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原型館 その一
17話
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そう雲助が言ったが、誰もこんなに小さい穴へと入れるはずも無い。……そうだ。穴を大きくしよう。館の魔法で駄目かも知れないけど……。
「さすがに俺の力でも穴を大きく出来ないぜ。おチビちゃん……グッテン……どうする」
コルジンが肩を摩っていた。
「ふーむ。私が思うにこのブロンズ像を……みんなで動かしてみては? 多分、運がよければ大きい穴が台の下にあるかも知れない」
グッテンは考えながら話している。
「そうかな。でも、それならいいよね」
僕は一番に天使の像を体全体で押しだした。コルジンも筋肉を引き締めて像を押す。ロッテも両手をいっぱい前に出して押しだした。
グッテンももやしのような腕のジャージを捲る。
「よっしゃあ!」
コルジンが大声を出した。
見ると、ブロンズ像の下に子供一人は入れる穴が出てきた。
「僕がためしに行って来る。雲助肩に乗ってくれ」
僕は意気揚揚と雲助を肩に乗せると、暗い穴へ入ろうとした。
「おチビちゃん。亡霊がでたらどうする。俺も行くよ」
「無理だ。子どもサイズだ。ヨルダン何か見つかったらすぐに戻って来てくれ。きっと、この部屋からみんなで出られる方法の糸口があるかも知れない」
「あたしも行く。怖いけど」
僕はみんなににっこりとして、
「大丈夫。僕は死を恐れない。ロッテはここにいて」
中は真っ暗だった。まあ、当然かな。布袋をしっかりと持って、下半身を入れて後は頭を地面へと持って行く。僕は原型館への探険と言う名のパンに、興味というおいしいスパイスをかけて、穴を這いつくばる。地面は珍しい赤い土だった。
僕はどこへと続くのか解らない穴の中を、いくらか這いつくばると、急に頭上から光が漏れているところへと出た。
「ここには何があるの」
雲助の顔が光で見える。
「解らん。でも、とてつもなく大きいベットがある」
僕はそれを聞いて頭を穴から出した。
「わ!」
そこには、雲助の言うとおりの巨大なベットが部屋いっぱいにズンとあった。……100人は眠れる。
「ここなら、みんなでいつまでも眠れるね」
「端っこはどうした」
「勿論、言ってみただけさ」
「それにしても、端っこに行って、それから黄金の至宝をゲットしても。どうやって、帰ろうかな。館の特殊な亡霊が出入り口付近にいるし、蜘蛛がいっぱいいた水玉模様のドアには魔法がかけてあるようだし」
僕は部屋いっぱいの巨大なベットに寝転んだ。とてもフカフカで洗いたてのベットだ。
「だからヨルダン。恐らく戻れないぞ。無理だと思う。けれど、コルジンたちをどうやってあの部屋から出すんだ」
「うーん」
僕は考えながら、なんと……寝てしまった。
遠くで痛みがする。
きっと、雲助が起こしているのだろう。
あ、僕は寝てしまったんだね。
みんなをあの部屋から出さないと……。
「ヨルダン! 起きろ! ここには危険がいっぱいある!」
僕は目をぱっと開ける。
「え!」
目の前には美しい女の亡霊が僕の目と鼻の先にいた。
その女性がいきなり目をひっくり返して、手に持ったナイフを振り上げる。
「ヨルダン!」
僕は必死にかわした。
そして、立ち上がると言うことをなかなか聞かない体で、巨大なベットをモフモフと走り出す。僕の寝巻きはこのベットの部屋にはとても似合う。雲助が肩で「危ない。危ない」と呟く。
ベットは遠くの鮮やかな緋色のドアへと続いていた。僕はドアへと逃げる。額に温まった冷や汗がつたう。ドアを閉めた。
「ヨルダン。コルジンがいないから無茶はするな。原型館は危険がどこにだってある」
「解ったよ」
僕はバクバクいっている心臓と呼吸を整える。
「ふー、怖いわけじゃないぞ」
僕は部屋を見回した。そこには家具が色々と置いてある場所だった。水色の水槽には金魚が三匹いた。あれ……魚がある。
今だにがくがくいっている膝を叩いた。
ドアが二つ、草の色と豚の色だ。
どっちから調べようか?
