2 / 30
近所を見に行こう
春のち地震で……。
しおりを挟む
「はあ~~」
正直、ため息がでた。
やってられない。
学校行く前にかなり疲れた。
花柄模様の壁のキッチンテーブルでフレンチトーストと、湯気と香りが立つコーヒーには手を付けずに呼吸を整えていた。けれど、大好物の厚切りのショルダーベーコンだけは既に食べている。
目覚めが悪い。
何故かというと、さっきまで変な夢を見ていたからだ。
それは、幼い頃の俺がナイフを持った自分の影に襲われている夢だった。あっけなく俺の何かが殺されてしまった。俺の何かが発した悲鳴が俺の耳にいつまでも残っている。そうだ……俺の影が死んだんだ……。
うぎっ?
こんな変な夢を見るなんて、夢の世界で影に襲われているのは昔あったけかな……。
風呂、トイレ、物置、キッチンetc、etc……。色々と悲鳴を上げて逃げ回ったからか、夢の中だというのに物凄く疲れた。
「あれ?」
気づくと、左手に刃物による切り傷があった。まったく覚えはない。出血はしていないけど、かなり痛い。
「なんだってんだ今日の夢はーー!」
もう一つのため息の原因は、外の天気だ。何故か朝の7時なのに真っ暗。これで、ため息をつかない奴はいないんじゃ? まだ夢の世界にいるのかと思うとひどく憂鬱になる。
家の中も暗くて照明をつけていた。
7月の半ばだというのに、かなり寒くなってきている。冬の寒さに似ているな。
「はあ~~~。やってられないなあ~学校休もうかな?」
俺は何度目かのため息を吐いていた後、なんか明るいニュースでも……と。うん?
部屋の片隅にポツンとある小さなテレビを点けると、丁度ニュースが流れるところだった。
ニュースキャスターのいる下の字幕に、次はお天気コーナーと書かれている。
「ふーむ、そうですか。今後ますます不景気になるかも知れませんね……。あ、次は天気予報ですね。このところ寒い日が続きますねえ。それでは、小春さん。今日の天気はどうでしょうか?」
ニュースキャスターの一声の後で、場面が変わった。何故か近所の比水《ひすい》公園が映っていた……。
「おはようございますー。今日は、比水公園に子供たちと来ていますよー」
気象予報士の後ろには子供たちが元気よく笑っていた。
「それにしても、子供たちはいつも元気で良いですよねえ。私も苦労を忘れるくらいに元気にいきますよー。あ、今日はお空は低気圧に覆われていますねえ。気温は3℃で、いやはや寒いですねー。湿度は……。いやー、気候と地盤から春のち地震ですねえ。というわけで、みなさん今日は世界の均衡を忘れないように……そうですバランスの日ですねー」
子供たちの平和な笑い声の中で、気象予報士がここの近くにある比水公園で不思議なことを言っている。
「へえ、そうですか。みなさんそれでは世界に均衡を……次は、経済です。中東の経済状況が……」
こいつらなんで笑顔なんだ?!
何故……?
一体……?
おかしいだろ?
外の闇の中から……はあ?
桜の花弁が落ちているーーー??
俺の家の隣は比水公園だった。そこの桜の木が満開のようだ。
「うーんっ! 確かに綺麗な夜桜ッスね?」
俺は呆れて冗談を言うしかなかった。風に乗って桜の花弁がガラス窓の外でひらひらと舞い落ちていた。
「おにいちゃーーん! 遅刻だよーーー!! なんで起こしてくれないのーー! おにいちゃんバカ!」
その時、妹の光《ひかる》の絶叫が二階から降ってきた。
あれ? もうこんな時間か?
