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あなたはだあれ?
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「うん? なんだ?」
助手席に座っていた俺もフロントガラスを見た。
「あ!」
そこには、ツギハギだらけの顔があった。フロントガラスに押し付けられているその顔は、別々の人の顔の皮膚で構成されていた。ツギハギだらけだからか、皮膚同士を針金で乱雑に縫ってあった。
突然、フロントガラスが真っ赤になった。俺はツギハギだらけの顔からの血液だと思った。
「ひっ!」
俺も堪らず悲鳴を上げ顔が何とも言えない恐怖で引きつる。
俺はふと思った。
ツギハギ……が怖いのだろうか?
それとも、その顔が俺のよく知った顔だからか?
そのツギハギだらけの顔は……昔、大学時代に分かれた弘子だった。
何故だろう?
俺には弘子が悲しんでいるように思えた。
そうだ。
きっと、悲しいんだろうな。
何故ならツギハギだらけの顔の目から赤い液体がだらだらと流れていたからだ。
フロントガラスを赤く塗り潰した液体は、弘子の血涙だった。
数時間?
いや、実際には数分くらい経ったのだろう。
しばらくすると、弘子はどこかへと行ってしまった。
「うわー……。なんだあの顔。あ、あの人? お前の知り合いなのか?」
「そうですよね。この村に住んでいたのでしたら、お知り合いの方だったのですよね?」
日台と鈴木が俺の表情を窺いながら聞いて来た。
「ああ……でも、この村の人じゃないんだ。昔の大学時代の元恋人だ」
「そうなんですね……もう少しその事情をお聞きしたいんですが。まあ、ではそのことも含めて原因を解き明かしていきましょう。皆さん明日の早朝からここ蛇白村を配信していきましょうよ。それでは、今日は交代で寝ておきましょう。かなり歩き回りますからね」
「え、俺はこんなところで眠れないぞ」
鈴木は明日からここ蛇白村を配信していくつもりだった。
毒づく日台もやぶさかではなかったのかも知れない。
ここには必ず何かがあるんだ。
もう帰れない?
無事に早朝を迎えた俺たちは、まずは鈴木にここ蛇白村をよく知ってもらうために、下調べに村の探索をすることになった。
まずは俺の提案で不思議と水かさが増す川へと向かった。
「うわー、ここ壊れていますよ。なかなか大きな家ですねえ。誰の家だったんですか?」
「ああ。確かあまりよく話したことはないけど、村で唯一電化製品を取り扱っていたお店のおじさんがいて、その人の双子の兄が住んでいたんだ。ひどい無口な人だった」
「へえー、やっぱり海道さんはこの村が懐かしいんでしょうね。過疎化の影響で住民が集団移動してしまった村は確かに何十年もすると廃村になりますけど、たまに住んでいた人が村へ戻ってきて家を建てることもあると聞きます。やっぱり唯一の故郷ですものねえ」
鈴木が関心を持って俺に聞いて来た。日台は目の前の家の不気味な染みを見つめては、急に無言になりだした。
助手席に座っていた俺もフロントガラスを見た。
「あ!」
そこには、ツギハギだらけの顔があった。フロントガラスに押し付けられているその顔は、別々の人の顔の皮膚で構成されていた。ツギハギだらけだからか、皮膚同士を針金で乱雑に縫ってあった。
突然、フロントガラスが真っ赤になった。俺はツギハギだらけの顔からの血液だと思った。
「ひっ!」
俺も堪らず悲鳴を上げ顔が何とも言えない恐怖で引きつる。
俺はふと思った。
ツギハギ……が怖いのだろうか?
それとも、その顔が俺のよく知った顔だからか?
そのツギハギだらけの顔は……昔、大学時代に分かれた弘子だった。
何故だろう?
俺には弘子が悲しんでいるように思えた。
そうだ。
きっと、悲しいんだろうな。
何故ならツギハギだらけの顔の目から赤い液体がだらだらと流れていたからだ。
フロントガラスを赤く塗り潰した液体は、弘子の血涙だった。
数時間?
いや、実際には数分くらい経ったのだろう。
しばらくすると、弘子はどこかへと行ってしまった。
「うわー……。なんだあの顔。あ、あの人? お前の知り合いなのか?」
「そうですよね。この村に住んでいたのでしたら、お知り合いの方だったのですよね?」
日台と鈴木が俺の表情を窺いながら聞いて来た。
「ああ……でも、この村の人じゃないんだ。昔の大学時代の元恋人だ」
「そうなんですね……もう少しその事情をお聞きしたいんですが。まあ、ではそのことも含めて原因を解き明かしていきましょう。皆さん明日の早朝からここ蛇白村を配信していきましょうよ。それでは、今日は交代で寝ておきましょう。かなり歩き回りますからね」
「え、俺はこんなところで眠れないぞ」
鈴木は明日からここ蛇白村を配信していくつもりだった。
毒づく日台もやぶさかではなかったのかも知れない。
ここには必ず何かがあるんだ。
もう帰れない?
無事に早朝を迎えた俺たちは、まずは鈴木にここ蛇白村をよく知ってもらうために、下調べに村の探索をすることになった。
まずは俺の提案で不思議と水かさが増す川へと向かった。
「うわー、ここ壊れていますよ。なかなか大きな家ですねえ。誰の家だったんですか?」
「ああ。確かあまりよく話したことはないけど、村で唯一電化製品を取り扱っていたお店のおじさんがいて、その人の双子の兄が住んでいたんだ。ひどい無口な人だった」
「へえー、やっぱり海道さんはこの村が懐かしいんでしょうね。過疎化の影響で住民が集団移動してしまった村は確かに何十年もすると廃村になりますけど、たまに住んでいた人が村へ戻ってきて家を建てることもあると聞きます。やっぱり唯一の故郷ですものねえ」
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