7 / 37
刑務所
歌声
しおりを挟む
また、歌声が聞こえる。今度は呉林にも聞こえたようで、顔に緊張が走った。
「他にも人がいるのね。早くここから出ないといけないわ。連れていって協力をしてもらいましょ」
呉林はそういうと、真剣な顔のまま一番奥の囚人房へとスタスタと歩き出す。
「どうして、また感じるとか」
私は呉林を追いかけながら問いかけた。
今は胡散臭い気持ちよりも、強い不安な気持ちが勝り呉林の言うことを信じることにしていた。
「そう、でも今度のはもっと悪い……胸騒ぎがするわ」
私はそれを聞いて、情けないことに震えを隠せられなくなった。どうしても、あの普通列車より恐ろしい体験は御免だった。矛盾してしまうが、呉林の直感が違っていればと本気で祈る。こんな悪い夢の様な世界ではなければ、美人の呉林とゆっくり出来るのだが……。
「早くここから出ないと。そういえば、安浦は?」
頭を軽く振って、自然に力が込もった私の質問に呉林は首を振り、
「解らないわ。ここにはいないのかも知れない。それとも、いるのかも知れない、もうこうなったら、訳が解らなくても前進するしかないわ」
呉林は背筋に力を入れ、まったく動じていないかのように歩く。
「怖いけど開けてみましょうよ。赤羽さん」
呉林は歌の聞こえる囚人房の前に立つと私に言った。
「解った」
こうなったら根性無しの私でも言うとおりにする。何を隠そう私は高校時代に一年だけ剣道の基本を学んだのだ。
私は頑丈そうな扉に鍵を差し込んだ。取っ手を回す。重々しい音に続いて、耳に入る歌声が一際大きくなった。
部屋には、左側には砂嵐を映したテレビと看守用だろうか丸椅子があり、右側には3つの鉄格子の牢屋がある。一番奥に歌を歌っている寝間着姿の青年が入っていた。そして、真中の牢屋にはこれも同じく寝間着姿の中年男性がいた。手前の牢屋は空っぽだった。
「どうしたんですか。大丈夫ですか?」
歌うのを止めた青年に、呉林が声をかけた。
「あなたたちは?僕は何か悪いことでもしたんですか。寝た時までは覚えているんですが」
青年は努めて落ち着いているような口調でいったが、だいぶ混乱しているはずだ。若者らしい薄い青い色の上下の寝巻き姿だ。
それに、看守用のジャンパーを着ている私を当然、看守と間違えているようだった。
「君達、俺は夜からの記憶がないんだ。俺は何かしちまったのか?」
中年の男は真剣な眼差しで、私の方を見る。その顔は現実的な衝撃を思わす緊張と不安で青冷めている。オーソドックスな黒の上下の寝巻き姿だった。
「大丈夫です。ここは特別なところですが、私たちが何とかするのでご安心ください」
呉林が珍しく敬語を使う。呪い師の不思議な雰囲気はこの時、効果を発した。誰でも安心しそうな説得力がある。
「特別! 特別って何だ!」
中年の男が鉄格子を掴んで、呉林に噛みつくように吠える。
「夢の世界のようなものよ! 信じる信じないは別だけど!」
呉林は敬語を突然やめて、地をだし強く説得した。普段と違うのは呪い師の雰囲気を纏ったところだ。
「夢の世界って、本当なんですか?」
青年は少々驚いた顔をしているが、呉林の言葉に半信半疑だ。
「夢。そんな話は聞いてない! 何でここに俺は入れられたんだ!」
ビジネスマン風の中年の男はまったく信じていないようだ。無理もない。私も未だに信じてはいない。いや、信じたくはない。けれど、現実ならば受け入れないとどうにもならないこともある。その証拠に、例え信じないことにしたとしても、私の体は頭が混乱するこの世界のせいで、どうしても手足が小刻みに震えていた。
「落ち着いて聞いて、きっとここから出られるわ。だから私の言うことを信じて。それに、もしここが現実の刑務所なら、私たちが入って来られる事自体可笑しいことでしょ? それに看守どころか誰もいない。そうでしょ。あ、それに赤羽さんは看守じゃいわよ」
敬語をやめた呉林は真摯に呪い師の雰囲気のままで説得をし続け、何とかこの不可思議な世界を理解してもらおうとした。私は心拍数が気になる心臓をしながら、呉林の奇抜な説得力に脱帽していた。
しばらく中年の男は力いっぱい鉄格子を掴んでいたが、急に力を抜いて溜め息を吐いた。
「ここが何所だっていい、ここから出られればそれでいい。あんたの言う通りにするよ。俺には仕事がある」
「僕は出来るだけ信じます。早くここから出たいので」