いつもの妹を起こしてやることを忘れてた。
数分後。慌てて夜の外へと二人して駆け出していた。
「光! 朝食は優しい兄である俺のトーストだ!」
「ほりがとう! ほひいちゃん!」
もぐもぐと俺のフレンチトーストを走りながら瞬時に食べる妹を置いて、ひとまず公園に様子を見に行くことにした。
そこに現れたのは、気象予報士や子供たちの姿はなく。
満開の桜に覆われたこじんまりとした比水公園だった。いつもここには老人しか訪れない。おまけに噴水が中央にあるだけの公園だ。ただ単の……鳥たちの水飲み場でもある。
「ナニコレ? 異常気象? え? なんで、今、7月よ!」
俺に追いついた光るが目を回して言うのだが……。
「ああ、寒いのになあ。桜くん。ご苦労様です! ちょっと、お尋ねしてもよろしいでしょうか、ここでテレビ中継とかされていましたか?」
「何言ってるの? おにいちゃん! いつも通り変よ!」
なんだか……変だ!
今日に限って……。
その時、ズシンという地面からの揺れと衝撃と共に俺と光の身体がグラついた。咄嗟に地震だと思ったのは、勿論今朝の天気予報のせいだ。
「光! 伏せろ!」
「え! 何! 地震?! 伏せていいの?」
比水公園を囲むかのように建つ住宅街がグラグラと激しく踊りだした。地鳴りは耳を塞ぎたくなるほどに大きくなった。桜の木々はこの上なく右へ左へと揺れ動く。
瞬間、夜空が光った。
その光の中から、神々しい女神のようなこの世のものとは思えない美しい女性が現れた。
「影洋。さあ、今こそ試練の時です! そして、ようこそ影の世界へ!」
神々しい女神は、そう言うと、辺りは光の輝きに包まれた。
その光は、俺と光の影を消し去った。
正直、ため息がでた。
やってられない。
学校行く前にかなり疲れた。
花柄模様の壁のキッチンテーブルでフレンチトーストと、湯気と香りが立つコーヒーには手を付けずに呼吸を整えていた。けれど、大好物の厚切りのショルダーベーコンだけは既に食べている。
目覚めが悪い。
何故かというと、さっきまで変な夢を見ていたからだ。
それは、幼い頃の俺がナイフを持った自分の影に襲われている夢だった。あっけなく俺の何かが殺されてしまった。俺の何かが発した悲鳴が俺の耳にいつまでも残っている。そうだ……俺の影が死んだんだ……。
うぎっ?
こんな変な夢を見るなんて、夢の世界で影に襲われているのは昔あったけかな……。
風呂、トイレ、物置、キッチンetc、etc……。色々と悲鳴を上げて逃げ回ったからか、夢の中だというのに物凄く疲れた。
「あれ?」
気づくと、左手に刃物による切り傷があった。まったく覚えはない。出血はしていないけど、かなり痛い。
「なんだってんだ今日の夢はーー!」
もう一つのため息の原因は、外の天気だ。何故か朝の7時なのに真っ暗。これで、ため息をつかない奴はいないんじゃ? まだ夢の世界にいるのかと思うとひどく憂鬱になる。
家の中も暗くて照明をつけていた。
7月の半ばだというのに、かなり寒くなってきている。冬の寒さに似ているな。
「はあ~~~。やってられないなあ~学校休もうかな?」
俺は何度目かのため息を吐いていた後、なんか明るいニュースでも……と。うん?
部屋の片隅にポツンとある小さなテレビを点けると、丁度ニュースが流れるところだった。
ニュースキャスターのいる下の字幕に、次はお天気コーナーと書かれている。
「ふーむ、そうですか。今後ますます不景気になるかも知れませんね……。あ、次は天気予報ですね。このところ寒い日が続きますねえ。それでは、小春さん。今日の天気はどうでしょうか?」
ニュースキャスターの一声の後で、場面が変わった。何故か近所の比水《ひすい》公園が映っていた……。
「おはようございますー。今日は、比水公園に子供たちと来ていますよー」
気象予報士の後ろには子供たちが元気よく笑っていた。
「それにしても、子供たちはいつも元気で良いですよねえ。私も苦労を忘れるくらいに元気にいきますよー。あ、今日はお空は低気圧に覆われていますねえ。気温は3℃で、いやはや寒いですねー。湿度は……。いやー、気候と地盤から春のち地震ですねえ。というわけで、みなさん今日は世界の均衡を忘れないように……そうですバランスの日ですねー」
子供たちの平和な笑い声の中で、気象予報士がここの近くにある比水公園で不思議なことを言っている。
「へえ、そうですか。みなさんそれでは世界に均衡を……次は、経済です。中東の経済状況が……」
こいつらなんで笑顔なんだ?!