後ろから悲鳴がした。でも、聞いた時のない声だ。さっきの女の亡霊だろう。僕は足がすくみそうになるのを極力、踏ん張って耐えた。
後ろにあるさっきの部屋からの赤い色のドアが思いっきり何かで叩かれる。
「何?」
僕は必死に外へと繋がる心の蓋を閉じようと、努力を続ける。
また、悲鳴が聞こえた。
「どうなってるの?」
考えるのは嫌だ。想像するのも絶対に嫌だった。
蓋を閉めたはずの心が、勝手にコルジンを呼び始めようとする。
「ぎゃあああああ」
……三度目の悲鳴が……止んだ。
気にしない気にしない……。
「ヨルダン。早めにコルジンたちと合流しよう」
「何を言っているの。僕は怖くないよ」
僕は豚の色のドアに向かう。
ドアは「ぎぃぃ!」と開いて中の様子を窺う僕の耳を嫌というほど逆撫でた。
後ろをどうしても、雲助と一緒に振り返ってしまうが、僕は極力元気良く中に入る。
「わっ!」
そこでは、これ見よがしに、部屋の真ん中に・・・人が顔をだした袋が天井に垂れ下がっていた。鮮血が床に垂れていて、顔はどんな恐怖ならそんな顔が出来るのかと思えるほど、醜く歪んで血で勢大に真っ赤になっていた。
「こいつ。ついさっき死んだのか」
雲助が息を僕の顔に吹きかけながら言った。
僕は恐怖なんかで体の力が抜けてきていた。でも、負けないぞ。
「ウーふーーー」
後ろから人の声なのか解らない声がした。
「ヨルダン……。振り向くなよ……振り向くなよ!」
雲助がまた僕に息を吹きかけながら喋る。
カタカタと足音のようなものが迫って来た。
僕は体の自由が震えで奪われていくのを頑張って耐えた。
「見るな。見るな見るな見るな。見るな見るな見るな見るな!」
雲助が生暖かい息を僕の顔に吹きかけながら言う。
「こんなことに、負けないぞ!」
僕は元気を100倍だして振り返った。
上半身は人間。下半身が血が塗られた足が4本のマネキン人形。片方だけ裂けた口の目玉が垂れている顔。髪は焼きただれて所々禿落ちている。女か男か解らない。それは……人間でもない。
「ヨルダン逃げろ!」
雲助が必死に叫ぶ。
僕はその声が耳に入ると、一目散に目の前の虹色のドアへと走り出す。後ろからカタカタと足音が聞こえるが、その動作は比較的にゆっくりしている。これなら逃げられる。
「ウーーふーー」
後ろから怪物の声が響き渡る。
恐怖を元気で跳ね除けながら僕は意識を束ねてドアを開ける。
そして、まっさきに部屋へと入るとドアを閉めた。
小刻みに震える足を心の中で叱咤して、僕は中央の椅子に座る。質素な木材質のその椅子はロッキングチェアだった。
そこで、言うことを聞かない心臓と体を落ち着かせる。
「ここは安全なのかな?」
「ヨルダン。まだ駄目だ」
「疲れちゃった……。でも、怖くなんて無いぞ!」
僕は決して疲れからではない足の震えを心の中で叱咤した。体が動きづらい。
「ヨルダン。早く逃げるんだ。ここは危険だぞ。追ってくる」
僕は重い腰を上げて、また、ドアを開ける。この部屋にあるドアはぐんじょ色だった。
その次の部屋、その次の部屋と進んで行くと、あの怪物の声が聞こえなくなった。もう諦めたのかな?
果てしない廊下を歩いていると、また、部屋に辿りつく。代わり映えしない。
コルジンたちの部屋からだいぶ遠いところへと来てしまった。もう戻れそうもないかも。さすがに、僕も死んじゃうのかな?。どうして、人って死ぬのかな?
僕は死を恐れない! 絶対に!!
次の日。気分的に霧と大雨
狭い部屋へと入った。
そこには、何の変哲もない。木製のテーブルの上に水の入った透明なコップが置いてあった。
「そういえば、散々走り回って喉が渇いた……」
僕はそのテーブルの上に置いてあるコップを持とうとした。
けれど、手が滑ってコップを床に落としてしまった……。
コップは割れずに床で転がり……すると、みるみるうちに床がコップからの水で、水浸しになる。それは、足の指の高さまでになる。水位がどんどんと上がる。
「どうなっているの? これも原型館の魔法?」
やがて腰の辺りまで水の脅威が迫る。
「ヨルダン! 俺は泳げない!」
部屋全体がコップからの水で埋め尽くされそうだ。
「どうなっているの? 雲助?」
「逃げるんだ!」
僕はざぶざぶと溢れかえる水の中を動いた。外へと繋がるグリーンのドアを開ける。肩までになった水位もそっちの部屋へと大うねりして流れる。
グリーンの部屋へと入ると、ドアを閉めた。
また寝間着が水浸しだ。
室内は明るくて、このおじいちゃんの館で初めて見る時計がたくさん壁全体にあった。でも、時計の針はしっちゃかめっちゃかの時刻を刻んでいた。
「この部屋にも何かあるのかな?」
「ああ。恐らく。原型館には所々魔法があるのさ」
僕は呼吸が苦しくなるほど切羽詰まる……でも、怖いわけじゃない。
ゴーン。ゴーン。ゴーン。
と、時を刻みだした時計が一つ……目の前にあった。
すると、部屋全体の時計がスピードを上げて回り出した。
「今度は何?」
「ヨルダン! 逃げろ!」
僕はだんだんと体が年をとって来た。
体が大きくなり、背が伸びる。
最初は青年にそして、今度は中年に。
鬚面で太った腹を見て、僕は悲鳴を上げた。
「ここも駄目だ! 逃げるんだ! 次の部屋へ!」
雲助は何だか年のせいか萎れてしまった。老蜘蛛の一言で、僕は次の部屋へと急いだ。
元に戻った体でガタがきているドアへと入ると、今度は床が引っぺがされた部屋だった。
「また魔法!?」
僕は床が土になっている部屋……家具がない部屋で緊張をしている。この部屋は安全なのだろうか?
その時、体が小刻みな振動を察知した。
その振動はだんだんと大きくなる。……地震だ。
「さすがに俺の力でも穴を大きく出来ないぜ。おチビちゃん……グッテン……どうする」
コルジンが肩を摩っていた。
「ふーむ。私が思うにこのブロンズ像を……みんなで動かしてみては? 多分、運がよければ大きい穴が台の下にあるかも知れない」
グッテンは考えながら話している。
「そうかな。でも、それならいいよね」
僕は一番に天使の像を体全体で押しだした。コルジンも筋肉を引き締めて像を押す。ロッテも両手をいっぱい前に出して押しだした。
グッテンももやしのような腕のジャージを捲る。
「よっしゃあ!」
コルジンが大声を出した。
見ると、ブロンズ像の下に子供一人は入れる穴が出てきた。
「僕がためしに行って来る。雲助肩に乗ってくれ」
僕は意気揚揚と雲助を肩に乗せると、暗い穴へ入ろうとした。
「おチビちゃん。亡霊がでたらどうする。俺も行くよ」
「無理だ。子どもサイズだ。ヨルダン何か見つかったらすぐに戻って来てくれ。きっと、この部屋からみんなで出られる方法の糸口があるかも知れない」
「あたしも行く。怖いけど」
僕はみんなににっこりとして、
「大丈夫。僕は死を恐れない。ロッテはここにいて」
中は真っ暗だった。まあ、当然かな。布袋をしっかりと持って、下半身を入れて後は頭を地面へと持って行く。僕は原型館への探険と言う名のパンに、興味というおいしいスパイスをかけて、穴を這いつくばる。地面は珍しい赤い土だった。
僕はどこへと続くのか解らない穴の中を、いくらか這いつくばると、急に頭上から光が漏れているところへと出た。
「ここには何があるの」
雲助の顔が光で見える。
「解らん。でも、とてつもなく大きいベットがある」
僕はそれを聞いて頭を穴から出した。
「わ!」
そこには、雲助の言うとおりの巨大なベットが部屋いっぱいにズンとあった。……100人は眠れる。
「ここなら、みんなでいつまでも眠れるね」
「端っこはどうした」
「勿論、言ってみただけさ」
「それにしても、端っこに行って、それから黄金の至宝をゲットしても。どうやって、帰ろうかな。館の特殊な亡霊が出入り口付近にいるし、蜘蛛がいっぱいいた水玉模様のドアには魔法がかけてあるようだし」
僕は部屋いっぱいの巨大なベットに寝転んだ。とてもフカフカで洗いたてのベットだ。
「だからヨルダン。恐らく戻れないぞ。無理だと思う。けれど、コルジンたちをどうやってあの部屋から出すんだ」
「うーん」
僕は考えながら、なんと……寝てしまった。
遠くで痛みがする。
きっと、雲助が起こしているのだろう。
あ、僕は寝てしまったんだね。
みんなをあの部屋から出さないと……。
「ヨルダン! 起きろ! ここには危険がいっぱいある!」
僕は目をぱっと開ける。
「え!」
目の前には美しい女の亡霊が僕の目と鼻の先にいた。
その女性がいきなり目をひっくり返して、手に持ったナイフを振り上げる。
「ヨルダン!」
僕は必死にかわした。
そして、立ち上がると言うことをなかなか聞かない体で、巨大なベットをモフモフと走り出す。僕の寝巻きはこのベットの部屋にはとても似合う。雲助が肩で「危ない。危ない」と呟く。
ベットは遠くの鮮やかな緋色のドアへと続いていた。僕はドアへと逃げる。額に温まった冷や汗がつたう。ドアを閉めた。
「ヨルダン。コルジンがいないから無茶はするな。原型館は危険がどこにだってある」
「解ったよ」
僕はバクバクいっている心臓と呼吸を整える。
「ふー、怖いわけじゃないぞ」
僕は部屋を見回した。そこには家具が色々と置いてある場所だった。水色の水槽には金魚が三匹いた。あれ……魚がある。
今だにがくがくいっている膝を叩いた。
ドアが二つ、草の色と豚の色だ。
どっちから調べようか?
後ろから悲鳴がした。でも、聞いた時のない声だ。さっきの女の亡霊だろう。僕は足がすくみそうになるのを極力、踏ん張って耐えた。
後ろにあるさっきの部屋からの赤い色のドアが思いっきり何かで叩かれる。
「何?」
僕は必死に外へと繋がる心の蓋を閉じようと、努力を続ける。
また、悲鳴が聞こえた。
「どうなってるの?」
考えるのは嫌だ。想像するのも絶対に嫌だった。
蓋を閉めたはずの心が、勝手にコルジンを呼び始めようとする。
「ぎゃあああああ」
……三度目の悲鳴が……止んだ。
気にしない気にしない……。
「ヨルダン。早めにコルジンたちと合流しよう」
「何を言っているの。僕は怖くないよ」
僕は豚の色のドアに向かう。
ドアは「ぎぃぃ!」と開いて中の様子を窺う僕の耳を嫌というほど逆撫でた。
後ろをどうしても、雲助と一緒に振り返ってしまうが、僕は極力元気良く中に入る。
「わっ!」
そこでは、これ見よがしに、部屋の真ん中に・・・人が顔をだした袋が天井に垂れ下がっていた。鮮血が床に垂れていて、顔はどんな恐怖ならそんな顔が出来るのかと思えるほど、醜く歪んで血で勢大に真っ赤になっていた。
「こいつ。ついさっき死んだのか」
雲助が息を僕の顔に吹きかけながら言った。
僕は恐怖なんかで体の力が抜けてきていた。でも、負けないぞ。
「ウーふーーー」
後ろから人の声なのか解らない声がした。
「ヨルダン……。振り向くなよ……振り向くなよ!」
雲助がまた僕に息を吹きかけながら喋る。
カタカタと足音のようなものが迫って来た。
僕は体の自由が震えで奪われていくのを頑張って耐えた。
「見るな。見るな見るな見るな。見るな見るな見るな見るな!」
雲助が生暖かい息を僕の顔に吹きかけながら言う。
「こんなことに、負けないぞ!」
僕は元気を100倍だして振り返った。
上半身は人間。下半身が血が塗られた足が4本のマネキン人形。片方だけ裂けた口の目玉が垂れている顔。髪は焼きただれて所々禿落ちている。女か男か解らない。それは……人間でもない。
「ヨルダン逃げろ!」
雲助が必死に叫ぶ。
僕はその声が耳に入ると、一目散に目の前の虹色のドアへと走り出す。後ろからカタカタと足音が聞こえるが、その動作は比較的にゆっくりしている。これなら逃げられる。
「ウーーふーー」
後ろから怪物の声が響き渡る。
恐怖を元気で跳ね除けながら僕は意識を束ねてドアを開ける。
そして、まっさきに部屋へと入るとドアを閉めた。
小刻みに震える足を心の中で叱咤して、僕は中央の椅子に座る。質素な木材質のその椅子はロッキングチェアだった。
そこで、言うことを聞かない心臓と体を落ち着かせる。
「ここは安全なのかな?」
「ヨルダン。まだ駄目だ」
「疲れちゃった……。でも、怖くなんて無いぞ!」
僕は決して疲れからではない足の震えを心の中で叱咤した。体が動きづらい。
「ヨルダン。早く逃げるんだ。ここは危険だぞ。追ってくる」
僕は重い腰を上げて、また、ドアを開ける。この部屋にあるドアはぐんじょ色だった。
その次の部屋、その次の部屋と進んで行くと、あの怪物の声が聞こえなくなった。もう諦めたのかな?
果てしない廊下を歩いていると、また、部屋に辿りつく。代わり映えしない。
コルジンたちの部屋からだいぶ遠いところへと来てしまった。もう戻れそうもないかも。さすがに、僕も死んじゃうのかな?。どうして、人って死ぬのかな?
僕は死を恐れない! 絶対に!!
次の日。気分的に霧と大雨
狭い部屋へと入った。
そこには、何の変哲もない。木製のテーブルの上に水の入った透明なコップが置いてあった。
「そういえば、散々走り回って喉が渇いた……」
僕はそのテーブルの上に置いてあるコップを持とうとした。
けれど、手が滑ってコップを床に落としてしまった……。
コップは割れずに床で転がり……すると、みるみるうちに床がコップからの水で、水浸しになる。それは、足の指の高さまでになる。水位がどんどんと上がる。
「どうなっているの? これも原型館の魔法?」
やがて腰の辺りまで水の脅威が迫る。
「ヨルダン! 俺は泳げない!」
部屋全体がコップからの水で埋め尽くされそうだ。
「どうなっているの? 雲助?」
「逃げるんだ!」
僕はざぶざぶと溢れかえる水の中を動いた。外へと繋がるグリーンのドアを開ける。肩までになった水位もそっちの部屋へと大うねりして流れる。
グリーンの部屋へと入ると、ドアを閉めた。
また寝間着が水浸しだ。
室内は明るくて、このおじいちゃんの館で初めて見る時計がたくさん壁全体にあった。でも、時計の針はしっちゃかめっちゃかの時刻を刻んでいた。
「この部屋にも何かあるのかな?」
「ああ。恐らく。原型館には所々魔法があるのさ」
僕は呼吸が苦しくなるほど切羽詰まる……でも、怖いわけじゃない。
ゴーン。ゴーン。ゴーン。
と、時を刻みだした時計が一つ……目の前にあった。
すると、部屋全体の時計がスピードを上げて回り出した。
「今度は何?」
「ヨルダン! 逃げろ!」
僕はだんだんと体が年をとって来た。
体が大きくなり、背が伸びる。
最初は青年にそして、今度は中年に。
鬚面で太った腹を見て、僕は悲鳴を上げた。
「ここも駄目だ! 逃げるんだ! 次の部屋へ!」
雲助は何だか年のせいか萎れてしまった。老蜘蛛の一言で、僕は次の部屋へと急いだ。
元に戻った体でガタがきているドアへと入ると、今度は床が引っぺがされた部屋だった。
「また魔法!?」
僕は床が土になっている部屋……家具がない部屋で緊張をしている。この部屋は安全なのだろうか?
その時、体が小刻みな振動を察知した。
その振動はだんだんと大きくなる。……地震だ。
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