青年の方は急に青い顔になる。ここが不可解で非現実的な場所なのではないかと考えだしたようだ。
私はジャンパーのポケットにある鍵束を出して、全部の鍵を青年の牢屋に差し込んだ。
鍵穴は新品のようで、キラキラ光っていた。けれど、どれも違う。中年男性の牢屋にも試したが開かなかった。ふと、呉林と目を合せる。
「問題は鍵ね」
呉林は私の意図を汲み取ってくれた。
「鍵を探してくれませんか。お願いです。どこにあるのか解りませんが」
青い顔の青年はここから早く出たいといった顔をしている。
「鍵を探してくれ。頼む……」
中年男性もそうだった。
無理もない。こんな訳の解らない場所の牢屋になんか入っているなんて、想像出来ないほど不安なはず。
私は同情したい気持ちもあるのだが、この刑務所を調べなければならないという恐怖は到底、隠すことができないものだった。
「わかったわ」
私と呉林は頷いた。
外に出て、扉を閉めると、渋々鍵を探しに行くことにした。また歌が聞こえてくる。今度は少し悲しい歌に聞こえる。
「鍵と言っても、この広い刑務所の中。どこにあるのか……。ああ……俺が最初に行った事務所しかないかな」
震える足の私はひどく億劫だった。ここは一体、地球の何処なのだろう。
私たちは事務所の方へと延々と薄暗い通路を歩きだす。天井の裸電球はぶらりとしていた。
重い気分で辺りを見回していると、呉林はいつも通りの顔で歩いていた。
「私、さっきから嫌な感じがしてしょうがないのよ。ここは刑務所だから死刑囚でも出てきそうだわ」
「や、やめてくれよ! 俺だって混乱していて怖いんだからさ!」
私は強く頭を振った。ここが不可解な夢の世界なのかは別として、どうやったら元の世界に戻れるのだろうか。恐怖と混乱でぐちゃぐちゃになりそうな頭で、私はそればかり考えていた。……早く帰りたい。
「きみが占いか呪いだっけ? で、鍵の在り処を調べるっていうのは?」
私は意外性に賭けてみた。
「でも、私あのコーヒーを飲んでから調子がおかしいのよ」
呉林は茶色い長めの髪をかきあげてから考えだした。
「でも、その不思議な感じる力は出来るのか……?」
しばらく歩くと、さっきの誰もいない事務所に辿り着いた。呉林は、さっそく散乱している机の中や奥のロッカールームを探しだす。私もそれに続いた。
この事務所の明かりも、天井に数個しかないやや大きめの裸電球だけであって、薄暗くなっている。震えを抑えた私は小ざっぱりとした机の上にあった懐中電灯片手に机の引き出しを一つ一つ探しだした。
呉林は奥のロッカーを中心に探した。ロッカーの中には刑務官のジャンパーや着替えがあるので、鍵が一番ありそうな場所だった。
しばらく根気よく探したが、やはり無い。一時間以上しただろうか、私はだんだん疲れてきた。
「ここには無いようだし、他を探そう」
「ええ」
呉林も少し応えているようだ。額に汗が浮き出ている。
私と呉林はまた通路に出る。私は今では鍵のことより、この不可思議な世界から早く出ることだけを考えるようになってきた。
私は、溜め息をついて嘆く。
「はあ、どうやったらここから出られるんだ!」
私は未だに極度の恐怖と混乱した頭で吐き捨てた。
「その前に鍵よ」
「あ、うん」
私は気のない生返事を返し、額に浮き出た冷や汗とも疲労の汗ともいえない汗を拭う。
それを聞いた呉林は私の方にかなり怖い顔を向けてきた。
「あなた! さっきの人たちのこと、どうでもいいって思ってない! それじゃあの人たちが可哀そうよ!」
呉林が悲しさと厳しさが入り混じった顔をした。
「いい! 強い意志を持たなきゃ駄目よ! でなければ、この不思議な場所からは出られないわ! ここから一生出られなくてもいいの! あの人たちの協力がきっと不可欠よ!」
呉林は一面。悲しみの表情になりだし、捲くし立てる。
私は疲れていた。どうでもいいという感情を顔に出し、
「こんな世界じゃ。あいつらがいてもいなくても大して変わらないさ」
「そんな……。今は一人でも多くの仲間がいたほうがいいでしょ。あの人たちだって私たちと同じくこの世界に迷い込んできたのよ。いい、もっと強い意志を……」
呉林が言い終わらないうちに、私に強い感情が迸りそのまま声になった。
