白と黒の館へ

主道 学

文字の大きさ
上 下
25 / 33
天使の扉

25話

しおりを挟む
「ああ。何とかな……。本当におチビちゃんは凄いよ。君が来てからこの館が凄く変わった……。本当に夢みたいだ。確かに死にそうな体験だったし」
「あはは。それとコルジン、ちょっと早いけどキャサリンおばさんのところへ寄ってみない?」
「え、まだ早いよ。明日にしよう」
「夕食は何?」
「おいおい。落ち着けないのか……。今日は豪華にチキンスープだ」
「やったー」
 そんな話をしながら、おじいちゃんの館でハリーのショーでの救世主ぶりや、原型館を旅立って黄金の至宝を見つけ、無事に帰ってきたりと、困難を成功させてしまう僕。それを自覚すると、いやでも興奮する気持ちは……顔を上気させ落ち着けなかった。何だか僕はゲームのRPGの勇者みたいだった。
 僕たちは館の迷路を途中、人々の驚嘆な顔を見ながらコルジンの部屋まで歩いて行った。
 その次の日からは僕たちは黄金の至宝を持ち、原型館からの帰還者として館の住人から広く知られるようになった。噂があちこち……。

 
 次の日……気分的に快晴。
 ベットから起き出すと、雲助はまだ寝ていた。それを肩に置いてキッチンへと行くと、コルジンが朝食を作ってくれていた。
「ねえ、コルジン。賞金を半分にしても部屋は買える?」
 コルジンは鍋に入れた大き目のスプーンをぐるぐる回し、
「ああ。買えるぞ。おチビちゃんは独り立ちしたいのかい?」
「うん。それと僕の面倒をいっぱいみてくれたし、原型館では僕を守ってくれたコルジンに何かプレゼントも買いたいん」
「へぇ。そいつはありがとよ……」
 僕は少し間を置いて、
「今日から仕事は無くなっちゃうね」
「ああ。寂しくなるな。でも、この館の外へと出たら何か仕事を見つければそれでいい。あのキラキラの太陽の奴には絶対負けるわけにはいかないからな。いつか偉くなって太陽と勝負したいぜ……。どっちがキラキラ輝いているか。」
 僕はテーブルへと着く。
 コルジンがハムサンドバーガーをドッカとテーブルに置いた。
「今日はどうする?」
「まずはキャサリンおばさんの様子を見て、それからハリーおじさんに黄金の至宝を渡し、賞金を半分こにする規則を作ってもらう。そんな感じかな」
 コルジンはハムサンドバーガーを大口を開けてかぶりつき、
「おチビちゃんは凄いや。でも、後でもいいから天使の扉へ行ってみんなに報告だ。もう仕事は終わりだってね。みんな喜ぶぞ!」
「あはははは」
 コルジンは僕にウインクをした。

 僕はこのおじいちゃんの館がとっても大好き……。
 食事を終えると、今度はルージー夫妻のドアへと館の迷路を歩いて行く。
「おチビちゃんは偉いな……ルージー夫妻を助けてくれて、俺からもお礼を言うよ」
 迷路を右へ左へ、コルジンは微笑んでいる。
「うん?そうかな……。あれ……」
 そういえば、僕は遥か昔はルージー夫妻が嫌いでしょうがなかったんだっけ?
 でも、今ではリグおじさんが大好きで、キャサリンおばさんが心配だ。
「おや、ハリーの部屋の奥の旅から戻って来たんだね?」
 通りすがりのおじさんが目を丸くしている。
「うん。黄金の至宝をゲットして、コルジンの部屋から行った時のある場所まで、一とっ飛びさ」
 僕は嬉しくて、黄金の至宝をかざした。
「へえ。それは凄い。おまけに100万クレジットかー」


 おじさんはかなり羨ましがったみたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

空の話をしよう

源燕め
児童書・童話
「空の話をしよう」  そう言って、美しい白い羽を持つ羽人(はねひと)は、自分を助けた男の子に、空の話をした。    人は、空を飛ぶために、飛空艇を作り上げた。  生まれながらに羽を持つ羽人と人間の物語がはじまる。  

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

鳥の詩

恋下うらら
児童書・童話
小学生、名探偵ソラくん、クラスで起こった事件を次々と解決していくお話。

たまごせんちょうのだいぼうけん

五嶋樒榴
児童書・童話
みんなだいすき!われらがたまごせんちょう! たまごのくにの たまごせんちょう たまごのおうさまにたのまれて りゅうからたからばこを とりかえすことに どんなぼうけんが はじまるのでしょうか

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

処理中です...