ツギハギ・リポート

主道 学

文字の大きさ
上 下
5 / 8
あなたはだあれ?

04

しおりを挟む
「うん? なんだ?」

 助手席に座っていた俺もフロントガラスを見た。

「あ!」

 そこには、ツギハギだらけの顔があった。フロントガラスに押し付けられているその顔は、別々の人の顔の皮膚で構成されていた。ツギハギだらけだからか、皮膚同士を針金で乱雑に縫ってあった。

 突然、フロントガラスが真っ赤になった。俺はツギハギだらけの顔からの血液だと思った。

「ひっ!」

 俺も堪らず悲鳴を上げ顔が何とも言えない恐怖で引きつる。
 
 俺はふと思った。
 ツギハギ……が怖いのだろうか?
 それとも、その顔が俺のよく知った顔だからか?

 そのツギハギだらけの顔は……昔、大学時代に分かれた弘子だった。

 何故だろう?
 俺には弘子が悲しんでいるように思えた。

 そうだ。
 きっと、悲しいんだろうな。

 何故ならツギハギだらけの顔の目から赤い液体がだらだらと流れていたからだ。
 フロントガラスを赤く塗り潰した液体は、弘子の血涙だった。

 数時間?
 いや、実際には数分くらい経ったのだろう。

 しばらくすると、弘子はどこかへと行ってしまった。

「うわー……。なんだあの顔。あ、あの人? お前の知り合いなのか?」
「そうですよね。この村に住んでいたのでしたら、お知り合いの方だったのですよね?」
 
 日台と鈴木が俺の表情を窺いながら聞いて来た。

「ああ……でも、この村の人じゃないんだ。昔の大学時代の元恋人だ」
「そうなんですね……もう少しその事情をお聞きしたいんですが。まあ、ではそのことも含めて原因を解き明かしていきましょう。皆さん明日の早朝からここ蛇白村を配信していきましょうよ。それでは、今日は交代で寝ておきましょう。かなり歩き回りますからね」
「え、俺はこんなところで眠れないぞ」

 鈴木は明日からここ蛇白村を配信していくつもりだった。
 毒づく日台もやぶさかではなかったのかも知れない。

 ここには必ず何かがあるんだ。


 もう帰れない?

 無事に早朝を迎えた俺たちは、まずは鈴木にここ蛇白村をよく知ってもらうために、下調べに村の探索をすることになった。

 まずは俺の提案で不思議と水かさが増す川へと向かった。

「うわー、ここ壊れていますよ。なかなか大きな家ですねえ。誰の家だったんですか?」
「ああ。確かあまりよく話したことはないけど、村で唯一電化製品を取り扱っていたお店のおじさんがいて、その人の双子の兄が住んでいたんだ。ひどい無口な人だった」

 「へえー、やっぱり海道さんはこの村が懐かしいんでしょうね。過疎化の影響で住民が集団移動してしまった村は確かに何十年もすると廃村になりますけど、たまに住んでいた人が村へ戻ってきて家を建てることもあると聞きます。やっぱり唯一の故郷ですものねえ」

 鈴木が関心を持って俺に聞いて来た。日台は目の前の家の不気味な染みを見つめては、急に無言になりだした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

閲読注意

エルマ
ホラー
1章より、澤口という男のひとり語りで物語は進んでいきます。

5分で読めるブラックユーモア

夜寝乃もぬけ
ホラー
ようこそ喫茶『BLACK』へ 当店は苦さ、ユニークさ、後味の悪さを焙煎した 【5分で読めるブラックユーモア】しか置いておりません。 ブラックな世界へとドリップできる極上の一品です。 ※シュガー好きな方はお口に合いませんので、どうぞお帰り下さい。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

七つの不思議のその先に願い事1つ叶えましょう

桜月 翠恋
ホラー
オカルトサークルという名目で今日も怖い話の好きな仲のいい8人が集まり今日も楽しくお話をする 『ねぇねぇ、七不思議、挑戦してみない?』 誰が言ったのか、そんな一言。 この学校の七不思議は他と少し違っていて… 8人が遊び半分に挑戦したのは… 死が待ち受けているゲームだった……

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

すぐ読める短篇怪談集

能井しずえ
ホラー
日常に潜むこの世ならざる物事との出会いをサクッと綴ります。

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

いきすだま奇譚

せんのあすむ
ホラー
生霊、と言うか、生霊に憑りつかれたかのような常軌を逸した人間達の織りなす怖い話を、母が残したショートショートを再編成することで一つの物語にしようと思います。

処理中です...