぐ影がなんで逃げたか考えなければ!!
うーん……。
「杉崎? 少し後ろを向いてくれ……」
「え? いいけど。なんで?」
俺の感が正しければ……。
後ろを向いた杉崎の黒いコートの下を見た。辺りは真っ暗な闇だが……。
あった!
こりゃ、大物だ!!
この分だと、公平の奴や恵さんも……。
「そういえば光! どうやって、おじいちゃんとおばあちゃんを助けた?」
「ほひ。普通に……」
妹とよ……その普通が普通じゃないからわからないんじゃないか!
俺は内心叫んでいた。
心影山入り口には、塀に囲まれたトンネルがある。
その真っ暗なトンネルを通ると、今度は広大な地面に小石や枝が散乱する荒れ果てた山道が現れた。
ここを登っていけばいいんだな。
やっぱり険しい心影山でした。
たまに木がぽつんと立っている以外は、荒涼とした山肌だけの山だ。これは急な斜面をただひたすら登るしかない。
道中、岩肌が見えた。
地面に大きな岩が幾つか落ちている。
これが落盤事故か?
「光!」
「ほい! そうだよ! ここでおじいちゃんとおばあちゃんを助けたの」
「こりゃ、見るからに……すっごく大変だったろ」
「ふえ? そうでもないよ。おにいちゃん?」
辺りは真っ暗なのでよくわからないが、目を凝らして見ると、たんに山の端に集まっていた大岩が崩れたようにも見える。地面には砕けた岩まであった。
「あ、そうか! これ……地震のせいじゃないか?!」
そういえば、ここ影の世界へ来た時に大きな地震があった。
近所は無事だったけど、たぶん心影山では地震が起きていたんだ。
心影山って一体?
そして、この山のどこに影斬りの刃があるんだ?
おじいちゃんとおばあちゃんはどうしてこの山に登ったんだ?
影斬りの刃って一体なんだろう?
影斬りっているからなんか影に対しての強力な武器なんだよな?
「おにいちゃん! あっちに光るものがあるよ」
さて、探すか?
「あれ? あれって?」
確かに光るものが大きな岩肌にあった。
ただ、その光るものはどうやって取っていいかわからなかった。
丁度、岩肌の中に埋まっているのだ。
荒涼とした心影山には、木と岩しかなかった。
その広い山でたった一本の影斬りの刃を探すのだから、こうもすぐに見つかって良かったが、岩の奥深くに埋まっていてどうしたら取れるのだろうと考えさせられた。
「あ、そうだ! 登山道具一式!」
「おにいちゃん! 頑張れ!」
岩を削る道具がないかと、登山道具を開けてみる。
だが、ピッケルなどはあるが、どうも岩に穴が空けられない。かなり深い場所にあるから今持っている道具では掘るのは難しかった。
と、突然。
ゾワリと来た。
「おにいちゃん! あれ!」
見ると、影が何体か山の上の方から降りてきた。
その中には俺の影もいる。
「まずーい! 妹よ! どこかに隠れてろ!」
「ほいーー!」
妹の光が近くの岩陰に隠れると、俺は心影流の構えをして様子を窺った。
俺の影たちがこちらにゆっくりと歩いてくる。
当然、こちらに気が付いている。
あ、そうか!
影なら体が通り抜けるから岩から影斬りの刃を取り出せるはずだ!
影斬りの刃が俺の影に奪われたらかなりまずいぞ!!
でも、どうして?
ここに俺たちがいるって、わかったんだろう?
ひょっとして、尾行か?
でも、どこから?
うーん……?
わからん!
「おにいちゃん! あれ!」
「うぎっ!!」
よく見ると、俺の影が従えている影に刀を持った奴が何体も混じっていた。
ええーい!
考えてもしょうがねえええ!!
今は、この窮地を脱しないと!!
心影流は最強の守りの技だってここでも証明してやる!!
でも、絶体絶命かもな……。
妹もいるし……。
「おにいちゃん……逃げたら?」
「いや、ダメだ! 影斬りの刃が……」
「うーん、たぶん影は知らないんじゃないかな?」
「……でもなあ。影が影斬りの刃を見つけてしまったら?」
「うーん……」
徐々にこっちへ近づいてくる影たちに俺は冷や汗を掻いた。
「あ、こんなところにいた! 病院に行っていないの!」
後ろを振り向くと、夜の暗闇の中から……あのホームセンターの杉崎がいた。
「うぎっ! 杉崎? なんでここに?」
黒っぽい服装の杉崎は、なんでか大きなリュックを背負い。大きなポッドを持っている。
「この山に登った私のお父さんが非常食忘れたって。今お腹空いてるからって言うから……。今朝、携帯に電話かかてきたのよ。それより病院はあっちよ影洋くん……大丈夫?」
「うぎっ! 案外世話焼きな!!」
陰キャだった杉崎は明るい世話焼きの性格に変化している。
「てっ、そんなことはどうでもいいーーー!! 今、俺は影の集団に襲われてるんだ!!」
見ると、あれ? 影の集団は……。
忽然と姿を消していた……。
なんで??
逃げた??
ひょっとして、杉崎が怖い???
こちらにニッコリ笑った杉崎は意外なことを言った。
「お腹空いてない? 非常食とか持って来た? 何か食べるものあげるよ」
うぎっ! なんですとーーーー?!
あのいつも教室の物陰に隠れていた陰キャの杉崎が世話焼きですっごい優しい!
う、陰キャでない杉崎が笑うと可愛いな。と、少し思ってしまった。
そんなことより!!
今すぐ影がなんで逃げたか考えなければ!!
うーん……。
「杉崎? 少し後ろを向いてくれ……」
「え? いいけど。なんで?」
俺の感が正しければ……。
後ろを向いた杉崎の黒いコートの下を見た。辺りは真っ暗な闇だが……。
あった!
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