「俺はフリーターだ! 強い意志なんて元々持っていない! 人生の目標なんてないし、これから持つこともない! 楽な仕事を一生やって、けれど一生懸命やって、そして、年金暮らしをする! そんな人生を享受したい人間なんだ! もう怖いし疲れたしここから出たいだけなんだ!」
そう言うと一瞬、私も涙ぐんだ。何故だろうか。でも、もうどうでもよかったのだ。自分が助かれば。彼らを見捨てても。こんな世界で時間が経つのは本当に恐ろしい。
感情を爆発すると、こんな異常なところでも、頭がキリリと絞られてきた。
頭がすっきりすると、どうしようもなく、言葉に出来ない恐怖心が湧き上がる。本気で彼らを見捨てて、呉林と逃げようかと思った。と、その時、背後ですさまじい音が鳴り響いた。
「ガアーン! ガァーン!」
と、重い金属で立て続けに鉄格子を殴る破壊的な音だ。
「囚人房の方よ!」
「他にも人がいるのね。早くここから出ないといけないわ。連れていって協力をしてもらいましょ」
呉林はそういうと、真剣な顔のまま一番奥の囚人房へとスタスタと歩き出す。
「どうして、また感じるとか」
私は呉林を追いかけながら問いかけた。
今は胡散臭い気持ちよりも、強い不安な気持ちが勝り呉林の言うことを信じることにしていた。
「そう、でも今度のはもっと悪い……胸騒ぎがするわ」
私はそれを聞いて、情けないことに震えを隠せられなくなった。どうしても、あの普通列車より恐ろしい体験は御免だった。矛盾してしまうが、呉林の直感が違っていればと本気で祈る。こんな悪い夢の様な世界ではなければ、美人の呉林とゆっくり出来るのだが……。
「早くここから出ないと。そういえば、安浦は?」
頭を軽く振って、自然に力が込もった私の質問に呉林は首を振り、
「解らないわ。ここにはいないのかも知れない。それとも、いるのかも知れない、もうこうなったら、訳が解らなくても前進するしかないわ」
呉林は背筋に力を入れ、まったく動じていないかのように歩く。
「怖いけど開けてみましょうよ。赤羽さん」
呉林は歌の聞こえる囚人房の前に立つと私に言った。
「解った」
こうなったら根性無しの私でも言うとおりにする。何を隠そう私は高校時代に一年だけ剣道の基本を学んだのだ。
私は頑丈そうな扉に鍵を差し込んだ。取っ手を回す。重々しい音に続いて、耳に入る歌声が一際大きくなった。
部屋には、左側には砂嵐を映したテレビと看守用だろうか丸椅子があり、右側には3つの鉄格子の牢屋がある。一番奥に歌を歌っている寝間着姿の青年が入っていた。そして、真中の牢屋にはこれも同じく寝間着姿の中年男性がいた。手前の牢屋は空っぽだった。
「どうしたんですか。大丈夫ですか?」
歌うのを止めた青年に、呉林が声をかけた。
「あなたたちは?僕は何か悪いことでもしたんですか。寝た時までは覚えているんですが」
青年は努めて落ち着いているような口調でいったが、だいぶ混乱しているはずだ。若者らしい薄い青い色の上下の寝巻き姿だ。
それに、看守用のジャンパーを着ている私を当然、看守と間違えているようだった。
「君達、俺は夜からの記憶がないんだ。俺は何かしちまったのか?」
中年の男は真剣な眼差しで、私の方を見る。その顔は現実的な衝撃を思わす緊張と不安で青冷めている。オーソドックスな黒の上下の寝巻き姿だった。
「大丈夫です。ここは特別なところですが、私たちが何とかするのでご安心ください」
呉林が珍しく敬語を使う。呪い師の不思議な雰囲気はこの時、効果を発した。誰でも安心しそうな説得力がある。
「特別! 特別って何だ!」
中年の男が鉄格子を掴んで、呉林に噛みつくように吠える。
「夢の世界のようなものよ! 信じる信じないは別だけど!」
呉林は敬語を突然やめて、地をだし強く説得した。普段と違うのは呪い師の雰囲気を纏ったところだ。
「夢の世界って、本当なんですか?」
青年は少々驚いた顔をしているが、呉林の言葉に半信半疑だ。
「夢。そんな話は聞いてない! 何でここに俺は入れられたんだ!」
ビジネスマン風の中年の男はまったく信じていないようだ。無理もない。私も未だに信じてはいない。いや、信じたくはない。けれど、現実ならば受け入れないとどうにもならないこともある。その証拠に、例え信じないことにしたとしても、私の体は頭が混乱するこの世界のせいで、どうしても手足が小刻みに震えていた。
「落ち着いて聞いて、きっとここから出られるわ。だから私の言うことを信じて。それに、もしここが現実の刑務所なら、私たちが入って来られる事自体可笑しいことでしょ? それに看守どころか誰もいない。そうでしょ。あ、それに赤羽さんは看守じゃいわよ」
敬語をやめた呉林は真摯に呪い師の雰囲気のままで説得をし続け、何とかこの不可思議な世界を理解してもらおうとした。私は心拍数が気になる心臓をしながら、呉林の奇抜な説得力に脱帽していた。
しばらく中年の男は力いっぱい鉄格子を掴んでいたが、急に力を抜いて溜め息を吐いた。
「ここが何所だっていい、ここから出られればそれでいい。あんたの言う通りにするよ。俺には仕事がある」
「僕は出来るだけ信じます。早くここから出たいので」
青年の方は急に青い顔になる。ここが不可解で非現実的な場所なのではないかと考えだしたようだ。
私はジャンパーのポケットにある鍵束を出して、全部の鍵を青年の牢屋に差し込んだ。
鍵穴は新品のようで、キラキラ光っていた。けれど、どれも違う。中年男性の牢屋にも試したが開かなかった。ふと、呉林と目を合せる。
「問題は鍵ね」
呉林は私の意図を汲み取ってくれた。
「鍵を探してくれませんか。お願いです。どこにあるのか解りませんが」
青い顔の青年はここから早く出たいといった顔をしている。
「鍵を探してくれ。頼む……」
中年男性もそうだった。
無理もない。こんな訳の解らない場所の牢屋になんか入っているなんて、想像出来ないほど不安なはず。
私は同情したい気持ちもあるのだが、この刑務所を調べなければならないという恐怖は到底、隠すことができないものだった。
「わかったわ」
私と呉林は頷いた。
外に出て、扉を閉めると、渋々鍵を探しに行くことにした。また歌が聞こえてくる。今度は少し悲しい歌に聞こえる。
「鍵と言っても、この広い刑務所の中。どこにあるのか……。ああ……俺が最初に行った事務所しかないかな」
震える足の私はひどく億劫だった。ここは一体、地球の何処なのだろう。
私たちは事務所の方へと延々と薄暗い通路を歩きだす。天井の裸電球はぶらりとしていた。
重い気分で辺りを見回していると、呉林はいつも通りの顔で歩いていた。
「私、さっきから嫌な感じがしてしょうがないのよ。ここは刑務所だから死刑囚でも出てきそうだわ」
「や、やめてくれよ! 俺だって混乱していて怖いんだからさ!」
私は強く頭を振った。ここが不可解な夢の世界なのかは別として、どうやったら元の世界に戻れるのだろうか。恐怖と混乱でぐちゃぐちゃになりそうな頭で、私はそればかり考えていた。……早く帰りたい。
「きみが占いか呪いだっけ? で、鍵の在り処を調べるっていうのは?」
私は意外性に賭けてみた。
「でも、私あのコーヒーを飲んでから調子がおかしいのよ」
呉林は茶色い長めの髪をかきあげてから考えだした。
「でも、その不思議な感じる力は出来るのか……?」
しばらく歩くと、さっきの誰もいない事務所に辿り着いた。呉林は、さっそく散乱している机の中や奥のロッカールームを探しだす。私もそれに続いた。
この事務所の明かりも、天井に数個しかないやや大きめの裸電球だけであって、薄暗くなっている。震えを抑えた私は小ざっぱりとした机の上にあった懐中電灯片手に机の引き出しを一つ一つ探しだした。
呉林は奥のロッカーを中心に探した。ロッカーの中には刑務官のジャンパーや着替えがあるので、鍵が一番ありそうな場所だった。
しばらく根気よく探したが、やはり無い。一時間以上しただろうか、私はだんだん疲れてきた。
「ここには無いようだし、他を探そう」
「ええ」
呉林も少し応えているようだ。額に汗が浮き出ている。
私と呉林はまた通路に出る。私は今では鍵のことより、この不可思議な世界から早く出ることだけを考えるようになってきた。
私は、溜め息をついて嘆く。
「はあ、どうやったらここから出られるんだ!」
私は未だに極度の恐怖と混乱した頭で吐き捨てた。
「その前に鍵よ」
「あ、うん」
私は気のない生返事を返し、額に浮き出た冷や汗とも疲労の汗ともいえない汗を拭う。
それを聞いた呉林は私の方にかなり怖い顔を向けてきた。
「あなた! さっきの人たちのこと、どうでもいいって思ってない! それじゃあの人たちが可哀そうよ!」
呉林が悲しさと厳しさが入り混じった顔をした。
「いい! 強い意志を持たなきゃ駄目よ! でなければ、この不思議な場所からは出られないわ! ここから一生出られなくてもいいの! あの人たちの協力がきっと不可欠よ!」