何故……?
一体……?
おかしいだろ?
外の闇の中から……はあ?
桜の花弁が落ちているーーー??
俺の家の隣は比水公園だった。そこの桜の木が満開のようだ。
「うーんっ! 確かに綺麗な夜桜ッスね?」
俺は呆れて冗談を言うしかなかった。風に乗って桜の花弁がガラス窓の外でひらひらと舞い落ちていた。
「おにいちゃーーん! 遅刻だよーーー!! なんで起こしてくれないのーー! おにいちゃんバカ!」
その時、妹の光《ひかる》の絶叫が二階から降ってきた。
あれ? もうこんな時間か?
いつもの妹を起こしてやることを忘れてた。
数分後。慌てて夜の外へと二人して駆け出していた。
「光! 朝食は優しい兄である俺のトーストだ!」
「ほりがとう! ほひいちゃん!」
もぐもぐと俺のフレンチトーストを走りながら瞬時に食べる妹を置いて、ひとまず公園に様子を見に行くことにした。
そこに現れたのは、気象予報士や子供たちの姿はなく。
満開の桜に覆われたこじんまりとした比水公園だった。いつもここには老人しか訪れない。おまけに噴水が中央にあるだけの公園だ。ただ単の……鳥たちの水飲み場でもある。
「ナニコレ? 異常気象? え? なんで、今、7月よ!」
俺に追いついた光るが目を回して言うのだが……。
「ああ、寒いのになあ。桜くん。ご苦労様です! ちょっと、お尋ねしてもよろしいでしょうか、ここでテレビ中継とかされていましたか?」
「何言ってるの? おにいちゃん! いつも通り変よ!」
なんだか……変だ!
今日に限って……。
その時、ズシンという地面からの揺れと衝撃と共に俺と光の身体がグラついた。咄嗟に地震だと思ったのは、勿論今朝の天気予報のせいだ。
「光! 伏せろ!」
「え! 何! 地震?! 伏せていいの?」
比水公園を囲むかのように建つ住宅街がグラグラと激しく踊りだした。地鳴りは耳を塞ぎたくなるほどに大きくなった。桜の木々はこの上なく右へ左へと揺れ動く。
瞬間、夜空が光った。
その光の中から、神々しい女神のようなこの世のものとは思えない美しい女性が現れた。
「影洋。さあ、今こそ試練の時です! そして、ようこそ影の世界へ!」
神々しい女神は、そう言うと、辺りは光の輝きに包まれた。
その光は、俺と光の影を消し去った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。

ずっと一緒だよ
藤原 柚月
ホラー
心春(こはる)は友達が出来ずぼっちなまま学生時代を過ごすものだと思っていた。
だが、ある事がきっかけで友達が出来ることになる。それはとても些細なことだったけど、友達が出来たことに嬉しく思っていた。
気が付かなかったのだ。その友達が異常なまでの執着を見せてるのにーー……。
「心春ちゃんの友達は僕だけで良いでしょ?」
その言葉が意味するのは、歪んだ愛情だった。
それを私は友情だと信じて、疑わずに……当たり前になっていた

無能な陰陽師
もちっぱち
ホラー
警視庁の詛呪対策本部に所属する無能な陰陽師と呼ばれる土御門迅はある仕事を任せられていた。
スマホ名前登録『鬼』の上司とともに
次々と起こる事件を解決していく物語
※とてもグロテスク表現入れております
お食事中や苦手な方はご遠慮ください
こちらの作品は、
実在する名前と人物とは
一切関係ありません
すべてフィクションとなっております。
※R指定※
表紙イラスト:名無死 様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる