水の失われた神々

主道 学

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孤島の戦い

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 これから光姫が数多の龍が徘徊する海を、遥々北海道から歩いてこれたことがわかるであろう。
 
「この乗り物は動きません!」
「この高さじゃ、飛び降りるのも無理ね!」

 鬼姫と蓮姫はエレベーターへと向かったが、ボタンを押してもやはりエレベーターは動かなかった。ドシンという大きな衝撃音と振動は更に強くなっていた。強い衝撃でエレベーターは完全に動かなかった。
 鬼姫と蓮姫は都会どころかエレベーターにすら疎いのだ。いや、知らないのだ。致し方ないのだが。
 武と湯築と高取は切迫して、エレベーターを再度動かそうと考えているのだろうが。
 三人組はいつも通り落ち着いていた。
 私はこのビルの外を見てみる。数体の龍がビルに体当たりをしていた。
「鬼姫さん、蓮姫さん、光姫さん……仕方ないから階段だ! 湯築と高取は三人組と、ここで待っててくれ! すぐにおれがエレベーターを動かしてみせる!」
 武は鬼姫の手を取って、蓮姫と光姫を促し廊下を慌てて駆けだした。
 
「この階段で降りましょう! さあ、早く! 私がしんがりをします」
 光姫はエレベーターが嫌いのようだ。
 ポセイドンへ来る時にも階段を使っていたのだ。
 だが、都会慣れもしている光姫だった。
 一番目は蓮姫。二番目は武と鬼姫、最後には光姫が広い廊下から東階段を飛んだ。
「いざ!」
 光姫が目を瞑って階段を飛ぶように降り始めると同時に、暗黒のビルの外が急に仄かに明るくなりだした。
 ビルの外を見てみると、夏だというのに極寒の地の吹雪が吹き乱れはじめた。
 そして、数刻後には信じられないほどの大きさの雹が豪雨のように振り出した。
 このビルの周囲には、もはや龍が近づけないではないだろうか。ビルから離れて辺りを見回してみると、突然に発生した巨大な竜巻が四方を囲んでいた。

 龍が凍る。
 辺りは鋭利な先端の雹が降り続け。容赦のない極低温の世界である。

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