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おわりに
長閑な夏の日差しの中で
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「ねえねえ。知っている……」
買い物かご片手の主婦が二人話している。
「ええ。あの家の坊や。11歳の時に家出したのよね。両親はとてもいい人だったけど、いったい何があったのかしら?」
二人は長閑な夏の日差しの中、お昼は何にしようかと話していたが、自然と話題は家出した子供の話に傾いてきた。
「いえいえ、そうじゃありませんことよ。実は、わたし知っているのよ。なにせ毎晩子供の泣き声が聞こえてくるのよ。夜遅いから主人とベットでしかめっ面をしていたわ。」
「へー。そうだったの」
「何か子供にしてたんじゃないかしら?きっと、それは良くないこと」
「本当なの。あんなりっぱな親が?」
「そうよ。外見で判断しちゃダメなのよね。なんでもね。そういえば、子供が泣き叫んだ時もあったらしくて。主人が心配していて夜も眠れないとボヤいていた時もあったわよ」
「へえー。それは大変。回りの大人ってやっぱり世間体が邪魔して、そういうのって助けられないから仕方ないでしょね」
「そうでも……。やっぱり、可愛そうだって主人も言ってたわよ。なんとかしようとか考えていたのよね」
「あ、でもその子、大人になってから家に帰って来たのよね。……そして、両親を探しに旅に出たそうよ」
「まあ。強くなって……」
…………???
「やあ」
「お前、魔法の研究をしているな」
その老人に大きな蜘蛛が気付いた。それは強力な魔法を身に着けて、そして、見えないように細かく身にまとっていることに。
ここは何やら鈍い光を放つ実験器具や薬品の棚のある部屋。紫色や黒色など眩い光の中でも、日蔭に仕舞っておきたい薬品が置いてあった。
「君には、これから来る私の不動産会社の若者をこの館に連れて行ってもらいたいんだ」
その老人の隣には綺麗な顔をした老婦人がいる。
「あなたにかけられた魔法は、最初に出会った人にしか……一度しか効かないのよ。その人があなたのパートナーよ。その人の周りにしか……あなたは喋れないのよ」
老婦人は優しく言葉を紡ぐ。それは年老いた輝きの宝石を思わす声だった。
「きっと……。立派な青年が彼の呪縛から館の住人を解放してくれるはず。彼はある一人の……大昔に別れて死んでしまった妻を愛していただけなんだ……。そう……ずっとね。その人と永久に一つになりたくて……。彼は空間と因果律の研究をし、大きな館で実験をし、不可逆な因果律の法則を変えようと……多くの人々を捕え……頼んだよ。大きな蜘蛛よ。この館にはその一端の力がある黄金の至宝という宝物があるが、それは、彼の研究の副産物だ。私はそれを昔取り上げたが……今ではどこにあるのやら」
老人はピンと背筋を伸ばし、
「私たちではもう無理だ。年をとりすぎているし、私は病気なのさ……。心臓の……」
「解った」
大きな蜘蛛は頷いた。
「じゃあ、この館について色々と話そうじゃないか。私がオークションで買い求め。家内の寝室に置いたクロイス協会の大いなる遺産での私の冒険譚と黄金の至宝のことをね……」
買い物かご片手の主婦が二人話している。
「ええ。あの家の坊や。11歳の時に家出したのよね。両親はとてもいい人だったけど、いったい何があったのかしら?」
二人は長閑な夏の日差しの中、お昼は何にしようかと話していたが、自然と話題は家出した子供の話に傾いてきた。
「いえいえ、そうじゃありませんことよ。実は、わたし知っているのよ。なにせ毎晩子供の泣き声が聞こえてくるのよ。夜遅いから主人とベットでしかめっ面をしていたわ。」
「へー。そうだったの」
「何か子供にしてたんじゃないかしら?きっと、それは良くないこと」
「本当なの。あんなりっぱな親が?」
「そうよ。外見で判断しちゃダメなのよね。なんでもね。そういえば、子供が泣き叫んだ時もあったらしくて。主人が心配していて夜も眠れないとボヤいていた時もあったわよ」
「へえー。それは大変。回りの大人ってやっぱり世間体が邪魔して、そういうのって助けられないから仕方ないでしょね」
「そうでも……。やっぱり、可愛そうだって主人も言ってたわよ。なんとかしようとか考えていたのよね」
「あ、でもその子、大人になってから家に帰って来たのよね。……そして、両親を探しに旅に出たそうよ」
「まあ。強くなって……」
…………???
「やあ」
「お前、魔法の研究をしているな」
その老人に大きな蜘蛛が気付いた。それは強力な魔法を身に着けて、そして、見えないように細かく身にまとっていることに。
ここは何やら鈍い光を放つ実験器具や薬品の棚のある部屋。紫色や黒色など眩い光の中でも、日蔭に仕舞っておきたい薬品が置いてあった。
「君には、これから来る私の不動産会社の若者をこの館に連れて行ってもらいたいんだ」
その老人の隣には綺麗な顔をした老婦人がいる。
「あなたにかけられた魔法は、最初に出会った人にしか……一度しか効かないのよ。その人があなたのパートナーよ。その人の周りにしか……あなたは喋れないのよ」
老婦人は優しく言葉を紡ぐ。それは年老いた輝きの宝石を思わす声だった。
「きっと……。立派な青年が彼の呪縛から館の住人を解放してくれるはず。彼はある一人の……大昔に別れて死んでしまった妻を愛していただけなんだ……。そう……ずっとね。その人と永久に一つになりたくて……。彼は空間と因果律の研究をし、大きな館で実験をし、不可逆な因果律の法則を変えようと……多くの人々を捕え……頼んだよ。大きな蜘蛛よ。この館にはその一端の力がある黄金の至宝という宝物があるが、それは、彼の研究の副産物だ。私はそれを昔取り上げたが……今ではどこにあるのやら」
老人はピンと背筋を伸ばし、
「私たちではもう無理だ。年をとりすぎているし、私は病気なのさ……。心臓の……」
「解った」
大きな蜘蛛は頷いた。
「じゃあ、この館について色々と話そうじゃないか。私がオークションで買い求め。家内の寝室に置いたクロイス協会の大いなる遺産での私の冒険譚と黄金の至宝のことをね……」
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