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近所を見に行こう
恵さんの屋敷へ
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「なんだってんだー! 今日は、どこへ泊りゃあーーいいんだー!!」
「あのさ。俺ん家は?」
「駄目だ! 女の子の光がいる! 兄として! 兄として!」
「わかったよ……じゃあ、獅子野 恵の家は? あいつの家。凄く大きくてさ。この街一番のお金持ちだっていうからさ。頼めば、部屋の一つや二つは貸してもらえるんじゃねえ?」
「……黒ギャル……うっ……眩暈が……」
眩暈がしたが、俺は別に黒ギャルが嫌いなわけではない。
恵さんが黒ギャルになったことが大問題だった。
あの、落ち着いて、しとやかで、陶器のような色白な、いかにも御令嬢のような……。
「ああーーーー!!」
俺が叫ぶと、後ろの方から女の子の声がした。
「うん? どうしたの?」
振り向くと、靴箱に靴を入れている獅子野 恵……当の本人がいた。
「あのさ、こいつ泊まるところがないっているからさ。恵さん家に泊めてくれないか?」
「うん。いいよ」
「ああ、良かったな。影洋」
公平が泊まる場所を代わりに聞いてくれた。
「何故、俺を置いて話が進んでんだ……?」
俺は恵ちゃんを真っ暗な昇降口で恐る恐る見つめてみた。
う!!
途端に気が変わった。
「……ああ、良かったぜーー!! ありがとな!!」
「なに、その間は?」
「いや、なんでもない。あ、妹もいるんだけど、いいかな?」
「別にいいわよ。お部屋いっぱいあるし」
「やったーー!!」
黒ギャルと化した恵ちゃんも、凄く可愛かった。
学校から少しだけ歩くと、そこは大豪邸の芝生の中だった。鬱蒼とした芝生だらけの庭には、芝生以外もあるのだろうけど、俺には芝生以外は見えていない。
芝生。
芝生。
芝生。
「あ、そっちは池があるから。ていうか、気をつけてね。家かなり広いからどこかで怪我をしても、すぐにはわからないの。あっちは薔薇の園」
「うぎっ。了解」
黒ギャルの恵さんが笑顔で、こんなのいつものことよ。と、いう感じで話していた。だが、俺と光はジャングルに迷い込んだ探検隊の気分だった。
「おにいちゃん。すっごい友達持ってるね……」
「いや、友達というよりクラスの憧れだった人。俺にとっては、特別なスーパークラスメイトだ。光。そっちの方には薔薇の園があるらしいから近づかない方がいい。薔薇の棘が刺さると痛いぞ」
「ほい。おにいちゃん」
恵さんが、やっと開けた芝生から突如現れた屋敷を指差した。
「あんたたちの部屋は、多分二階。一階は、応接室やら台所やらあるから」
「おう! ホントありがとな!」
「ありがとうございます!」
俺は改めて黒ギャル化した恵さんを見てみると、こう思った。現実世界の恵さんは、今どうしているのだろう?
屋敷の大扉を開けると、そこには使用人たちの種々雑多な頭があった。かなりの数の使用人は、みんな両脇にどいてお辞儀をしていた。壁面には絵画や骨董品などが飾ってあって、どれも高級感を醸し出している。
大きなステンドグラスの窓が四方を囲んでいた。
「おかえりなさいませーー!!」
「おかえりなさいませ!! 夕食、お風呂は既にできています!」
「おかえりなさいませ! お荷物をお持ちいたしましょう!」
「ただいま~」
「お邪魔しまーす」
「……お邪魔します」
使用人たちはまだかしこまっていて、その中央を恵さんが少し気怠るげに歩いて行って、大理石の階段を上っていった。俺と光はそそくさと恵さんについていった。
踊り場にもどう見ても高価そうな種々雑多な骨董品が飾ってある。
「光よ。何も壊すなよ……」
「ほい。でも、おにいちゃんこそだよ! この前、家の花瓶割ったでしょう!」
丁度、凄い部屋数の廊下の突き当たりに、ことさら大きな部屋が二つ用意されてあった。
「お客様用?」
恵さんがお客様用のプレートがある扉を気怠げに開ける。
「好きに使って。お風呂は一階と自室にも付いてあるから」
「……ありがとな」
「ほい! ありがとうございます!」
「それじゃ、私は自分の部屋にいるから」
恵さんが自室に戻ると、俺はあることを思い出した。
「あ! 町内会! 明日は避難訓練があったんだ!!」
―ー―――
フカフカ、フカフカ、フカフカ……。
チュン、チュン、チュチュン。
「ほひいちゃん! ほひいちゃん! 起きて!!」
「あのさ。俺ん家は?」
「駄目だ! 女の子の光がいる! 兄として! 兄として!」
「わかったよ……じゃあ、獅子野 恵の家は? あいつの家。凄く大きくてさ。この街一番のお金持ちだっていうからさ。頼めば、部屋の一つや二つは貸してもらえるんじゃねえ?」
「……黒ギャル……うっ……眩暈が……」
眩暈がしたが、俺は別に黒ギャルが嫌いなわけではない。
恵さんが黒ギャルになったことが大問題だった。
あの、落ち着いて、しとやかで、陶器のような色白な、いかにも御令嬢のような……。
「ああーーーー!!」
俺が叫ぶと、後ろの方から女の子の声がした。
「うん? どうしたの?」
振り向くと、靴箱に靴を入れている獅子野 恵……当の本人がいた。
「あのさ、こいつ泊まるところがないっているからさ。恵さん家に泊めてくれないか?」
「うん。いいよ」
「ああ、良かったな。影洋」
公平が泊まる場所を代わりに聞いてくれた。
「何故、俺を置いて話が進んでんだ……?」
俺は恵ちゃんを真っ暗な昇降口で恐る恐る見つめてみた。
う!!
途端に気が変わった。
「……ああ、良かったぜーー!! ありがとな!!」
「なに、その間は?」
「いや、なんでもない。あ、妹もいるんだけど、いいかな?」
「別にいいわよ。お部屋いっぱいあるし」
「やったーー!!」
黒ギャルと化した恵ちゃんも、凄く可愛かった。
学校から少しだけ歩くと、そこは大豪邸の芝生の中だった。鬱蒼とした芝生だらけの庭には、芝生以外もあるのだろうけど、俺には芝生以外は見えていない。
芝生。
芝生。
芝生。
「あ、そっちは池があるから。ていうか、気をつけてね。家かなり広いからどこかで怪我をしても、すぐにはわからないの。あっちは薔薇の園」
「うぎっ。了解」
黒ギャルの恵さんが笑顔で、こんなのいつものことよ。と、いう感じで話していた。だが、俺と光はジャングルに迷い込んだ探検隊の気分だった。
「おにいちゃん。すっごい友達持ってるね……」
「いや、友達というよりクラスの憧れだった人。俺にとっては、特別なスーパークラスメイトだ。光。そっちの方には薔薇の園があるらしいから近づかない方がいい。薔薇の棘が刺さると痛いぞ」
「ほい。おにいちゃん」
恵さんが、やっと開けた芝生から突如現れた屋敷を指差した。
「あんたたちの部屋は、多分二階。一階は、応接室やら台所やらあるから」
「おう! ホントありがとな!」
「ありがとうございます!」
俺は改めて黒ギャル化した恵さんを見てみると、こう思った。現実世界の恵さんは、今どうしているのだろう?
屋敷の大扉を開けると、そこには使用人たちの種々雑多な頭があった。かなりの数の使用人は、みんな両脇にどいてお辞儀をしていた。壁面には絵画や骨董品などが飾ってあって、どれも高級感を醸し出している。
大きなステンドグラスの窓が四方を囲んでいた。
「おかえりなさいませーー!!」
「おかえりなさいませ!! 夕食、お風呂は既にできています!」
「おかえりなさいませ! お荷物をお持ちいたしましょう!」
「ただいま~」
「お邪魔しまーす」
「……お邪魔します」
使用人たちはまだかしこまっていて、その中央を恵さんが少し気怠るげに歩いて行って、大理石の階段を上っていった。俺と光はそそくさと恵さんについていった。
踊り場にもどう見ても高価そうな種々雑多な骨董品が飾ってある。
「光よ。何も壊すなよ……」
「ほい。でも、おにいちゃんこそだよ! この前、家の花瓶割ったでしょう!」
丁度、凄い部屋数の廊下の突き当たりに、ことさら大きな部屋が二つ用意されてあった。
「お客様用?」
恵さんがお客様用のプレートがある扉を気怠げに開ける。
「好きに使って。お風呂は一階と自室にも付いてあるから」
「……ありがとな」
「ほい! ありがとうございます!」
「それじゃ、私は自分の部屋にいるから」
恵さんが自室に戻ると、俺はあることを思い出した。
「あ! 町内会! 明日は避難訓練があったんだ!!」
―ー―――
フカフカ、フカフカ、フカフカ……。
チュン、チュン、チュチュン。
「ほひいちゃん! ほひいちゃん! 起きて!!」
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