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天使の扉
24話
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「さあ。とっとと、一っ風呂浴びるか!」
コルジンが僕の手を取って、大浴場へと行く。ここはコルジンの部屋。あの後、僕たちはコルジンの部屋へと黄金の至宝を使って戻り、グッテンはガラス張りの館の端っこのことをポッテンとヘルタンに報告。ロッテは薬草を持ってトーマスおじさんと薬を作りに行った。
何だかんだで、トーマスおじさんは薬を無料で、キャサリンおばさんに処方するみたい。
僕たちの旅は無事に終わって、後はハリーおじさんに黄金の至宝を渡し、賞金の半分をルージー夫妻に支払う規則を作ってもらうことだけとなる。
「そういえば、おチビちゃんは大浴場は初めてなんだよな。泳いでみるかい」
「え。お風呂で泳ぐの?」
「そうだ。大浴場は大きいからな。泳ごうとすれば泳げるのさ。俺も昔は泳いでいたんだ。体を鍛えるためにな。絶対にあの太陽より強くなってみせるさ」
「コルジン……。うん」
僕は泳ぎに少しだけ自信がある。コルジンと競争するのはどうだろう? 大人も泳げるとしたらだけど。
「おチビちゃん。原型館へと行ってから成長したな。なんか大人になったみたいだ」
コルジンが僕の頭に手を置いた。
身長はそのままだけど……。
「そうかな?」
館の迷路を右へ左へ……ずいぶん久しぶりで、すっかり忘れてしまったみたい。もうコルジンの部屋やグッテンの部屋、それからロッテの部屋とかへは自分一人では行けないや。
大浴場は海を思わせる濃厚な青い色のドア。遥か遠くには濃厚な赤の女湯がある。
コルジンが青色のドアを開けると、目の前には幾本もの板で囲まれた川が流れていた。川は百メートルくらいの長さで、それが複雑な機械のある右側から下方へと水が落ちる左側まで八本あった。幅は大人一人は入れる。手前に服を入れる棚が幾つもあった。お風呂特有の湯気と匂いが漂う。こんなへんてこな館なのだから、さもありなんだ。
「これがお風呂?」
川へと入っている人が疎らのお風呂で、僕は首を傾げる。
「わははははは。そうさ。凄いだろう。風呂の流れはそれほどじゃないが、泳ぐときは流れに逆らうんだよ」
コルジンはあっという間に、白い長ズボンと白いワイシャツを脱ぐ。
僕もそれにならった。雲助は棚で待ってもらった。
「おい。ヨルダン。俺にも遊ばせろ」
本当にこの館への興味は尽きることがないんだね。
二人で、川のようなお風呂で流れに逆らって泳いだ。
……いい湯だった。
「ふうーむ?」
大浴場からの帰りで、グッテンに出会った。
「おう。グッテン珍しいな?」
「ああ。私もお風呂へと入ろうかと。何だか原型館から帰ってきたら、むしょうにお風呂へ入りたくなったんだ」
「お前もか」
コルジンとグッテンが話している。
僕はグッテンがお風呂へ入るのが、珍しいことなのは知っている。どういう心境の変化なのかな?
「そうか。そうだよな」
コルジンが納得顔で言った。
「そう。あの原型館での水で気持ちが変わったのさ。……これならば大浴場のほうがましさ」
あ、そうか。原型館での水は脅威だ。それなら、大浴場の方が良いに決まっているよね。
怖くないもんね。
「じゃあな」
「ああ」
グッテンは黒いジャージ姿で大浴場へと消えた。
「なあ。おチビちゃん。俺たちは原型館という不思議で凄いところから帰って来た。これはとても凄いことさ。きっと、何年代も昔でも凄いことだと思う。黄金の至宝も持って来きたし……」
コルジンが僕の肩に大きな手を置いて話した。
「うん。僕もそう思うよ。でも、それはコルジンたちのお蔭なのさ」
「ははっ、それはこっちのセリフだぜ。おチビちゃん」
僕たちは大浴場の湯で体が温かく、心も温かくなる。こんな友達を持てて素晴らしい限りだ。
「明日にハリーおじさんに出会おう。黄金の至宝を渡しに」
「そういえば、賞金を半分にするんだったな。おチビちゃん。ハリーは何にその黄金の至宝を使おうとしているのかな。俺なら原型館へと行ってあの不思議な鳥をタダで、食い放題にするんだがな?」
「きっと……この館から出るためさ」
僕は雲助の言ったことを思い出す。
「そうだ。この館から外へと出ることが出来るのさ。その黄金の至宝は。この館で一番強い魔法だ」
雲助が言った。
「この館から外へ……」
コルジンが硬直してしまった。
それはそうだろうと僕は思う。今まで必死に天使の扉でガラスを拭いて、外へと出ようとしたのに。旅行から帰ったらあっという間に、外へと出られるんだから。なんだかコルジンが可愛そうだ。でも、死に物狂いの結果でもあると思う。僕たちは立派だよ。
「そ……それは本当なのか?」
コルジンは俯いてしまった。
「うん。コルジン大丈夫?でも、死にそうになるほどの体験の連続だったし……。いいんじゃないかな?」