呉林は一面。悲しみの表情になりだし、捲くし立てる。
私は疲れていた。どうでもいいという感情を顔に出し、
「こんな世界じゃ。あいつらがいてもいなくても大して変わらないさ」
「そんな……。今は一人でも多くの仲間がいたほうがいいでしょ。あの人たちだって私たちと同じくこの世界に迷い込んできたのよ。いい、もっと強い意志を……」
呉林が言い終わらないうちに、私に強い感情が迸りそのまま声になった。
「俺はフリーターだ! 強い意志なんて元々持っていない! 人生の目標なんてないし、これから持つこともない! 楽な仕事を一生やって、けれど一生懸命やって、そして、年金暮らしをする! そんな人生を享受したい人間なんだ! もう怖いし疲れたしここから出たいだけなんだ!」
そう言うと一瞬、私も涙ぐんだ。何故だろうか。でも、もうどうでもよかったのだ。自分が助かれば。彼らを見捨てても。こんな世界で時間が経つのは本当に恐ろしい。
感情を爆発すると、こんな異常なところでも、頭がキリリと絞られてきた。
頭がすっきりすると、どうしようもなく、言葉に出来ない恐怖心が湧き上がる。本気で彼らを見捨てて、呉林と逃げようかと思った。と、その時、背後ですさまじい音が鳴り響いた。
「ガアーン! ガァーン!」
と、重い金属で立て続けに鉄格子を殴る破壊的な音だ。
「囚人房の方よ!」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
国葬クラウドファンディング
輪島ライ
ホラー
首相経験者の父親を暗殺された若き政治家、谷田部健一は国政へのクラウドファンディングの導入を訴えて総理大臣に就任する。刑務官を務める「私」は、首相となった谷田部を支持していたが……
※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
醜女の檻 ~私の美少女監禁日記~
戸影絵麻
ホラー
私は醜い。
いじめられるのを通り越して、他人が避けて通るほど。
私の素顔をひと目見るなり、誰もが嘔吐するレベルなのだ。
呪われている、というしかない。
だから私の唯一の楽しみは、美しいものを穢すこと。
その時私はなんとも言いようのない、うっとりするような恍惚感を覚えるのだ…。
そんなある日、私の前にひとりの転校生が現れた。
笹原杏里。
スタイルも良く、顔立ちも私好みの美少女だ。
杏里の瑞々しい肢体を目の当たりにした瞬間、私は決意した。
次の獲物は、この娘にしよう。
こいつを私の”檻”に誘い込み、監禁して徹底的に嬲るのだ…。 ※これは以前書いたものの改訂版です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
瓜目トンネル
たくみん
ホラー
ゆうき、つよし、よわしの3人は今日もまた心霊スポット巡りをしている。
いつも何事も起きずに無事家に帰れているのだが……
そんなある日、彼らの日常は手の裏を返すことにまだ彼らはきづいていない…
パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない
セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。
しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。
高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。
パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。
近辺オカルト調査隊
麻耶麻弥
ホラー
ある夏の夜、幼なじみの健人、彩、凛は
ちょっとした肝試しのつもりで近辺で噂の幽霊屋敷に向かった。
そこでは、冒涜的、超自然的な生物が徘徊していた。
3人の運命は_______________
>この作品はクトゥルフ神話TRPGのシナリオを元に作ったものです。
この作品を見てクトゥルフ神話TRPGに興味を持った人はルールブックを買って友達と遊んでみてください。(布教)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる