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影の踊り
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微睡みから目が覚める。
妹の光がパンを頬張りながら、俺を起こしていた。昨日の夕食は豪勢だったな。フォアグラなんて初めて見たし、食べたっけ。
「おっはよー……うん?」
そういえば、昨日は光が別々の部屋は嫌だといい。結局、同室で寝ることになった。天蓋付きのベッドがおあつらえ向きに二つあったので、そこで爆睡したんだった。
正直、疲れていた。
まだ、現実感がまったくない。
辺りを見回しても……。
至る所に置かれた高級そうな壺に、黄色い花が活けてある。大きい部屋の片隅に大型テレビがある。どこかしら清涼感溢れる花の香りがするんだ。
そのテレビには、また天気予報が流れていた。
「今日は世界各地で……の祭りが……ありますね。いやはや、ここは影の世界ですからね。仕方がないんですよねえ。では、皆さん避難訓練は忘れずに。降水確率です……。気温は……。それでは今日の天気です。今日は時々、傘が降るでしょう」
小春という気象予報士はやはり平然としていた。
「うぎっ! 傘ーーー!! 雨の間違いだろう!!」
「おにいちゃーーん! それより遅刻だよーーー!」
部屋の中央の柱時計を見ると、午前9時!!
「恵さんはどうしたーー!!」
「ほえ、だって今日は日曜だから学校は休みだって……」
「……」
妹よ。それなら起こすな!!
内心叫んだが、そういえば、今日は町内会があるんだった。これも我が妹のお蔭だ! 早く支度して行かないと!
「光。支度を急ぐぞ!」
「ほい! 早く支度しないと! 学校の先生に怒られるからね! おにいちゃん! なんか天気予報では今日は傘が降るって言っていたみたい。影の世界では日常なのかな?」
「いや、そこから違う! 今日は学校休みで傘なんて降らない! 町内会があるんだ! 妹よ! ヘルメットを恵さんから借りよう!」
「ほえ?」
天蓋付のベットからさっそく降りだして、少し支度にバタバタすると一階へ向かった。昨日は二階ではなくて、一階で夕食を取ったんだ。俺の隣のおじさんなんて(恵の父親)、クリュグという高そうな酒をグイグイ飲むし。昨日の夕食は、楽しかったな。
そして、今は朝食の時間は過ぎてしまったから、縦長のテーブルにはなにものっていない。メイド姿の人からパンとヘルメット? を渡された。さあ、恵さんにお礼を言って急いで町内会へ行かないと。
恵さんは、「うん。じゃあ、いってらっしゃい」と言っただけだった。どうやら、うん。影の世界ではこれが普通の日常生活なのだろう。
俺たちは急いで、実家があった場所を目指した。恵さんの屋敷から走って30分。完全に遅刻だった。
「ほひいちゃん! あれ!」
パンを走りながら頬張っていた妹が指差す方を見ると、会館では何かが大勢踊っていた。
「あ! あれは!!」
俺の中で昨日の夢の記憶がまざまざと蘇った。
夢の中では俺だけに危害を加えていたけど、ほんとは違うんだ……。俺の父さんと母さんを殺したのは……俺の影だった。今までそのことはどうしても思い出したくはなかった。
「くそっ!」
左手の傷を摩った。
俺の影だけは形でわかるが、会館の中央で踊っているおどろおどろしい他の影たちはわからない。真っ暗な広場で影たちは踊っているだけだったが、何かの儀式のようにも思えた。周囲の町民は、ヘルメットをかぶってそれを見守っているがみんな怯えたような顔だった。
影たちの踊りが止んだ。
それぞれ四方へと影たちが霧散するように帰っていく。
俺は俺の影のシルエットを追った。
そういえば、今日の天気予報で世界各地で祭りが起きると気象予報士が言っていたようだけど、ひょっとしたら、これなんじゃ……。
全国的な影の踊り。いや……。
恐らく、この踊りは町民や俺や妹の影による何かの儀式なんだ。
「待て――!! 俺の影ーーーー!」
自分で言っているのもなんだが……変か?
確かに変だろうけど、命が関わっているんだ。俺は自分の影を一直線に追いかける。
影は会館の広場から、そのまま比水公園を通り過ぎ。近くの住宅街に暗闇に紛れるよう姿を消した。
妹の光がパンを頬張りながら、俺を起こしていた。昨日の夕食は豪勢だったな。フォアグラなんて初めて見たし、食べたっけ。
「おっはよー……うん?」
そういえば、昨日は光が別々の部屋は嫌だといい。結局、同室で寝ることになった。天蓋付きのベッドがおあつらえ向きに二つあったので、そこで爆睡したんだった。
正直、疲れていた。
まだ、現実感がまったくない。
辺りを見回しても……。
至る所に置かれた高級そうな壺に、黄色い花が活けてある。大きい部屋の片隅に大型テレビがある。どこかしら清涼感溢れる花の香りがするんだ。
そのテレビには、また天気予報が流れていた。
「今日は世界各地で……の祭りが……ありますね。いやはや、ここは影の世界ですからね。仕方がないんですよねえ。では、皆さん避難訓練は忘れずに。降水確率です……。気温は……。それでは今日の天気です。今日は時々、傘が降るでしょう」
小春という気象予報士はやはり平然としていた。
「うぎっ! 傘ーーー!! 雨の間違いだろう!!」
「おにいちゃーーん! それより遅刻だよーーー!」
部屋の中央の柱時計を見ると、午前9時!!
「恵さんはどうしたーー!!」
「ほえ、だって今日は日曜だから学校は休みだって……」
「……」
妹よ。それなら起こすな!!
内心叫んだが、そういえば、今日は町内会があるんだった。これも我が妹のお蔭だ! 早く支度して行かないと!
「光。支度を急ぐぞ!」
「ほい! 早く支度しないと! 学校の先生に怒られるからね! おにいちゃん! なんか天気予報では今日は傘が降るって言っていたみたい。影の世界では日常なのかな?」
「いや、そこから違う! 今日は学校休みで傘なんて降らない! 町内会があるんだ! 妹よ! ヘルメットを恵さんから借りよう!」
「ほえ?」
天蓋付のベットからさっそく降りだして、少し支度にバタバタすると一階へ向かった。昨日は二階ではなくて、一階で夕食を取ったんだ。俺の隣のおじさんなんて(恵の父親)、クリュグという高そうな酒をグイグイ飲むし。昨日の夕食は、楽しかったな。
そして、今は朝食の時間は過ぎてしまったから、縦長のテーブルにはなにものっていない。メイド姿の人からパンとヘルメット? を渡された。さあ、恵さんにお礼を言って急いで町内会へ行かないと。
恵さんは、「うん。じゃあ、いってらっしゃい」と言っただけだった。どうやら、うん。影の世界ではこれが普通の日常生活なのだろう。
俺たちは急いで、実家があった場所を目指した。恵さんの屋敷から走って30分。完全に遅刻だった。
「ほひいちゃん! あれ!」
パンを走りながら頬張っていた妹が指差す方を見ると、会館では何かが大勢踊っていた。
「あ! あれは!!」
俺の中で昨日の夢の記憶がまざまざと蘇った。
夢の中では俺だけに危害を加えていたけど、ほんとは違うんだ……。俺の父さんと母さんを殺したのは……俺の影だった。今までそのことはどうしても思い出したくはなかった。
「くそっ!」
左手の傷を摩った。
俺の影だけは形でわかるが、会館の中央で踊っているおどろおどろしい他の影たちはわからない。真っ暗な広場で影たちは踊っているだけだったが、何かの儀式のようにも思えた。周囲の町民は、ヘルメットをかぶってそれを見守っているがみんな怯えたような顔だった。
影たちの踊りが止んだ。
それぞれ四方へと影たちが霧散するように帰っていく。
俺は俺の影のシルエットを追った。
そういえば、今日の天気予報で世界各地で祭りが起きると気象予報士が言っていたようだけど、ひょっとしたら、これなんじゃ……。
全国的な影の踊り。いや……。
恐らく、この踊りは町民や俺や妹の影による何かの儀式なんだ。
「待て――!! 俺の影ーーーー!」
自分で言っているのもなんだが……変か?
確かに変だろうけど、命が関わっているんだ。俺は自分の影を一直線に追いかける。
影は会館の広場から、そのまま比水公園を通り過ぎ。近くの住宅街に暗闇に紛れるよう姿を消した。
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