コルジンは腕を摩って顔を上げた。
コルジンが僕の手を取って、大浴場へと行く。ここはコルジンの部屋。あの後、僕たちはコルジンの部屋へと黄金の至宝を使って戻り、グッテンはガラス張りの館の端っこのことをポッテンとヘルタンに報告。ロッテは薬草を持ってトーマスおじさんと薬を作りに行った。
何だかんだで、トーマスおじさんは薬を無料で、キャサリンおばさんに処方するみたい。
僕たちの旅は無事に終わって、後はハリーおじさんに黄金の至宝を渡し、賞金の半分をルージー夫妻に支払う規則を作ってもらうことだけとなる。
「そういえば、おチビちゃんは大浴場は初めてなんだよな。泳いでみるかい」
「え。お風呂で泳ぐの?」
「そうだ。大浴場は大きいからな。泳ごうとすれば泳げるのさ。俺も昔は泳いでいたんだ。体を鍛えるためにな。絶対にあの太陽より強くなってみせるさ」
「コルジン……。うん」
僕は泳ぎに少しだけ自信がある。コルジンと競争するのはどうだろう? 大人も泳げるとしたらだけど。
「おチビちゃん。原型館へと行ってから成長したな。なんか大人になったみたいだ」
コルジンが僕の頭に手を置いた。
身長はそのままだけど……。
「そうかな?」
館の迷路を右へ左へ……ずいぶん久しぶりで、すっかり忘れてしまったみたい。もうコルジンの部屋やグッテンの部屋、それからロッテの部屋とかへは自分一人では行けないや。
大浴場は海を思わせる濃厚な青い色のドア。遥か遠くには濃厚な赤の女湯がある。
コルジンが青色のドアを開けると、目の前には幾本もの板で囲まれた川が流れていた。川は百メートルくらいの長さで、それが複雑な機械のある右側から下方へと水が落ちる左側まで八本あった。幅は大人一人は入れる。手前に服を入れる棚が幾つもあった。お風呂特有の湯気と匂いが漂う。こんなへんてこな館なのだから、さもありなんだ。
「これがお風呂?」
川へと入っている人が疎らのお風呂で、僕は首を傾げる。
「わははははは。そうさ。凄いだろう。風呂の流れはそれほどじゃないが、泳ぐときは流れに逆らうんだよ」
コルジンはあっという間に、白い長ズボンと白いワイシャツを脱ぐ。
僕もそれにならった。雲助は棚で待ってもらった。
「おい。ヨルダン。俺にも遊ばせろ」
本当にこの館への興味は尽きることがないんだね。
二人で、川のようなお風呂で流れに逆らって泳いだ。
……いい湯だった。
「ふうーむ?」
大浴場からの帰りで、グッテンに出会った。
「おう。グッテン珍しいな?」
「ああ。私もお風呂へと入ろうかと。何だか原型館から帰ってきたら、むしょうにお風呂へ入りたくなったんだ」
「お前もか」
コルジンとグッテンが話している。
僕はグッテンがお風呂へ入るのが、珍しいことなのは知っている。どういう心境の変化なのかな?
「そうか。そうだよな」
コルジンが納得顔で言った。
「そう。あの原型館での水で気持ちが変わったのさ。……これならば大浴場のほうがましさ」
あ、そうか。原型館での水は脅威だ。それなら、大浴場の方が良いに決まっているよね。
怖くないもんね。
「じゃあな」
「ああ」
グッテンは黒いジャージ姿で大浴場へと消えた。
「なあ。おチビちゃん。俺たちは原型館という不思議で凄いところから帰って来た。これはとても凄いことさ。きっと、何年代も昔でも凄いことだと思う。黄金の至宝も持って来きたし……」
コルジンが僕の肩に大きな手を置いて話した。
「うん。僕もそう思うよ。でも、それはコルジンたちのお蔭なのさ」
「ははっ、それはこっちのセリフだぜ。おチビちゃん」
僕たちは大浴場の湯で体が温かく、心も温かくなる。こんな友達を持てて素晴らしい限りだ。
「明日にハリーおじさんに出会おう。黄金の至宝を渡しに」
「そういえば、賞金を半分にするんだったな。おチビちゃん。ハリーは何にその黄金の至宝を使おうとしているのかな。俺なら原型館へと行ってあの不思議な鳥をタダで、食い放題にするんだがな?」
「きっと……この館から出るためさ」
僕は雲助の言ったことを思い出す。
「そうだ。この館から外へと出ることが出来るのさ。その黄金の至宝は。この館で一番強い魔法だ」
雲助が言った。
「この館から外へ……」
コルジンが硬直してしまった。
それはそうだろうと僕は思う。今まで必死に天使の扉でガラスを拭いて、外へと出ようとしたのに。旅行から帰ったらあっという間に、外へと出られるんだから。なんだかコルジンが可愛そうだ。でも、死に物狂いの結果でもあると思う。僕たちは立派だよ。
「そ……それは本当なのか?」
コルジンは俯いてしまった。
「うん。コルジン大丈夫?でも、死にそうになるほどの体験の連続だったし……。いいんじゃないかな?」
コルジンは腕を摩って顔を上げた。
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