白と黒の館へ

主道 学

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不思議なドア

3話

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 二・三段だけの階段もいくつかあり、上ったり下がったりしているうちにここが何階なのかは解らなくなった。
 これがおじいちゃんの本当の館なのだろう。僕は何十個とあるドアを開けては中にいる住人に挨拶をして、そしていちいち感激した。

「坊主。中の中には入っちゃなんね」
 相変わらず雲助はそう言っていた。
「この館にはまだ秘密があるの」
 雲助は僕の顔を6本足の1本で引っ掛け、
「この中には色々あって、たくさん過ぎることがあるんだ。その中には邪悪なものや危険なものもある」
「へー。そうなんだ」
 僕はそれを聞いて、より一層好奇心が湧いてきた。
 二・三段の階段に座り込んで、
「危険なものってどんなの?」
 邪悪なものの知識がない僕は、危険なものの方を尋ねる。

「この館には無限のドアがあるってことは言ったな。その中には当然、好ましくないものや危険なものがあるのはしょうがないことさ。その中で危険なものとは、この館に住んでいると言われている亡霊さ」
「亡霊?」
「ああ。この館から一歩も出られない者たちには、それを快く思わない人々もいるのさ」
「このおじいちゃんの館に閉じ込められていると思っている人」
 僕には理解出来なかった。だって、こんな凄いところで一生暮らせるなんてまさに天国さ。
「ヨルダン。世の中には普通の人もいれば変わった人もいる。だからどうしてもこの館にいる人たちの中から外へと出たいと思う人がいるのさ。普通の人はこの館で生活をただ与えられた運命のように享受する。変わった人はこの館から外へと出たがり、そんな人がこの館で死ぬと、亡霊になるのさ。……俺から見ると君も変わっている」
 僕も変わっている?そうかな?

「その亡霊が危険って? どういうこと?」
「簡単さ。この館の人に八つ当たりをするからさ」
「ふーん」
 僕は短い階段から立ち上がると、
「さあ、探検の再開だ」 
 背筋を伸ばして意気揚揚と歩きだした。
 今度はどんなことが起きるのだろう?
 そこのドアを開けてみたり、この短い階段のそばにある絵を動かしたり、興味が尽きることはない。
 不思議な部屋を見つけた。

 金色で両開きの大きいドアで、そこは100人くらいが入れそうな劇場のような部屋だった。正面にステージがあり人がその上に一人いた。天井には照明が並列してあって、一人の男性に光を当てている。
「よおーい。おチビちゃん」
 男性が僕のことを大声で呼んだ。僕はそこへと並列してある椅子の群れの間を歩いていくと、
「今度。この場所でショーをするんだ。必ず見てってくれよ。俺の名はハリー。この館で一番の金持ちさ。」
 何かの病気か、左右の目が方々に向いている。ハリーは大きな手を僕の肩に置いた。年は30代くらいで、派手のように捉われる光輝く白いスーツを着ている。

「はい見てみたいです。僕の名前はヨルダン」
 僕は好奇心で答えた。
 この館の住人のことを隅々まで知りたいと思うと同時に、ハリーの催すショー、こんなヘンテコな館でどんなショーなのかと期待を膨らます。どうしても見てみたい。
「どんなショーなんですか?」
 ハリーはニッコリして、
「それは見てからのお楽しみさ。きっと、一生忘れないほど楽しいぞ」
 僕は不思議に思うところが一つあった。それはこの館にお金があるのだろうか……?
「ここにはお金があるんですか?」
「勿論。大昔から何代もそれぞれの人が受け続けている金銭があって、それが物々交換をしなくてもいい方法さ。そのお金で毎日の食事やお風呂にありつけるんだ。後、仕事もある。君は持っているかい?」
「いいえ。財布にはいくらか円が有りますが、この館のお金はぜんぜん持ってないです」
「ヨルダン。円て何だ?」
 雲助が僕の寝巻きの腰の財布辺りを見て尋ねる。

「僕の世界のお金さ」
 ハリーは少し考えて、
「俺のショーは有料だから……。仕方ない30クレジットやるよ。それがこの館のお金さ。そのお金を無駄遣いせずに必ず俺のショーを見に来てくれ。ところで、このおチビちゃんはどこから来たのかな?」
「解りました。必ず見に来ます。どんなショーなのか今からとても楽しみです」
 ハリーは満面の笑顔で、
「この館には楽しみがないんだ。俺はそんなんじゃつまらないといつも思っている。そこで、このショーを思いついたんだ。このショーをやったら絶対楽しい……。この館の他にはない楽しみになってくれるさ」
 僕は目をキラキラさせた。ふと、
「いつ頃始めるんですか?」
「だいたい三日後さ。楽しいことは早い方がいい」
 そういえば、この館には時間があるのだろうか。


 去り際に、
 ハリーが明るい口調で、目を四方八方に向けて、


「一生心に残るショーさ」
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